青春チャンプルー(4/1更新)

狂言巡

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心酔カタルシス

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「暑いから、トンネル潜っていきませんか?」

 そう言い出したのはジェラールの方だった。電車や高速道路で見るようなトンネルとは違って、長身のジェラールが腕を伸ばせば天井に触れられそうなくらいの、コンパクトなものだった。それだけに潜った時、二人を縮こまらせてしまうような妙な圧迫感がある。まだ昼なのに、トンネルに入った途端、ひんやりとした空気を感じる。そして、かずらの視界が数秒かちかちかと点滅すると、ゆっくりその薄暗さに慣れていく。先に目が慣れたのか、ジェラールが手を引く。

「俺、結構早く目が慣れる方で。かずちゃんは、目が慣れるのに時間かかるタイプみたいですね」

 話しかけながらジェラールは嬉しそうに笑う。傍から見ても解る、目が白黒としていた様子が可愛らしくて仕方が無かったのだ。トンネルの距離はそう長くは無い。至る所に刻まれている落書きを目で追いながら、ゆっくりと歩いていく。

「俺らも書いていきます? 相合傘」

 何故かこういう場所には、相合傘の落書きが目立つ。趣味の悪いスプレーの殴り書きではなく、石か何かで一生懸命刻んだのだろう、微笑ましい悪戯。しかし、かずらにとっては自分の名前を刻むという事は恥ずかしい行為でもあったし、公共の物に落書きするのは気が引ける。

「冗談ですよ」

 もちろんそんな真面目な彼女の心境などジェラールはお見通しであったから、すぐに優しく自分の提案を却下したのだった。短いトンネルの終息ゴールは直ぐ其処。トンネルに向かって、明るい日差しが真っ直ぐ伸びている。

「何だ、もう終わりかぁ」

 トンネルの外に出ると、眩しいくらいに瞳の中に大量の光が入り込んできた。今度は薄暗闇から、光の中へ。またかずらの視界は、光に慣れる為にまたチカチカと点滅を始めた。

「やっぱり、慣れるの時間掛かるんですね」

 ふっと、ジェラールが笑ったのを感じると、ふわりと唇に何かを押し付けられた。いくらか光を遮断するように目の前にジェラールの顔が現れてキスをされたのだという事が理解わかった。まだ数回しか交わしてないキスに慣れていなくて、かずらは思わず手で自分の唇を覆ってしまった。そして、また嬉しそうに笑う恋人。まだ目が慣れておらず、彼の顔の輪郭しか捉える事が出来なくてかずらは残念に思った。

「あ、今度は海に行って、砂浜に相合傘書きませんか? それだったら、どんなに大きくても誰にも迷惑かかりませんよ」

 太陽の眩しさだけじゃない何かに、かずらは更にくらりとしてしまった。
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