ニンギョウ怪談(4/2更新)

狂言巡

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人形

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 大喧嘩した時、元カノの顔面にソースをぶちまけた事がある。当然破局。しかしアレ以降、顔にソースがかかった人形につけ回されてる。元カノの持ち物だとして解決を試みたいが、アイツ人の形をした物が大嫌いだったんだよ……。 





「おれ日本人形って苦手なんだよな、暗いとこだと猫みたいに光るからよくビビらされてよ」
「は?」





 撮影の小道具として作った人形、いい出来だと自信はあったが、持ち帰えるのは嫌で廃墟に放置した。十数年後、息子が自由研究で製作中の人形がアレに似ていて、血が争えないと内心苦笑していたら息子が言った。

「どうして独りぼっちしたの、可哀想だよ」





 親戚が夜逃げして、家を整理する事になった。ある部屋には大量の玩具が箱に入ったまま放置されていた。一番上にあった人形が上等だったのでつい、魔が差し手に取る。

「ママ」

 どう見ても布製なのに、人間に触れたような温かさがあった。





 見知らぬ人形が床に落ちていた。同僚の一人が胴体を踏みつける。上司が腹を抱えて苦しみだした。彼に視線が集中したので、また別の同僚が鋏を手にして人形を手に取った事に気付いていない。
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