42 / 187
41 意外は突然
しおりを挟む
衛兵の彼は街の警備担当のダン。今日もパートナーのエドと共に王都内を見回り巡回しています。
「エド!もう見回りの時間だ。」
「おう!わかった、今行く。」
カウレシア王国は周辺国の中で平均的に治安が良い国です。しかし、半年前に神竜様の騒ぎが起こり、続いて創造神の使者様が王都カオル教会の悪事を暴露した件が原因で、ここ半年は治安が悪化しました。
最初は他の街から来たカオル教会の信徒たちから反対の声もありました。しかし、王都カオル教会の捜査が完了した後、王様は教会のすべての悪事や証拠を民に公開しました。そのおかげで、新しい宗教である創造神トイエリ様の教会を建てることに対する批判的な声も徐々に消えてゆく。
真実を知った一部の教会職員たちは、自分たちは悪事に関与していなかったものの、職場がそんな悪事を働いていたことに深く悔しさを感じました。そして、王様の慈悲により、先日開かれたトイエリ教会で働き始めました。
一方で、悪事に関わり甘い汁を吸い続けていた信徒たちは捕まりました。彼らは意外と多く、王様からの罰として全財産を没収され。その結果、彼らは王都で詐欺や窃盗を働くようになり、これが最近の治安悪化の原因となっています。
現に、ダンとエドの目の前で泥棒が盗みを働く現場を目撃しました。ダンたちは即座に周囲の衛兵に事件発生を知らせる笛を吹き、泥棒を追いかけて走り出す!
「そこ!止まれ!」
「止めれ!」
ダンとエドは痩せた男の泥棒を追いかけます。前を走る泥棒は走りながらナイフを取り出しました。
「どけ!」
関係のない人々は騒ぎながらもすぐに両脇に移動し、道を開けてくれました。
全財産を没収されたその泥棒は市場に向かって走り、息が苦しくなり足も徐々に遅くなっていきます。ダンとエドがチャンスだと思ったその時、泥棒は市場にいた貴族学園の生徒らしき娘を人質に取りました。
彼女はフードで顔を隠しているため、多分高位貴族の娘が身分を隠して下町で遊んでいたのでしょう。これは非常に危険な状況です。
「おお、お前ら動くな!近づいたらこの貴族の娘を殺す!はぁ…はぁ…」
貴族の娘は驚いて動けないまま、泥棒に後ろから抱き込まれ、人質にされました。ナイフを首に突きつけられたため、ダンとエドもすぐに動きを止めます。
「その娘を傷つけるな!お前はもう逃げ場はない!大人しく投降しろ!その娘を傷つけたら君もただでは済まないぞ。」
泥棒はゆっくりと人質を連れて後退します。ダンたちも距離を保ちながら慎重に近づきます。野次馬も徐々に増え、ナイフを構える冒険者も現れました。しかし、貴族の娘が人質にされた時点で、これはもう普通の案件ではなくなりました。
「うるさい!近づくな!こいつがどうなってもいいのか!」
ダンたちは泥棒に近づくのを止めた。貴族に関わる案件では、泥棒を刺激せず増援の騎士を待つ方が得策だ。下がろうとしないダンたちを見て、泥棒は焦り始めた。
泥棒はこう考えている。
(おのれ、逃げ場がない!だが衛兵たちの反応を見る限り、この娘は恐らく高位貴族の子だ。この娘の顔を見せつけ、傷を付けると脅せば、逃走用の馬を要求できるかもしれない。)
泥棒は人質として捕らえた貴族の娘のフードを無理やり引き下ろした。勢いよく引っ張ったため、ケープのボタンが外れ、そのまま地面に落ちた。
「オラァ!道を開けろ!そうしないとこいつの顔に傷を付けるぞ!」
泥棒は少女の長い髪を掴んだ。その瞬間、周囲の音が一瞬消え、全員の視線が人質に向けられた。ダンたちが目にしたのは、現実離れした美しい少女だった。サファイアのような瞳、肩までのストレートな銀髪から反射される七色の光は、まるで虹がそこから生まれるかのように美しい。さらに、肩から腰までの金髪はキラキラと輝いている。その全てが合わさり、まるで宝石だらけの宝物庫に飾られた美人画のようだった。彼女の姿はその場にいる全員の目を奪った。
一瞬見惚れたダンたちは、はっと我に返った。泥棒も彼女の顔を見て驚き、固まっている。この隙に少女を助けるため、ダンたちは前に走り出そうとしたが…。
「な!きゃぁぁぁぁ!!!」
ドーーーーーン!!
