異世界から帰ってきましたが(8/5更新)

狂言巡

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約束と秘密2/天狗(仮)と元聖女

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「絶対に秘密だよ」

 そう言ったヤツが、まるっと約束ごと忘れてどうするんだと男は頭を抱えた。





 クロエ(今世の名前はヒカルだが)の口からあの山の名前が零れた時、目の前が真っ赤になった。一瞬アイツらが気づいたのかと思ったが、それは外れたようだ。アイツらに少しでも動きがあれば、気づかぬはずが無いし、妖精達が何も言ってこないはずが無い。ただの、嫌な偶然だった。やっと見つけたのに。結納もすませていないのに、ちょっかいをかけられてたまるか。
 あれだけ救国の聖女だのとついて回っていたくせに、魔物の侵攻を放逐した後はまるで最初からいなかったかのように世界の復興に励んでいる、薄情者なんかに。聖女と主従関係ではなく、あくまで協力という形を取っていた所為か。ヒカルが彼らの前から姿を消しても、全て覚えていた。だからこそ、絶望と忿怒と、喪失感を腹の底に滾らせた。
 そしてまず同じ時期にいなくなった妖精達を探し出し、締め上げて何とか事情を吐き出させた。ヒカルは現世に帰りたがっていた、だが柱達は元の世界に帰す気はなかった。一計を案じた聖女の相棒は、まず柱の執着を身代わり人形に封じ込めた。それを決して壊さぬようにどこかに隠してくれと言ってヒカルに渡し、現世へ帰した。
 柱が思い出していないようなので封印は解呪されていないようだが、もう何百年の前の事なので身代わり人形がどうなっているかは渡り鳥でも把握できない。それはともかく、問題はヒカルの友人の親が買ったという山だ。あの山はヒカルが脱出してきた際に使った井戸があった。とうに百年は経っているので、もう井戸は埋められている可能性が高い。それでもヒカルの世界とこちらの世界を繋ぐ場所には変わりはない。
 妖精達にあそこに元聖女ヒカルは近づかせないでくれとさんざん忠告されている。それは忌々しいと臍を噛むハヤテとて同感だった。欲などいくら押し殺したところで途切れなく湧き出てくるのだから……。
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