37 / 55
番外編
ひより
■
あれからしばらく。
時雨はちょっとしたチョコレートのお菓子と飲み物を用意して、仙波が来るのを待っていた。
気をつけて生活をしていたので、前のように汚すぎることはないと思われるが、やはり紬と生活をしていた頃のように整理整頓ができている訳では無い。
紬は時雨が仕事の間、家のことを全てしていてくれたので、紬が居なくなってようやく、彼がしていてくれたことに対しての有難みを知り申し訳なく感じている。
軽快な音がなる。
時雨はハッとして玄関に行きドアを開けた。
すると仙波が居てニコニコ笑顔のまま「こんにちは」と挨拶される。
「こんにちは。よろしくお願いします」
「こちらこそ、よろしくお願いします。」
仙波を家にあげる。
廊下を歩いてリビングに行くと、仙波が荷物を下ろした。
「コース契約してくださったと聞きました。ありがとうございます」
「いえ。なんせ片付けが苦手で、前に来たくださった時すごく綺麗にしてもらえたので、定期的に来てもらおうと思って……」
「……良かった。前回最後に性別の話しちゃったので、嫌がられてたらどうしようって実はちょっと気になってて」
時雨は少し驚いて目を瞬く。
どっちかと言うと、気にしないでと伝えたつもりだったのだが。
「俺の方こそ何か……嫌なこと言っちゃいましたかね。」
「あ、違うんです!これはもう、昔からの癖というか……。ごめんなさい。お気になさらないでください。」
仙波はそう言って笑う。
それから慌てたように「そういえば!」とバッグをゴソゴソし、中から名刺を取りだした。
「市谷さんのお陰で、名刺作って貰えたんです。コース契約初めてで……。」
「え……名刺って普通貰えるものじゃ……?」
「ぁ……それも、性別のせいで……。」
Ωはそれほどまでに差別されているのかと、時雨がなんとも言えない気持ちになった時、仙波はニッコリ笑った。
「改めまして、仙波柊晴です。よろしくお願いします」
「あ、市谷時雨です。」
時雨は仙波の名刺を受け取ってペコっと頭を下げる。
そして仙波は髪をキュッと結ぶ。
「じゃあ……えっと、今日もお片付けさせていただきますね」
「お願いします」
時雨は貰った名刺を眺めながらソファーに座った。
名刺ですら、Ωというだけで作って貰えないのか……。
あまりにも厳しい世の中だ。
それでも一生懸命働いている仙波を、時雨は同情に似た感情を抱え見つめていた。
あれからしばらく。
時雨はちょっとしたチョコレートのお菓子と飲み物を用意して、仙波が来るのを待っていた。
気をつけて生活をしていたので、前のように汚すぎることはないと思われるが、やはり紬と生活をしていた頃のように整理整頓ができている訳では無い。
紬は時雨が仕事の間、家のことを全てしていてくれたので、紬が居なくなってようやく、彼がしていてくれたことに対しての有難みを知り申し訳なく感じている。
軽快な音がなる。
時雨はハッとして玄関に行きドアを開けた。
すると仙波が居てニコニコ笑顔のまま「こんにちは」と挨拶される。
「こんにちは。よろしくお願いします」
「こちらこそ、よろしくお願いします。」
仙波を家にあげる。
廊下を歩いてリビングに行くと、仙波が荷物を下ろした。
「コース契約してくださったと聞きました。ありがとうございます」
「いえ。なんせ片付けが苦手で、前に来たくださった時すごく綺麗にしてもらえたので、定期的に来てもらおうと思って……」
「……良かった。前回最後に性別の話しちゃったので、嫌がられてたらどうしようって実はちょっと気になってて」
時雨は少し驚いて目を瞬く。
どっちかと言うと、気にしないでと伝えたつもりだったのだが。
「俺の方こそ何か……嫌なこと言っちゃいましたかね。」
「あ、違うんです!これはもう、昔からの癖というか……。ごめんなさい。お気になさらないでください。」
仙波はそう言って笑う。
それから慌てたように「そういえば!」とバッグをゴソゴソし、中から名刺を取りだした。
「市谷さんのお陰で、名刺作って貰えたんです。コース契約初めてで……。」
「え……名刺って普通貰えるものじゃ……?」
「ぁ……それも、性別のせいで……。」
Ωはそれほどまでに差別されているのかと、時雨がなんとも言えない気持ちになった時、仙波はニッコリ笑った。
「改めまして、仙波柊晴です。よろしくお願いします」
「あ、市谷時雨です。」
時雨は仙波の名刺を受け取ってペコっと頭を下げる。
そして仙波は髪をキュッと結ぶ。
