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番外編

蒼太と洋哉

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 珍しくお腹がはち切れるそう。
 食事を終えてお店を出る。お酒も飲んだからかとても気分がいい。
 知らない間にまた手を繋いで歩いているのも、なんだか心地良かった。


「家まで送るよ。」
「大丈夫だよ。一人で帰れる。ヒロくんの家は反対方向でしょ?」
「でも蒼太の顔、お酒のせいでほんのり赤くなってるから、変な奴らに声掛けられるかもしれないよ。俺は嫌だな、そういうの。」



 眉を八の字にする彼に、胸がキュンとした。


「じゃあ……家まで送ってくれる?」
「もちろん、喜んで。」


 駅まで歩いて、いつもの電車に乗る。
 空いている席に座ると眠気が襲ってきて、頭がカクンカクンと揺れた。
 あと一駅、と言ったところでパッと目を覚ます。
 駅を確認しようと視線を彷徨わせていると「大丈夫?」と声を掛けられて驚いた。



「ヒロくん……ぁ、そっか。送ってくれてるんだ」
「うん。気持ちよさそうに寝てたけど……。まだ寝惚けてる?」
「ごめんね、もう起きた。」
「よかった。もう着くから寝ちゃだめだよ」
「うん」


 ふわふわ欠伸をして、次に着いた駅で降りる。
 手を引かれながら改札を通り、家まで向かう間は特に話はしなかった。



「蒼太、大丈夫?」
「うん。……星、全然見えないね。」
「星?見たいの?」


 空を見上げる僕を真似する彼。
 

「夜にたまに空を見た時に、星が見えるとちょっと嬉しくない?」
「うーん。普段あんまり見ないからな……」
「そっか」


 自宅について部屋の鍵をヒロくんに渡し、ドアを開けてもらっている最中、空を眺めていると酔っていると思われたのか彼に酷く心配されてしまった。
 部屋に入り、手を洗ってリビングの床に座る。


「蒼太、大丈夫そう?これ、水飲んでおいで。もし明日体調悪かったら困るだろうし」
「ありがとう」


 コップに水を入れて持ってきてくれた彼。受け取ったそれを勢いよく飲み干した。



「じゃあ俺は帰るね。お風呂入るなら気を付けるんだよ」
「何から何まで、ありがとうございます。ヒロくんも気を付けて帰ってね。」
「うん。あ、ねえ蒼太」
「んー?」


 隣に座った彼が、突然顔を近づけてくる。
 驚いて目を見張ると、ぎゅっと手を握られた。


「キスしてもいい……?」
「っ!」
「あ、まだ早い?」
「……ぅ、ううん、早く、ない……」


 そう言いつつも、心臓はドキドキとうるさく音を立てていて。
 視線を下げていると、頬を撫でられ、どんどん顔が近づいてきて、ギュッと目を瞑り息を止める。
 ちゅ、と微かに唇同士が触れて、すぐに離れた。
 思わずヒロくんの手を握る力が強くなってしまう。

 顔が離れてゆっくり目を開けると、ヒロくんの顔が真っ赤になっていた。
 それにつられて、僕も顔がぐっと熱くなる。


「あ、ありがとうございます。」
「……いえ、あの、こちらこそ。」


 何故かお礼を言われて、僕も言い返す。
 何だこれ、と思いながらも胸の中は幸せで満たされていた。
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