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朝食
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自分の旦那達は揃いも揃って、世間一般の生活サイクルからかけ離れた体内時計を持っている。仕方がない、平和な日常とはその裏で駆けずり回る誰かがいる事で保たれているのだ。
なので朝の八時を過ぎているにも関わらず、起きだしてくる気配はない。
昨晩(正確には三時間前)に兄弟仲良くたらふく酒を飲んで騒いで酔い潰れているのもある。今頃それぞれの部屋は見るも無惨な死屍累々だ。そのおかげで自分はこうして爽やかな朝を迎えられているわけだが。
その代わりといっては何だが、旦那様達のために朝食を作って差し上げようじゃないか。単に黒猫が食べたい気分だったのもある。
紆余曲折あって現在社長夫人の地位にいるが、元は本当に特筆すべき箇所のない一般家庭の子女である。
色んな種類のトーストを一度に作るのは楽しい。だが当然一人では食べ切れない。
こういう時集団生活は便利だと独り言ちながら、黒猫は食パンの袋を棚から取り出して並べた。ちなみに四枚切りと六枚切りの二種類だ。パンの厚さの好みは日替わり。黒猫は一枚、夫達は一人二枚。
冷蔵庫の中を漁ると、それなりに食材が見つかった。
「あ、玉葱とベーコンの炒め物の余りがある……」
こうやって常備しておくとそのまま一品にもなるし、スープやおかずにも応用できるでしょ! と世鷹が言っていた。作り置き料理は三男の十八番だ。
「ゆで卵ある……サンドイッチいいな……」
リオンが得意なサンドイッチ。茹で卵はボイルしかできないと言い張る長男の傑作だ。
「ポテサラ……今日は乗せて食べてみよう」
長男はここ最近、茹で作業から応用した料理を学習し、己のスキルを開拓している。黒猫は粗く潰して胡椒とマヨネーズで和えた物が一番好きである。本来ならば次男直々に手掛けられる卵サンドをリクエストしたいところだが、今日は違う使い道で美味しく頂こうとしよう。
「あ、チョコ増えてる……溶かしてミルクに入れようかな……」
リオンはその器用な手先と優秀な頭脳を働かせる原動力の為に甘味を好む。それでもあの体系と容貌を維持しているのだからすごい。
「この赤いのキムチ? ……あ、ピザを焼いた時のピザソースの余りね」
ある日突然、キッチンに面した庭の隅に窯が誕生した。作ったのは三男で、長兄と次兄は自分の趣味の影響かと思ったようだが、元ネタに心当たりがありすぎて特定は不可能だった。
好きな具材を好きなだけ乗せたパンの群れは、次々と大口を開けるガスオーブンへと放り込まれ、トースト機能でこんがりと焼かれた。白いばかりのしっとりふわふわのパンがカリっと焼き目のついた多種多様なトーストへと変身してゆくのは、純粋に楽しい。
二階からドアが開閉される音がする。さあ、一番最初に起きてくるのは誰だろう。
なので朝の八時を過ぎているにも関わらず、起きだしてくる気配はない。
昨晩(正確には三時間前)に兄弟仲良くたらふく酒を飲んで騒いで酔い潰れているのもある。今頃それぞれの部屋は見るも無惨な死屍累々だ。そのおかげで自分はこうして爽やかな朝を迎えられているわけだが。
その代わりといっては何だが、旦那様達のために朝食を作って差し上げようじゃないか。単に黒猫が食べたい気分だったのもある。
紆余曲折あって現在社長夫人の地位にいるが、元は本当に特筆すべき箇所のない一般家庭の子女である。
色んな種類のトーストを一度に作るのは楽しい。だが当然一人では食べ切れない。
こういう時集団生活は便利だと独り言ちながら、黒猫は食パンの袋を棚から取り出して並べた。ちなみに四枚切りと六枚切りの二種類だ。パンの厚さの好みは日替わり。黒猫は一枚、夫達は一人二枚。
冷蔵庫の中を漁ると、それなりに食材が見つかった。
「あ、玉葱とベーコンの炒め物の余りがある……」
こうやって常備しておくとそのまま一品にもなるし、スープやおかずにも応用できるでしょ! と世鷹が言っていた。作り置き料理は三男の十八番だ。
「ゆで卵ある……サンドイッチいいな……」
リオンが得意なサンドイッチ。茹で卵はボイルしかできないと言い張る長男の傑作だ。
「ポテサラ……今日は乗せて食べてみよう」
長男はここ最近、茹で作業から応用した料理を学習し、己のスキルを開拓している。黒猫は粗く潰して胡椒とマヨネーズで和えた物が一番好きである。本来ならば次男直々に手掛けられる卵サンドをリクエストしたいところだが、今日は違う使い道で美味しく頂こうとしよう。
「あ、チョコ増えてる……溶かしてミルクに入れようかな……」
リオンはその器用な手先と優秀な頭脳を働かせる原動力の為に甘味を好む。それでもあの体系と容貌を維持しているのだからすごい。
「この赤いのキムチ? ……あ、ピザを焼いた時のピザソースの余りね」
ある日突然、キッチンに面した庭の隅に窯が誕生した。作ったのは三男で、長兄と次兄は自分の趣味の影響かと思ったようだが、元ネタに心当たりがありすぎて特定は不可能だった。
好きな具材を好きなだけ乗せたパンの群れは、次々と大口を開けるガスオーブンへと放り込まれ、トースト機能でこんがりと焼かれた。白いばかりのしっとりふわふわのパンがカリっと焼き目のついた多種多様なトーストへと変身してゆくのは、純粋に楽しい。
二階からドアが開閉される音がする。さあ、一番最初に起きてくるのは誰だろう。
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