67 / 90
1章 We love, because He first loved us.
マサキと南先生
うーん…頭につけたノリみたいなベタベタが取れない。
少し休んで遅めの夕食を取ったあと、
僕は大部屋に設置されている洗面台の鏡を見ながら、あっちこっちについた電極の跡と奮闘していた。
腕疲れてきた。
やっぱりお風呂入ろう。その方が早く取れそうだ。
そう思ったけれど、怪我して転院してそのまま入院…なんて思ってなかったら何もお風呂道具がない。
どうしようかな。
タオルもないし歯ブラシもない。
着替えもないことに気づいて慌てて両親にメールした。
もうすでに南先生から電話があったらしい。
明日入院に必要なものを持ってきてくれるらしい。
何時に来るの?と言ったら、
この病院は例外を除いてお見舞いができないんだって。親族でも危ない人がいたり、嘘をついて入られたら護れなくなるからだって。
しばらく会えないのかな…お父さんお母さんは大丈夫かな。僕がいない分ゆっくりして欲しい。
警察にお世話になったことも、心配させないように明るく、なるべく深刻にならないよう話した。
大体の事情はやはり警察から聞いたようで、僕が無事に専門の病院にいられることにすごく安堵していた。
両親はもう家は危ないからしばらく帰らず、お父さんの会社の近くのウィークリーマンションを借りながら新しい家を探してくれるって。
退院するころには新しい家かなぁ。
一気に変わった環境に気分が落ち込むかと思ったけれど、絶対安心な場所にいられるってだけで前向きになれるんだと知って、やっと心が休まる。
ほっと息をつける時間が久しぶり。
やさぐれた心が落ち着いて、今後のことも考えられるようになった。
同じ部屋の子もSubだから臆せず話しかけられるし、久しくいなかった友達も作れそう。
早速、同室になった子に教えてもらったコンビニに行くため、財布をポケットにしまいエレベーターへ向かう。
服も売ってるって言ってたなぁ…あんまり高くないといいけど。足りなかったらお母さんにアプリにチャージしてもらわないと。
少し明かりが落とされたエレベーターホール。
ここから降りてどこに行き着くのかわからないけれど、1階にあるらしいコンビニ。
ちょっと暗いだけでまだ夜とは言えないけれど、一人で動いているだけで急に大人になったみたいに自由に感じる。
ちょっと緊張しながらポチッと真新しいボタンを押した。
ん?
押せてなかったのか反応しないボタンをもう一度押す。
一向に動き出さないエレベーターはシン…としていた。
もしかして動いてない?
うわ、どうしよう…。明日までこのままかなぁ。
目につく移動手段はここと階段くらい。
ここから階段かぁ…
体力は落ちたとは言え、剣道をやっていた時も階段ダッシュとかしていたからそこまで疲れないかな…。
ついてないなぁと階段のある方へ向かおうとした。
背後から早足で駆け寄ってくる足音。
「ごめんねー!そのエレベーター20時になったらもう動かないんだよ。何か用事だった?」
「あ、…南先生」
昼もいたのにまだいるんだ。
医者って大変だなぁ。
急いできたように少し息が上がっている。
部屋へ戻って、と促すようにエレベーターから離される。
「あの、着替えとかなくて、下?に買いに行きたい…です。」
焦ったように見えた南先生のせいで、僕にもうつったみたいにどもってしまった。
事情をつっかえながら話すと「あぁ、そうだったんだね。」と言って、僕の肩に回していた手を離した。
フゥ…まるで安堵したように息を吐きながら、前髪をかきあげて一息をついた。
ちょっと張り詰めた雰囲気が散って、先生の疲れたような笑顔。
その仕草だけでダンディーな大人な雰囲気だけど、
険しいままの眉間の皺が消えていない。
「あのね、予定にない入院をすることもあるから、ひとしきりの準備はこっちで揃えているんだよ。」
そうなんだー…知らなかった。
「それと、外に出る時は先生の許可が必要だから声かけてね。」
あ、だから焦ってたのか…疲れているのに走らせて申し訳なくおもう。
