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超時空世界がゲームクリアと同時に進化した!
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よし! これでゲームクリアだ! ムゲンはそう確信していた。
魔物全部が癒されて戦意喪失しているのだから、これで終わりだろうと確信していた。
しかし、ゲームは終わらない。終わらないのだ。
なぜだ? と思う。シューちゃんを見ると苦笑している。
まだ何か裏があるのか……
仕方なし……という感じでシューちゃんが解説してくれる。
「あのですね、ムゲンさん、今回は、あたしも驚いてしまいましたし、感動しちゃいましたけど、このゲームをクリアするには、魔物たち全部が戦意喪失するだけじゃまだ不足なんですよ。
このゲームクリアの条件は、魔物たちを完全に満足させてあげて、その状態が元に戻らない状態にまでしてあげないと終わらないんです」
そうだったんだ……
「ちなみに戦意喪失状態のままだと、放置しているとまた魔物の本能がムクムクと復活してくるんですよ」
「じゃあ、どうすればそうならないようにできるの? シューちゃん」
「それは、プレイヤー、つまりムゲンさんの精神レベルが必要十分になった状態で魔物たち全員をヒールで癒してあげれば、そうなります」
「であれば、俺の精神レベルが必要十分ではなかったってこと?」
「まあ、今回は、そういうことになってしまいますね……」
「いや今回はって、まだゲーム続いてるんだろう?」
「そうですね、続いています。だから、ムゲンさんはこれから精神レベルの底上げをする必要があるわけです」
「底上げって言っても、どうすれば底上げできるわけ?」
「そうですね、ムゲンさんの場合、ラッキーというか、なんというか、普通の方とは違ってご自身の分身たちを分離できるわけですから、劣化している分身体を分離してしまえば、おそらく必要十分状態になるんじゃないかと思いますよ、多分ですけど」
「そうなのか……劣化している奴だけ別世界に転送してしまえばいいんだ……」
「あくまでそれは試してみないとわからないですけど、このゲームの製作者はあたしではないので…」
「でも、もうずいぶんやり込んでいるんだろう?」
「そうですね、およそ50万年くらいプレーしていますよ」
「じゃあ、シューちゃんは、どうやってこのゲームをクリアしたの?」
「あのですね、このゲームには決まったクリアの形はないんですよ。とにかくすべての魔物とご自身を心から満足させて、その状態を不退転な状態にすればクリアなんです。
ちなみに、わたしは、すべての魔物に一体の分身体を付き添わせて、愛情深く魔物たちを小さくて弱い状態から世話して上げ続けたらクリアしましたけど、他にもいろいろなクリア方法があるみたいです。
中には魔物全員とご自身を完全に満足させれるような特殊な幻術にかけて満足させてクリアした方もいるらしいです」
「なるほど……確かにそうなると本当に奥が深いな……」
「ええ、今回はヒール魔法をわたしが選んでおいてムゲンさんにも装備しましたけど、スキルや魔法やアイテムまでそれぞれのプレイヤーが考え出して自分に付与することもできるんですよ」
「なるほど、それはすごいな……つまりクリア手段は何でもありってこと?」
「まあ、そういうことになるかと思います。とにかく自分も含め皆を心から満足させて、それが永遠に続くような状態にすれば合格になるってことなんですよ」
ふむふむ……とムゲンは思う。
なかなかそうなってくると相当に奥が深い。
なんでもありかあ……とムゲンは遠い目をする。
まあ、みんなにとって望ましい目標を実現するための手段は何でもありでいいのかもしれないなあ……と思う。
まあ、失敗しても許されるのがゲームのいいところだから、いろいろ試したくなるのだろうなあ……とこのゲームにはまっているっぽいシューちゃんに思いをはせる。
リアルでは、失敗するとへたしたら自業自得学園ゆきだからなあ……こうしたゲームで学べるのはいいことかもしれないなあ……と思う。
ちなみに一応、ゲームの強制終了ボタンやセーブボタンなども備えられているらしい。
しかしあまりそれを乱用し使いすぎると、一定時間、使えなくなることもあるらしい。
なるほど……よくできているゲームだなあ……とムゲンは感心する。
とはいえ、感心しているだけではゲームをクリアできない。
なんとか精神性というものを上げねばならないらしい。