「くえっ!」
泥棒の悲鳴と重い音が響き、周囲は現実に引き戻された。目の前で起きたのは信じられない光景だった。
か弱そうな美少女は、ナイフを首に突きつけられても全く怯えることなく、脚で後ろの泥棒の弱点を思い切り蹴り上げた。そのまま流れるように背負い投げで泥棒を地面に叩きつけた。
「成敗!!」
少女は肩にかかった髪をさっと後ろに払った。その銀髪と金髪は太陽の下で七色の光を放ちながらキラキラと輝いている。
そんな美しい一幕を目の当たりにした周囲の人々は、悶絶している泥棒のことを忘れ、ただその美しい少女を目で追い続けた。
少女は地面に落ちていたケープを拾い上げ、すぐに身に着けてフードを深く被り、そのまま走り去った。
ダンたちは残された泥棒を見ると、そこには弱点を蹴られ、完全に再起不能となった泥棒の姿があった。その後、ダンたちは泥棒を捕まえ、現場を駆けつけた衛兵たちに引き渡した。ダンは上司に、この現場で見たことをそのまま報告した。
------------------------------------
~~時は遡る~~
今日の昼も冒険者ギルドでマリアンヌと一緒に食事をした。ついでに、教会での仕事が今日で最後だと彼女に伝えた。
「そうですか、教会はもう大丈夫なんですね。わかりました、今日で最後と記録しておきますね。もし続けることになったらまた教えてください。そうそう、先日教会の司祭様がわざわざギルドにお礼を言いに来ましたよ。」
「新しい司祭様は優しいですよね。あ、ごめんなさい、もうそろそろなので教会に行ってきます。」
「うん、仕事が終わったらもう一度こちらに来てくださいね。」
「わかった。」
教会の人たちは大半が良い人だ。孤児たちの中にはムカつくクソガキもいるが……まあ、それはさておき。派遣社員の俺は顔を隠していることも全然気にされていない。多分、この制服のせいで貴族だと思われているのだろう。仕事の連絡以外では基本的に司祭たち以外の人と絡むことはない。元々長くやるつもりはないから、それで良いのだ。
(よし、今日はひとりで焼肉パーティーをしてお疲れ会だ。教会に行く前に、祝い用の良いお肉を先に確保しよう。)
市場に行き、いつもの肉屋で肉を買う。
「おじさん、こんにちは。」
「え!アイリスちゃん?平日なのに王都にいるなんて珍しいね。え~今日は買い出しの日だっけ?」
「いいえ、最近トイエリ教会で手伝っています。それより、祝い用に良い肉を買いたいです。」
隣の野菜おばさんも会話に加わった。
「ほら~やっぱりよ!最近話題になった教会のヒーラーの学生さんはアイリスちゃんだって、肉屋!」
「最近話題って?私が?」
「そうなのよ。貴族学校のお嬢様がトイエリ教会のために働いているって、どこの貴族のお嬢ちゃんだろうって話題になってるわよ。」
「あ~はは~。この制服が温かいからね、そのまま着ていただけです。でも今日で仕事も終わりなので、お祝いのお肉を買いに来たんです。」
マジか、噂になっているのか。確かに下町ではこの制服を着ている生徒は見たことがない。でも、この制服を見て人が勝手に貴族だと勘違いしてくれるのは、人よけの効果があってありがたい。
「そうかい。偉いね。君は運がいい、今日は良い肉が入ってるぜ。」
「おお!」
「あら、あたしの野菜は買わないのかい?」
「買いますよ。でも、まずは肉を決めたい……」
話の途中、左から誰かに引っ張られた。その人は後ろから俺を抱き込み、ナイフを首に突きつけてきた。
え?!まさか!帝国の追手?!
