5 / 24
5.無
しおりを挟む
翌日、真一達は大広間に集められていた。ここで真一達の能力の確認を行うとのことである。
能力の確認は、能力確認用の魔術陣の上に立ち魔術師が魔力を流し込むことで、羊皮紙に能力値と適性属性が焼き付けられるらしい。
能力値はA~Fで評価され、Aは超人・英雄クラス、Bは達人クラス、C・Dは一般兵士、E・Fは一般人、とのことである。
適性属性は火、水、風、土、光、闇の六種類に分かれているが、光と闇の適性を持つ人間はほとんどおらず、基本的には四属性のどれかに当たるらしい。
魔術は、基本的に適性属性の魔術しか使うことはできないものである。
しかし例外として、適性属性の人が書いた魔術陣であれば他属性の人であっても起動することができる。
ただし魔術陣自体が非常に非効率であるため、儀式以外の戦闘で用いられることはほとんどない物である。
まず最初に、委員長である翔が進み出た。心なしかワクワクしているように見える。
やはり男子である以上、異世界転移からのステータス確認には心踊ってしまうのであろう。
「これから魔術を行使しますので、動かないでください」
「はい、分かりました」
「では参ります。『ステータスチェック』」
魔術師が魔術陣に手を置いて力を込めたかと思うと、魔術陣から青い光が立ちのぼり翔の身体を包み込んだ。
最後に翔が手に持っている羊皮紙が一際強い光を放った後、光が収まった。
「魔術は成功いたしました」
翔は羊皮紙を真顔で見つめていた。
「ミコシバ殿、いかがでしたかな?」
宰相のアルフレッドが翔に問いかける。
無言で翔から手渡された羊皮紙をみたアルフレッドであったが、眉一つ動かさなかった。
「ふむ…………戦いの無い世界であったとうかがっておりましたが、それにしては優れているのではないでしょうか」
つまり、戦いのあるこの世界的には微妙な能力値ということである。
その裏の意味を理解している翔は、苦い顔をした。
翔は、アルフレッドから返して貰った羊皮紙を、内容が気になってうずうずしているクラスメイトに気まずそうな顔をして渡した。
真一も覗き込み、翔のステータスを見てみた。
――――――――――――――
名前:カケル・ミコシバ
筋力:D
耐久:D
敏捷:D
魔力:E
属性:火
――――――――――――――
「……強すぎないか?」
翔のステータスを見て、素直に思った感想が真一の口から漏れる。
「アサシン、どういう意味だ?」
翔は苦々しい顔で真一に問いかけた。からかっているのかという感情を言外ににおわせて。
「翔は運動神経抜群だが……訓練を積んだ兵士と同等の筋力を持っていると思うか?」
アルフレッドが言ったように、ただの学生が何の訓練もなく訓練を積んだ兵士と同レベルの身体能力である、ということに真一は疑問を抱いた。
もしかして異世界に来たことで強くなったのか、という疑問だ。
翔はサッカー部でスポーツ神経抜群ではあるが、流石に兵士と同レベルの身体能力はないはずだ。
真一の言葉を聞き、翔はハッとした後に考え込むような表情となった。
「いくらなんでも、一般学生が訓練を積んだ兵士と同等の能力というのはおかしい。この世界に来て翔の身体能力が上がったのではないか、と僕には思える。昨日のナイフもこの世界に来たことによって力が宿ったと考えらるんじゃないか?」
――ゴクリ
誰かが唾を飲む音が聞こえた。
「確かに……アサシンの言う通り、元々の僕が兵士並の力を持っていたかと言うと、それは無いと思う。……あとで兵士の方と模擬戦をさせていただいてもいいでしょうか? そうすれば自分の身体能力が上がっているのか分かると思うんです」
翔がアルフレッドにそう言うと、アルフレッドは少しだけ嬉しそうな表情を浮かべて頷いた。
翔に続き、クラスメイトが次々とステータスチェックを行っていくが、やはりDやEばかりであった。CもFもなかったため、良い意味でも悪い意味でも皆安定していた。
最後に真一の番になり、真一は魔術陣に進み出た。
皆似たような能力値であったため、自分もそうであろうと思うとドキドキ感は完全に失われていた。
「『ステータスチェック』」
真一は、もう九回も聞いた魔術師の声を聞き流しながら、自らの手にある羊皮紙を見た。
――――――――――――――
名前:シンイチ・アサギリ
筋力:D
耐久:E
敏捷:D
魔力:F
属性:無
――――――――――――――
「……」
真一は、自分一人赤点を取ったかのような絶望感に襲われる。
Fだと……しかも無って……
真一は、皆の属性と目に映るオーラの色が一致していることから、自身に魔力を視認できる能力が発現していることを薄々感じていた。
しかし自分の体から出ているのは、無色のオーラである。これはもしかして光属性きちゃった? そんな勘違いをしてしまっていた真一にとって、無という一文字はあまりにも残酷な言葉であった。
「む、無属性……」
背後からアルフレッドの呟きが聞こえた。
真一が振り向くと、アルフレッドは沈痛な面持ちで顔を背けた。
「アルフレッドさん、無属性って……」
「……」
「アルフレッドさん……?」
「無属性は……魔術を使えません……」
「無属性魔術とかあったり……」
「残念ながら……」
「そうですか……」
地味に魔術の行使を楽しみにしていた真一からは、完全に表情が抜け落ちていた。