そこでムゲンは、アホ太郎などの劣化系の分身体を分離して、安全そうな別世界に送り始めた。
しばらく安全な世界で遊んでいてくれよと言うと、劣化アホ太郎たちは、喜んでくれる。
彼らは、ただ遊びたいだけなのだ……こんな難易度の高いゲームなどはあまり好みではなかったらしい。
まあ、いろんな世界で遊びまわっているうちに次第に成長してくるだろうとムゲンは思っている。
そもそも誰もが自由に遊び続けれる世界であるべきなのだとすら思っている。
だからムゲンは魂のお勉強なんちゃら……というのが嫌いなのだ。
だが、誰もが自由に心から楽しみ続けれる、遊び続けれる世界を実現するためのお勉強というのならば、話はちょっと違ってくる。
誰かに支配されるための魂のお勉強などは糞くらえだが、自分の体験を自分の意志だけで自由に選び楽しめるようになるためのお勉強ならば、むしろしたいくらいなのだ。
そういう意味では、このゲームはムゲンの願いに結構合致していた。
そうなるとムゲンもさてどうしてやろうか……とがぜんやる気になってくる。
劣化状態の分身体を分離してゆくと、次第にムゲンの顔つきも変わってきた。凛々しくなってきた。
「でへへ……」とだらしなく笑うアホ太郎の面影が消えている
野生の本能太郎君なども分離させてもらった。
教育すれば成長するかと思い、同居させていたが、一向に成長しないで本能にだけ従ってしまうので、この場にはふさわしくないだろうと思ったのだ。
ムゲンはそんな感じでふさわしくないと思った自分の分身体を分離してゆく。
だいぶんスリムになってきた。
誰にでも甘い甘太郎は残しておいた。このゲームの場合、おそらく必要だろうと思ったのだ。
しかしそれだけではダメだろうと思い、学者タイプの分身体も残した。状況分析係だ。
観察者の分身体も残した。全体を俯瞰して指揮のアドバイスをする参謀だ。
後、誰もが満足できる新世界クリエイターチームの分身体たちは総員残した。彼らは絶対にはずせない。
まだ超時空城で新世界創造中のメンバーなども呼び寄せた。
不自由な世界群で素晴らしい体験というお宝さがしをしながら、理想世界の作り方などを研究しているような分身体も呼び寄せた。
各々の独自の個性を持つ分身たちの意識が分離し、また合体して別のタイプの意識統合体になってゆく。
まるで様々な形態に変形できる意識合体ロボだな……とムゲンは苦笑する。
さて、そろそろチャレンジしてみよう……
この間、ほぼ時間が経過していない。一瞬でムゲンはその作業をなした。
目の前には、少しづつ精神性が劣化してゆく魔物たちがいる。
劣化率が90%くらいになるとまた攻撃してくるらしい。
今は、まだ劣化率10%くらいだから、大丈夫だろう。
大人しいものだ……
しかし、問題はどうやって彼らを満足させるのかだ……戦意喪失しているだけではいつまでたってもゲームクリアにならないのだ。
それに、ムゲン自身も満足できるような状態にしなければならないのだ。これは難易度が高い……
だが、ムゲンには結構自信があった。これでも無数の世界で無数の体験者たちのいろいろなドラマを見てきているのだ。
どうすれば体験者たちが、つまりは魔物たちが、そして自分自身が心から満足するかということくらいほぼわかっている。
まあ、ゲームの魔物なので、その理解が通用するかどうかはわからないが、それが通用しないのなら、ゲームの仕様が間違っていると思えるくらいの自信があった。超時空体験図書館で受けた授業の成果をここで見せねばならない。
ムゲンは、アイテムボックスからあらゆる世界を癒すことができる伝家の宝刀であるアイテム「完全なる体験の自治権」を取り出す。
このあらゆる世界を救う万能薬をスキル無限ヒールに付与魔法を使って付与する。
MPはボスキャラとその子共たちから借りてきた。
だが、念には念を入れておこうと選り抜きのムゲンの分身体たちは、さらに追加で超時空城にあるプライベート世界も付与魔法で付与する。
スタンドアロンで完全に満足できるプライベート世界をすべての魔物と自分自身に与えるのだ。
さらに完全合意の上で遊べる演劇体験サークル遊びも追加で付与する。
ダメ押しで超時空大遊園地にあるお望みの体験至れり尽くせりの昭夫ダンジョンも追加付与する。
最後にまだ未完成ではあるが、不自由な世で書かれた理想世界の設計図も付与した。
これだけ付与すれば大丈夫だろうと思う。
また変に復活してくると困るので一撃で決めたい……
特大の無限ヒール魔法が天空に魔法陣を描き始める……
MPゲージが上がってゆく……
一瞬激しく光ると無限ヒール魔法が最大MPで炸裂した!
