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身代わり花嫁の捕り物譚/商人と傭兵
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とある島に上陸したレッドウッドが事前に連絡を取っていたコロンを訪ねると、島に数軒ある宿に居なかった。彼女の船員に聞いても無駄そうなので、直接島の中を探す。手当たり次第住人に声をかけるが、全員が目を逸らして逃げていく。胸騒ぎを覚えつつ尚も彷徨っていると、ようやく答えてくれる者に行き会った。
「あん人はおらの娘に身代わりに浜さ行ったよ。化け物が居るんだ」
近海に棲む怪物が、漁村を荒らさない代わりに十年に一度、娘を要求してきたという。生贄は花嫁衣装を身に着け、彼の者に喰われに行くのだ。今年は男の娘の番だったが、偶然現れたコロンが身代わりを申し出たそうだ。彼女が見知らぬ他人の為にアッサリ犠牲になるはずはなく、おそらくその化け物を捕らえるか倒す算段なのだろう。
レッドウッドはコロンの安全面については左程心配していなかった。ただ、自分も見た事のない彼女の花嫁姿をどこぞの化け物が拝んでいるの想像するだけで血が沸騰する。無理矢理場所を聞き出し、海辺に向かった。やがて小さな浜と、独特で美しい刺繍の入ったベールを被る女の後ろ姿が見えてくる。
そして、海から奇妙な生物が現れた。人のような形をしているが、全体的に黒ずんで月の光を受けて鈍く光っている。長い舌がいやらしく口元を舐めた。コロンが立ち上がるより早く、レッドウッドがスキル【重力の変換】を解放すると化け物に飛び掛かる。生贄に手を伸ばすところだった相手は、横の崖に吹っ飛んだ。海に逃げられないように、退路を断って更に攻撃を続ける。
「レッドさん! 駄目ですよ、殺しては」
コロンが割って入った。化け物を踏みつけながら、やっと彼女の姿を正面から見る。この地方の民族衣装であろう手の込んだ神秘的な服は、彼女によく似合っていた。足裏に加える重力を増やしながら、称賛の言葉を贈る。
「誰だ畜生め! 祟るど!」
化け物はしゃがれた声を上げてもがいた。
「出来るものならやってみろ」
レッドウッドは冷たく吐き捨てて構えをとる。すぐに怖気づいた化け物が震える。
「堪忍してやぁ。嫁コやるからよう」
「その取引には応じられんな。コイツは元から俺のモノだ」
いよいよ重力を集めて強化した掌術で貫こうとした腕を、コロンは掴んだ。
「やめなさいって言ってるでしょ。これ以上邪魔したらお別れですよ」
仕方なく足を退けた。これ幸いと化け物が海に逃げ出す。その躰に、コロンは網の形をした魔法具を投げて捕らえた。
「誰も見逃してあげるなんて言ってませんけど」
「ひゃあああ! 見逃してくれぇ! こんなおとろし女、今まであった事ないで!」
命乞いしたり怒ったり忙しいヤツである。コロンはその言葉に答えずに続けた。
「貴方に残された道は二つです。今此処で死ぬか、私の配下になるか」
化け物はガタガタ震えながら、コロンに忠誠を誓い、クモとカラス商会の新入りとして加わったのだった。彼はあっさり皆に馴染み、コロンへの恐れは崇拝へと変わっていく。しかしレッドウッドの事はいつまでも怖いらしい。おかげで脅せばコロンへ取り次いでくれるので、レッドウッドにとっても大変有り難い存在となった。
「あん人はおらの娘に身代わりに浜さ行ったよ。化け物が居るんだ」
近海に棲む怪物が、漁村を荒らさない代わりに十年に一度、娘を要求してきたという。生贄は花嫁衣装を身に着け、彼の者に喰われに行くのだ。今年は男の娘の番だったが、偶然現れたコロンが身代わりを申し出たそうだ。彼女が見知らぬ他人の為にアッサリ犠牲になるはずはなく、おそらくその化け物を捕らえるか倒す算段なのだろう。
レッドウッドはコロンの安全面については左程心配していなかった。ただ、自分も見た事のない彼女の花嫁姿をどこぞの化け物が拝んでいるの想像するだけで血が沸騰する。無理矢理場所を聞き出し、海辺に向かった。やがて小さな浜と、独特で美しい刺繍の入ったベールを被る女の後ろ姿が見えてくる。
そして、海から奇妙な生物が現れた。人のような形をしているが、全体的に黒ずんで月の光を受けて鈍く光っている。長い舌がいやらしく口元を舐めた。コロンが立ち上がるより早く、レッドウッドがスキル【重力の変換】を解放すると化け物に飛び掛かる。生贄に手を伸ばすところだった相手は、横の崖に吹っ飛んだ。海に逃げられないように、退路を断って更に攻撃を続ける。
「レッドさん! 駄目ですよ、殺しては」
コロンが割って入った。化け物を踏みつけながら、やっと彼女の姿を正面から見る。この地方の民族衣装であろう手の込んだ神秘的な服は、彼女によく似合っていた。足裏に加える重力を増やしながら、称賛の言葉を贈る。
「誰だ畜生め! 祟るど!」
化け物はしゃがれた声を上げてもがいた。
「出来るものならやってみろ」
レッドウッドは冷たく吐き捨てて構えをとる。すぐに怖気づいた化け物が震える。
「堪忍してやぁ。嫁コやるからよう」
「その取引には応じられんな。コイツは元から俺のモノだ」
いよいよ重力を集めて強化した掌術で貫こうとした腕を、コロンは掴んだ。
「やめなさいって言ってるでしょ。これ以上邪魔したらお別れですよ」
仕方なく足を退けた。これ幸いと化け物が海に逃げ出す。その躰に、コロンは網の形をした魔法具を投げて捕らえた。
「誰も見逃してあげるなんて言ってませんけど」
「ひゃあああ! 見逃してくれぇ! こんなおとろし女、今まであった事ないで!」
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「貴方に残された道は二つです。今此処で死ぬか、私の配下になるか」
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