「おお、お前ら動くな!近づいたらこの貴族の娘を殺す!はぁ…はぁ…」
「その娘を傷つけるな!お前はもう逃げ場はない!大人しく投降しろ!その娘を傷つけたら君もただでは済まないぞ。」
「うるさい!近づくな!こいつがどうなってもいいのか!」
(何?!泥棒?俺が人質に取られた?!)
真っ先に首とナイフの間に透明な障壁を張る。フードのせいで地面や人の下半身しか見えない。真正面にいる二人は多分衛兵だろう。でも、俺が人質に取られているため、これ以上近づけない。この泥棒は俺が貴族学園の制服を着ているから、良い人質だと思ったのだろう。魔法で脱出するのは簡単だが、重力魔法でペタンコにすると使者様だと思われるし、ここは慎重に待つべきか?
そう考えていると、泥棒が急に俺のフードを無理やり引き下ろした。その勢いでケープのボタンが外れ、地面に落ちた。泥棒は俺の髪を掴み、周囲を脅した。
「オラァ!道を開けろ!そうしないとこいつの顔に傷を残すぞ!」
(顔が見られた!!)
混乱した。頭が真っ白になった。
(おのれ、貴様のせいで隠していた顔がバレたじゃないか!帝国の人間に見られたらどうするんだよーーーー!!)
首には透明な障壁を張っているので、突きつけられたナイフを完全に無視する。俺は右足を後ろに引き、盗賊の股間を思いっきり蹴り上げた!手が緩んだ瞬間、こいつの体重を魔法でゼロにして……背負投げ!!投げた勢いでお返しに体重を3倍に増やし、地面に叩きつけた!
「な!きゃぁぁぁぁ!!!」
ドーーーーーン!!
「くえっ!」
肩にかかった髪をさっと後ろに払う。
「成敗!!(適当)」
その後、素早く地面に落ちたケープを拾い上げて装着!そして即座に逃走!どこに逃げればいい?すぐにマイホームに戻る?いや、マリアンヌのところに隠れるのがいい!
走って、走って、走って……ギルドに到着。マリアンヌの前に駆け込み、声を掛けた。
「はぁはぁ、マリアンヌ、隠れさせて!」
「エド!もう見回りの時間だ。」
「おう!わかった、今行く。」
カウレシア王国は周辺国の中で平均的に治安が良い国です。しかし、半年前に神竜様の騒ぎが起こり、続いて創造神の使者様が王都カオル教会の悪事を暴露した件が原因で、ここ半年は治安が悪化しました。
最初は他の街から来たカオル教会の信徒たちから反対の声もありました。しかし、王都カオル教会の捜査が完了した後、王様は教会のすべての悪事や証拠を民に公開しました。そのおかげで、新しい宗教である創造神トイエリ様の教会を建てることに対する批判的な声も徐々に消えてゆく。
真実を知った一部の教会職員たちは、自分たちは悪事に関与していなかったものの、職場がそんな悪事を働いていたことに深く悔しさを感じました。そして、王様の慈悲により、先日開かれたトイエリ教会で働き始めました。
一方で、悪事に関わり甘い汁を吸い続けていた信徒たちは捕まりました。彼らは意外と多く、王様からの罰として全財産を没収され。その結果、彼らは王都で詐欺や窃盗を働くようになり、これが最近の治安悪化の原因となっています。
現に、ダンとエドの目の前で泥棒が盗みを働く現場を目撃しました。ダンたちは即座に周囲の衛兵に事件発生を知らせる笛を吹き、泥棒を追いかけて走り出す!
