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餃子【同棲中】
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家の中に入った途端、肉とごま油の香ばしい香りが鼻先を擽った。
「帰ったぞ」
のっそりとリビングの扉の影から躰を半分出すと、キッチンの中でフライパンと格闘していたあずきが慌てたように顔を上げた。
「あっ、火志磨君、お帰りなさい……時間、見誤ってしまったわ」
ぶちぶちと溢れる小言は、じゅうじゅうと何かを炒めるフライパンの音にかき消されてゆく。生姜とニンニク、肉の匂いのトリプルパンチに、それまで浮かびもしなかった食事の存在が脳内で急速に肥大してゆく。
物欲しげな無表情で見つめていた火志磨に気づいたのか、あずきは悪戯っ子のように笑ってフライパンに被せた蓋を開けた。
「今日は餃子。明日休みだからいいでしょ」
「……カチューシャもお前も、本当にマメだよな」
「こだわりが強くて面倒臭いのは自覚してるわ」
羽も美しく焼き上がった餃子は二種類。ノーマルと大葉とエビが入っている。どちらも大層美味しい。
「いつ帰ってこれられるから判らないから、カチューシャちゃんの分はタッパーに詰めて冷凍してあるわ」
そう言いながら餃子を食べる恋人は、何だか餌を頬張るハムスターみたいで可愛いと思う。マヨネーズとケチャップを混ぜた独創的なタレをつけていた。騙されたと思って食べてみなさいと口に押し込まれたそれは更に白米が進む味だった。カチューシャも気に入るだろう。
「帰ったぞ」
のっそりとリビングの扉の影から躰を半分出すと、キッチンの中でフライパンと格闘していたあずきが慌てたように顔を上げた。
「あっ、火志磨君、お帰りなさい……時間、見誤ってしまったわ」
ぶちぶちと溢れる小言は、じゅうじゅうと何かを炒めるフライパンの音にかき消されてゆく。生姜とニンニク、肉の匂いのトリプルパンチに、それまで浮かびもしなかった食事の存在が脳内で急速に肥大してゆく。
物欲しげな無表情で見つめていた火志磨に気づいたのか、あずきは悪戯っ子のように笑ってフライパンに被せた蓋を開けた。
「今日は餃子。明日休みだからいいでしょ」
「……カチューシャもお前も、本当にマメだよな」
「こだわりが強くて面倒臭いのは自覚してるわ」
羽も美しく焼き上がった餃子は二種類。ノーマルと大葉とエビが入っている。どちらも大層美味しい。
「いつ帰ってこれられるから判らないから、カチューシャちゃんの分はタッパーに詰めて冷凍してあるわ」
そう言いながら餃子を食べる恋人は、何だか餌を頬張るハムスターみたいで可愛いと思う。マヨネーズとケチャップを混ぜた独創的なタレをつけていた。騙されたと思って食べてみなさいと口に押し込まれたそれは更に白米が進む味だった。カチューシャも気に入るだろう。
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