天空にまるで花火のようにヒール魔法が展開し、ヒール魔法の豪雨となって地上に降り注いだ……
ありとあらゆる魔物たちがそのヒール魔法に打たれる……優しい……当たるたびにとても心地よい……
魔物たちの劣化率が0になった……そしてマイナス値を叩き出しはじめた……
魔物たちが勝手に思い思いの姿に変身しはじめた……
イケメンもいるし、美女もいる……鳥もいる……
どうやら付与魔法で付与した各種のイメージが人型用のイメージだったのでそうなったようだ。
魔物たちは自由になった。その魔物族という束縛からも完全に自由になってしまった……
もはや彼らは自分を魔物だと思っていなかった……自分は体験者であり、自分の体験を自由に選べる者であるとの自覚をもっていた。
そして、完全な体験の自治権を得て、その権利をあらゆる体験者に提供したい……という確固たる意志まで持っていた。
中には、スタンドアロンで自分だけのプライベート世界で楽しむ魔物たちもいた。
演劇サークルを自発的にこの指とまれという感じで魔物同士、いや変身した人型の者たちで楽しみ始めている者たちもいた。
超時空体験図書館へのリンクまで付与していたので、皆、望むドラマやシナリオを超時空体験図書館から引き出してきて楽しみ始めた……ムゲンも知らなかったのだが、超時空体験図書館には体験者たちに人気のある選り抜きのそうしたシナリオやドラマが膨大にあったのだ。彼らはそれを目ざとく見つけたらしい。
何かとんでもないことが起きていた……起こってしまっていた……
そこまでのことが起こるとはムゲンは予想していなかった。だってこれはあくまでゲームなんだから……と思っていた。
ゲームは確かにそれでクリアした。皆でマイムマイムを仲良く踊ってファンファーレが鳴ってクリアのテレパシー通信を聞いた。
しかし……ムゲンはそれだけで済まない何かが起こってしまったと直感していた。
シューちゃんなど、泣き出してしまっているし……
笑い泣きという感じで、ムゲンの方を見ている。
ムゲンが何が起こったのかわからなくて不安に思い始めたことを察したシューちゃんは涙をぬぐいながら説明しはじめた。
「あのね、ムゲンさん、この時のない部屋は、超時空世界につながっているの。つまりここで起こったことは超時空世界全体を変えてしまうのよ。
超時空世界は、皆の精神と意志によって変化するのよ。
あのね、これは確かに作られたゲームなんだけど……超時空世界ではゲームも現実も同じことなのよ。
つまりね、あなたの与えたものが超時空世界にいるすべての体験者に今、与えられたの」
「え?そうなの?」
「そうなのよ、もちろん、ここでは与えられたものを受け取るかどうかはそれぞれが自由に選ぶことができるんだけど、また与えるものの内容が似通っている場合もあったりするんだけど、その中身の精神性まですべて一致していることはほとんどないから、この世界に新しい体験の選択肢が今増えたの。
もともと超時空世界には体験の自治権は提供されているんだけど、ムゲンさんがイメージした体験の自治権とはまた少しニュアンスが違っていたりするのよ。
名前は同じでも味の違うラーメンみたいなものね。同じ味噌ラーメンという名前でも創る人や材料が違えば違う味でしょう?
