死を招く愛~ghostly love~

一布

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おまけ・2

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 そんなわけで、おまけ・2です。
 いや、何が「そんなわけ」なのかは分かりませんが。

 とにもかくにもこの「おまけ・2」では、本作作成のきっかけや一布自身の考えなんかを書いていきたいと思います。

 なんかエッセイや法学論みたな内容も一部含みますが、どうかお付合いいただけると幸いですm(_ _)m

 んで。

 このお話を書くキッカケになったのは、こんな発想からでした。

「主人公が何もしない話って、なかなかなくね?」

 本来、主人公は、どんな形であっても必ず活躍します。チート型の主人公は圧倒的力で物語を進め、努力型の主人公はそのひたむきさで周囲を取り込みながら物語を進め、ろくでもない主人公はそのろくでもなさで(悪い意味で)周りに影響を与えながら物語を進めます。

 では、主人公が何もしないにはどうしたらいいか。

 人間は、たとえ何もしなくても、何故か誰かには影響を与えます。周囲を動かしてしまいます。例えばニート。彼等は、どうやってもその家族に影響を与えます。

 では、どうするか。

 死んで転生もしない奴が主人公なら、さすがに何もできなくね?

 こうして、村田洋平君が誕生しました。いや、死んでるんですけどね、物語の冒頭から。生まれ変わったりもしないんですけどね、最後まで。
 そんなふうに主人公が生まれ、どんな物語にしようか。せっかく(というのも変だけど)主人公が死んでるんだから、生と死にまつわる話にしよう。死んだ人と生きている人との関係性、感情、思いのすれ違い。そんなことを描こう。

 話のイメージが出来上がってきたとき、テーマが決まりました。

「(利己的な意味ではなく)自分の幸せを追求できない奴は、誰も幸せにしない。死んだら、どんなに悔やんでも、何もできない」

 もうこのテーマだけでも重い話になることが決定したようなものですが、その主題を復讐にしたことで、さらに重くなりました。

 こってり系ラーメンと焼肉をセットで食べるようなものです。しかも食べ放題で。限界まで。もう翌日まで胃もたれすることが決定されたようなものです。

 ただ。

 この主題――復讐について、個人的に思うことがあるのです。

 作中にも書きましたが、この国の刑法は、とにかく犯罪者に甘い。そんな印象を一布は受けています。

 もう昭和~平成初期の話になりますが、日本中を震撼させた凄惨な殺人事件がありました。

 事件名等については様々な書籍が出ているので、ここでは特に触れません。事実についてのみ触れます。

 この事件の被害者は、一人でした。
 そして、日本において、殺したのが一人であれば(過去の犯罪も含めて)、死刑になることはまずありません(少なくとも一布は、その事例を知りません。知っている方がいたら教えてください)。

 その結果どうなったか。

 犯人達は、出所後、殺人ではないにしても新たな犯罪を犯しました。つまり、新たな被害者を生み出したわけです。

 ここで日本の司法や裁判の基準に触れると本が一冊出せるレベルの量になるので思い切り割愛しますが(最高裁判例とか大法廷とか色々書くことになるので)。

 一言。一布は、死刑賛成派です。

 理由は簡単。死刑になるべき者が死刑にならずに世に出ることで、新たな被害者が出るから。上記の事件など最たる例です。

 刑法をはじめとする法律が国民生活の平穏と利益のためにあるなら、その利益を害する者は廃除すべきだと考えています。

 この物語を例にしましょう。

 美咲が五味達の殺害を決意したキッカケは何だったか。たとえ洋平殺害の犯人として彼等が逮捕されたとしても、甘いとしか言いようのない刑罰しか下らないからです(彼等が十八歳未満ということもありますが)。

 当然のように、出所した五味による新たな被害者が出たことでしょう。こいつは反省などする奴ではありません。なんといっても、悪い意味での一布作品のスーパースターなので。

