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連載
会頭マローヴァの訪問
しおりを挟む「商会からお客様が?」
昼食と日課のお昼寝を終えた、優雅な昼下がりにマリアローゼは来客を告げられて目をぱちくりさせた。
色々な出来事があったせいですっかり忘れていたのだが、縫いぐるみの製作を依頼していた事を思い出し、
マリアローゼはこくん、と頷いた。
「きっと依頼した物が出来上がったのですわね。メイヤールさんはとても優秀な方ですもの」
「いえ、それが、メイヤール様ではなくマローヴァ様がいらしております」
「あら……王都にいらっしゃるとばかり思っておりましたわ。問題ありませんのでお通しして貰える?」
ここに使いが来たと言う事は、ジェレイドの許可も下りているのだろう、とマリアローゼは判断して、応接間へと移動した。
部屋の中にはウルスス、パーウェルとカンナも護衛として待機しているが、今朝からユリアは見当たらない。
異端審問官としての技術を、尋問に如何なく発揮しているだろう事は想像に難くなかった。
そして、無事第15皇子は保護されている事と、昨日の件での死人は出なかった事はシスネを通じて知らされている。
グランスは請われて、皇子付きの騎士達を訓練しているという話だ。
「お久しぶりで御座います。我が王国の至宝、マリアローゼ・フィロソフィ嬢」
「その様な口上は叔父上様だけで事足りているのでご遠慮下さいませ」
ジト目で否定されて、マローヴァは愉快そうに笑みを浮かべた。
(分かっていてやっていますわね)
マリアローゼはふんす、とお怒りのポーズを崩さないままマローヴァを見るが、今迄見たマローヴァと様子が違う。
以前王宮で見た時は、まるで錬金術師か職人かと聞きたくなるくらい、色々な物を身に纏っていたのだ。
今は、すっきりとした明るい色の燕尾服を着ている。
「服の趣味が変わられましたの?」
「いえいえ、本来なら昨日ご機嫌伺いをしようと思っておりましたが、普段の服装では城内に入れて貰えなかったのですよ。王宮よりも数段厳しい規制をされておりましてね、危うく丸裸にされるところでした」
(普段どのくらい危険物を身に纏ってるかの方が気になりますわ!)
マリアローゼの再びの疑惑の視線を受けて、マローヴァは身振り手振りを交えて軽快に説明を加えた。
「そんな怪しい物を身につけちゃおりませんよ。魔法がかかっている道具や、薬物等々、判別に時間のかかりそうな物品を身につけておりましてね。ウィスクムのような鑑定眼があれば楽勝なんでしょうが、私も色々後暗い行いをしているもんで、身から離せない物もございますんで、今日は道具代わりになる護衛を頼んで馳せ参上致しました」
最後は優雅に深く、一礼する。
(うん、胡散臭いですわね。しかも、道具代わりになる護衛とか言い方が酷い…)
「それで、今日はどういったご用件がございまして?」
怪しいのは元々なので追及は止めて、マリアローゼは本題に入った。
後ろに控えている城の従業員を振り返り、マローヴァは頷いた。
小間使いが数人進み出て、長机の上に大小様々な箱や包みを置いていく。
「折角ですので、王都で購入可能な全ての菓子を取り揃えて参りました」
「ま、まあ!」
思わず、マリアローゼはぱああっと顔を輝かせた。
乙女は甘い物に目がないのである。
執事のルスキニアが静かに説明を補足した。
ノウェム直属の部下であり、主にマリアローゼや兄弟達の世話を任されている、赤髪の青年だ。
「階下で店の封印紋と保冷紋は確認済で、解除後に毒の検知魔法も済んでおりますので、そのままお召し上がり頂いて問題ないかと存じます」
(ええ?今迄そんな説明された事ありませんでしたけれど、色々調べていたのですわね?)
当然と言えば当然なのだが、説明されないとやはり認識出来ない事もあるのだ。
マリアローゼはにっこり微笑んで、小間使いと執事に向けて御礼の言葉を伝えた。
「ありがとう。では、わたくしこちらを頂きたいわ。マローヴァさんもどうぞ椅子におかけください。
カンナお姉様も一緒に如何ですか?」
「はい、では遠慮なく」
とマローヴァが座り、その横にカンナも腰を下ろした。
「ユリアさんに知られたら恨まれそうだけど、頂きます!」
やはり女子は甘い物に目がないのだ。
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