「そうなんだ……そうとはちっとも知らなかった……」とムゲンは思う。
「いいのよ、みんな喜んでくれているんだから、まさかこのゲームが初めてでこんなクリア方法を見れるとは思っていなかったわ、ムゲンさん、ありがとう」
ムゲンはシューちゃんに感謝されて照れくさくなってしまった。
「いや、そんな……ゲームで感謝されてもなあ……」
「だから、これ超時空世界ではゲームじゃないって言ってるのに」
再編成されたムゲンの分身体たちはちょっと誇らしい気持ちになった。
甘太郎だけは無邪気に大喜びしていた……
魔物全部が癒されて戦意喪失しているのだから、これで終わりだろうと確信していた。
しかし、ゲームは終わらない。終わらないのだ。
なぜだ? と思う。シューちゃんを見ると苦笑している。
まだ何か裏があるのか……
仕方なし……という感じでシューちゃんが解説してくれる。
「あのですね、ムゲンさん、今回は、あたしも驚いてしまいましたし、感動しちゃいましたけど、このゲームをクリアするには、魔物たち全部が戦意喪失するだけじゃまだ不足なんですよ。
このゲームクリアの条件は、魔物たちを完全に満足させてあげて、その状態が元に戻らない状態にまでしてあげないと終わらないんです」
そうだったんだ……
「ちなみに戦意喪失状態のままだと、放置しているとまた魔物の本能がムクムクと復活してくるんですよ」
「じゃあ、どうすればそうならないようにできるの? シューちゃん」
「それは、プレイヤー、つまりムゲンさんの精神レベルが必要十分になった状態で魔物たち全員をヒールで癒してあげれば、そうなります」
「であれば、俺の精神レベルが必要十分ではなかったってこと?」
「まあ、今回は、そういうことになってしまいますね……」
「いや今回はって、まだゲーム続いてるんだろう?」
「そうですね、続いています。だから、ムゲンさんはこれから精神レベルの底上げをする必要があるわけです」
「底上げって言っても、どうすれば底上げできるわけ?」
「そうですね、ムゲンさんの場合、ラッキーというか、なんというか、普通の方とは違ってご自身の分身たちを分離できるわけですから、劣化している分身体を分離してしまえば、おそらく必要十分状態になるんじゃないかと思いますよ、多分ですけど」
「そうなのか……劣化している奴だけ別世界に転送してしまえばいいんだ……」
「あくまでそれは試してみないとわからないですけど、このゲームの製作者はあたしではないので…」
「でも、もうずいぶんやり込んでいるんだろう?」
「そうですね、およそ50万年くらいプレーしていますよ」
「じゃあ、シューちゃんは、どうやってこのゲームをクリアしたの?」
「あのですね、このゲームには決まったクリアの形はないんですよ。とにかくすべての魔物とご自身を心から満足させて、その状態を不退転な状態にすればクリアなんです。
ちなみに、わたしは、すべての魔物に一体の分身体を付き添わせて、愛情深く魔物たちを小さくて弱い状態から世話して上げ続けたらクリアしましたけど、他にもいろいろなクリア方法があるみたいです。
中には魔物全員とご自身を完全に満足させれるような特殊な幻術にかけて満足させてクリアした方もいるらしいです」
「なるほど……確かにそうなると本当に奥が深いな……」
「ええ、今回はヒール魔法をわたしが選んでおいてムゲンさんにも装備しましたけど、スキルや魔法やアイテムまでそれぞれのプレイヤーが考え出して自分に付与することもできるんですよ」
「なるほど、それはすごいな……つまりクリア手段は何でもありってこと?」
「まあ、そういうことになるかと思います。とにかく自分も含め皆を心から満足させて、それが永遠に続くような状態にすれば合格になるってことなんですよ」
ふむふむ……とムゲンは思う。
なかなかそうなってくると相当に奥が深い。
なんでもありかあ……とムゲンは遠い目をする。
まあ、みんなにとって望ましい目標を実現するための手段は何でもありでいいのかもしれないなあ……と思う。
まあ、失敗しても許されるのがゲームのいいところだから、いろいろ試したくなるのだろうなあ……とこのゲームにはまっているっぽいシューちゃんに思いをはせる。
リアルでは、失敗するとへたしたら自業自得学園ゆきだからなあ……こうしたゲームで学べるのはいいことかもしれないなあ……と思う。
ちなみに一応、ゲームの強制終了ボタンやセーブボタンなども備えられているらしい。
しかしあまりそれを乱用し使いすぎると、一定時間、使えなくなることもあるらしい。
なるほど……よくできているゲームだなあ……とムゲンは感心する。
とはいえ、感心しているだけではゲームをクリアできない。