「そこ!止まれ!」
「止めれ!」
ダンとエドは痩せた男の泥棒を追いかけます。前を走る泥棒は走りながらナイフを取り出しました。
「どけ!」
関係のない人々は騒ぎながらもすぐに両脇に移動し、道を開けてくれました。
全財産を没収されたその泥棒は市場に向かって走り、息が苦しくなり足も徐々に遅くなっていきます。ダンとエドがチャンスだと思ったその時、泥棒は市場にいた貴族学園の生徒らしき娘を人質に取りました。
彼女はフードで顔を隠しているため、多分高位貴族の娘が身分を隠して下町で遊んでいたのでしょう。これは非常に危険な状況です。
「おお、お前ら動くな!近づいたらこの貴族の娘を殺す!はぁ…はぁ…」
貴族の娘は驚いて動けないまま、泥棒に後ろから抱き込まれ、人質にされました。ナイフを首に突きつけられたため、ダンとエドもすぐに動きを止めます。
「その娘を傷つけるな!お前はもう逃げ場はない!大人しく投降しろ!その娘を傷つけたら君もただでは済まないぞ。」
泥棒はゆっくりと人質を連れて後退します。ダンたちも距離を保ちながら慎重に近づきます。野次馬も徐々に増え、ナイフを構える冒険者も現れました。しかし、貴族の娘が人質にされた時点で、これはもう普通の案件ではなくなりました。
「うるさい!近づくな!こいつがどうなってもいいのか!」
ダンたちは泥棒に近づくのを止めた。貴族に関わる案件では、泥棒を刺激せず増援の騎士を待つ方が得策だ。下がろうとしないダンたちを見て、泥棒は焦り始めた。
泥棒はこう考えている。
(おのれ、逃げ場がない!だが衛兵たちの反応を見る限り、この娘は恐らく高位貴族の子だ。この娘の顔を見せつけ、傷を付けると脅せば、逃走用の馬を要求できるかもしれない。)
泥棒は人質として捕らえた貴族の娘のフードを無理やり引き下ろした。勢いよく引っ張ったため、ケープのボタンが外れ、そのまま地面に落ちた。
「オラァ!道を開けろ!そうしないとこいつの顔に傷を付けるぞ!」
泥棒は少女の長い髪を掴んだ。その瞬間、周囲の音が一瞬消え、全員の視線が人質に向けられた。ダンたちが目にしたのは、現実離れした美しい少女だった。サファイアのような瞳、肩までのストレートな銀髪から反射される七色の光は、まるで虹がそこから生まれるかのように美しい。さらに、肩から腰までの金髪はキラキラと輝いている。その全てが合わさり、まるで宝石だらけの宝物庫に飾られた美人画のようだった。彼女の姿はその場にいる全員の目を奪った。
一瞬見惚れたダンたちは、はっと我に返った。泥棒も彼女の顔を見て驚き、固まっている。この隙に少女を助けるため、ダンたちは前に走り出そうとしたが…。
「な!きゃぁぁぁぁ!!!」
ドーーーーーン!!
「くえっ!」
泥棒の悲鳴と重い音が響き、周囲は現実に引き戻された。目の前で起きたのは信じられない光景だった。
か弱そうな美少女は、ナイフを首に突きつけられても全く怯えることなく、脚で後ろの泥棒の弱点を思い切り蹴り上げた。そのまま流れるように背負い投げで泥棒を地面に叩きつけた。
「成敗!!」
少女は肩にかかった髪をさっと後ろに払った。その銀髪と金髪は太陽の下で七色の光を放ちながらキラキラと輝いている。
そんな美しい一幕を目の当たりにした周囲の人々は、悶絶している泥棒のことを忘れ、ただその美しい少女を目で追い続けた。
少女は地面に落ちていたケープを拾い上げ、すぐに身に着けてフードを深く被り、そのまま走り去った。
ダンたちは残された泥棒を見ると、そこには弱点を蹴られ、完全に再起不能となった泥棒の姿があった。その後、ダンたちは泥棒を捕まえ、現場を駆けつけた衛兵たちに引き渡した。ダンは上司に、この現場で見たことをそのまま報告した。
------------------------------------
~~時は遡る~~
今日の昼も冒険者ギルドでマリアンヌと一緒に食事をした。ついでに、教会での仕事が今日で最後だと彼女に伝えた。
「そうですか、教会はもう大丈夫なんですね。わかりました、今日で最後と記録しておきますね。もし続けることになったらまた教えてください。そうそう、先日教会の司祭様がわざわざギルドにお礼を言いに来ましたよ。」
「新しい司祭様は優しいですよね。あ、ごめんなさい、もうそろそろなので教会に行ってきます。」
「うん、仕事が終わったらもう一度こちらに来てくださいね。」
「わかった。」
教会の人たちは大半が良い人だ。孤児たちの中にはムカつくクソガキもいるが……まあ、それはさておき。派遣社員の俺は顔を隠していることも全然気にされていない。多分、この制服のせいで貴族だと思われているのだろう。仕事の連絡以外では基本的に司祭たち以外の人と絡むことはない。元々長くやるつもりはないから、それで良いのだ。
(よし、今日はひとりで焼肉パーティーをしてお疲れ会だ。教会に行く前に、祝い用の良いお肉を先に確保しよう。)
市場に行き、いつもの肉屋で肉を買う。
「おじさん、こんにちは。」
「え!アイリスちゃん?平日なのに王都にいるなんて珍しいね。え~今日は買い出しの日だっけ?」
「いいえ、最近トイエリ教会で手伝っています。それより、祝い用に良い肉を買いたいです。」
隣の野菜おばさんも会話に加わった。
「ほら~やっぱりよ!最近話題になった教会のヒーラーの学生さんはアイリスちゃんだって、肉屋!」
「最近話題って?私が?」
「そうなのよ。貴族学校のお嬢様がトイエリ教会のために働いているって、どこの貴族のお嬢ちゃんだろうって話題になってるわよ。」
「あ~はは~。この制服が温かいからね、そのまま着ていただけです。でも今日で仕事も終わりなので、お祝いのお肉を買いに来たんです。」
マジか、噂になっているのか。確かに下町ではこの制服を着ている生徒は見たことがない。でも、この制服を見て人が勝手に貴族だと勘違いしてくれるのは、人よけの効果があってありがたい。
「そうかい。偉いね。君は運がいい、今日は良い肉が入ってるぜ。」
「おお!」
「あら、あたしの野菜は買わないのかい?」
「買いますよ。でも、まずは肉を決めたい……」
話の途中、左から誰かに引っ張られた。その人は後ろから俺を抱き込み、ナイフを首に突きつけてきた。
え?!まさか!帝国の追手?!
「おお、お前ら動くな!近づいたらこの貴族の娘を殺す!はぁ…はぁ…」
「その娘を傷つけるな!お前はもう逃げ場はない!大人しく投降しろ!その娘を傷つけたら君もただでは済まないぞ。」
「うるさい!近づくな!こいつがどうなってもいいのか!」
(何?!泥棒?俺が人質に取られた?!)
真っ先に首とナイフの間に透明な障壁を張る。フードのせいで地面や人の下半身しか見えない。真正面にいる二人は多分衛兵だろう。でも、俺が人質に取られているため、これ以上近づけない。この泥棒は俺が貴族学園の制服を着ているから、良い人質だと思ったのだろう。魔法で脱出するのは簡単だが、重力魔法でペタンコにすると使者様だと思われるし、ここは慎重に待つべきか?