「あ、朝霧君……」
あまりにも悲壮なオーラを放つ真一を見て、陽毬がおずおずと声をかける。
「なんでしょうか、水属性の小鳥遊さん」
「あ、あぅ……あの……その……元気、出してください……」
真一から放たれる負のオーラを一身に受けてもめげずに真一の裾をギュッと握りしめ、陽毬は心配そうな表情で真一の瞳を見つめた。
「……小鳥遊さん……ありがとう、ございます。もう大丈夫です」
魔術が使えない程度で人に当たるのは流石に大人げないと、真一は軽く息を吐いて陽毬の頭に手を置いてぎこちなく微笑んだ。
陽毬は安心したようにホッと息を吐いた。
「ご、ごほん! では、先程ミコシバ殿がおっしゃっていた模擬戦をやってみましょうか」
わざとらしく咳をして、アルフレッドは訓練場へ歩きはじめた。
能力の確認は、能力確認用の魔術陣の上に立ち魔術師が魔力を流し込むことで、羊皮紙に能力値と適性属性が焼き付けられるらしい。
能力値はA~Fで評価され、Aは超人・英雄クラス、Bは達人クラス、C・Dは一般兵士、E・Fは一般人、とのことである。
適性属性は火、水、風、土、光、闇の六種類に分かれているが、光と闇の適性を持つ人間はほとんどおらず、基本的には四属性のどれかに当たるらしい。
魔術は、基本的に適性属性の魔術しか使うことはできないものである。
しかし例外として、適性属性の人が書いた魔術陣であれば他属性の人であっても起動することができる。
ただし魔術陣自体が非常に非効率であるため、儀式以外の戦闘で用いられることはほとんどない物である。
まず最初に、委員長である翔が進み出た。心なしかワクワクしているように見える。
やはり男子である以上、異世界転移からのステータス確認には心踊ってしまうのであろう。
「これから魔術を行使しますので、動かないでください」
「はい、分かりました」
「では参ります。『ステータスチェック』」
魔術師が魔術陣に手を置いて力を込めたかと思うと、魔術陣から青い光が立ちのぼり翔の身体を包み込んだ。
最後に翔が手に持っている羊皮紙が一際強い光を放った後、光が収まった。
「魔術は成功いたしました」
翔は羊皮紙を真顔で見つめていた。
「ミコシバ殿、いかがでしたかな?」
宰相のアルフレッドが翔に問いかける。
無言で翔から手渡された羊皮紙をみたアルフレッドであったが、眉一つ動かさなかった。
「ふむ…………戦いの無い世界であったとうかがっておりましたが、それにしては優れているのではないでしょうか」
つまり、戦いのあるこの世界的には微妙な能力値ということである。
その裏の意味を理解している翔は、苦い顔をした。
翔は、アルフレッドから返して貰った羊皮紙を、内容が気になってうずうずしているクラスメイトに気まずそうな顔をして渡した。
真一も覗き込み、翔のステータスを見てみた。
――――――――――――――
名前:カケル・ミコシバ
筋力:D
耐久:D
敏捷:D
魔力:E
属性:火
――――――――――――――
「……強すぎないか?」
翔のステータスを見て、素直に思った感想が真一の口から漏れる。
「アサシン、どういう意味だ?」
翔は苦々しい顔で真一に問いかけた。からかっているのかという感情を言外ににおわせて。
「翔は運動神経抜群だが……訓練を積んだ兵士と同等の筋力を持っていると思うか?」
アルフレッドが言ったように、ただの学生が何の訓練もなく訓練を積んだ兵士と同レベルの身体能力である、ということに真一は疑問を抱いた。
もしかして異世界に来たことで強くなったのか、という疑問だ。
翔はサッカー部でスポーツ神経抜群ではあるが、流石に兵士と同レベルの身体能力はないはずだ。
真一の言葉を聞き、翔はハッとした後に考え込むような表情となった。
「いくらなんでも、一般学生が訓練を積んだ兵士と同等の能力というのはおかしい。この世界に来て翔の身体能力が上がったのではないか、と僕には思える。昨日のナイフもこの世界に来たことによって力が宿ったと考えらるんじゃないか?」
――ゴクリ
誰かが唾を飲む音が聞こえた。
「確かに……アサシンの言う通り、元々の僕が兵士並の力を持っていたかと言うと、それは無いと思う。……あとで兵士の方と模擬戦をさせていただいてもいいでしょうか? そうすれば自分の身体能力が上がっているのか分かると思うんです」
翔がアルフレッドにそう言うと、アルフレッドは少しだけ嬉しそうな表情を浮かべて頷いた。
翔に続き、クラスメイトが次々とステータスチェックを行っていくが、やはりDやEばかりであった。CもFもなかったため、良い意味でも悪い意味でも皆安定していた。
最後に真一の番になり、真一は魔術陣に進み出た。
皆似たような能力値であったため、自分もそうであろうと思うとドキドキ感は完全に失われていた。
「『ステータスチェック』」
真一は、もう九回も聞いた魔術師の声を聞き流しながら、自らの手にある羊皮紙を見た。
――――――――――――――
名前:シンイチ・アサギリ
筋力:D
耐久:E
敏捷:D
魔力:F
属性:無
――――――――――――――
「……」
真一は、自分一人赤点を取ったかのような絶望感に襲われる。
Fだと……しかも無って……
真一は、皆の属性と目に映るオーラの色が一致していることから、自身に魔力を視認できる能力が発現していることを薄々感じていた。
