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神隠しif その弐
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「正直、後悔してるんですよ」
そう、女学生は懺悔した。
「だって、あんな事になるなんて思わなかった。自分達はただ、その……」
支離滅裂になっている事に気付いたのか、彼女は順を追って話し始めた。
自分が通う学校の近くの森の奥には、小さな神社がある。誰が管理しているのか判らない。故に親と教師に露見さえしなければ不法侵入として怒られる心配もなく、そこに行って帰ってくるというのが肝試しの定番になるくらいには。その日、友人達と其処に肝試しに行く事になった。しかし、土壇場になって自分達だけでは怖くなり、人数を増やすためにクラスメイトの一人も誘った。読書家の彼女は超常現象に詳しいらしく、頼りなると思ったのだ。彼女も快諾してくれた。
そして週末の夜、自分達はその森に入ったのだ。森の中は当然、照明などなくて不気味で、今にも出そうな雰囲気があった。
しかし、神社の方は違った。綺麗だったのだ。それが逆に不気味だった。木造の壁は傷一つなく、瓦も欠ける事も無く揃っており、草は全て抜き取られ、砂利は綺麗に敷かれていた。自分達はその神社の周りを探索する事にした。神社の周りには何にもありはしなかったし、起こらなかった。拍子抜けして帰る事にした。その時に気付いた。クラスメイトがいない事に。今まで側にいたのに急にいなくなって。ずっとすぐ近くに居たのに。パニックを起こした自分達は怖くなって逃げた。薄情な行為だという自覚はある。
「でも、もしも自分達もって考えたら、怖くて、怖くて……」
その日は、一睡も出来なかった。翌日、クラスメイトは何食わぬ顔で学校に来ていたので驚いた。何があったのか、どこにいたのか質問攻めにした。クラスメイト曰く、気になるものを見つけて自分達からはぐれた事、そこを男の子に助けてもらった事など彼女らしく落ち着いて丁寧に説明してくれた。最後に「ごめんなさい」と謝ってきた。
少女漫画みたいな展開に呆気にとられ、そして安心した。異変が起きたのは放課後だった。クラスメイトとは家が近所で、当然帰り道も一緒だった。しかし彼女は反対方向に帰って行った。普段から真面目でほとんど寄り道なんてしないのに。不思議に思って聞いた。
「彼に、会いに行くんよ」
何でも、昨日助けてくれた男の子に会いに行くのだとか。その顔は見た事ないくらい晴れやかな笑顔で、まさに恋する乙女という感じだった。次の日もクラスメイトは学校に来ていた。でもどこか上の空な雰囲気だった。そして、必ず反対方向に帰る。「彼と駄弁りに」必ずクラスメイトはそう言って帰っていく。
そんな事が数回続いた頃、家にいると電話があった。学校からだった。彼女が家に帰ってないが何か知らないか。そんな内容だった。クラスメイトの言葉をそのまま先生に伝えた。反対方向に帰って行ったと。すると先生は驚いたように私に言い返した。彼女がいなくなったのは三日前、あの神社に行った日から。
「正直、自分でも何言っているのか解らないけど……ここまでが私が話せる事です」
クラスメイトはまだ見つかってないという。
「え、いなくなる前に彼女に変わった事はなかったか? ……そうですね……あ、」
目が変わったように見えた。クラスメイトの目の色は日本人らしい黒色だったはずなのに、あの日以来片目だけ違った気がした。眼鏡をかけているし、あまりちゃんと見てないから判らないけど……。だって、普段からあんまりお喋りする仲じゃなかったから。ちゃんと話したのだって、あの日が初めてだった。それならば、どうしてわざわざ誘ったのか。
「……その、噂を確かめたかったです。あの神社に嫌いな子を連れてったら不幸になるってやつ」
それを確かめたかっただけです! 女学生は叫ぶように本音を吐露した。だってあの子、ちょっと可愛くて本をたくさん読むから頭が良いんだって先生から依怙贔屓されて、しかもA組の田中君に告白されたのに振ったとか、大人しそうに見えて何か喋ったら上から目線で調子乗ってるっていうか、だから……。
