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第十八話

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とうとうミランとファリナは村へ到着した。今は昼である。



遠くを見ると以前アルグレンと訪れた時と同じように農夫が畑にいる。



「着いたわ。まずアルグレンを探さなきゃ」



とミランは意気揚々と歩きだすのでファリナは慌てて



「待ってよ。あたしその彼の特徴も知らないし、それにミランって顔知られてるのよね?」



ぴたりとミランは止まって



「髪は青緑よ」



「フーン。顔は?」



「顔?」



「そう、顔」



「顔は目が大きくて、優しそうで・・・」



「へぇ・・・」



ファリナはにやにやしはじめる。



「それから?」



ミランは嬉々としてアルグレンの特徴を思い出し始める。



「それに、少し日焼けしてて、くせ毛で・・・」



ゆっくりと体の特徴を答えるミランの顔はわずかに紅潮していてどこか声も高くなっている。



「体の方は?おなかとか。むきむき?」



そこまで聞かれてミランはハッとして



「い、今はそこ関係ないでしょっ!!」と大声で返す。



ファリナはシーっと人差し指を立てて顔を赤くしたミランに注意した。



「あなたが余計なこときくからでしょっ・・・!」



と小声で愚痴をこぼした。



「じゃああたしが一人でこの村を偵察してくるからさ。ミラはその辺に潜んでくれる?」



怒るミランを無視しファリナは改めて言う。



確かに、顔が知れているミランは隠れていた方がいいかもしれないとミランも同意した。



「そうね。それじゃあお願いするわ」



ファリナは十分程歩いてから村へ入るなり、近くを歩いていた農夫に向けて挨拶をした。



農夫は少し疲れた顔をしているが、ファリナをみると笑って挨拶を返してから



「旅人さんかい?」



「そう。宿を探してる。」



「じゃあ案内しよう」



二人は歩き、村の中央にある集会所らしき建物に到着した。



「ここでまってな」と言って農夫は去った。



ファリナはおとなしく座り、丸太で作られた壁の模様をぼーっと眺めていた。



農夫は村長のもとへ歩いた。



「村長、旅人が来ました。女一人です。」



畑で土をいじっていた村長に農夫は話しかける。



「そうか。では離れた小屋へ案内しなさい。」



「わかりました。」



農夫は下がり、戻っていった。



さてと村長は立ち上がり、その旅人に会うために土を払い、汗を拭いた。



ーーー



ファリナは案内された小屋へ入ると簡単なベッドと机と椅子があった。



「それじゃまた何かあったらたずねてくれ」と言って農夫は去った。



さてここまではミラから聞いた通りだ。しかし注意しろと言われていた金髪の少女・・・シャーロットがいない。



ベッドへ横になり、さてどうやって件の彼、アルグレンの場所を突き止めようか・・・とファリナは作戦を考え始めた。



ミラ曰く件の彼は村長らしき男の家に寝泊まりしていたらしい。



捕まっているならそこだという。



ならば一休みしたらその家に挨拶がてら行ってみよう。



助けるのなら深夜がいいだろう。



ファリナは二振りの剣のうち、包まれていた布を外し、神々しい光を放つ銀色の剣を抜き、その刀身を眺めた。



出し惜しみをすれば死ぬかもしれない。



再び鞘に戻した。



ファリナはベッドでだらだらと寝そべっていた。そのすぐそばに先ほどの銀色の剣を置いている。



やがて暗くなり始めるとコンコンという音が聞こえた。



「私の家で歓迎します。ぜひ旅のお話をお聞かせください。」



と村長が訪問した。



しかしファリナは話しかける村長をよそに、ドア越しに村長の後ろでたいまつを持った大男の方が気になった。



顔に古傷がある。後は暗くてよく見えないが目が農夫たちのそれとは異なる怪しさを感じていた。



「えぇ。いいですよ。とっておきの面白い話があるんですよ。あ、うまい酒あります?」



ファリナは大男に対する警戒心をおくびにも出さず、軽率そうな笑みと口調で応じた。



村長はファリナを案内し、大男は眉一つ動かさずそのあとを歩いた。



その腰の後ろには手斧が提げられていた。



ーーー



アルグレンはまどろみながら、目を覚ました。



シャーロットが身なりを整えている。



「・・・どこか行くのか?」



「はい。今夜はお客が来たので私も一緒に出迎えます。」



「そうか」



じゃあ今夜はゆっくり眠れそうだな。



シャーロットとの交尾する毎日に疲労困憊になっていたアルグレンは内心で喜んだ。



断るとシャーロットはむっと不機嫌になるからだ。



そうなると飯が減らされたり、変な味の食べ物を追加するなどの嫌がらせを後日受ける。



アルグレンはあくびをしてからもう一度眠り始めた。



俺みたいにならなきゃいいんだけどなと顔も知らぬ客の身を案じた。

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