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おにぎり
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「どうやって三角にするんだ?」
ふざけて貸したフリル付きエプロンが意外に似合ってしまった唐猫は、手を米粒まみれにしながら困り顔をしている。
「ギュッと握るだけじゃ駄目だよ、こう、優しく包み込むように……」
カヲルが実演してみせても、力加減が難しいのか白米が長い指の間からボロボロ溢れてしまっていた。
「塩は手につけた?」
「うん、ほらばっちり」
「それはちょっとつけすぎかな……もう一回見てて」
硝子の器に張った水に手をつけ、塩を少量手に広げる。保温したままの炊飯器からご飯を掬い、左手に乗せた。ほぐした鮭を適量ご飯の上に乗せて、包み込むように軽く握る。そして三角になるように指の関節を曲げて、ギュッギュッと結ぶ。ポイントは力を込めすぎず、緩めすぎない、絶妙な力加減だ。最後に海苔を巻けば完成。できたてを唐猫の口元に持っていけば悔しそうな顔をしながら一口齧っていた。
「……美味しいからまた悔しい」
「意外とおにぎり握るの苦手な人っているんだよね。あっ、ラップ使おうよ。だいぶ簡単になるよ。お椀使って振ってみる?」
「それも面白そうだけど、今日はカヲルさんと同じように手で作りたい」
美青年は口元に米粒を付けながら駄々をこねる。お米も有限なのでそろそろ折り合いをつけてほしい。
「解った、とりあえずこのおにぎり食べてしまって。もう一回だけね」
「うん……」
むぐむぐと鮭おにぎりを咀嚼する人気ブロガーは、とことん不服そうだった。自分で上手くできないのが余程悔しいのだろう。
結局お皿(カヲルお気に入りの、猫がお尻を向けているデザインだ)の上には不恰好なおにぎりが二つと、それなりに三角になったおにぎりが二つ並ぶ事になった。鮭フレーク、塩昆布、卵のふりかけ、昨日の野菜炒めの残り。どんな形でも、愛はたっぷり詰まっている。カヲルは不恰好なおにぎりを手にとってかぶりついた。
ふざけて貸したフリル付きエプロンが意外に似合ってしまった唐猫は、手を米粒まみれにしながら困り顔をしている。
「ギュッと握るだけじゃ駄目だよ、こう、優しく包み込むように……」
カヲルが実演してみせても、力加減が難しいのか白米が長い指の間からボロボロ溢れてしまっていた。
「塩は手につけた?」
「うん、ほらばっちり」
「それはちょっとつけすぎかな……もう一回見てて」
硝子の器に張った水に手をつけ、塩を少量手に広げる。保温したままの炊飯器からご飯を掬い、左手に乗せた。ほぐした鮭を適量ご飯の上に乗せて、包み込むように軽く握る。そして三角になるように指の関節を曲げて、ギュッギュッと結ぶ。ポイントは力を込めすぎず、緩めすぎない、絶妙な力加減だ。最後に海苔を巻けば完成。できたてを唐猫の口元に持っていけば悔しそうな顔をしながら一口齧っていた。
「……美味しいからまた悔しい」
「意外とおにぎり握るの苦手な人っているんだよね。あっ、ラップ使おうよ。だいぶ簡単になるよ。お椀使って振ってみる?」
「それも面白そうだけど、今日はカヲルさんと同じように手で作りたい」
美青年は口元に米粒を付けながら駄々をこねる。お米も有限なのでそろそろ折り合いをつけてほしい。
「解った、とりあえずこのおにぎり食べてしまって。もう一回だけね」
「うん……」
むぐむぐと鮭おにぎりを咀嚼する人気ブロガーは、とことん不服そうだった。自分で上手くできないのが余程悔しいのだろう。
結局お皿(カヲルお気に入りの、猫がお尻を向けているデザインだ)の上には不恰好なおにぎりが二つと、それなりに三角になったおにぎりが二つ並ぶ事になった。鮭フレーク、塩昆布、卵のふりかけ、昨日の野菜炒めの残り。どんな形でも、愛はたっぷり詰まっている。カヲルは不恰好なおにぎりを手にとってかぶりついた。
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