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【春と夜】愛の分岐
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「彼女を殺すのはアタシだよ」
春宵が愛しげに目を細める。先週起きた抗争で負った傷でところどころ引き攣って醜いはずの指先は、何故か酷く美しいモノのように感じられた。かくりと表情を変えぬままに朔夜が首を傾げると、手の内の人形の顔に器用に化粧を施していた春宵がふふふと軽やかな声を立てておかしそうに笑う。春宵の手の内にある人工の生首は、彼が愛する女とよく似ていた。正確に言うならば、春宵の愛する女の顔を模した人形だ。その出来栄えは素晴らしい。
一体どこの誰の姿を模しているのかを、朔夜は現時点では知らない。特に興味も無いので訊ねようとも思わないが、あまり趣味のいい行為でない事は十六夜の微妙な表情で知る事が出来た。
「春宵様は、」
「うん?」
「その首が本物であろうとも、きっと同じように愛しげに扱うのでしょう」
十六夜がそう言うと春宵は紫色に染められた長い睫を幾度か瞬かせ、それはそれは可笑しげに笑うと手の内で完成に近づいていた人形に愛しげに口付けた。赤い唇が血の気を失い乾いた肌にそっと触れる。それは有機物から無機物への戯れにしか過ぎぬのに酷く淫靡な香りがして、近くで作業をしていた十六夜は頬を赤く染め目を反らした。他の部下はこの部屋には今いない。
「その解釈は少し違うねぇ、サクヤ」
「そうですか?」
「コレが本物の彼女なら、私はもっと大切に扱うさぁ」
美しい顔をした人間の皮一枚で隔てた奥に、獰猛な獣が腹を空かせて叫んでいる。訴える飢えは生命の危機だ。不要だと思っていた執着は、ふいに与えられた欠片によってその価値を覆されてしまった。
「そうですか、お熱い事で」
無感動に朔夜が呟くと、春宵はまたケタケタ可笑しそうに声を上げて笑った。そこに冗談の色は無い。
(なんて可哀想な御方なのかしら!)
春宵が愛しげに目を細める。先週起きた抗争で負った傷でところどころ引き攣って醜いはずの指先は、何故か酷く美しいモノのように感じられた。かくりと表情を変えぬままに朔夜が首を傾げると、手の内の人形の顔に器用に化粧を施していた春宵がふふふと軽やかな声を立てておかしそうに笑う。春宵の手の内にある人工の生首は、彼が愛する女とよく似ていた。正確に言うならば、春宵の愛する女の顔を模した人形だ。その出来栄えは素晴らしい。
一体どこの誰の姿を模しているのかを、朔夜は現時点では知らない。特に興味も無いので訊ねようとも思わないが、あまり趣味のいい行為でない事は十六夜の微妙な表情で知る事が出来た。
「春宵様は、」
「うん?」
「その首が本物であろうとも、きっと同じように愛しげに扱うのでしょう」
十六夜がそう言うと春宵は紫色に染められた長い睫を幾度か瞬かせ、それはそれは可笑しげに笑うと手の内で完成に近づいていた人形に愛しげに口付けた。赤い唇が血の気を失い乾いた肌にそっと触れる。それは有機物から無機物への戯れにしか過ぎぬのに酷く淫靡な香りがして、近くで作業をしていた十六夜は頬を赤く染め目を反らした。他の部下はこの部屋には今いない。
「その解釈は少し違うねぇ、サクヤ」
「そうですか?」
「コレが本物の彼女なら、私はもっと大切に扱うさぁ」
美しい顔をした人間の皮一枚で隔てた奥に、獰猛な獣が腹を空かせて叫んでいる。訴える飢えは生命の危機だ。不要だと思っていた執着は、ふいに与えられた欠片によってその価値を覆されてしまった。
「そうですか、お熱い事で」
無感動に朔夜が呟くと、春宵はまたケタケタ可笑しそうに声を上げて笑った。そこに冗談の色は無い。
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