青春チャンプルー(4/1更新)

狂言巡

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花車と酢漿草2

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 五時間目の授業というのは、体育などの一部を除き、必然的に眠くなってくるもんである。もう暑いといえる時期だというのに、坂の上に建てられている四季学園の教室には、爽やかな風がいい感じに入ってくるから尚更だ。オレもその例外ではなくうとうとしていた。 
 ――ビリリ……。
 すると、どこからか紙を引き裂くような音して、オレの意識は万全に戻った。こっそり辺りを見回してみるが、生憎とそんな些細な音を気にする人間はオレ以外居ないようだ。完全に起きているか眠気と格闘しながら黒板に向かっている。あれ、気の所為か? 首を捻ったその時。 
 ――パサリ。
 俺の席の近くに、小さく畳まれた紙片が落ちてきた。 

「ん?」

 不審に思い、そっと拾い上げた。教壇でひたすらご自慢のウンチクがふんだんに混ざった授業内容を喋り続ける英語担当の教師に見つからないよう、そっと机の下で広げてみた。

「…………!」 

 ゴッツウン。 
 紙片に書きこまれた文字を解読した瞬間、オレはイイ音を立てて机に突っ伏すしかなかった。周りのクラスメイトが何事だと言わんばかりに一斉にこっちを見て、ついでに隣の席で爆睡中だった夏空が起きたのがわかったが、今のオレには顔を上げることなんてできるはずもなく。

「ハザクラクーン、気分が悪いなら早めに保健室に行きなさいネー」

 見事に(オレにとってはイイ方向に)勘違いをしてくれた先生に手を振るのが精いっぱいだった。一気に熱が集中した頬、というか顔に冷たい机が気持ちよくて、ますます離れられない。オレの情けない行動も、既に授業終了まで十分を切っているから問題はないはずだ。 
 ――パサリ。
 またやってきた紙片。さすがに二回目になると驚く気にもなれない。謎なんて全然残ってない、犯人は、お前だ! 

『目は覚めた?』

 コトの元凶はいかにもそうですと雰囲気がドヤ顔。今はそのポーカーフェイスがちょっと羨ましい。できるだけ顔を上げずに、犯人――青葉の席を見た。目が合った瞬間、にんまりと口の端だけで笑われる。こんこんチクショーめ!

『オ レ も だ よ』

 もうやけっぱちなまま口パクで伝えてやった。するとアイツは器用に片眉だけ上げた後、うつむいて声もなく笑っていた。その様子が結構ツボに入ってしまって、オレは慌てて前を向いた。――最初に降ってきた紙片は、大事にポケットの中へ。

『だ い す き』

 もう何度も言ったし、言ってくれた言葉。それでも、形に残るものだから。 ――たとえ小さな紙切れ一枚でも、オレの宝物になるんだ。
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