無影の冒険者 ~最強レベルの影の薄さ《隠密》と観察力《観察眼》で異世界無双~

丁鹿イノ

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 翌日、真一達は大広間に集められていた。ここで真一達の能力の確認を行うとのことである。

 能力の確認は、能力確認用の魔術陣の上に立ち魔術師が魔力を流し込むことで、羊皮紙に能力値と適性属性が焼き付けられるらしい。
 能力値はA~Fで評価され、Aは超人・英雄クラス、Bは達人クラス、C・Dは一般兵士、E・Fは一般人、とのことである。

 適性属性は火、水、風、土、光、闇の六種類に分かれているが、光と闇の適性を持つ人間はほとんどおらず、基本的には四属性のどれかに当たるらしい。
 魔術は、基本的に適性属性の魔術しか使うことはできないものである。
 しかし例外として、適性属性の人が書いた魔術陣であれば他属性の人であっても起動することができる。
 ただし魔術陣自体が非常に非効率であるため、儀式以外の戦闘で用いられることはほとんどない物である。


 まず最初に、委員長である翔が進み出た。心なしかワクワクしているように見える。
 やはり男子である以上、異世界転移からのステータス確認には心踊ってしまうのであろう。

「これから魔術を行使しますので、動かないでください」
「はい、分かりました」
「では参ります。『ステータスチェック』」

 魔術師が魔術陣に手を置いて力を込めたかと思うと、魔術陣から青い光が立ちのぼり翔の身体を包み込んだ。
 最後に翔が手に持っている羊皮紙が一際強い光を放った後、光が収まった。

「魔術は成功いたしました」

 翔は羊皮紙を真顔で見つめていた。

「ミコシバ殿、いかがでしたかな?」

 宰相のアルフレッドが翔に問いかける。
 無言で翔から手渡された羊皮紙をみたアルフレッドであったが、眉一つ動かさなかった。

「ふむ…………戦いの無い世界であったとうかがっておりましたが、それにしては優れているのではないでしょうか」

 つまり、戦いのあるこの世界的には微妙な能力値ということである。
 その裏の意味を理解している翔は、苦い顔をした。

 翔は、アルフレッドから返して貰った羊皮紙を、内容が気になってうずうずしているクラスメイトに気まずそうな顔をして渡した。
 真一も覗き込み、翔のステータスを見てみた。

――――――――――――――
名前:カケル・ミコシバ
筋力:D
耐久:D
敏捷:D
魔力:E
属性:火
――――――――――――――

「……強すぎないか?」

 翔のステータスを見て、素直に思った感想が真一の口から漏れる。

「アサシン、どういう意味だ?」

 翔は苦々しい顔で真一に問いかけた。からかっているのかという感情を言外ににおわせて。

「翔は運動神経抜群だが……訓練を積んだ兵士と同等の筋力を持っていると思うか?」

 アルフレッドが言ったように、ただの学生が何の訓練もなく訓練を積んだ兵士と同レベルの身体能力である、ということに真一は疑問を抱いた。
 もしかしてのか、という疑問だ。
 翔はサッカー部でスポーツ神経抜群ではあるが、流石に兵士と同レベルの身体能力はないはずだ。

 真一の言葉を聞き、翔はハッとした後に考え込むような表情となった。

「いくらなんでも、一般学生が訓練を積んだ兵士と同等の能力というのはおかしい。この世界に来て翔の身体能力が上がったのではないか、と僕には思える。昨日のナイフもこの世界に来たことによって力が宿ったと考えらるんじゃないか?」

――ゴクリ

 誰かが唾を飲む音が聞こえた。

「確かに……アサシンの言う通り、元々の僕が兵士並の力を持っていたかと言うと、それは無いと思う。……あとで兵士の方と模擬戦をさせていただいてもいいでしょうか? そうすれば自分の身体能力が上がっているのか分かると思うんです」

 翔がアルフレッドにそう言うと、アルフレッドは少しだけ嬉しそうな表情を浮かべて頷いた。


 翔に続き、クラスメイトが次々とステータスチェックを行っていくが、やはりDやEばかりであった。CもFもなかったため、良い意味でも悪い意味でも皆安定していた。

 最後に真一の番になり、真一は魔術陣に進み出た。
 皆似たような能力値であったため、自分もそうであろうと思うとドキドキ感は完全に失われていた。

「『ステータスチェック』」

 真一は、もう九回も聞いた魔術師の声を聞き流しながら、自らの手にある羊皮紙を見た。

――――――――――――――
名前:シンイチ・アサギリ
筋力:D
耐久:E
敏捷:D
魔力:F
属性:無
――――――――――――――

「……」

 真一は、自分一人赤点を取ったかのような絶望感に襲われる。
 Fだと……しかも無って……
 真一は、皆の属性と目に映るオーラの色が一致していることから、自身に魔力を視認できる能力が発現していることを薄々感じていた。
 しかし自分の体から出ているのは、無色のオーラである。これはもしかして光属性きちゃった? そんな勘違いをしてしまっていた真一にとって、という一文字はあまりにも残酷な言葉であった。

「む、無属性……」

 背後からアルフレッドの呟きが聞こえた。
 真一が振り向くと、アルフレッドは沈痛な面持ちで顔を背けた。

「アルフレッドさん、無属性って……」
「……」
「アルフレッドさん……?」
「無属性は……魔術を使えません……」
「無属性魔術とかあったり……」
「残念ながら……」
「そうですか……」

 地味に魔術の行使を楽しみにしていた真一からは、完全に表情が抜け落ちていた。

「あ、朝霧君……」

 あまりにも悲壮なオーラを放つ真一を見て、陽毬がおずおずと声をかける。

「なんでしょうか、水属性の小鳥遊さん」
「あ、あぅ……あの……その……元気、出してください……」

 真一から放たれる負のオーラを一身に受けてもめげずに真一の裾をギュッと握りしめ、陽毬は心配そうな表情で真一の瞳を見つめた。

「……小鳥遊さん……ありがとう、ございます。もう大丈夫です」

 魔術が使えない程度で人に当たるのは流石に大人げないと、真一は軽く息を吐いて陽毬の頭に手を置いてぎこちなく微笑んだ。
 陽毬は安心したようにホッと息を吐いた。

「ご、ごほん! では、先程ミコシバ殿がおっしゃっていた模擬戦をやってみましょうか」

 わざとらしく咳をして、アルフレッドは訓練場へ歩きはじめた。
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