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連載
ルドルフの謝罪
部屋に入ってきたルドルフを迎える為に、マリアローゼは立ち上がり、隣に座していたウィスクムもその横に並んで立つ。
「殿下」
マリアローゼがスカートを摘んでお辞儀をすると、ルドルフは申し訳無さそうな顔をした。
「マリアローゼ・フィロソフィ嬢、君が無事で何よりだった。……座ってくれ」
「はい、殿下もお元気そうで何よりでございます」
マリアローゼはふわりと微笑んで、長椅子に座った。
「遅くに済まないが、どうしても謝罪を伝えたくて参った。……いや、参りました。
ジェレイド・フィロソフィ殿にも、最初こそ責められたが、今は親身に相談にのって下さっているので安心して頂きたい」
きょとん、と目を丸くしているマリアローゼに、照れ臭そうにルドルフが告げた。
「何れ臣籍降下する身だし、私自身は何の力も持たないからせめて、言葉遣いだけでも直そうと思ってな…」
などと言っているが、マリアローゼが気になっていたのはそこではなかった。
(お肌が……改善しておりますわ……!)
2日前に船で会った時は、顔全体に赤味があったし、頬もでこぼこと吹き出物があったのに、かなりすっきりしている。
心なしか、お腹まわりもさみしくなっていて、ベルトの上に乗っていた肉の量も減っているのだ。
「それよりも、殿下、お肌が綺麗になったのでは?」
「おお、分かったか、マリアロ…フィロソフィ嬢!実は君の言う通りに、公爵家の調理人に野菜中心の食事を所望したのだ。それに、フィロソフィ家が懇意にしているという商会の者が訪ねて来て、顔に塗る美容薬を使用して欲しいと頼まれて、試しているところだが、見違えるほどに効果が出たので、購入する予定なのだ!」
「ま、まあ……」
きちんとマリアローゼの言う事を聞いて、素直に実践されている事に嬉しさも感じるが、商会の件はまったく知らなかった。
(何て商売上手なのかしら)
確かに、ルドルフの肌荒れは帝国の宮廷でも有名だっただろう。
それが短期間で改善したとしれば、欲しがる貴族は多いはずだ。
宣伝効果はかなり桁外れだろう、とマリアローゼの商魂も刺激された。
「殿下は洗髪剤はお使いになられまして?」
「いや、良い物があるのか?」
「ルーナ、1つ持ってきて貰えるかしら?」
会釈したルーナが、ささっと洗髪剤の在庫を取りに寝室へと向かう。
「同じ商会で作られているのですけれど、フィロソフィ家で栽培している薫り高い薔薇の香りが致しますの。わたくしも愛用しておりますのよ」
「そ、そうか」
同じ匂いをさせたいルドルフには、トドメとなる言葉である。
マリアローゼは、とても良い物なのですよ、というつもりで言ったのだが、完全に大量購入の意志を固める発言となった。
ルーナから洗髪剤を受け取ると、ルドルフは美しい薔薇の彫刻が刻んである白い陶器の容器を見て頷いた。
「これも是非買い上げよう」
「まあ、嬉しゅうございますわ。それと殿下、宜しければわたくしの事は名前でお呼びくださいませ」
すっかり言葉遣いは元に戻ってしまっているが、マリアローゼにとっては偉そうに喋る幼い男の子…でありトナカイでもあるルドルフはとても可愛く映るので、その辺りは言及しない事にした。
一瞬、ルドルフは面食らったような顔をして、それからしょんぼりと肩を落とした。
「いやしかし、弟公爵殿は何と言われるか……」
「わたくしが良いと言っているのです、文句を言わせたりしませんわ」
ドヤっと自信満々に言い放つマリアローゼを見て、ルドルフは頬を赤らめつつ頷いた。
「それでは我…ではないな、私の事もルドルフと」
二人が微笑み合っていると、ラディアータの声が響いた。
「お嬢様、兄君方が参られました」
「あら、もうそんな時間ですの…」
ちら、とルドルフを見ると、ルドルフはこくん、と頷いた。
「そろそろ私は失礼しよう。また、近いうちに…」
「いえ、明日の朝、早くにお会いしましょう。わたくしも朝運動をしておりますので、ご参加下さいませ」
ルドルフが立ち上がるのに合わせて、マリアローゼも立ち上がってにっこりと言い放つ。
一瞬戸惑った顔をしたものの、勢いに押されて、ルドルフはこくこくと頷いた。
「そ、そうだな。ここでは勝手が分からぬし、世話になる事にしよう」
「早朝になりますので、お早めにお休みくださいませね」
「うむ、分かった。では、失礼する」
お辞儀をしあってから、従者を連れてルドルフは出て行く。
従者と言っても公爵家で手配された従者で、見張りの意味も兼ねているのだろうな、とマリアローゼは見送り、入れ替わりに兄達が部屋の中に入ってきた。
「殿下」
マリアローゼがスカートを摘んでお辞儀をすると、ルドルフは申し訳無さそうな顔をした。
「マリアローゼ・フィロソフィ嬢、君が無事で何よりだった。……座ってくれ」
「はい、殿下もお元気そうで何よりでございます」
マリアローゼはふわりと微笑んで、長椅子に座った。
「遅くに済まないが、どうしても謝罪を伝えたくて参った。……いや、参りました。
ジェレイド・フィロソフィ殿にも、最初こそ責められたが、今は親身に相談にのって下さっているので安心して頂きたい」
きょとん、と目を丸くしているマリアローゼに、照れ臭そうにルドルフが告げた。
「何れ臣籍降下する身だし、私自身は何の力も持たないからせめて、言葉遣いだけでも直そうと思ってな…」
などと言っているが、マリアローゼが気になっていたのはそこではなかった。
(お肌が……改善しておりますわ……!)
