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番外編
過保護
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二人目ができてからというもの、恭介の心配事が増えてきたようで、紬に対して酷く過保護になった。
ふとした瞬間、紬が顔を上げると恭介と目が合う。
ごみ捨てに行こうとすれば、「走ってくる」と言ってナチュラルにゴミ袋を掴んで家を出ていく。
時には一人になりたくて、散歩にでも出かけようとすると「俺も行く!」とついてくる。
お風呂も、寝る時も、ずっと一緒。
別にそれが嫌なわけではない。
けれど少し……いや、割と結構、息苦しくて。
恭介が休みの日である今日も、紬とずっと一緒にいようとするので、いよいよ紬は彼の前に手を突き出した。
「暫く、ひとりがいいです」
「……」
恭介は口をあんぐり開けて間抜けな顔を晒しているが、そんなことより何より紬に言われた言葉を理解するのに時間がかかっているようで。
「な……なぜ……?」
そして理解をするとショックだったのか、悲しそうな表情をする。
紬は「うっ……」とまるで悪いことをしているかのような気分になりながら、恭介から視線を逸らした。
「あの……心配してくれるのは、嬉しいんだけど……」
「……俺が、執拗い?」
「……えっと……執拗いというか……あの……窮屈な、感じで」
恭介は『窮屈』という言葉に目を見張り、そして「ごめんね」と呟くとトボトボ紬から離れていった。
紬はその寂しげな背中を見て慌てて追いかける。
「違う、違うんだよ。嬉しいし、有難いんだよっ」
「ありがとう。でも確かに俺は君にべったりしてたと思うから……」
「ぅ……あの……たまに、一人で散歩に行ったりしたいなって思って……」
「うん」
彼に悲しんでもらいたいわけじゃない。
こういう風に自分の思いを伝えられるようになったのも、全部彼のおかげだから。
紬はそう思って必死に言葉を探す。
でも上手く見つけられなくて。
「俺の事、嫌いにならないで……」
紬はそう言って恭介の手を握る。
今度は恭介が焦る番で、慌てて「嫌うわけが無いだろ!?」と手を握り返す。
「君の言いたいことはわかるよ。あんまり過保護にならないでってことだろ?そう言われて君を嫌うなんて……そんなちっぽけな感情で君と番になったわけじゃない。」
恭介は眉を八の字にして紬を抱きしめる。
紬は唇をムっとさせて恭介の背中に手を回す。
「ごめんね、不安にさせるような態度取っちゃって」
「……ううん」
「ちょっと反省してたんだ。嫌いになんてならないよ。大好きだよ」
そう言って微笑んだ恭介に、紬は漸く安心して肩の力を抜く。
それから紬は時折一人の時間を堪能する事ができるようになる。
けれど一日の大半は愛しい息子と紬と共に穏やかな日々を過ごしたのだった。
ふとした瞬間、紬が顔を上げると恭介と目が合う。
ごみ捨てに行こうとすれば、「走ってくる」と言ってナチュラルにゴミ袋を掴んで家を出ていく。
時には一人になりたくて、散歩にでも出かけようとすると「俺も行く!」とついてくる。
お風呂も、寝る時も、ずっと一緒。
別にそれが嫌なわけではない。
けれど少し……いや、割と結構、息苦しくて。
恭介が休みの日である今日も、紬とずっと一緒にいようとするので、いよいよ紬は彼の前に手を突き出した。
「暫く、ひとりがいいです」
「……」
恭介は口をあんぐり開けて間抜けな顔を晒しているが、そんなことより何より紬に言われた言葉を理解するのに時間がかかっているようで。
「な……なぜ……?」
そして理解をするとショックだったのか、悲しそうな表情をする。
紬は「うっ……」とまるで悪いことをしているかのような気分になりながら、恭介から視線を逸らした。
「あの……心配してくれるのは、嬉しいんだけど……」
「……俺が、執拗い?」
「……えっと……執拗いというか……あの……窮屈な、感じで」
恭介は『窮屈』という言葉に目を見張り、そして「ごめんね」と呟くとトボトボ紬から離れていった。
紬はその寂しげな背中を見て慌てて追いかける。
「違う、違うんだよ。嬉しいし、有難いんだよっ」
「ありがとう。でも確かに俺は君にべったりしてたと思うから……」
「ぅ……あの……たまに、一人で散歩に行ったりしたいなって思って……」
「うん」
彼に悲しんでもらいたいわけじゃない。
こういう風に自分の思いを伝えられるようになったのも、全部彼のおかげだから。
紬はそう思って必死に言葉を探す。
でも上手く見つけられなくて。
「俺の事、嫌いにならないで……」
紬はそう言って恭介の手を握る。
今度は恭介が焦る番で、慌てて「嫌うわけが無いだろ!?」と手を握り返す。
「君の言いたいことはわかるよ。あんまり過保護にならないでってことだろ?そう言われて君を嫌うなんて……そんなちっぽけな感情で君と番になったわけじゃない。」
恭介は眉を八の字にして紬を抱きしめる。
紬は唇をムっとさせて恭介の背中に手を回す。
「ごめんね、不安にさせるような態度取っちゃって」
「……ううん」
「ちょっと反省してたんだ。嫌いになんてならないよ。大好きだよ」
そう言って微笑んだ恭介に、紬は漸く安心して肩の力を抜く。
それから紬は時折一人の時間を堪能する事ができるようになる。
けれど一日の大半は愛しい息子と紬と共に穏やかな日々を過ごしたのだった。
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