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お泊まり会/藤と早蕨
紫が家に泊まるからってよ、別に、別にな、妙な期待なんざしちゃいなかったさ。……今のは少し嘘になるか。そりゃ俺だって健全な高校生(次の春には大学生)、あわよくばあんな事やこんな事を、したいと望まなかったわけじゃない。可愛い年下の恋人が同じ屋根の下にいるんだ、そんなの男としちゃ当然だろ。春先まで中学生だったのお前の今の行動は、下心しか持ってない野郎にとっちゃ、拷問以外の何でもねえんだ。
「……ん……」
隣から小さな声が漏れ聞こえて、早蕨はぎくりと肩を弾ませた。いくら大きいサイズとはいえシングルベッド、ポメラニアン柄のシーツ(紫が懸賞で当てた)の上に二人並んで横になっている。いくら紫が身長の割に細身でもこのベッドではちょっと寝苦しい。注意していないと床に落ちてしまいそうだ。いっそ床に落ちて気を失い、そして気付けば朝だったという事になって欲しいと、早蕨は床を見ながら切に願った。ちらりと隣の紫に目を向けると、彼女は心地よさそうな寝息を立てている。幸せそうな寝顔を見ると起こす事も出来ず、早蕨は小さく息を吐いた。
愛しい人と同じベッドの上、触れられないというのはかなり厳しい。今にも持ち上がりそうな右手を左手で必死に抑え、我慢を続ける早蕨だった。ただでさえ悪い人相が、酷い事になっている。子供がひきつけを起こしそうなレベルだ。そもそも同じベッドで眠るという事態が間違っている。どうしてこんな事になったのかといえば。数時間前の事を思い返した。
早蕨が紫と遊ぶ時の内容は、大抵はテレビゲームである。今日も二人並んでゲームをした。そのゲームの選択こそが、間違いだったのかもしれないと、早蕨は今になって悔やんでいる。寝る前にやったそれは、所謂ゾンビが出てくるゲームだった。本気で怖がる紫をからかって遊んでいたツケが、今更になって出てきたというわけである。いつものようにシューティングゲームだけにしておけばよかった。
テレビ画面と早蕨の茶々に思うままに怯えさせられた紫は「怖くて一人で寝られない」みたいな事をぼやいた。そして早蕨が冗談で「何なら一緒に寝てやるぜ?」と言ったところ、紫はコクコクと何度も頷いてしまった。前言撤回など出来る空気ではなく、早蕨本人としても出来るならしたくなく、とにかくそういう心境で、今のこの辛い状況に陥っているというわけだ。
「……さわ、らび、さ……」
名前を呼ぶな抱きつくな寝息を立てるな隣で寝るな! そう捲くし立てられたら、どんなに楽だっただろう。寝るにも寝られないこの状況で、幸せと苦痛の狭間の中、早蕨は眠れない夜を過ごすのだった。
翌朝。
「おはようございます、早蕨さん」
「……おお、はよー……」
「……どうしたんですか、目に隈が……」
「……ゲームのやり過ぎでな……お前はよく眠れたか?」
「はい、しっかり睡眠と摂る事ができました。あ、夢にゾンビが出てきて危なかったんですが、ライトマンが来てやっつけてくれましたっ。流石は朝アニメのヒーローです」
「……そりゃ、よかったな……」
自慢げに夢の内容を語る紫の隣で、早蕨は更にどっと疲れを感じるのだった。とりあえず、その話の中に自分の名も出てきたから、それで今は報われた気分を少しでも味わっておこう。
「……ん……」
隣から小さな声が漏れ聞こえて、早蕨はぎくりと肩を弾ませた。いくら大きいサイズとはいえシングルベッド、ポメラニアン柄のシーツ(紫が懸賞で当てた)の上に二人並んで横になっている。いくら紫が身長の割に細身でもこのベッドではちょっと寝苦しい。注意していないと床に落ちてしまいそうだ。いっそ床に落ちて気を失い、そして気付けば朝だったという事になって欲しいと、早蕨は床を見ながら切に願った。ちらりと隣の紫に目を向けると、彼女は心地よさそうな寝息を立てている。幸せそうな寝顔を見ると起こす事も出来ず、早蕨は小さく息を吐いた。
愛しい人と同じベッドの上、触れられないというのはかなり厳しい。今にも持ち上がりそうな右手を左手で必死に抑え、我慢を続ける早蕨だった。ただでさえ悪い人相が、酷い事になっている。子供がひきつけを起こしそうなレベルだ。そもそも同じベッドで眠るという事態が間違っている。どうしてこんな事になったのかといえば。数時間前の事を思い返した。
早蕨が紫と遊ぶ時の内容は、大抵はテレビゲームである。今日も二人並んでゲームをした。そのゲームの選択こそが、間違いだったのかもしれないと、早蕨は今になって悔やんでいる。寝る前にやったそれは、所謂ゾンビが出てくるゲームだった。本気で怖がる紫をからかって遊んでいたツケが、今更になって出てきたというわけである。いつものようにシューティングゲームだけにしておけばよかった。
テレビ画面と早蕨の茶々に思うままに怯えさせられた紫は「怖くて一人で寝られない」みたいな事をぼやいた。そして早蕨が冗談で「何なら一緒に寝てやるぜ?」と言ったところ、紫はコクコクと何度も頷いてしまった。前言撤回など出来る空気ではなく、早蕨本人としても出来るならしたくなく、とにかくそういう心境で、今のこの辛い状況に陥っているというわけだ。
「……さわ、らび、さ……」
名前を呼ぶな抱きつくな寝息を立てるな隣で寝るな! そう捲くし立てられたら、どんなに楽だっただろう。寝るにも寝られないこの状況で、幸せと苦痛の狭間の中、早蕨は眠れない夜を過ごすのだった。
翌朝。
「おはようございます、早蕨さん」
「……おお、はよー……」
「……どうしたんですか、目に隈が……」
「……ゲームのやり過ぎでな……お前はよく眠れたか?」
「はい、しっかり睡眠と摂る事ができました。あ、夢にゾンビが出てきて危なかったんですが、ライトマンが来てやっつけてくれましたっ。流石は朝アニメのヒーローです」
「……そりゃ、よかったな……」
自慢げに夢の内容を語る紫の隣で、早蕨は更にどっと疲れを感じるのだった。とりあえず、その話の中に自分の名も出てきたから、それで今は報われた気分を少しでも味わっておこう。
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