 美咲の発想は、国民の利益とはまったく関係ない発想です。しかし、法律の存在根拠とともに被害者意識を考えるなら、死刑は必要だと思います。

 ……こんな話をすると、復讐心はともかく、新たな被害者を生まないためだというなら終身刑でいいじゃないか、と死刑反対派の方に言われそうです。

 それもまた一つの正解だと思います。

 ですが、そこで考えるのが、受刑者の生活費はどこから出ているのかということです。

 はい、税金です。一布達社会人が、毎日汗水垂らして働いて稼いでいる給料から引かれる税金です。

 なんで苦労してまっとうに稼いでいる金を、死んだ方がいい奴等のために使うんだよ!? こちとら毎日、目を合せただけで殺意が湧いてくる上司と顔合わせて働いてんだよ! それでも不条理な殺人なんてしないで頑張ってんだよ!

 うん。ちょっと個人的な感想が入ってしまいましたね。最近、少しストレス過多(笑)

 とにかく一布は、自分が働いて稼いだ金をそんなことに使われたくないのです。

 そして、もう一つの死刑反対派の意見

「冤罪だったら取り返しがつかない」

 うん。そうだね。もし冤罪で逮捕された人を死刑にしたら、取り返しが付かないからね。

 ですが。そもそもなんですけど。

 なんで冤罪があることが前提なのでしょうか。それはつまり、確たる根拠もなく裁判所が逮捕令状を出し、確信もなく逮捕し、事実が判明していないのに死刑にすることを前提にしているということでしょうか。

 とはいえ、死刑反対派の方々を論破して正当性を訴えるつもりはありません。実際に、死刑が存在する国は、現在では圧倒的に少数となりました。

 国(司法)が、重犯罪者とはいえ人の命を奪う。確かに、重い内容です。

 ただ、それを行うことによって守られる利益があることも主張したいです。

 さて。

 この死刑談義。実はこれから語ることの前提なのです。

 本作の主題は復讐。

 最近ちまたで見かける復讐モノと言えば、よくある「ざまぁ」や「スカッと」です。

 糞みたいなクソ野郎が、最終的には散々な目に合ったり自爆して死んだりすることで、擬似的カタルシスを得る物語。

 そういった物語を否定などしません。一布もそういう作品を読んで、すっきりな気分になることがあります。昔の時代劇なんて、典型的な「ざまぁ」「スカッと」ですしね。

 ところで本作ですが。

 五味というクズ野郎が、最終的に滅多刺しにされてバラバラにされて池に沈められます。

 よくある復讐モノとしては、スッキリする場面に相当します。

 では、美咲が五味を殺す場面を見て、スッキリできたでしょうか。

 もしスッキリできてしまったなら、一布の力不足です。
 
 復讐を否定するつもりはなく、それどころか、復讐は一つの正義だと思っています。復讐されるまで自分の卑劣さを理解できない奴は、この世には多数います。

 でも、復讐を実行する人は、自身の手を汚すこととなります。本作では美咲に該当します。

 当然ながら、本作の洋平のように、復讐者が手を汚すことを悲しむ人もいる。

 復讐とは何か。悲しむ人がより少なくなるには、どうしたらいいのか。どうしようもなく残酷な現実があり、怒りを支えにしなければ生きられないとき、人はどうすればいいのか。

 すっきりではなく、そんな重さをこのシーンで感じていただけたなら、ちょっぴり自信がついたりします(笑)

 五味君が滅多刺し&バラバラ&池ポチャでスッキリされた場合は、一布に「まだまだだね」とか言ってニヤリと笑ってやってください。もっと精進できるように頑張ります。

 まあ、一布の力量はともかく。

 この国の法や社会が、理不尽な理由により悲しむ人が減る方向になってゆくことを願いつつ、この物語を締めたいと思います。

 ではでは。

 最後までお付合いいただき、本当にありがとうございます!

 PS.
 なお、本作の挿絵は、以前朗読の依頼を受けてくださった読み猫様にご提供いただいたものです。
 この場を借りてお礼申し上げますm(_ _)m
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