2日前に船で会った時は、顔全体に赤味があったし、頬もでこぼこと吹き出物があったのに、かなりすっきりしている。
心なしか、お腹まわりもさみしくなっていて、ベルトの上に乗っていた肉の量も減っているのだ。
「それよりも、殿下、お肌が綺麗になったのでは?」
「おお、分かったか、マリアロ…フィロソフィ嬢!実は君の言う通りに、公爵家の調理人に野菜中心の食事を所望したのだ。それに、フィロソフィ家が懇意にしているという商会の者が訪ねて来て、顔に塗る美容薬を使用して欲しいと頼まれて、試しているところだが、見違えるほどに効果が出たので、購入する予定なのだ!」
「ま、まあ……」
きちんとマリアローゼの言う事を聞いて、素直に実践されている事に嬉しさも感じるが、商会の件はまったく知らなかった。
(何て商売上手なのかしら)
確かに、ルドルフの肌荒れは帝国の宮廷でも有名だっただろう。
それが短期間で改善したとしれば、欲しがる貴族は多いはずだ。
宣伝効果はかなり桁外れだろう、とマリアローゼの商魂も刺激された。
「殿下は洗髪剤はお使いになられまして?」
「いや、良い物があるのか?」
「ルーナ、1つ持ってきて貰えるかしら?」
会釈したルーナが、ささっと洗髪剤の在庫を取りに寝室へと向かう。
「同じ商会で作られているのですけれど、フィロソフィ家で栽培している薫り高い薔薇の香りが致しますの。わたくしも愛用しておりますのよ」
「そ、そうか」
同じ匂いをさせたいルドルフには、トドメとなる言葉である。
マリアローゼは、とても良い物なのですよ、というつもりで言ったのだが、完全に大量購入の意志を固める発言となった。
ルーナから洗髪剤を受け取ると、ルドルフは美しい薔薇の彫刻が刻んである白い陶器の容器を見て頷いた。
「これも是非買い上げよう」
「まあ、嬉しゅうございますわ。それと殿下、宜しければわたくしの事は名前でお呼びくださいませ」
すっかり言葉遣いは元に戻ってしまっているが、マリアローゼにとっては偉そうに喋る幼い男の子…でありトナカイでもあるルドルフはとても可愛く映るので、その辺りは言及しない事にした。
一瞬、ルドルフは面食らったような顔をして、それからしょんぼりと肩を落とした。
「いやしかし、弟公爵殿は何と言われるか……」
「わたくしが良いと言っているのです、文句を言わせたりしませんわ」
ドヤっと自信満々に言い放つマリアローゼを見て、ルドルフは頬を赤らめつつ頷いた。
「それでは我…ではないな、私の事もルドルフと」
二人が微笑み合っていると、ラディアータの声が響いた。
「お嬢様、兄君方が参られました」
「あら、もうそんな時間ですの…」
ちら、とルドルフを見ると、ルドルフはこくん、と頷いた。
「そろそろ私は失礼しよう。また、近いうちに…」
「いえ、明日の朝、早くにお会いしましょう。わたくしも朝運動をしておりますので、ご参加下さいませ」
ルドルフが立ち上がるのに合わせて、マリアローゼも立ち上がってにっこりと言い放つ。
一瞬戸惑った顔をしたものの、勢いに押されて、ルドルフはこくこくと頷いた。
「そ、そうだな。ここでは勝手が分からぬし、世話になる事にしよう」
「早朝になりますので、お早めにお休みくださいませね」
「うむ、分かった。では、失礼する」
お辞儀をしあってから、従者を連れてルドルフは出て行く。
従者と言っても公爵家で手配された従者で、見張りの意味も兼ねているのだろうな、とマリアローゼは見送り、入れ替わりに兄達が部屋の中に入ってきた。
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