壺中日月長(3/14更新)

狂言巡

文字の大きさ
8 / 11

もしもしさん

しおりを挟む
 ぷるる……ぷるる……ガチャッ。

「――こんにちは、もしもんさん。貴方に質問したくて電話をかけました」





 とある小学校の近くには古い公衆電話があった。現在では既に電線は切られており、本来の機能は失っている。はずなのだが。特定の時間に特定の番号をかけると繋がるらしい。繋がる先は「もしもしさん」というお化けだ。幽霊か妖怪ははっきりしないが、どんな質問でも答えてくれるという。
 この「もしもしさん」に電話を掛ける時は、必ず守らなければいけないルールが二つあった。一つは「もしもしさん」に問いかける質問は一人につき一つだけ。二つ目は、極稀に「もしもしさん」は質問とは全く関係のない事を答えてくるが、否定したり別の質問をしてはいけない事。もしこのルールをどちらか一つでも破ったら異世界に連れていかれるとか、魂をとられるとか、自分が「もしもしさん」になるとか、その辺りは曖昧だった。
 倭文子しづこは友人達を誘って「もしもしさん」に電話を掛けにいった。人より少し欲張りな彼女は「もしもしさん」にどうしてもいくつか質問がしたかった。倭文子はクラスメイトに後でアイスを奢るから、これこれこいう質問をしろと約束させた。他の友人達と違い、完全に数合わせの付き合いでやってきたクラスメイトはあっさり承諾した。せっかちな倭文子は一番最初に電話をかけ、早速質問した。若い女の声が答えた。

「あんたのお母さんの名前はサダコっていうんだね!」

 倭文子は絶句した。自分の母親の名前は華弥子かやこだ。「もしもしさん」でも間違える時があるのだろうか。首を傾げながら、受話器を戻した。全員が電話をかけ終った後、最後に電話をかけたクラスメイトを問い質した。

「今日はお家に帰らない方がいいよ、だって」

 またもや、自分が頼んだ質問とは関係のない答えだった。当ての外れた倭文子はクラスメイトを嘘つきと八つ当たりして、誰よりも早く帰った。





 家に帰ると、女の人が家の廊下に立っていた。倭文子に兄はいるが姉はいない。

「こんにちは、倭文子ちゃん」

 うつむいていた女の人が振り向いた。全く見覚えのない顔で、胸と顔が真っ赤に染まっている。

「私は偵子。貴女の本当の母親よ」

 握手を求めるように差し出された手の先にあったのは――。

「さあ、ママと一緒にいきましょうね」

 倭文子の視界は赤く弾けた。





「あーあ、お清ちゃんの友達らしいからサービスしてあげたのになー」

 百目女はガチャンと受話器を戻して、部屋を出た。主人が家に帰ってくる時間帯だったからだ。

「お清ちゃ~ん、知りたい事があったらあたしに何でも聞いてねー!」





 数日後、一人の女子生徒が行方不明になった。「もしもしさん」の噂は廃れる事なく、むしろ畏怖と好奇心を集めて伝えられていったそうだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ

BL
鍛えられた肉体、高潔な魂―― それは選ばれし“供物”の条件。 山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。 見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。 誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。 心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】

絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。 下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。 ※全話オリジナル作品です。

意味がわかると怖い話

井見虎和
ホラー
意味がわかると怖い話 答えは下の方にあります。 あくまで私が考えた答えで、別の考え方があれば感想でどうぞ。

処理中です...