「…はい、すみません。」
まだ距離のある言葉にクスッと笑った。
「下着はMサイズでいいかな?病衣は汚れない限り2日に一回の交換だからね。私服がよかったらそっちでもいいよ。」
新品のタオルと歯ブラシも渡されてそのままお風呂にいく。
簡単に説明したあと「お風呂から出たらちょっとお話ししよう」と言って脱衣所で別れた。
ゆっくり入っておいでって言われたけど待たれてると思うとうかうか入ってられない。
今日あったことだろうなぁ…となんて説明しようか不安になる。
警察に通報されたら履歴が残るらしいし、また何かあったら今度は警察署に連れて行かれるかも…。
僕は悪くない、それはわかっているのに証明するのが難しく思えた。
「あ、来たね。」
ここおいでと勧められたソファーに腰掛ける。
「ベタベタ取れた?」
「3回洗ったので…たぶん大丈夫です。」
そう?といいさらっと乾かしたての髪を掬う。電極がついてたあたりを触って「うん、綺麗に落ちてる」
なんか、お父さんみたい。
もう12歳というのに、同じことを幼い頃にしてもらったような、あるはずもない思い出が蘇ってくる。
南先生もお父さんと近い年代だろうけど…。
何故か無性に甘えたくなってくる。
きっとお風呂から出たてで、ぽわ~としているせい。
「水分補給してね」ポンと置かれた麦茶をグビグビ飲んで妄想を振り解いた。
グラスを置いたタイミングを計ったように、先生が話し出す。
まさかそこから聞かれるなんて思わなかった。
信じて疑いもしなかったのに。
「本題なんだけど、一緒に来たあの人って本当に警察の人だった?」
少し休んで遅めの夕食を取ったあと、
僕は大部屋に設置されている洗面台の鏡を見ながら、あっちこっちについた電極の跡と奮闘していた。
腕疲れてきた。
やっぱりお風呂入ろう。その方が早く取れそうだ。
そう思ったけれど、怪我して転院してそのまま入院…なんて思ってなかったら何もお風呂道具がない。
どうしようかな。
タオルもないし歯ブラシもない。
着替えもないことに気づいて慌てて両親にメールした。
もうすでに南先生から電話があったらしい。
明日入院に必要なものを持ってきてくれるらしい。
何時に来るの?と言ったら、
この病院は例外を除いてお見舞いができないんだって。親族でも危ない人がいたり、嘘をついて入られたら護れなくなるからだって。
しばらく会えないのかな…お父さんお母さんは大丈夫かな。僕がいない分ゆっくりして欲しい。
警察にお世話になったことも、心配させないように明るく、なるべく深刻にならないよう話した。
大体の事情はやはり警察から聞いたようで、僕が無事に専門の病院にいられることにすごく安堵していた。
両親はもう家は危ないからしばらく帰らず、お父さんの会社の近くのウィークリーマンションを借りながら新しい家を探してくれるって。
退院するころには新しい家かなぁ。
一気に変わった環境に気分が落ち込むかと思ったけれど、絶対安心な場所にいられるってだけで前向きになれるんだと知って、やっと心が休まる。
ほっと息をつける時間が久しぶり。
やさぐれた心が落ち着いて、今後のことも考えられるようになった。
同じ部屋の子もSubだから臆せず話しかけられるし、久しくいなかった友達も作れそう。
早速、同室になった子に教えてもらったコンビニに行くため、財布をポケットにしまいエレベーターへ向かう。
服も売ってるって言ってたなぁ…あんまり高くないといいけど。足りなかったらお母さんにアプリにチャージしてもらわないと。
少し明かりが落とされたエレベーターホール。
ここから降りてどこに行き着くのかわからないけれど、1階にあるらしいコンビニ。
ちょっと暗いだけでまだ夜とは言えないけれど、一人で動いているだけで急に大人になったみたいに自由に感じる。
ちょっと緊張しながらポチッと真新しいボタンを押した。
ん?
押せてなかったのか反応しないボタンをもう一度押す。
一向に動き出さないエレベーターはシン…としていた。
もしかして動いてない?
