その奇蹟に喝采を(4/6更新)

狂言巡

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蒼崎聡俊の誕生日

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「「「「「Trick or Treat!」」」」」

 部室の扉を開けた途端、この言葉が耳を劈く。一瞬怯んで、つい後ろに下がってしまったのだが。よくよく見ると。そこには皐月の姿が。しかもご丁寧に仮装コスプレまでしていらっしゃる。

「アオちゃんハローハロー!」
「……ハローじゃねぇよ……」

 入口に立ち塞がる、猫耳とその尻尾を付けた皐月を押しのけて部室に足を踏み入れた。するとそこには……。

「……部長……」

 眉間に皺を思いっ切り寄せた、如何にも苦渋の表情を浮かべてる神名月部長は。襟がピンと立った黒いマントを羽織っていた。いわゆる吸血鬼か?

「……止められなかったんですね……」

 その言葉にコクリと頷く。ちらりと部室の隅に目をやると、春朝と露草先輩の餌食に梅桜と雪城が標的にされてた。哀れなり。内心同情してると、ポンと肩を叩かれる。振り向くと斜め上からひょうきんな笑みを浮かべた人面カボチャ。ジャック・オ・ランタン。それを被った陽炎先輩は、白っぽい浴衣を着て、柳の下に出てきそうな格好をしている。何つーか……和洋折衷だ。
 そんな人間がごちゃごちゃしてる部室の中を、やっと思いで自分のロッカーに辿り着く。扉を開けた瞬間。後ろから大量に破裂音。驚いて振り向くと同時に。頭上から赤・白・青の星条旗のような色のテープが雨のように降り注ぐ。見れば。嬉しそうに炎天堂が持つその手には。(一つ目小僧だった)小型のバズーカ砲のような黒々とした物体が。

「「「「ハッピーハロウィン&ハッピーバースデー! 蒼崎聡俊!」」」」

 カラフルな視界の向こうにいるたくさんの笑顔、とっても楽しそうで。気付くと自分も笑ってた。

「はい。ハロウィンだからお菓子の詰め合わせだよ~! お誕生日おめでとうソウくん!」
「はいどうぞ」

 水色のワンピースに白いエプロン姿の如月(不思議の国のアリス?)とトンガリ帽子に黒い上着を羽織った梅桜(魔女だな絶対)が手渡してくれた大きな紙袋。――ハロウィンと自分の誕生日なんて関係ないと思っていたけど。そうでもないみたいだ。

「蒼崎君。はい、おめでと」

 さっき彼らの餌食になっていた雪城から手渡されたのは。(中華っぽい上着と半透明のお札がついた帽子……キョンシーか?)鎖にぶら下げた大きな懐中時計。

「コレかけろって?」

 コクコクと頷く友人と先輩達。カメラもご丁寧に準備されてる。用意周到だな……。

「これもこれも! アオちゃん!」

 皐月から手渡された兎の耳付きカチューシャと。仮装した皆で。フレームに収まった十五歳の誕生日。
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