なんとか精神性というものを上げねばならないらしい。
そこでムゲンは、アホ太郎などの劣化系の分身体を分離して、安全そうな別世界に送り始めた。
しばらく安全な世界で遊んでいてくれよと言うと、劣化アホ太郎たちは、喜んでくれる。
彼らは、ただ遊びたいだけなのだ……こんな難易度の高いゲームなどはあまり好みではなかったらしい。
まあ、いろんな世界で遊びまわっているうちに次第に成長してくるだろうとムゲンは思っている。
そもそも誰もが自由に遊び続けれる世界であるべきなのだとすら思っている。
だからムゲンは魂のお勉強なんちゃら……というのが嫌いなのだ。
だが、誰もが自由に心から楽しみ続けれる、遊び続けれる世界を実現するためのお勉強というのならば、話はちょっと違ってくる。
誰かに支配されるための魂のお勉強などは糞くらえだが、自分の体験を自分の意志だけで自由に選び楽しめるようになるためのお勉強ならば、むしろしたいくらいなのだ。
そういう意味では、このゲームはムゲンの願いに結構合致していた。
そうなるとムゲンもさてどうしてやろうか……とがぜんやる気になってくる。
劣化状態の分身体を分離してゆくと、次第にムゲンの顔つきも変わってきた。凛々しくなってきた。
「でへへ……」とだらしなく笑うアホ太郎の面影が消えている
野生の本能太郎君なども分離させてもらった。
教育すれば成長するかと思い、同居させていたが、一向に成長しないで本能にだけ従ってしまうので、この場にはふさわしくないだろうと思ったのだ。
ムゲンはそんな感じでふさわしくないと思った自分の分身体を分離してゆく。
だいぶんスリムになってきた。
誰にでも甘い甘太郎は残しておいた。このゲームの場合、おそらく必要だろうと思ったのだ。
しかしそれだけではダメだろうと思い、学者タイプの分身体も残した。状況分析係だ。
観察者の分身体も残した。全体を俯瞰して指揮のアドバイスをする参謀だ。
後、誰もが満足できる新世界クリエイターチームの分身体たちは総員残した。彼らは絶対にはずせない。
まだ超時空城で新世界創造中のメンバーなども呼び寄せた。
不自由な世界群で素晴らしい体験というお宝さがしをしながら、理想世界の作り方などを研究しているような分身体も呼び寄せた。
各々の独自の個性を持つ分身たちの意識が分離し、また合体して別のタイプの意識統合体になってゆく。
まるで様々な形態に変形できる意識合体ロボだな……とムゲンは苦笑する。
さて、そろそろチャレンジしてみよう……
この間、ほぼ時間が経過していない。一瞬でムゲンはその作業をなした。
目の前には、少しづつ精神性が劣化してゆく魔物たちがいる。
劣化率が90%くらいになるとまた攻撃してくるらしい。
今は、まだ劣化率10%くらいだから、大丈夫だろう。
大人しいものだ……
しかし、問題はどうやって彼らを満足させるのかだ……戦意喪失しているだけではいつまでたってもゲームクリアにならないのだ。
それに、ムゲン自身も満足できるような状態にしなければならないのだ。これは難易度が高い……
だが、ムゲンには結構自信があった。これでも無数の世界で無数の体験者たちのいろいろなドラマを見てきているのだ。
どうすれば体験者たちが、つまりは魔物たちが、そして自分自身が心から満足するかということくらいほぼわかっている。
まあ、ゲームの魔物なので、その理解が通用するかどうかはわからないが、それが通用しないのなら、ゲームの仕様が間違っていると思えるくらいの自信があった。超時空体験図書館で受けた授業の成果をここで見せねばならない。
ムゲンは、アイテムボックスからあらゆる世界を癒すことができる伝家の宝刀であるアイテム「完全なる体験の自治権」を取り出す。
このあらゆる世界を救う万能薬をスキル無限ヒールに付与魔法を使って付与する。
MPはボスキャラとその子共たちから借りてきた。
だが、念には念を入れておこうと選り抜きのムゲンの分身体たちは、さらに追加で超時空城にあるプライベート世界も付与魔法で付与する。
スタンドアロンで完全に満足できるプライベート世界をすべての魔物と自分自身に与えるのだ。
さらに完全合意の上で遊べる演劇体験サークル遊びも追加で付与する。
ダメ押しで超時空大遊園地にあるお望みの体験至れり尽くせりの昭夫ダンジョンも追加付与する。
最後にまだ未完成ではあるが、不自由な世で書かれた理想世界の設計図も付与した。
これだけ付与すれば大丈夫だろうと思う。
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特大の無限ヒール魔法が天空に魔法陣を描き始める……
MPゲージが上がってゆく……
一瞬激しく光ると無限ヒール魔法が最大MPで炸裂した!
