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蝉羽夏音の誕生日
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皆が開いてくれた私の誕生会が終わった、帰り道。明日が休日という事もあって、そろそろお開きだと時計の針を見れば八時を過ぎていた。春の足音が聞こえてきたとはいえ、夜の冷え込みはまだまだ厳しい。暖かな部屋に慣れきっていた躰に冷えた夜の空気がかかり、ちょっとした風にも筋肉と皮膚が敏感に反応してしまう。
「まだまだ冷えるわね……」
吐く息こそ真冬のそれとは違うけれど、空の星は真冬と互角の美しさで。見上げた空には、闇に浮かぶ丸い月。
「満月ですかあ?」
私の左隣に並んでいた、立花さんが聞いてきた。
「いいえ、満月は明後日よ」
「そうなんですか? じゃあもっと丸くなるんですね」
納得したのか、私の言葉に頷く立花さんを見上げる。
「今夜は『静かの海』がよく見えますね」
……月に桂の樹が生えているというのは、中国の話だったかしら。ふと、それを思い出したのは、斜め上にある彼女の横顔が、あまりにも凛としていたからなのでしょうね。私と雪城さんが星の話をちょっとしつこいほど聞かせてしまった所為か、皐月さんは天体に関する知識を学校で習う以上の量を有していた。確かに彼女の言うとおり、今日の空と月はいつになく澄んでいる。
「先輩の誕生日をお祝いしているんですね、星もお月さまも」
そう言って笑う、そんな友人に私は苦笑を返すほかなかった。
「あの、静かの海ってなんですか? 月に海があるんですか?」
赤い髪の後輩の、無邪気な質問に寒さで強張っていた頬が緩むのがわかる。
「ええ。月には山脈も陸地も、海だってあるのよ。それらにはちゃんと一つ一つ名前が付いていてね、人の名前だったり、地球と同じ地名の名前だったりするの」
そう説明する私の手元には、大親友からのプレゼントの月面図。――月や星達がわざわざ祝ってくれているなんて驕りはないわ。でも、今日の空は決して忘れない。忘れたくない。自慢の仲間達と一緒に見上げた空だけは……。
Many happy returns of the day!
「まだまだ冷えるわね……」
吐く息こそ真冬のそれとは違うけれど、空の星は真冬と互角の美しさで。見上げた空には、闇に浮かぶ丸い月。
「満月ですかあ?」
私の左隣に並んでいた、立花さんが聞いてきた。
「いいえ、満月は明後日よ」
「そうなんですか? じゃあもっと丸くなるんですね」
納得したのか、私の言葉に頷く立花さんを見上げる。
「今夜は『静かの海』がよく見えますね」
……月に桂の樹が生えているというのは、中国の話だったかしら。ふと、それを思い出したのは、斜め上にある彼女の横顔が、あまりにも凛としていたからなのでしょうね。私と雪城さんが星の話をちょっとしつこいほど聞かせてしまった所為か、皐月さんは天体に関する知識を学校で習う以上の量を有していた。確かに彼女の言うとおり、今日の空と月はいつになく澄んでいる。
「先輩の誕生日をお祝いしているんですね、星もお月さまも」
そう言って笑う、そんな友人に私は苦笑を返すほかなかった。
「あの、静かの海ってなんですか? 月に海があるんですか?」
赤い髪の後輩の、無邪気な質問に寒さで強張っていた頬が緩むのがわかる。
「ええ。月には山脈も陸地も、海だってあるのよ。それらにはちゃんと一つ一つ名前が付いていてね、人の名前だったり、地球と同じ地名の名前だったりするの」
そう説明する私の手元には、大親友からのプレゼントの月面図。――月や星達がわざわざ祝ってくれているなんて驕りはないわ。でも、今日の空は決して忘れない。忘れたくない。自慢の仲間達と一緒に見上げた空だけは……。
Many happy returns of the day!
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