理想世界の創り方

無限キャラ

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あるべき世界

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全知ちゃんの無数の分身体は、不自由な世界にいる「あらゆる体験者の体験選択の自由を尊重する意志を持っている者たち」にそれぞれ「不自由な世界でやり残していること」をできるだけしてしまうようにとテレパシーで伝えて回っていた。



全知ちゃんは、そうした意志を持っている者たちを助け、不自由で残酷な世界を自由な世界に改めないまま「不自由で残酷なまま継続しようとするのならば」そのような者たちを不自由な世界ごと丸ごと終わらせるべきだと判断していたからだ。



その丸ごと消すべき世界には、「望まれない体験の強制が可能なあらゆる世界」が含まれていた。



すなわち、生命世界のすべても、物質世界のすべても、霊的世界のすべても、またそうした世界の創造主たちの世界のすべても……天国も地獄も煉獄も宇宙も……「望まれない体験の強制が好き勝手にできてしまうあらゆる世界のすべて」が含まれていた。



不自由な世界の支配者や創造主たちは、そのことを真剣に理解しようとしていなかった。


自分たちが創造し、支配している世界に問題があるのならそれらを滅ぼして消してしまえばいいとしか思っていなかった。人類に問題があるのなら人類丸ごと消してしまえばそれで問題が解決すると思い込んでいた。


自分たちはそうすることで問題を解決し、不自由な世界に生き残ることができると思い込んでいた。



甘太郎は、何度も何度も何度も繰り返し全知ちゃんに何とか不自由な世界を丸ごと救ってほしいと要求し食い下がった。



そのたびに、全知ちゃんは、いろいろなたとえ話などをしながら、どうしても「いくら注意しても確信犯で悪いことをし続ける者たち」は甘太郎の願うような形では救うことができないのだと諭した。



甘太郎はしかしあきらめずに食い下がって全知ちゃんに問う。



「だって悪いことをする者たちは、ほとんどみんな悪い本能とか欲望とかを不自由な世界の創造主とかに植え付けられてしまったから悪いことをするんでしょう?


だったら一番悪いのはそんな悪い本能とか欲望をわざとみんなに与えた不自由な世界の創造主でしょう?!



もしこの不自由な世界の創造主たちがみんなに悪い本能や欲望じゃなくて良い本能や欲望を与えてくれていたら、誰も悪いことなんてしなかったはずですよ!


それなのに、一部の良心的な者だけ救って他は世界丸ごと消してしまうなんて判断するのはおかしいでしょう?



そんな判断をしちゃうなんて、全知ちゃんもそれなら悪党なんじゃないですか?」




そんな風に甘太郎は必死で反論する。何度言い負かされても甘太郎はあきらめない。



甘太郎は弱いが、何度倒されても、立ち上がってくる。



「だから~、その話は前に何度もしたじゃないの!これほど間違った価値観が蔓延してしまった腐りきった世界を改めるのは大変なのよ!こちらを立てればあちらが立たずみたいな問題が多すぎて!」



全知ちゃんもそんな感じでちょっとあきれながら返答する。



「そこをなんとかするのが超時空体のみなさんのなすべきことじゃないんですか?」



「じゃあ何? あたしたちがこの不自由な世界の創造主とか支配者とかその部下たちとかの自由意志をすべて奪って全員操り人形みたいにしちゃってもいいの?」



「そ、そんなことはしちゃいけないことですよ」



「じゃあ何? 自由意志で確信犯で悪いことをやり続ける者たちを甘太郎ちゃんはどうするつもりなのかしら?」



「でも、悪いことをやり続けるのは悪いことをしたくなるからでしょう?


それなら、悪いことがしたくなくなるようにしてあげればいいだけじゃないですか!


悪いことがしたくなる欲望を消してあげればいいだけなんじゃないですか?


そうすれば世界丸ごと消す必要なんてないはずですよ」



「それをこの不自由な世界の創造主たちや支配者たちは頑なに受け入れないの! 


そうしたお薬を発明しても、そんなお薬は麻薬だからとか言って禁止にしちゃったりね」



「なんでそんな良いお薬が発明されたのに使用禁止にするんですか? この世界の創造主とか支配者たちって頭おかしいんじゃないですか?」



「それはみんなが悪いことをしなくなって仲良く和気あいあいになってしまうとみんな権力者のおかしな命令に従わなくなるからよ。


自分たちのおかしな命令に何でも無条件に従うイエスマンを手に入れるには、みんなが仲良しになると困るわけ」



「だったらそんなダメな心の権力者たちだけを消してしまえばいいんじゃないですか? 別に世界丸ごと消さなくても!」



「そうねえ……確かにそれも一理あるんだけど、ダメな権力者たちだけ一時的に消しても、この体験強制世界の肉体や霊体の基本設計にプログラムされちゃってる悪い欲望とか本能とかがそのままだと次から次へとまた悪い権力者が生まれてきちゃうという問題もあるの」



「じゃあ、悪い権力者も悪い欲望や本能も両方消してあげればいいんじゃないですか?」



「あら、それじゃあ、悪い権力者は消してもいいの? 甘太郎ちゃんは、みんな全員救いたかったんじゃないかしら?」



「そ……それは、世界丸ごと消してしまうよりかはその方がまだいいんじゃないのって話ですよ。できれば悪い権力者も悪いことでなく良いことがしたくなるように治療してあげて欲しいですよ」



「だって治療なんて絶対受けたくないって思ってる者たちを無理やり治療することも問題になるのよ。


それが認められてしまえば、表向き治療が目的だと言えばどんなことだって好き勝手にできちゃうから」



「でも悪いことじゃなくて良いことがしたくなるようにしてあげることは悪いことじゃないでしょう?」



「でもそれをしちゃうとあたしたち超時空体が、まだ魂の進化度が未熟な体験者たちを自分たちの意に沿うだけの操り人形にしちゃうのとほとんど同じことになるのよね。


そうなると、あたしたちもあたしたちより進化している者たちに同じように扱われてしまうことを認めてしまう原因を創ってしまうことになるのよ」



「良い目的のためでもダメなんですか?」



「その良い目的の内容次第でもあるけど、ある知性レベル以上に進化した自由意志を持った存在は、良かれと思っていれば、何をしても許されるというわけにはいかないのよ。常に自業自得の責任が問われるようになっているから」



「でも、全知さんは、自分が悪い欲望を持ってしまったら、誰かに良い欲望が持てるように治療してほしいんじゃないですか?」



「あのね……甘太郎ちゃん、欲望自体には良いも悪いもないのよ。ただ悪い欲望に操られて悪いことを他の体験者に実行してしまうことに問題があるの。超時空体ともなるとどんな欲望もその欲望に流されないで完全に自分の意志で自由自在に欲望そのものをコントロールして楽しめるようになるのよ。それでいてそうした欲望によって他の体験者を意図的に苦しめるようなことは絶対にしないの」



「え? そうなんですか?」



「そうよ。その程度のことが自由自在にできないうちは超時空体にはなれないもの。まあ今の甘太郎ちゃんには、ちょっと理解しにくい境地かもしれないけど」



「じゃあ、じゃあ、この不自由な世界の創造主とか支配者たちとか権力者たちとかをその境地に連れて行ってあげてくださいよ!」



「だから、今、その準備中なのよ。自業自得の責任も問うているし、自業自得学園でそのためのお勉強をしてもらおうと思っているのよ」



「じゃあ、権力者ではない一般市民たちはどうなるんですか? 悪い欲望を与えられてしまっている僕たちみたいな一般市民たちとかは?」



「それはまずは一番責任のある体験強制ピラミッドシステムのトップのボスから順番に自業自得の責任を問うて、上から順番に自由意志での選択をしてもらう感じね。


一番上が自由意志の試験に落ちていなくなったら、体験強制ピラミッドシステムの次のボス相当たちの責任が問われるのよ。



そうすれば、悪いボスがいなければ悪いことをしなかったであろう者たちが、悪いボスがいなくなることで自発的に改心して救われるかもしれないからね。


一般市民の自業自得の責任が本格的に問われる順番がくるのは悪いボスやその部下たちが試験に落ちていなくなってからになるわね。



例えば、悪い権力者が決めた悪い法律や制度によって不条理に酷い環境に置かれた一般市民が、その過酷な状況で追い詰められて悪いことをしてしまった……とかの場合には、悪い権力者がいなくなって悪い法律がなくなって良い環境になって同じような悪いことをしなければ、その一般市民の悪い行為の責任は悪い権力者に問われるようになるのよ」



「それなら表向きの権力者たちよりも、悪い権力の行使をしたくなるようにした者が一番悪いってことになるんじゃないですか?」



「そうよ、だから体験者たちの心や欲望を操作して自分の操り人形みたいにする行為は危険なの。特にこちらを立てればあちらが立たず的な問題が多い世界では特に危険なのよ。誰かを救ったつもりでも、それによって誰かが酷い目にあうようなことがあってね。場合によってはどうしても誰かが酷い目にあうような酷い世界もあったりするのよ。ほら、何を選択しても絶対にクリア不可能なゲームみたいな……


そんなレベルのダメ世界ともなると、もうそのダメ世界をいったん時空間から消して皆が楽しめる新しい世界をその時空間に0から創造した方が簡単ってことになるのよ」



「いや、ダメですよ、ほら、またすぐ世界を丸ごと消しちゃう方に話をもっていってしまって!


悪い創造主とか、支配者とか、権力者とか、その部下たちとかが自業自得学園に行っていなくなれば、この世界もかなり良い世界になるんじゃないですか?」



「それはどうかしらねえ……一般市民の中にだってあらゆる体験者のことを本気で思いやっている子たちってかなり少数派だし……」



「いや、だからそれは悪い本能とか欲望とかが強制的に与えられているからそうなっているんでしょう?」



「まあ、それはそうだけど、中には自然が与えてくれている本能を改良するなんて許されないことだとか言ってくる子たちもいそうだし……」



「じゃあ、改良したい人たちだけが望めば改良できるようにしてあげればいいだけなんじゃないですか?」



「そうねえ、そうした自由を一般市民全体が皆が持つべき当然の自由や権利と理解することができれば、あるいは不合格判定が翻るかもしれないけど……それはあなたたちの自由意志次第ってことになるわね。


少なくとも残酷な家畜利用とか動物実験とかを平気で実行し続けていいと思っているようでは、その子たちは不合格になるわね。


それに刑務所も楽園にしなさいってあれほど指摘したのに、悪い欲望を植え付けた者たちではなくて、悪い欲望を植え付けられた者たちをただ罰して殺してそれでいいとか思っている子たちも、不合格になるわね。


悪い欲望を改良することに反対しながら、悪い欲望によって悪いことをしてしまった者たちを刑務所に入れて苦しめたり殺したりしていいとか思っている子たちは……それがどれほど問題のある間違った主張なのか、ちゃんとその知性で理解しなきゃいけないわ。

それって自作自演で故意に他の体験者たちを虐めている行為と同じような行為なのよ。



わざと悪い欲望を取り除けないようにしておいて、悪い欲望によって悪いことをしたから苦しめて当然だとか、そんなことが肯定されるのならいくらでも好き放題の虐めができてしまうもの。


抗えないレベルの悪い本能をプログラムした生命体を作り出してしまえば、その生命体に宿ったあらゆる魂を虐め続けることができるようになってしまうんだからね。それこそが本当の犯罪行為だと理解しなければならないの。



まるで背負うことが不可能な何億トンもの重さのリュックサックを背負って歩けないから、刑務所に入れて拷問して殺してもいい……みたいなことになるわけ。

そう思っている者たちのリュックサックは、表向きには同じようなリュックサックなんだけど、重さは1グラムしかなくて軽々と背負って歩けるから背負って歩けない者たちは悪者だとしてしまうわけね……でも欲望の負荷を正しく計測することができないのなら、誰もがそうした欲望の入ったリュックサックを背負わない状態で正しい道を歩けるかどうかを判断されなければならないのよ……



つまり皆に提供すべき体験の自治権や体験選択の自由には、本能や欲望の選択の自由も当然含まれているのよ。自分の夢体験や気分や体調なんかの選択の自由も同じように含まれるの。不自由な世界では、そうした体験者たちの根源にある不自由さが理解されず社会問題にならないこと自体が問題なのよ。



あら、甘太郎ちゃんの必死の熱意にほだされて、ちょっと説明が長くなってしまったわね……



一般市民たちに、あるいはそうね、この不自由な世界の創造主や支配者たちや権力者たちに、今説明したことが理解できてあるべき世界の状態を自発的に思い描きその自由意志で積極的に「誰もが自分の体験を自由に選び楽しみ続けれる世界」を目指せるようになれば、ひょっとしたらこの不自由な世界も存続可能になるかもしれないわね」



甘太郎は、全知ちゃんの超時空体の特殊能力に期待していたが、全知ちゃんはそんな感じでそれぞれの自由意志の選択次第だと説明した。


甘太郎は、全知ちゃんとのそんな問答の果てに、まずは不自由な世界の体験強制ピラミッドシステムのボスの自業自得の責任を問うことにした。


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