徒し世を駆けろ(5/20更新)

狂言巡

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お誘い攻防戦

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『今日お祭り行こら!』

 たった一言と顔文字だけのメールがiPhoneに届いていた。日曜日の朝の六時半だぞ。従妹の渚は、一体こんな時間に何をしているのかと思った。ラジオ体操とか? 夏休みに入って、お盆が済んだ頃。特に面白いテレビもイベントもやっていない。あっても野球だが、有功いさおにとってさほど興味は惹かれない。普段と変わらないと云ったらそうなる。休日は寝るに限るという有功からしてみれば、従妹は不思議な存在だった。
 そして今の時刻は十二時半。二度寝どころか三度寝四度根を繰り返した結果、見事に六時間もこのメールを放置していた事になる。流石にヤバいとつい先程まで夢の世界だった頭を無理やり活動させ、メールを返した。

『行く』

 絵文字も何もない、渚より短いメール。別に行きたくないではない。むしろ行きたい。だって渚からの誘いだから、例え先約があっても、なるべく優先したい。暫らくしてiPhoneが震えた。きっと彼女からだ。

『じゃー五時に有功くんちに迎えに行くから、それまでには準備しといてなぁ』

 受信メールを見て思わず顔がニヤついてしまった。この部屋に有功以外の誰かが居たら「キモい」と言うかもしれないが、そんな野暮な指摘をするヤツはいない。そして、別に言われても今の有功なら凹む事はないだろう。

「だってこれってデートだろ……? デートでしかない……!」

 そう思うとまた顔が緩む。早く五時にならないかと思いつつデートの準備をするた為に有功は浴室がある一階へと向かった。
 数時間後、約束どおり五時になる十数分前にの家に迎えに来た渚の後ろに、何食わぬ顔でスタンバっている渚の後輩を見てテンションが一気に下がったのは言うまでもない。
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