とある高台夫婦の事情(5/25更新)

【悲報】同期の恋【ドン引き】

　犬居はデカい溜め息を吐いてから、現社長兼かつての同窓の説得を試みた。

「磯尾……お前が誰と結婚しようがお前の自由だけど断られたらそこで諦めろよ。大人なんだから」
「何言ってんだ、まだ脈はある」
「ハ？」
「今まで告白した時もプロポーズした時も、紗々波さんは一度も『嫌』だって言ってない！　「何で？」とは言われてるけどノーじゃない！　まだ俺の想いを信用されてないだけだ！　俺は諦めない！」
「何そのキモイ理論マジ引く……っつうか「頭大丈夫？　病院行け」みたいな反応リアクションされてる時点で実質お断りされてんだろーが！」

　残念過ぎるポジティブな言葉を発する声音は情熱的であるのに、所有権を主張する執着と他の男を遠ざけたい独占欲が見て取れる。犬居は強い眩暈がしたし頭も胃もジクジク痛い。遅咲きの恋とは、こんな風に人を変えてしまうのかと戦慄した。