「でも、今は反省してます! あの噂が本当だと思わなかったしっ、本当ですよ! だからっ……あれ? あなたのめ、」
――こんにちは、ナデシコ神社のヌシだよ。アタシの事を「神様」なんて言うやつもいるねぇ。そうだ、あの神社はアタシの縄張りの一つなんだ。そんなアタシは、最近恋をした。相手は夜空色の髪と目を持った人間の少女だ。神社にやって来た娘っ子達の中で少し浮いているように見えた一人にな。一目惚れしたアタシはその子を連れ去った。そして、無理は承知で夫婦になって欲しいとプロポーズした。もちろん、断られたら一旦帰して、彼女が寿命を終えた時に再び迎えに行くつもりだった。
「ワタシがここに連れて来られた理由が判ったんで、良いですよ。そのおかげで貴方と出会えましたしね」
彼女は嬉しそうに笑って、頷いてくれた。早速、アタシは彼女の事を更に知る為に、片目を借りた。目の色が違って見えたのはその所為だ。いろいろ怖い目に遭ったら反省するだろうかと思ったが、更生の見込みはないようだった。だから今度はアタシが出てやったんだ。
そこで知ったのは、気に食わない相手を連れてったら不幸になるって噂。風評被害にも程があるよぉ。アタシは、良き願いには良き結果を、悪しき願いには悪しき結果を届けるだけ。だから不当な理由でアタシのところにくると、その願いは相手じゃなくてそいつ自身に降りかかるんだよ。……こんな風に、ねぇ。
「あの、終わりました?」
アタシが贈った簪を付けた彼女の髪が靡き、緑と黒の両目にアタシが映る。アタシに見初められたばっかりに、もう彼女はこの世界にはいられない。けど、不思議とこっちの方がしっくり来るんだよねぇ。
「終わったぜ。野暮用に待たせて悪いな。お清ちゃん、これでアンタはアタシの花嫁だ」
「どうでしょうか」
「おい嘘だろ」
「冗談ですよ。改めてよろしくお願い致します、旦那様?」
「ああ、こちらこそ」
――次のニュースです。本日未明、○県△市のナデシコ神社境内で女性の遺体が発見されました。女性は市内の高校に通う茨戸紗那さん十六歳と判明。彼女の周囲では数名の女子高生が行方不明になっており、警察は……――
そう、女学生は懺悔した。
「だって、あんな事になるなんて思わなかった。自分達はただ、その……」
支離滅裂になっている事に気付いたのか、彼女は順を追って話し始めた。
自分が通う学校の近くの森の奥には、小さな神社がある。誰が管理しているのか判らない。故に親と教師に露見さえしなければ不法侵入として怒られる心配もなく、そこに行って帰ってくるというのが肝試しの定番になるくらいには。その日、友人達と其処に肝試しに行く事になった。しかし、土壇場になって自分達だけでは怖くなり、人数を増やすためにクラスメイトの一人も誘った。読書家の彼女は超常現象に詳しいらしく、頼りなると思ったのだ。彼女も快諾してくれた。
そして週末の夜、自分達はその森に入ったのだ。森の中は当然、照明などなくて不気味で、今にも出そうな雰囲気があった。
しかし、神社の方は違った。綺麗だったのだ。それが逆に不気味だった。木造の壁は傷一つなく、瓦も欠ける事も無く揃っており、草は全て抜き取られ、砂利は綺麗に敷かれていた。自分達はその神社の周りを探索する事にした。神社の周りには何にもありはしなかったし、起こらなかった。拍子抜けして帰る事にした。その時に気付いた。クラスメイトがいない事に。今まで側にいたのに急にいなくなって。ずっとすぐ近くに居たのに。パニックを起こした自分達は怖くなって逃げた。薄情な行為だという自覚はある。
「でも、もしも自分達もって考えたら、怖くて、怖くて……」
その日は、一睡も出来なかった。翌日、クラスメイトは何食わぬ顔で学校に来ていたので驚いた。何があったのか、どこにいたのか質問攻めにした。クラスメイト曰く、気になるものを見つけて自分達からはぐれた事、そこを男の子に助けてもらった事など彼女らしく落ち着いて丁寧に説明してくれた。最後に「ごめんなさい」と謝ってきた。
少女漫画みたいな展開に呆気にとられ、そして安心した。異変が起きたのは放課後だった。クラスメイトとは家が近所で、当然帰り道も一緒だった。しかし彼女は反対方向に帰って行った。普段から真面目でほとんど寄り道なんてしないのに。不思議に思って聞いた。
