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贈り物/商人と魔術師
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膝で眠る魔犬を囁くように歌を口ずさむコロンに、【深淵の魔術師】ジギタリスは尋ねた。聞かれていた事に気付いた彼女は恥ずかしそうに頬を染めて笑った。
「昔、祖母が眠る時歌ってくれた子守唄なんです。題名は教えてもらうのを忘れて、解らないんですけど。好きなんです。この歌」
そう話すコロンから目を離さず、ジギタリスは何か考えているようだった。
それから数ヶ月後。物資補給の都合上で停留していた島に傀儡師が率いる商業船がやって来た事を知り、ある物を手にして彼女の船団が泊まっているホテルへと訪れた。ラウンジで寛いでいたらしいコロンは、既に見慣れた太客と化した男の姿に気付き、笑顔を浮かべ「こんにちは」と会釈する。彼女の目の前まで近づくと、その手に持ったオルゴールをテーブルに静かに置いた。
「素敵なオルゴールですね。誰かにプレゼントですか?」
「ああ。お前に渡しに来た」
きょとんと目を丸くしたコロンにそれ以上は何も言わず、数回ネジを回してからオルゴールの蓋を開いた。小さなそれが奏でだした音楽に、更に彼女は目を見張る。
「この歌……」
小さく呟いたコロンの声を、ジギタリスは聞き逃さなかった。ラウンジ内は、偶然にもジギタリスと以外誰も居ない。静かな空間を可愛らしい音色が包み込む。
「題名は『星に届け』と言うらしい」
オルゴールが曲を終えると、ジギタリスは呟いた。その声音はどこか照れを帯びたもので、コロンにも気づけた。隠そうとも思わなかった感情なのだろう。くすりと笑ったコロンに何も言わず、ただいつものポーカーフェイスで彼女を見つめていた。
「わざわざ調べて下さったんですか?」
「柄にもない事をした」
「このオルゴールも、私の為に?」
「店主が怯えて、なかなか話が進まなかった」
「ありがとうございます」
再度コロンは笑う。そして、テーブルに置かれたオルゴールを指先で撫でてから大事そうに手に取った。視線が完全にオルゴールに向かっている彼女は、ジギタリスが僅かに浮かべた笑みに気付かない。
「昔、祖母が眠る時歌ってくれた子守唄なんです。題名は教えてもらうのを忘れて、解らないんですけど。好きなんです。この歌」
そう話すコロンから目を離さず、ジギタリスは何か考えているようだった。
それから数ヶ月後。物資補給の都合上で停留していた島に傀儡師が率いる商業船がやって来た事を知り、ある物を手にして彼女の船団が泊まっているホテルへと訪れた。ラウンジで寛いでいたらしいコロンは、既に見慣れた太客と化した男の姿に気付き、笑顔を浮かべ「こんにちは」と会釈する。彼女の目の前まで近づくと、その手に持ったオルゴールをテーブルに静かに置いた。
「素敵なオルゴールですね。誰かにプレゼントですか?」
「ああ。お前に渡しに来た」
きょとんと目を丸くしたコロンにそれ以上は何も言わず、数回ネジを回してからオルゴールの蓋を開いた。小さなそれが奏でだした音楽に、更に彼女は目を見張る。
「この歌……」
小さく呟いたコロンの声を、ジギタリスは聞き逃さなかった。ラウンジ内は、偶然にもジギタリスと以外誰も居ない。静かな空間を可愛らしい音色が包み込む。
「題名は『星に届け』と言うらしい」
オルゴールが曲を終えると、ジギタリスは呟いた。その声音はどこか照れを帯びたもので、コロンにも気づけた。隠そうとも思わなかった感情なのだろう。くすりと笑ったコロンに何も言わず、ただいつものポーカーフェイスで彼女を見つめていた。
「わざわざ調べて下さったんですか?」
「柄にもない事をした」
「このオルゴールも、私の為に?」
「店主が怯えて、なかなか話が進まなかった」
「ありがとうございます」
再度コロンは笑う。そして、テーブルに置かれたオルゴールを指先で撫でてから大事そうに手に取った。視線が完全にオルゴールに向かっている彼女は、ジギタリスが僅かに浮かべた笑みに気付かない。
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