「じゃあ……えっと、今日もお片付けさせていただきますね」
「お願いします」
時雨は貰った名刺を眺めながらソファーに座った。
名刺ですら、Ωというだけで作って貰えないのか……。
あまりにも厳しい世の中だ。
それでも一生懸命働いている仙波を、時雨は同情に似た感情を抱え見つめていた。
あなたにおすすめの小説
記憶の代償
槇村焔
BL
「あんたの乱れた姿がみたい」
ーダウト。
彼はとても、俺に似ている。だから、真実の言葉なんて口にできない。
そうわかっていたのに、俺は彼に抱かれてしまった。
だから、記憶がなくなったのは、その代償かもしれない。
昔書いていた記憶の代償の完結・リメイクバージョンです。
いつか完結させねばと思い、今回執筆しました。
こちらの作品は2020年BLOVEコンテストに応募した作品です
当たり前の幸せ
ヒイロ
BL
結婚4年目で別れを決意する。長い間愛があると思っていた結婚だったが嫌われてるとは気付かずいたから。すれ違いからのハッピーエンド。オメガバース。よくある話。
初投稿なので色々矛盾などご容赦を。
ゆっくり更新します。
すみません名前変えました。
言葉が通じない暴君皇帝の運命の番として召喚されました〜炎を鎮めたら冷徹な彼が甘々になりました〜
水凪しおん
BL
帰宅途中の夜道、突然の光に包まれた青年・アオイが目を覚ますと、そこは見知らぬ異世界の宮廷だった。
言葉も通じず、隔離された離宮に閉じ込められた彼が出会ったのは、ソラリア帝国を統べる皇帝・レオニダス。
強大な竜の血を引き、その力に肉体を焼き尽くされそうになりながら孤独に耐える冷徹なアルファ。
だが、特別な魔法を持たないはずのアオイには、彼の荒れ狂う魔力を静かに鎮める「不思議な波長」が備わっていた。
「触れるな」
お互いを傷つけることを恐れ、遠ざけようとする不器用な皇帝。
だが、アオイは苦しむ彼を見捨てられず、自ら灼熱の炎の中へと飛び込んでいく。
言葉の壁を越え、魂の波長が重なり合った時、冷徹な皇帝の態度は一変。
誰よりも優しく、独占欲に満ちた重すぎる溺愛が始まって――。
孤独な竜と、彼を癒やすただ一人のオメガ。
二人が真の「運命の番」となるまでの、切なくも温かい異世界救済ボーイズラブ。
十七歳の心模様
須藤慎弥
BL
好きだからこそ、恋人の邪魔はしたくない…
ほんわか読者モデル×影の薄い平凡くん
柊一とは不釣り合いだと自覚しながらも、
葵は初めての恋に溺れていた。
付き合って一年が経ったある日、柊一が告白されている現場を目撃してしまう。
告白を断られてしまった女の子は泣き崩れ、
その瞬間…葵の胸に卑屈な思いが広がった。
※fujossy様にて行われた「梅雨のBLコンテスト」出品作です。
僕の幸せは
春夏
BL
【完結しました】
【エールいただきました。ありがとうございます】
【たくさんの“いいね”ありがとうございます】
【たくさんの方々に読んでいただけて本当に嬉しいです。ありがとうございます!】
恋人に捨てられた悠の心情。
話は別れから始まります。全編が悠の視点です。
【完結】幼馴染から離れたい。
June
BL
隣に立つのは運命の番なんだ。
βの谷口優希にはαである幼馴染の伊賀崎朔がいる。だが、ある日の出来事をきっかけに、幼馴染以上に大切な存在だったのだと気づいてしまう。
番外編 伊賀崎朔視点もあります。
(12月:改正版)
8/16番外編出しました!!!!!
読んでくださった読者の皆様、たくさんの❤️ありがとうございます😭
1/27 1000❤️ありがとうございます😭
3/6 2000❤️ありがとうございます😭
4/29 3000❤️ありがとうございます😭
8/13 4000❤️ありがとうございます😭
12/10 5000❤️ありがとうございます😭
わたし5は好きな数字です💕
お気に入り登録が500を超えているだと???!嬉しすぎますありがとうございます😭
夢の中の告白
万里
BL
バレー部のムードメーカーで、クラスのどこにいても笑い声の中心にいる駆(かける)。好奇心と高いコミュニケーション能力を持つ彼は、誰とでもすぐに打ち解けるが、唯一、澪(れい)にだけは、いつも「暑苦しい」「触んな」と冷たくあしらわれていた。
そんな二人の関係が、ある日の部活帰りに一変する。
あまりの疲れに電車で寝落ちした駆の耳元で、澪が消え入りそうな声で零した「告白」。
「……好きだよ、駆」
それは、夢か現(うつつ)か判然としないほど甘く切ない響きだった。