三色の日常(1/19更新)

狂言巡

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炬燵

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 居間に入ると、炬燵の住人が増えていた。火志磨は仰向けで、ポワロ(一時期的に預かっている親戚の猫)は板で熟睡中、銀色の猫はふにゃあと一つ欠伸して、炬燵布団の中から這いだしてくる。

「お邪魔してるよあずきクン」
「カチューシャちゃん、なにやってるの」

 あずきはちょうど、試験の為に弟の短期家庭教師になってくれた叔母夫婦にお礼のお菓子を届けに行って帰ってきたところだ。雪がちらつく外から戻り、あー寒かったと炬燵の布団をめくれば、いた。いつの間に入り込んだのか。呆れ果てて呟けば「コタツ好き……」と言いながらこちらの腰に両腕を回してくる。そうしてそのまま、あずきの膝の上に頭をのせた。炬燵から出てきたのはつまり、膝枕をさせる為か。あずきはやれやれと首を振る。

「炬燵で寝てると汗かいて風邪引いちゃうよ」
「今のところは平気だよ」
「平気じゃないよ、あずきクン。ホラ」

 肩を揺するとその腕を掴まれた。そして甘ったるく呼ばれる。

「頭、撫でて?」

 ――ああ、全く私の親友は、可愛いな。あずきはため息をつきたいのを堪えて、銀色の猫に言われるがまま頭を撫でる。こう甘やかしてしまうのがいけないのか。しかし甘やかしたくなるのだから仕方がない。躰と頭だけ成長してしまった子供に甘えられると、胸の奥にこう、じんわりとした温かいものがこみ上げてくる。つまりはそういう事だ。仕方がない。

「炬燵は温かくていいよね」
「日本の素晴らしい文化の一つさ。あずきクンもコタツは好きかい?」
「もちろん」

 やがてカチューシャから小さな寝息が聞こえてきて、銀色の髪に覆われた頭を撫でる手も止まった。寝息は二つになる。大中小の猫が三匹がすやすやと眠り、外で犬が吠えていた。一時間後、タイマー式の炬燵で電源は無事オフになったとはいえ、危ないでしょうとおかずのお裾分けに訪れた友人に怒られた。
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