しかし自分の体から出ているのは、無色のオーラである。これはもしかして光属性きちゃった? そんな勘違いをしてしまっていた真一にとって、無という一文字はあまりにも残酷な言葉であった。
「む、無属性……」
背後からアルフレッドの呟きが聞こえた。
真一が振り向くと、アルフレッドは沈痛な面持ちで顔を背けた。
「アルフレッドさん、無属性って……」
「……」
「アルフレッドさん……?」
「無属性は……魔術を使えません……」
「無属性魔術とかあったり……」
「残念ながら……」
「そうですか……」
地味に魔術の行使を楽しみにしていた真一からは、完全に表情が抜け落ちていた。
「あ、朝霧君……」
あまりにも悲壮なオーラを放つ真一を見て、陽毬がおずおずと声をかける。
「なんでしょうか、水属性の小鳥遊さん」
「あ、あぅ……あの……その……元気、出してください……」
真一から放たれる負のオーラを一身に受けてもめげずに真一の裾をギュッと握りしめ、陽毬は心配そうな表情で真一の瞳を見つめた。
「……小鳥遊さん……ありがとう、ございます。もう大丈夫です」
魔術が使えない程度で人に当たるのは流石に大人げないと、真一は軽く息を吐いて陽毬の頭に手を置いてぎこちなく微笑んだ。
陽毬は安心したようにホッと息を吐いた。
「ご、ごほん! では、先程ミコシバ殿がおっしゃっていた模擬戦をやってみましょうか」
わざとらしく咳をして、アルフレッドは訓練場へ歩きはじめた。
0
あなたにおすすめの小説
やさしい異世界転移
みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公
神洞 優斗。
彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった!
元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……?
この時の優斗は気付いていなかったのだ。
己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。
この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。
異世界で穴掘ってます!
KeyBow
ファンタジー
修学旅行中のバスにいた筈が、異世界召喚にバスの全員が突如されてしまう。主人公の聡太が得たスキルは穴掘り。外れスキルとされ、屑の外れ者として抹殺されそうになるもしぶとく生き残り、救ってくれた少女と成り上がって行く。不遇といわれるギフトを駆使して日の目を見ようとする物語
異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!
椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。
しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。
身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。
そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!
レベルアップに魅せられすぎた男の異世界探求記(旧題カンスト厨の異世界探検記)
荻野
ファンタジー
ハーデス 「ワシとこの遺跡ダンジョンをそなたの魔法で成仏させてくれぬかのぅ?」
俺 「確かに俺の神聖魔法はレベルが高い。神様であるアンタとこのダンジョンを成仏させるというのも出来るかもしれないな」
ハーデス 「では……」
俺 「だが断る!」
ハーデス 「むっ、今何と?」
俺 「断ると言ったんだ」
ハーデス 「なぜだ?」
俺 「……俺のレベルだ」
ハーデス 「……は?」
俺 「あともう数千回くらいアンタを倒せば俺のレベルをカンストさせられそうなんだ。だからそれまでは聞き入れることが出来ない」
ハーデス 「レベルをカンスト? お、お主……正気か? 神であるワシですらレベルは9000なんじゃぞ? それをカンスト? 神をも上回る力をそなたは既に得ておるのじゃぞ?」
俺 「そんなことは知ったことじゃない。俺の目標はレベルをカンストさせること。それだけだ」
ハーデス 「……正気……なのか?」
俺 「もちろん」
異世界に放り込まれた俺は、昔ハマったゲームのように異世界をコンプリートすることにした。
たとえ周りの者たちがなんと言おうとも、俺は異世界を極め尽くしてみせる!
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
無尽蔵の魔力で世界を救います~現実世界からやって来た俺は神より魔力が多いらしい~
甲賀流
ファンタジー
なんの特徴もない高校生の高橋 春陽はある時、異世界への繋がるダンジョンに迷い込んだ。なんだ……空気中に星屑みたいなのがキラキラしてるけど?これが全て魔力だって?
そしてダンジョンを突破した先には広大な異世界があり、この世界全ての魔力を行使して神や魔族に挑んでいく。
ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる