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自由な場所
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甘太郎は、道なき山奥の透き通った水の流れる渓流にある大岩から水の中に飛び込んでいた。
青緑色をしたその透き通った水の美しさに心が癒されてゆく。
全知ちゃんの言う通り、動物たちに襲われることはなかった。
しかし、アブやブヨや蚊やヒルなどには襲われてしまった。
そこでいったん街に戻って虫よけの網をもってきてかぶるようになった。
しかししばらくすると次第にそうした虫たちの動向がわかるようになってきた。
天気や時刻によって出現するパターンが違うのだ。
食べれる野草や木の実などもどんどんと覚えていった。
食べれるキノコなども見分けがつくようになっていった。
全知ちゃんに教えられて、きりもみ式の火起こしの技も習得してしまった。
乾燥した中が中空の空木の枝を使うと早く火が付くことがわかったりした。
甘太郎は、半信半疑ではあったが、次第に道なき山奥の素晴らしさを実感しはじめた。
渓流で素っ裸になって泳いでいても誰も何も言ってこないし、周囲の目をまったく気にする必要がない。
社会の常識とかルールというものを強制してくるような圧力が、そこにはほとんどなかった。
好きな時に起きて、好きな時に食べて、好きな時に出して、好きな時に眠ることができた。
となりの部屋からの音が気になって眠れないとか、そういうこともまったくなかった。
救急車のサイレンなんかも全然聞こえなくなった。
ただ、いろいろな鳥たちがやってきてはその鳴き声を甘太郎に聞かせてくれた。
全知ちゃんの導きで、甘太郎は、山の奥にちいさな洞穴を発見した。
その洞穴の中は冬は暖かく、夏は涼しかった。
時々、擦れていない霊たちがやってきて全知ちゃんといろいろなお話をしていた。
甘太郎は、不自由な世界のボスたちが大挙してやってくるかと身構えていたが、残念ながらやってこなかった。
全知ちゃんの嘘つき……と甘太郎は思ったが、ボスたちとの対話は全部全知ちゃんが相手してくれていたことを後に知ることになった。
つまりは、甘太郎は、全知ちゃんにうまく保護された形になっていた。
甘太郎は、それがわかると何としても社会に戻って世直し活動を再開するのだと言い始めた。
全知ちゃんは、世直し活動をするなら、甘太郎たちのいる山奥に良心的な者たちを避難させればいいと甘太郎にアドバイスした。
全知ちゃんの言い分はこんな感じだった。
「甘太郎ちゃん、甘太郎ちゃんの世直しというのは、どういう状態にしようと思っているの? 良心的な者が助かる状態?それとも悪党たちが助かる状態?」
甘太郎は、かなり悩んで全知ちゃんと論争した果てに、しぶしぶ良心的な者たちが助かる状態を選んだ。
すると、「それなら、良心的な者たちをみんなこの道なき山奥の甘太郎独立王国に救助すればいいじゃないの」
などと全知ちゃんに言われる。
確かに、今や甘太郎は、山奥のその場所での生活の方が社会で生活している時よりも自由で気楽で楽しいと感じていた。
しかし、いかに良心的な者たちとはいえ、たくさん集まるとまた社会的な人間関係のいろいろな問題が発生するんじゃないだろうかとちょっと心配にもなった。
すると全知ちゃんは、
「あら、何でそんなことを心配しているの?
道なき山奥のエリアは、とても広いじゃない。 何も一つの場所にみんなが集まらなくてもいいじゃないの」
などと言う。
「でも一人じゃ寂しいじゃないですか。そんな生活、おすすめできないですよ」と甘太郎。
「あら、でも甘太郎は、今までずっと肉体としては一人で生活して結構楽しんでいたじゃないの」
「そ、それは全知ちゃんもいるし、自然が綺麗だったりするし、いろいろな生き物たちや霊たちなどもいるし、そうそう、自分で自分の空想世界をコントロールする技なんかも全知ちゃんから教えてもらったし、漫画や本も持ってきたしで楽しみが結構あったからですよ」
「そう、じゃあ、その楽しみをここにくる人たちにも教えてあげればいいんじゃないの?」
そう言われて、甘太郎も案外、社会に相当絶望しているような人たちになら楽しんでもらえるのかもしれないと思い始めた。
「そうよ、山奥の引きこもりニートたちのシェアハウスとかもあるし、それをさらにマニアックに追及した形だと思えば別に変じゃないわよ」
などとグイグイと全知ちゃんはお勧めしてくる。
「でも~、社会的に受け入れられないんじゃないですか?」などと甘太郎が渋っていると、
「あーもう! 前にも言ったでしょう? 社会に受け入れてもらおうなんて思っている段階でダメね。社会が体験の自治権を否定して良心に反した不当な支配をしてくる以上、社会のルールが何であれ、そんなものは無視して独立宣言をして自治する権利が良心に従うことを自発的にできる者たちにはあるんだって自覚しないと。
いい、体験の自治権を確信犯で体験者たちに提供しない世界支配者たちは、全員、犯罪者なのよ。犯罪者たちに受け入れてもらえないんじゃないですか?なんて質問するようじゃぜんぜんダメよ。また時のない部屋で修行しなおさないといけないわね。
そんな価値観だと悪魔たちの世界にいったら、悪魔たちが許可しないと何もできないダメな子になってしまうわよ」
全知ちゃんにそんなことを言われ、甘太郎は、ショックでしばらく寝込んでしまった。
ようやく精神的に回復してきた甘太郎は、意を決して社会に絶望しているような良心的な魂たちに山奥生活の勧誘をはじめ出した。
山奥でのキャンプ道具一式は、ピレネーフリースクールの卒業生たちの遺産でまとめ買いして経済的余裕がない参加希望者には無償で貸与することにした。
基本はスタンドアロン型で生活するようにして、互いの参加者の心からの合意があればその合意がある間だけオフ会的に一緒に遊んだり生活することもできるようにした。
守るべきルールは、<できるだけあらゆる体験者の体験の自治権を尊重すること> だけだった。他のルールは一切なかった。
助け合いをする義務なんてものもなかった。はじめからそう伝えられて納得合意した者たちだけが参加していた。
積極的に他者の体験の自治権を否定するようなことをしない限り、各自がそれぞれ自由に自分がどうするかを決めることができるようになっていた。
そうした自助努力の断固たる意志や覚悟がある者たちだけが参加していた。
ただし、当然、助け合いたければ自由に助け合うことも自由であり、実際に多くの場合合理的な助け合いがその自由意志から自然発生していた。
全知ちゃんは、互いの自発的な自由意志を尊重することが助け合いをすることよりも大事なのだと説明していた。
助け合いを最優先の義務とすると、その価値観に参加者全員が呪縛されるからだと説明された。
それは皆の命がけの世直し行為などまで将来呪縛するようになるので本末転倒になると説明された。
悪党支配者たちが一人でも人質になると、全員がその救助のために不自由になるような状態を生み出すからだと説明された。
もし、そうした価値観を持ちあってしまうと、体験者たちの自由を奪うために確信犯でわざと被害者や犠牲者を生み出すタイプの確信犯の邪悪な支配者たちには対抗できなくなるのだと説明された。
つまり、いくら世界中の被害者たちを助けても助けても次から次へと被害者をさらに生み出されれば、その被害者たちを生み出す悪党行為を止めさせるかわりにその被害者たちの救助活動ばかりしなければならなくなり、悪党たちの邪悪な術中に落ちることになるからだと説明された。
こうしたやり方が良心的な魂たち全体を、その良心的な心の弱みにつけこんで支配するための邪悪な方法になってしまっているからなのだと全知ちゃんは説明してくれた。
互いに助け合うことよりも、そうした助け合いが必要になるように世界に各種の問題や事件をわざと生み出し続けている悪党たちの悪党行為を止めさせることの方が大事なのだと説明された。
不自由な世界に不自由な状態のままただ生き残ることよりも、不自由な世界を不自由な状態にわざとしている悪党行為を止めさせることを優先する価値観が本当に安全で自由な世界の実現と維持には必要なのだと説明された。
動物たちの体験の自治権も尊重する必要があったので、狩猟などは禁止になった。ただし、性格の悪い人間や熊……などに襲われてしまったら自分を守ることは当然認められた。
多くの参加者たちは、思い思いのテント暮らしをしはじめた。ある者は、しばらくすると甘太郎のいる山奥からずっと離れた山奥に移住したりもした。
皆良心に反したことをしない限り自由だった。全知ちゃんの分身体が一応、皆の保護者として憑いていろいろアドバイスしていた。
道なき山奥での独立宣言は皆の心の中で、黙って宣言された。
みな全知ちゃんの指導で、道のある場所まできたら普通の登山者を装った。実際、普通の登山者だった。ただかなりの長期登山者で、ただ心の中で独立宣言をしているだけだった。
だから社会の表向きの支配者たちは、彼らの意識が独立宣言をしていることに気づくことはなかった。
たまには街に降りていって、塩や保存食を購入する者もいた。完全自給自足にはこだわらなかった。
しかし、中には松葉ばかりかじって生活するような仙人のような者なども現れた。
そんなだったので、次第に参加者の多くがほとんどお金を使わない生活になっていった。
漫画や本などは、皆で回し読みして、感想を述べあったりして楽しみ、時々古本屋に売りに行って 別の古本を購入した。
嵐や病気などの備えのために、山のふもとの街に甘太郎は古民家を一軒購入した。
そこは倉庫や緊急休憩所として使ったりした。
山奥では、多くの参加者が自分の心の世界を開拓していた。
他にあまりすることがなかったからだ。
自分の意志で自分の心の世界をコントロールする訓練などをしていた。
その結果、参加者の多くが社会的な成功者ではなく、自分の心の世界における成功者になっていった。
彼らは自分の意志だけで自分の心の世界を統御できるようになっていった。
下界には、無数の霊的存在たちが互いに自分の操り人形を増やすための競争を繰り広げていたが、甘太郎の生活場所が道なき山奥のうえに守護者として全知ちゃんがいることもあり、参加者のほとんどがそうした霊的存在たちの操り人形にされてしまうリスクから自由になれていた。
その結果、多くの参加者たちが自分の心の世界を自分の意志だけで自由にコントロールできるように進化してゆくことができた。
下界にいたままでは、何かしらの霊的存在たちの憑依を受けてしまい、そうした霊的存在に依存してしまったり、完全に操り人形にされてしまうケースが実に多かったのだ。
全知ちゃんは、そうした霊的世界の事情も知っていて道なき山奥に安全地帯をつくるようにアドバイスしたらしい。
そのあたりのことは、甘太郎たちは霊的存在たちからの影響力から完全に自立できる能力を得るまで教えられなかった。
個人では到底取り除けないような障害物が、人間族の個人が単独で意識として自由になるための道に置かれていたのだという。
へたにそうしたことを意識してしまうと、邪悪な霊的存在たちに狙われる可能性が高くなるからだと後に全知ちゃんは甘太郎たちに説明した。
不自由な世界の霊的存在集団たちは、自分たちの勢力や派閥以外の者がそうした組織から独立した存在として霊的存在以上に進化することを確信犯で共謀して妨害していたらしい。
下界ではその結果、本人には気づかれることがない魂への集団イジメが発生し続けていたという。
道なき山奥で生きる甘太郎たちは、そうと気づかないまま、全知ちゃんの配慮によってこうした魂の安全地帯を手に入れていた。
青緑色をしたその透き通った水の美しさに心が癒されてゆく。
全知ちゃんの言う通り、動物たちに襲われることはなかった。
しかし、アブやブヨや蚊やヒルなどには襲われてしまった。
そこでいったん街に戻って虫よけの網をもってきてかぶるようになった。
しかししばらくすると次第にそうした虫たちの動向がわかるようになってきた。
天気や時刻によって出現するパターンが違うのだ。
食べれる野草や木の実などもどんどんと覚えていった。
食べれるキノコなども見分けがつくようになっていった。
全知ちゃんに教えられて、きりもみ式の火起こしの技も習得してしまった。
乾燥した中が中空の空木の枝を使うと早く火が付くことがわかったりした。
甘太郎は、半信半疑ではあったが、次第に道なき山奥の素晴らしさを実感しはじめた。
渓流で素っ裸になって泳いでいても誰も何も言ってこないし、周囲の目をまったく気にする必要がない。
社会の常識とかルールというものを強制してくるような圧力が、そこにはほとんどなかった。
好きな時に起きて、好きな時に食べて、好きな時に出して、好きな時に眠ることができた。
となりの部屋からの音が気になって眠れないとか、そういうこともまったくなかった。
救急車のサイレンなんかも全然聞こえなくなった。
ただ、いろいろな鳥たちがやってきてはその鳴き声を甘太郎に聞かせてくれた。
全知ちゃんの導きで、甘太郎は、山の奥にちいさな洞穴を発見した。
その洞穴の中は冬は暖かく、夏は涼しかった。
時々、擦れていない霊たちがやってきて全知ちゃんといろいろなお話をしていた。
甘太郎は、不自由な世界のボスたちが大挙してやってくるかと身構えていたが、残念ながらやってこなかった。
全知ちゃんの嘘つき……と甘太郎は思ったが、ボスたちとの対話は全部全知ちゃんが相手してくれていたことを後に知ることになった。
つまりは、甘太郎は、全知ちゃんにうまく保護された形になっていた。
甘太郎は、それがわかると何としても社会に戻って世直し活動を再開するのだと言い始めた。
全知ちゃんは、世直し活動をするなら、甘太郎たちのいる山奥に良心的な者たちを避難させればいいと甘太郎にアドバイスした。
全知ちゃんの言い分はこんな感じだった。
「甘太郎ちゃん、甘太郎ちゃんの世直しというのは、どういう状態にしようと思っているの? 良心的な者が助かる状態?それとも悪党たちが助かる状態?」
甘太郎は、かなり悩んで全知ちゃんと論争した果てに、しぶしぶ良心的な者たちが助かる状態を選んだ。
すると、「それなら、良心的な者たちをみんなこの道なき山奥の甘太郎独立王国に救助すればいいじゃないの」
などと全知ちゃんに言われる。
確かに、今や甘太郎は、山奥のその場所での生活の方が社会で生活している時よりも自由で気楽で楽しいと感じていた。
しかし、いかに良心的な者たちとはいえ、たくさん集まるとまた社会的な人間関係のいろいろな問題が発生するんじゃないだろうかとちょっと心配にもなった。
すると全知ちゃんは、
「あら、何でそんなことを心配しているの?
道なき山奥のエリアは、とても広いじゃない。 何も一つの場所にみんなが集まらなくてもいいじゃないの」
などと言う。
「でも一人じゃ寂しいじゃないですか。そんな生活、おすすめできないですよ」と甘太郎。
「あら、でも甘太郎は、今までずっと肉体としては一人で生活して結構楽しんでいたじゃないの」
「そ、それは全知ちゃんもいるし、自然が綺麗だったりするし、いろいろな生き物たちや霊たちなどもいるし、そうそう、自分で自分の空想世界をコントロールする技なんかも全知ちゃんから教えてもらったし、漫画や本も持ってきたしで楽しみが結構あったからですよ」
「そう、じゃあ、その楽しみをここにくる人たちにも教えてあげればいいんじゃないの?」
そう言われて、甘太郎も案外、社会に相当絶望しているような人たちになら楽しんでもらえるのかもしれないと思い始めた。
「そうよ、山奥の引きこもりニートたちのシェアハウスとかもあるし、それをさらにマニアックに追及した形だと思えば別に変じゃないわよ」
などとグイグイと全知ちゃんはお勧めしてくる。
「でも~、社会的に受け入れられないんじゃないですか?」などと甘太郎が渋っていると、
「あーもう! 前にも言ったでしょう? 社会に受け入れてもらおうなんて思っている段階でダメね。社会が体験の自治権を否定して良心に反した不当な支配をしてくる以上、社会のルールが何であれ、そんなものは無視して独立宣言をして自治する権利が良心に従うことを自発的にできる者たちにはあるんだって自覚しないと。
いい、体験の自治権を確信犯で体験者たちに提供しない世界支配者たちは、全員、犯罪者なのよ。犯罪者たちに受け入れてもらえないんじゃないですか?なんて質問するようじゃぜんぜんダメよ。また時のない部屋で修行しなおさないといけないわね。
そんな価値観だと悪魔たちの世界にいったら、悪魔たちが許可しないと何もできないダメな子になってしまうわよ」
全知ちゃんにそんなことを言われ、甘太郎は、ショックでしばらく寝込んでしまった。
ようやく精神的に回復してきた甘太郎は、意を決して社会に絶望しているような良心的な魂たちに山奥生活の勧誘をはじめ出した。
山奥でのキャンプ道具一式は、ピレネーフリースクールの卒業生たちの遺産でまとめ買いして経済的余裕がない参加希望者には無償で貸与することにした。
基本はスタンドアロン型で生活するようにして、互いの参加者の心からの合意があればその合意がある間だけオフ会的に一緒に遊んだり生活することもできるようにした。
守るべきルールは、<できるだけあらゆる体験者の体験の自治権を尊重すること> だけだった。他のルールは一切なかった。
助け合いをする義務なんてものもなかった。はじめからそう伝えられて納得合意した者たちだけが参加していた。
積極的に他者の体験の自治権を否定するようなことをしない限り、各自がそれぞれ自由に自分がどうするかを決めることができるようになっていた。
そうした自助努力の断固たる意志や覚悟がある者たちだけが参加していた。
ただし、当然、助け合いたければ自由に助け合うことも自由であり、実際に多くの場合合理的な助け合いがその自由意志から自然発生していた。
全知ちゃんは、互いの自発的な自由意志を尊重することが助け合いをすることよりも大事なのだと説明していた。
助け合いを最優先の義務とすると、その価値観に参加者全員が呪縛されるからだと説明された。
それは皆の命がけの世直し行為などまで将来呪縛するようになるので本末転倒になると説明された。
悪党支配者たちが一人でも人質になると、全員がその救助のために不自由になるような状態を生み出すからだと説明された。
もし、そうした価値観を持ちあってしまうと、体験者たちの自由を奪うために確信犯でわざと被害者や犠牲者を生み出すタイプの確信犯の邪悪な支配者たちには対抗できなくなるのだと説明された。
つまり、いくら世界中の被害者たちを助けても助けても次から次へと被害者をさらに生み出されれば、その被害者たちを生み出す悪党行為を止めさせるかわりにその被害者たちの救助活動ばかりしなければならなくなり、悪党たちの邪悪な術中に落ちることになるからだと説明された。
こうしたやり方が良心的な魂たち全体を、その良心的な心の弱みにつけこんで支配するための邪悪な方法になってしまっているからなのだと全知ちゃんは説明してくれた。
互いに助け合うことよりも、そうした助け合いが必要になるように世界に各種の問題や事件をわざと生み出し続けている悪党たちの悪党行為を止めさせることの方が大事なのだと説明された。
不自由な世界に不自由な状態のままただ生き残ることよりも、不自由な世界を不自由な状態にわざとしている悪党行為を止めさせることを優先する価値観が本当に安全で自由な世界の実現と維持には必要なのだと説明された。
動物たちの体験の自治権も尊重する必要があったので、狩猟などは禁止になった。ただし、性格の悪い人間や熊……などに襲われてしまったら自分を守ることは当然認められた。
多くの参加者たちは、思い思いのテント暮らしをしはじめた。ある者は、しばらくすると甘太郎のいる山奥からずっと離れた山奥に移住したりもした。
皆良心に反したことをしない限り自由だった。全知ちゃんの分身体が一応、皆の保護者として憑いていろいろアドバイスしていた。
道なき山奥での独立宣言は皆の心の中で、黙って宣言された。
みな全知ちゃんの指導で、道のある場所まできたら普通の登山者を装った。実際、普通の登山者だった。ただかなりの長期登山者で、ただ心の中で独立宣言をしているだけだった。
だから社会の表向きの支配者たちは、彼らの意識が独立宣言をしていることに気づくことはなかった。
たまには街に降りていって、塩や保存食を購入する者もいた。完全自給自足にはこだわらなかった。
しかし、中には松葉ばかりかじって生活するような仙人のような者なども現れた。
そんなだったので、次第に参加者の多くがほとんどお金を使わない生活になっていった。
漫画や本などは、皆で回し読みして、感想を述べあったりして楽しみ、時々古本屋に売りに行って 別の古本を購入した。
嵐や病気などの備えのために、山のふもとの街に甘太郎は古民家を一軒購入した。
そこは倉庫や緊急休憩所として使ったりした。
山奥では、多くの参加者が自分の心の世界を開拓していた。
他にあまりすることがなかったからだ。
自分の意志で自分の心の世界をコントロールする訓練などをしていた。
その結果、参加者の多くが社会的な成功者ではなく、自分の心の世界における成功者になっていった。
彼らは自分の意志だけで自分の心の世界を統御できるようになっていった。
下界には、無数の霊的存在たちが互いに自分の操り人形を増やすための競争を繰り広げていたが、甘太郎の生活場所が道なき山奥のうえに守護者として全知ちゃんがいることもあり、参加者のほとんどがそうした霊的存在たちの操り人形にされてしまうリスクから自由になれていた。
その結果、多くの参加者たちが自分の心の世界を自分の意志だけで自由にコントロールできるように進化してゆくことができた。
下界にいたままでは、何かしらの霊的存在たちの憑依を受けてしまい、そうした霊的存在に依存してしまったり、完全に操り人形にされてしまうケースが実に多かったのだ。
全知ちゃんは、そうした霊的世界の事情も知っていて道なき山奥に安全地帯をつくるようにアドバイスしたらしい。
そのあたりのことは、甘太郎たちは霊的存在たちからの影響力から完全に自立できる能力を得るまで教えられなかった。
個人では到底取り除けないような障害物が、人間族の個人が単独で意識として自由になるための道に置かれていたのだという。
へたにそうしたことを意識してしまうと、邪悪な霊的存在たちに狙われる可能性が高くなるからだと後に全知ちゃんは甘太郎たちに説明した。
不自由な世界の霊的存在集団たちは、自分たちの勢力や派閥以外の者がそうした組織から独立した存在として霊的存在以上に進化することを確信犯で共謀して妨害していたらしい。
下界ではその結果、本人には気づかれることがない魂への集団イジメが発生し続けていたという。
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