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魔法が使えない理由
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「理由は幾つか考えられるが、まずは基本的な初歩の初歩を話そうか。これは授業でもやるまでもないけど、一般常識だ。魔法というのは、平民でも使えるのは知っているね?」
「はい。生活魔法と呼ばれる物で、代表的には汚れを落とすクリアなどでしょうか」
この魔法は常に使われていると言っていいくらい多用されている。
とはいえ、魔力が多くない人々では、やはり水で洗い落とした方が早いし楽というのもあるが、基本的には接触や視認が必要になってくるので、自分の身体を丸ごと綺麗にするといった事は不可能だ。
「うん。で彼らは基礎を学んでいる訳ではないから、正確性にも欠けるし、受け継いだ術式に手を加える事も出来ない。大体は、単純に目の前で一瞬だけ事象を引き起こす事が出来る簡単な魔法の術式を、生活魔法に分類している。
次に、多くの冒険者や貴族が使う魔法を、属性魔法と呼ぶ。これは血筋に関係していて、扱う属性への適応性がないと行使できない。属性を超えて扱える者を、魔法使いと分類している。魔法使いが使うのは元素魔法と呼ばれるが、やはり属性に左右されるから、効果は血筋によるね」
「……もし、その属性が相反するもので、同じくらいの強度で備わっていたらどうなりますか?」
マリアローゼの問いかけに、ウィスクムは楽しそうにニヤリと笑った。
「うん、それが考えられる可能性の1つめだ。解決するにはどちらかを封じるか、どちらかを鍛錬するだけでいい。
そして2つ目は、似ているが少し違うもの、特殊属性や混合属性と呼ばれるものなんだが、強い属性がある部分に集まると発生する複合魔術だ。これは魔法使いも扱えるんだが、例えば風と光の属性を扱えれば幻影魔法が使えるといった具合なんだが、その精度が桁違いになる」
「つまり、幻影魔法という一系統に偏るのですか?」
「その通り。訓練次第では風や光の魔法を使えるようにもなるだろうが、大抵は突出した魔法を強化する事を選ぶだろうね」
マリアローゼの頭に浮かんだのはある1人の危険人物だ。
神聖国へ向かう途中の襲撃事件の最中に姿を消した人物。
(アート…彼は幻影魔法の使い手なのかしら?だとすればかなり厄介ですわ……)
「そして3つ目は単純で、魔力回路がぶっ壊れている。これは治療で何とでもなるが、もう一つ厄介なのが、放出が出来ない人間もいるって事かな。大抵は接触で魔法を発現できるんだが、それも出来ない。となると、魔酔病にかかる事になる。自分の魔力を発散出来ずに酩酊状態に陥るんだ。だがこれはもう治療法が確立しているので問題ない」
マリアローゼは大きく、こくん、と頷いた。
今まで読んだ本の中で読んだ事があるのだ。
エーデル・ワトキンスという錬金術師が開発した、吸魔水晶というもので魔力を吸い出すのである。
吸い出された魔力は、水晶に宿るが、適切な処理をしないと魔石のように魔力を供給する事は出来ない。
以前に発明を悪用して、事件が幾つも起きたので、今は医療目的や結界維持などの特別な理由がないと利用出来ない様に法律的にも縛られているし、作れる場所も人員も限られている。
「その未放出型でも、体内で別の力に変えて常にブースト状態を保っている例もある。君の兄上もこの系統じゃないかと俺は思ってるんだよね。だが、もう一つ懸念事項がある」
君の兄、と言われてマリアローゼはぴくん、と反応した。
それもそうだ、知り合いなのだから、知っていてもおかしくはない。
相談したのは父か母か叔父か、マリアローゼはノアークが心配されている事に、とても温かいものが胸に込み上げた。
「……と、申しますと?」
不安そうに眉を顰めたマリアローゼに、ウィスクムは幅広い肩を竦めた。
「いや、生きるの死ぬのって話じゃない。4つめの可能性、固有魔法だ」
「固有魔法?」
ユニークスキルみたいなものかしら?
マリアローゼはふむ、と考え込んだ。
「これは厄介で、誰もが1つは持っているものなんだが、発現しない限り分からない。本人も分からなければ、他人も鑑定する事が出来ないという代物でね。解析不能なんだ。大抵の場合、能力は使えるし、本人は使い方も分かるけど、原理も不明で、「ただそうなる」という事しか分からない。他人が再現するのは無理なんだ。
それこそ模倣系の固有魔法が無い限りはね」
「もしその固有魔法を鑑定できる人がいたらどうなりますか?」
「うーん。俺の私見だけど、その人物の争奪戦、若しくは殺し合いになるだろうね。そのまま野放しにして帝国のどちらかが手に入れれば、間違いなく戦争になる」
予想の範疇ではあったけれど、戦争…戦争は絶対に避けたい……。
マリアローゼは目を伏せて考えた。
鑑定できる人間がいれば、よりよい固有魔法を操れる人物を見つけ出し、その能力を利用できる。
強大な力だったり、特殊な力であれば、魔法という概念を超えられるのだ。
(うーん…何かひっかかりますわね……?
特殊…特殊な力……ええと…もしかして…??
わたくしのテイム能力も固有魔法!??)
「はい。生活魔法と呼ばれる物で、代表的には汚れを落とすクリアなどでしょうか」
この魔法は常に使われていると言っていいくらい多用されている。
とはいえ、魔力が多くない人々では、やはり水で洗い落とした方が早いし楽というのもあるが、基本的には接触や視認が必要になってくるので、自分の身体を丸ごと綺麗にするといった事は不可能だ。
「うん。で彼らは基礎を学んでいる訳ではないから、正確性にも欠けるし、受け継いだ術式に手を加える事も出来ない。大体は、単純に目の前で一瞬だけ事象を引き起こす事が出来る簡単な魔法の術式を、生活魔法に分類している。
次に、多くの冒険者や貴族が使う魔法を、属性魔法と呼ぶ。これは血筋に関係していて、扱う属性への適応性がないと行使できない。属性を超えて扱える者を、魔法使いと分類している。魔法使いが使うのは元素魔法と呼ばれるが、やはり属性に左右されるから、効果は血筋によるね」
「……もし、その属性が相反するもので、同じくらいの強度で備わっていたらどうなりますか?」
マリアローゼの問いかけに、ウィスクムは楽しそうにニヤリと笑った。
「うん、それが考えられる可能性の1つめだ。解決するにはどちらかを封じるか、どちらかを鍛錬するだけでいい。
そして2つ目は、似ているが少し違うもの、特殊属性や混合属性と呼ばれるものなんだが、強い属性がある部分に集まると発生する複合魔術だ。これは魔法使いも扱えるんだが、例えば風と光の属性を扱えれば幻影魔法が使えるといった具合なんだが、その精度が桁違いになる」
「つまり、幻影魔法という一系統に偏るのですか?」
「その通り。訓練次第では風や光の魔法を使えるようにもなるだろうが、大抵は突出した魔法を強化する事を選ぶだろうね」
マリアローゼの頭に浮かんだのはある1人の危険人物だ。
神聖国へ向かう途中の襲撃事件の最中に姿を消した人物。
(アート…彼は幻影魔法の使い手なのかしら?だとすればかなり厄介ですわ……)
「そして3つ目は単純で、魔力回路がぶっ壊れている。これは治療で何とでもなるが、もう一つ厄介なのが、放出が出来ない人間もいるって事かな。大抵は接触で魔法を発現できるんだが、それも出来ない。となると、魔酔病にかかる事になる。自分の魔力を発散出来ずに酩酊状態に陥るんだ。だがこれはもう治療法が確立しているので問題ない」
マリアローゼは大きく、こくん、と頷いた。
今まで読んだ本の中で読んだ事があるのだ。
エーデル・ワトキンスという錬金術師が開発した、吸魔水晶というもので魔力を吸い出すのである。
吸い出された魔力は、水晶に宿るが、適切な処理をしないと魔石のように魔力を供給する事は出来ない。
以前に発明を悪用して、事件が幾つも起きたので、今は医療目的や結界維持などの特別な理由がないと利用出来ない様に法律的にも縛られているし、作れる場所も人員も限られている。
「その未放出型でも、体内で別の力に変えて常にブースト状態を保っている例もある。君の兄上もこの系統じゃないかと俺は思ってるんだよね。だが、もう一つ懸念事項がある」
君の兄、と言われてマリアローゼはぴくん、と反応した。
それもそうだ、知り合いなのだから、知っていてもおかしくはない。
相談したのは父か母か叔父か、マリアローゼはノアークが心配されている事に、とても温かいものが胸に込み上げた。
「……と、申しますと?」
不安そうに眉を顰めたマリアローゼに、ウィスクムは幅広い肩を竦めた。
「いや、生きるの死ぬのって話じゃない。4つめの可能性、固有魔法だ」
「固有魔法?」
ユニークスキルみたいなものかしら?
マリアローゼはふむ、と考え込んだ。
「これは厄介で、誰もが1つは持っているものなんだが、発現しない限り分からない。本人も分からなければ、他人も鑑定する事が出来ないという代物でね。解析不能なんだ。大抵の場合、能力は使えるし、本人は使い方も分かるけど、原理も不明で、「ただそうなる」という事しか分からない。他人が再現するのは無理なんだ。
それこそ模倣系の固有魔法が無い限りはね」
「もしその固有魔法を鑑定できる人がいたらどうなりますか?」
「うーん。俺の私見だけど、その人物の争奪戦、若しくは殺し合いになるだろうね。そのまま野放しにして帝国のどちらかが手に入れれば、間違いなく戦争になる」
予想の範疇ではあったけれど、戦争…戦争は絶対に避けたい……。
マリアローゼは目を伏せて考えた。
鑑定できる人間がいれば、よりよい固有魔法を操れる人物を見つけ出し、その能力を利用できる。
強大な力だったり、特殊な力であれば、魔法という概念を超えられるのだ。
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