うわ、どうしよう…。明日までこのままかなぁ。
目につく移動手段はここと階段くらい。
ここから階段かぁ…
体力は落ちたとは言え、剣道をやっていた時も階段ダッシュとかしていたからそこまで疲れないかな…。
ついてないなぁと階段のある方へ向かおうとした。
背後から早足で駆け寄ってくる足音。
「ごめんねー!そのエレベーター20時になったらもう動かないんだよ。何か用事だった?」
「あ、…南先生」
昼もいたのにまだいるんだ。
医者って大変だなぁ。
急いできたように少し息が上がっている。
部屋へ戻って、と促すようにエレベーターから離される。
「あの、着替えとかなくて、下?に買いに行きたい…です。」
焦ったように見えた南先生のせいで、僕にもうつったみたいにどもってしまった。
事情をつっかえながら話すと「あぁ、そうだったんだね。」と言って、僕の肩に回していた手を離した。
フゥ…まるで安堵したように息を吐きながら、前髪をかきあげて一息をついた。
ちょっと張り詰めた雰囲気が散って、先生の疲れたような笑顔。
その仕草だけでダンディーな大人な雰囲気だけど、
険しいままの眉間の皺が消えていない。
「あのね、予定にない入院をすることもあるから、ひとしきりの準備はこっちで揃えているんだよ。」
そうなんだー…知らなかった。
「それと、外に出る時は先生の許可が必要だから声かけてね。」
あ、だから焦ってたのか…疲れているのに走らせて申し訳なくおもう。
「…はい、すみません。」
まだ距離のある言葉にクスッと笑った。
「下着はMサイズでいいかな?病衣は汚れない限り2日に一回の交換だからね。私服がよかったらそっちでもいいよ。」
新品のタオルと歯ブラシも渡されてそのままお風呂にいく。
簡単に説明したあと「お風呂から出たらちょっとお話ししよう」と言って脱衣所で別れた。
ゆっくり入っておいでって言われたけど待たれてると思うとうかうか入ってられない。
今日あったことだろうなぁ…となんて説明しようか不安になる。
警察に通報されたら履歴が残るらしいし、また何かあったら今度は警察署に連れて行かれるかも…。
僕は悪くない、それはわかっているのに証明するのが難しく思えた。
「あ、来たね。」
ここおいでと勧められたソファーに腰掛ける。
「ベタベタ取れた?」
「3回洗ったので…たぶん大丈夫です。」
そう?といいさらっと乾かしたての髪を掬う。電極がついてたあたりを触って「うん、綺麗に落ちてる」
なんか、お父さんみたい。
もう12歳というのに、同じことを幼い頃にしてもらったような、あるはずもない思い出が蘇ってくる。
南先生もお父さんと近い年代だろうけど…。
何故か無性に甘えたくなってくる。
きっとお風呂から出たてで、ぽわ~としているせい。
「水分補給してね」ポンと置かれた麦茶をグビグビ飲んで妄想を振り解いた。
グラスを置いたタイミングを計ったように、先生が話し出す。
まさかそこから聞かれるなんて思わなかった。
信じて疑いもしなかったのに。
「本題なんだけど、一緒に来たあの人って本当に警察の人だった?」
あなたにおすすめの小説
守り守られ
ほたる
BL
主治医 望月診療所の双子医師
患者 瀬咲朔
腸疾患・排泄障害・下肢不自由
看護師
ベテラン山添さん
準主人公 成海真幌 腸疾患・排泄障害・てんかん
木島 尚久 真幌の恋人同棲中
月弥総合病院
僕君・御月様
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。
また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。
(小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!
ふたなり治験棟 企画12月31公開
ほたる
BL
ふたなりとして生を受けた柊は、16歳の年に国の義務により、ふたなり治験棟に入所する事になる。
男として育ってきた為、子供を孕み産むふたなりに成り下がりたくないと抗うが…?!
飼われる側って案外良いらしい。
なつ
BL
20XX年。人間と人外は共存することとなった。そう、僕は朝のニュースで見て知った。
向こうが地球の平和と引き換えに、僕達の中から選んで1匹につき1人、人間を飼うとかいう巫山戯た法を提案したようだけれど。
「まあ何も変わらない、はず…」
ちょっと視界に映る生き物の種類が増えるだけ。そう思ってた。
ほんとに。ほんとうに。
紫ヶ崎 那津(しがさき なつ)(22)
ブラック企業で働く最下層の男。顔立ちは悪くないが、不摂生で見る影もない。
変化を嫌い、現状維持を好む。
タルア=ミース(347)
職業不詳の人外、Swis(スウィズ)。お金持ち。
最初は可愛いペットとしか見ていなかったものの…?
2025/09/12 ★1000 Thank_You!!
双葉病院小児病棟
moa
キャラ文芸
ここは双葉病院小児病棟。
病気と闘う子供たち、その病気を治すお医者さんたちの物語。
この双葉病院小児病棟には重い病気から身近な病気、たくさんの幅広い病気の子供たちが入院してきます。
すぐに治って退院していく子もいればそうでない子もいる。
メンタル面のケアも大事になってくる。
当病院は親の付き添いありでの入院は禁止とされています。
親がいると子供たちは甘えてしまうため、あえて離して治療するという方針。
【集中して治療をして早く治す】
それがこの病院のモットーです。
※この物語はフィクションです。
実際の病院、治療とは異なることもあると思いますが暖かい目で見ていただけると幸いです。
人気アイドルの俺、なぜかメンバー全員に好かれてます
七瀬
BL
デビュー4年目の人気アイドルグループ「ECLIPSE(エクリプス)」に所属する芹沢 美澄(せりざわみすみ)は、昔からどこか抜けていてマイペースな性格。
歌もダンスも決して一番ではないはずなのに、なぜかファンからもメンバーからも目を離されない存在だった。
世話焼きな幼なじみ、明るく距離の近い同い年、しっかり者で面倒見のいい年上、掴みどころのない自由人、そして無言で隣にいるリーダー——。
気づけば、美澄の周りにはいつも誰かがいて、当たり前のように甘やかされていく。