天空にまるで花火のようにヒール魔法が展開し、ヒール魔法の豪雨となって地上に降り注いだ……
ありとあらゆる魔物たちがそのヒール魔法に打たれる……優しい……当たるたびにとても心地よい……
魔物たちの劣化率が0になった……そしてマイナス値を叩き出しはじめた……
魔物たちが勝手に思い思いの姿に変身しはじめた……
イケメンもいるし、美女もいる……鳥もいる……
どうやら付与魔法で付与した各種のイメージが人型用のイメージだったのでそうなったようだ。
魔物たちは自由になった。その魔物族という束縛からも完全に自由になってしまった……
もはや彼らは自分を魔物だと思っていなかった……自分は体験者であり、自分の体験を自由に選べる者であるとの自覚をもっていた。
そして、完全な体験の自治権を得て、その権利をあらゆる体験者に提供したい……という確固たる意志まで持っていた。
中には、スタンドアロンで自分だけのプライベート世界で楽しむ魔物たちもいた。
演劇サークルを自発的にこの指とまれという感じで魔物同士、いや変身した人型の者たちで楽しみ始めている者たちもいた。
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何かとんでもないことが起きていた……起こってしまっていた……
そこまでのことが起こるとはムゲンは予想していなかった。だってこれはあくまでゲームなんだから……と思っていた。
ゲームは確かにそれでクリアした。皆でマイムマイムを仲良く踊ってファンファーレが鳴ってクリアのテレパシー通信を聞いた。
しかし……ムゲンはそれだけで済まない何かが起こってしまったと直感していた。
シューちゃんなど、泣き出してしまっているし……
笑い泣きという感じで、ムゲンの方を見ている。
ムゲンが何が起こったのかわからなくて不安に思い始めたことを察したシューちゃんは涙をぬぐいながら説明しはじめた。
「あのね、ムゲンさん、この時のない部屋は、超時空世界につながっているの。つまりここで起こったことは超時空世界全体を変えてしまうのよ。
超時空世界は、皆の精神と意志によって変化するのよ。
あのね、これは確かに作られたゲームなんだけど……超時空世界ではゲームも現実も同じことなのよ。
つまりね、あなたの与えたものが超時空世界にいるすべての体験者に今、与えられたの」
「え?そうなの?」
「そうなのよ、もちろん、ここでは与えられたものを受け取るかどうかはそれぞれが自由に選ぶことができるんだけど、また与えるものの内容が似通っている場合もあったりするんだけど、その中身の精神性まですべて一致していることはほとんどないから、この世界に新しい体験の選択肢が今増えたの。
もともと超時空世界には体験の自治権は提供されているんだけど、ムゲンさんがイメージした体験の自治権とはまた少しニュアンスが違っていたりするのよ。
名前は同じでも味の違うラーメンみたいなものね。同じ味噌ラーメンという名前でも創る人や材料が違えば違う味でしょう?
「そうなんだ……そうとはちっとも知らなかった……」とムゲンは思う。
「いいのよ、みんな喜んでくれているんだから、まさかこのゲームが初めてでこんなクリア方法を見れるとは思っていなかったわ、ムゲンさん、ありがとう」
ムゲンはシューちゃんに感謝されて照れくさくなってしまった。
「いや、そんな……ゲームで感謝されてもなあ……」
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