悪役令嬢? 何それ美味しいの? 溺愛公爵令嬢は我が道を行く

ひよこ1号

文字の大きさ
169 / 319
連載

反抗するお嬢様

マリアローゼはルーナが用意してくれた便箋の中から、淡い桜色の便箋を選び出し、香水も好んでいる果実と花の春めいた香りを選び、便箋を一噴きした香水に潜らせるようにして、ほんのりと香りをつける。

そして、なるべく丁寧に手紙を書き始めた。
時候の挨拶と、労わってくれたことに対しての感謝、グレンツェンに聞いた帝国の話がとても面白かった事、礼儀正しくて真面目な人柄が好ましいので友人として仲良くしたいという事などを書き連ねる。
贈り物についても、とても綺麗なリボンで有り難く使わせて戴く事、香水は何の花の香りか知りたい事、そして同じく年頃の友人がいないので、是非友人として文通を致しましょうと前傾姿勢で書き終えた。
最後に、絵がとても上手なので宜しければ何時か描いてほしい事、
近々領地へ行くので都合が良い時に遊びに来て欲しいと書き添える。

「贈り物は……そうね、文通するのだもの。ペンが宜しいわね」

マリアローゼがそう言うと、ルーナがささっと手元にペンが入った小箱を差し出した。
中には黒いベルベッドが敷かれていて、その上には試作品のペンが幾つか並んでいる。
持ち手が青い硝子の物を選んで、同じ香水の香りを纏わせたハンカチで包むと、封筒の中に手紙と共に入れた。

「お父様に、お手紙を見て戴かなくては……」

そわそわと頬を染めるマリアローゼを見て、ルーナは嬉しそうに微笑みつつ頷いた。
銀盆に封の空いた手紙を載せて、今日はマリアローゼの仕度が終了すると共に部屋に入って入口近くに待機している、ノクスへと銀盆を手渡した。

「そうですわ!わたくしも文通を始めるのですから、封蝋を作っていただかなくては…」
「注文しておきますが、蝋の色は何色に致しましょうか?」

ふんすふんすと、上下させていた手をはたりと止めて、マリアローゼは宙を見上げた。

「金粉の入った薄い桃色と、銀粉の入った濃い青と、意匠は今までの薔薇と似たものでお願い致しますわ」
「畏まりました。もう晩餐の時刻ですので、食堂にいらっしゃる間に行って参ります」
「ありがとう、ルーナ。楽しみですわ」

マリアローゼはうきうきした気分で、ルーナとカンナとユリアに伴なわれて食堂へと移動した。
そして、今日も、昨日よりも萎れたジェレイドが食堂の入口に立っている。

「駄目です」

何かを言う前に、先んじてユリアが言い、マリアローゼを隠すように立ちはだかったので、
マリアローゼもカンナもその後ろを通り過ぎて席に着いた。
ルーナはユリアとジェレイドに会釈をして、食堂を通り過ぎて廊下を歩いて行き、使用人通路で曲がった。
しょんぼりとしたジェレイドに、フンと胸を反らす様に上からの目線を送った後、ユリアも食事の席に着いたのである。

「ローゼ、旅の支度は進んでいるのかい?」

晩餐の最中の父の問いかけに、マリアローゼは食事の手を止め、ちらりとジェレイドを見て、ジェレイドの視線を
振り切るかのようにつーん、と顔を背けた。

「参りません」

「えっ?」

「領地には参りません」

父はその返答を聞いて、苦笑を漏らし、ジェレイドはがっくりと項垂れた。
母は気にした風もない、おっとりとした声で「まあ」と言っただけだ。
父に関しては、領地に伴なっていく使用人達についての相談もしているので、今更中止になるとは思っていない筈で
これは単なるジェレイドへの反抗でしかない。

「ふむ、分かった。少し話す必要がありそうだ。晩餐後に執務室に来なさい、マリアローゼ」
「はい、お父様」

それには勿論従う返事をして、晩餐後はグランスを伴なって執務室へと向かった。
ルーナとノクスには勉強を優先して欲しいので、部屋で兄達を迎えてもらう事にしたのだ。
感想 154

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~

放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」 大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。 生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。 しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。 「すまない。私は父としての責任を果たす」 かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。 だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。 これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

転生したら幼女でした!? 神様~、聞いてないよ~!

饕餮
ファンタジー
  書籍化決定!   2024/08/中旬ごろの出荷となります!   Web版と書籍版では一部の設定を追加しました! 今井 優希(いまい ゆき)、享年三十五歳。暴走車から母子をかばって轢かれ、あえなく死亡。 救った母親は数年後に人類にとってとても役立つ発明をし、その子がさらにそれを発展させる、人類にとって宝になる人物たちだった。彼らを助けた功績で生き返らせるか異世界に転生させてくれるという女神。 一旦このまま成仏したいと願うものの女神から誘いを受け、その女神が管理する異世界へ転生することに。 そして女神からその世界で生き残るための魔法をもらい、その世界に降り立つ。 だが。 「ようじらなんて、きいてにゃいでしゅよーーー!」 森の中に虚しく響く優希の声に、誰も答える者はいない。 ステラと名前を変え、女神から遣わされた魔物であるティーガー(虎)に気に入られて護られ、冒険者に気に入られ、辿り着いた村の人々に見守られながらもいろいろとやらかす話である。 ★主人公は口が悪いです。 ★不定期更新です。 ★ツギクル、カクヨムでも投稿を始めました。

【完結】転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して二年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。

異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?

来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。 そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった! 亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。 「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」 「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」 おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。 現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。 お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、 美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!

拾ってないのに、最上位が毎日“帰る”んですがーー飼い主じゃありません!ただの受付係です!

星乃和花
恋愛
王都ギルド受付係リナは、今日も平和に働く予定だった。 ……のに。 「お腹すいた」 そう言って現れたのは、最上位の英雄レオン。 強いのに生活力ゼロ、距離感ゼロ、甘え方だけは一流。 手当てすれば「危ない」と囲い込み、 看病すれば抱きしめて離さず、 ついには―― 「君が、俺の帰る場所」 拾ってない。飼ってない。 ただ世話を焼いただけなのに、英雄が毎日“帰ってくる”ようになりました。 無自覚世話焼き受付嬢 × 甘えた天然英雄の 距離感バグ甘々ラブコメ、開幕! ⭐︎火木土21:20更新ー本編8話+後日談9話⭐︎