ハイツ婚の食卓(4/26更新)

狂言巡

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白練の家/手作りケーキ

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「言ってくれたら手伝ったのに」
「……そんな、こんな時間に手伝ってもらうのはちょっとね……」

 厨房から物音がしたので、顔を覗かせるとちょうどユリネが冷蔵庫の扉を閉めたところだった。

「あ、お腹が空きました?」

 問いかければ、白い頬をカッと紅色に変えて小さく頷いた。既に小腹を満たした後だったらしく、梅園が手伝える事は水につけていたボウルや鍋を洗う事くらいだった。溜まったゴミ袋を捨てに行ったユリネを見送り、鍋を定位置に戻そうと屈んだ梅園は、マヨネーズが落ちている事に気付く。蓋はされていたので布巾で軽く拭いて、仕舞おうと冷蔵庫に近づく。
 そして扉を開けた先には――生クリームが入ったボウル。焦げてはいないが薄黄色だったり狐色だったりして斑模様を描いているパンケーキが積まれた皿。小皿にはチョコレートの板が乗っていて、おそらくホワイトチョコレートで『Dear Mr.Umezono』の字が……。
 感動のあまり妻に無言で抱きついた結果悲鳴をあげられてしまったが、不審者かと武器を持って駆け付けた狩靖と百合には大きな蜘蛛が横切っていたという事で誤魔化した。

 それから、愛妻は炊飯器でホールケーキを作ったり、卵焼き用のフライパンで四角いパンケーキを焼いたりと、店に出したらすぐに完売しそうな、ハイクォリティなケーキを作ってくれるようになったが、梅園が思い浮かべるパンケーキは斑模様をクリームで隠した、少し歪つな形のホールケーキである。
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