「彼に、会いに行くんよ」
何でも、昨日助けてくれた男の子に会いに行くのだとか。その顔は見た事ないくらい晴れやかな笑顔で、まさに恋する乙女という感じだった。次の日もクラスメイトは学校に来ていた。でもどこか上の空な雰囲気だった。そして、必ず反対方向に帰る。「彼と駄弁りに」必ずクラスメイトはそう言って帰っていく。
そんな事が数回続いた頃、家にいると電話があった。学校からだった。彼女が家に帰ってないが何か知らないか。そんな内容だった。クラスメイトの言葉をそのまま先生に伝えた。反対方向に帰って行ったと。すると先生は驚いたように私に言い返した。彼女がいなくなったのは三日前、あの神社に行った日から。
「正直、自分でも何言っているのか解らないけど……ここまでが私が話せる事です」
クラスメイトはまだ見つかってないという。
「え、いなくなる前に彼女に変わった事はなかったか? ……そうですね……あ、」
目が変わったように見えた。クラスメイトの目の色は日本人らしい黒色だったはずなのに、あの日以来片目だけ違った気がした。眼鏡をかけているし、あまりちゃんと見てないから判らないけど……。だって、普段からあんまりお喋りする仲じゃなかったから。ちゃんと話したのだって、あの日が初めてだった。それならば、どうしてわざわざ誘ったのか。
「……その、噂を確かめたかったです。あの神社に嫌いな子を連れてったら不幸になるってやつ」
それを確かめたかっただけです! 女学生は叫ぶように本音を吐露した。だってあの子、ちょっと可愛くて本をたくさん読むから頭が良いんだって先生から依怙贔屓されて、しかもA組の田中君に告白されたのに振ったとか、大人しそうに見えて何か喋ったら上から目線で調子乗ってるっていうか、だから……。
「でも、今は反省してます! あの噂が本当だと思わなかったしっ、本当ですよ! だからっ……あれ? あなたのめ、」
――こんにちは、ナデシコ神社のヌシだよ。アタシの事を「神様」なんて言うやつもいるねぇ。そうだ、あの神社はアタシの縄張りの一つなんだ。そんなアタシは、最近恋をした。相手は夜空色の髪と目を持った人間の少女だ。神社にやって来た娘っ子達の中で少し浮いているように見えた一人にな。一目惚れしたアタシはその子を連れ去った。そして、無理は承知で夫婦になって欲しいとプロポーズした。もちろん、断られたら一旦帰して、彼女が寿命を終えた時に再び迎えに行くつもりだった。
「ワタシがここに連れて来られた理由が判ったんで、良いですよ。そのおかげで貴方と出会えましたしね」
彼女は嬉しそうに笑って、頷いてくれた。早速、アタシは彼女の事を更に知る為に、片目を借りた。目の色が違って見えたのはその所為だ。いろいろ怖い目に遭ったら反省するだろうかと思ったが、更生の見込みはないようだった。だから今度はアタシが出てやったんだ。
そこで知ったのは、気に食わない相手を連れてったら不幸になるって噂。風評被害にも程があるよぉ。アタシは、良き願いには良き結果を、悪しき願いには悪しき結果を届けるだけ。だから不当な理由でアタシのところにくると、その願いは相手じゃなくてそいつ自身に降りかかるんだよ。……こんな風に、ねぇ。
「あの、終わりました?」
アタシが贈った簪を付けた彼女の髪が靡き、緑と黒の両目にアタシが映る。アタシに見初められたばっかりに、もう彼女はこの世界にはいられない。けど、不思議とこっちの方がしっくり来るんだよねぇ。
「終わったぜ。野暮用に待たせて悪いな。お清ちゃん、これでアンタはアタシの花嫁だ」
「どうでしょうか」
「おい嘘だろ」
「冗談ですよ。改めてよろしくお願い致します、旦那様?」
「ああ、こちらこそ」
――次のニュースです。本日未明、○県△市のナデシコ神社境内で女性の遺体が発見されました。女性は市内の高校に通う茨戸紗那さん十六歳と判明。彼女の周囲では数名の女子高生が行方不明になっており、警察は……――
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