そう考えていると、泥棒が急に俺のフードを無理やり引き下ろした。その勢いでケープのボタンが外れ、地面に落ちた。泥棒は俺の髪を掴み、周囲を脅した。
「オラァ!道を開けろ!そうしないとこいつの顔に傷を残すぞ!」
(顔が見られた!!)
混乱した。頭が真っ白になった。
(おのれ、貴様のせいで隠していた顔がバレたじゃないか!帝国の人間に見られたらどうするんだよーーーー!!)
首には透明な障壁を張っているので、突きつけられたナイフを完全に無視する。俺は右足を後ろに引き、盗賊の股間を思いっきり蹴り上げた!手が緩んだ瞬間、こいつの体重を魔法でゼロにして……背負投げ!!投げた勢いでお返しに体重を3倍に増やし、地面に叩きつけた!
「な!きゃぁぁぁぁ!!!」
ドーーーーーン!!
「くえっ!」
肩にかかった髪をさっと後ろに払う。
「成敗!!(適当)」
その後、素早く地面に落ちたケープを拾い上げて装着!そして即座に逃走!どこに逃げればいい?すぐにマイホームに戻る?いや、マリアンヌのところに隠れるのがいい!
走って、走って、走って……ギルドに到着。マリアンヌの前に駆け込み、声を掛けた。
「はぁはぁ、マリアンヌ、隠れさせて!」
1
あなたにおすすめの小説
劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?
はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、
強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。
母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、
その少年に、突然の困難が立ちはだかる。
理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。
一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。
それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。
そんな少年の物語。
ぽっちゃり女子の異世界人生
猫目 しの
ファンタジー
大抵のトリップ&転生小説は……。
最強主人公はイケメンでハーレム。
脇役&巻き込まれ主人公はフツメンフツメン言いながらも実はイケメンでモテる。
落ちこぼれ主人公は可愛い系が多い。
=主人公は男でも女でも顔が良い。
そして、ハンパなく強い。
そんな常識いりませんっ。
私はぽっちゃりだけど普通に生きていたい。
【エブリスタや小説家になろうにも掲載してます】
文字変換の勇者 ~ステータス改竄して生き残ります~
カタナヅキ
ファンタジー
高校の受験を間近に迫った少年「霧崎レア」彼は学校の帰宅の最中、車の衝突事故に巻き込まれそうになる。そんな彼を救い出そうと通りがかった4人の高校生が駆けつけるが、唐突に彼等の足元に「魔法陣」が誕生し、謎の光に飲み込まれてしまう。
気付いたときには5人は見知らぬ中世風の城の中に存在し、彼等の目の前には老人の集団が居た。老人達の話によると現在の彼等が存在する場所は「異世界」であり、元の世界に戻るためには自分達に協力し、世界征服を狙う「魔人族」と呼ばれる存在を倒すように協力を願われる。
だが、世界を救う勇者として召喚されたはずの人間には特別な能力が授かっているはずなのだが、伝承では勇者の人数は「4人」のはずであり、1人だけ他の人間と比べると能力が低かったレアは召喚に巻き込まれた一般人だと判断されて城から追放されてしまう――
――しかし、追い出されたレアの持っていた能力こそが彼等を上回る性能を誇り、彼は自分の力を利用してステータスを改竄し、名前を変化させる事で物体を変化させ、空想上の武器や物語のキャラクターを作り出せる事に気付く。
異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた
りゅう
ファンタジー
異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。
いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。
その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。
『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?
釈 余白(しやく)
ファンタジー
毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。
その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。
最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。
連載時、HOT 1位ありがとうございました!
その他、多数投稿しています。
こちらもよろしくお願いします!
https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394
猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める
遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】
猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。
そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。
まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。
狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~
一片
ファンタジー
バイト帰りに何かに引っ張られた俺は、次の瞬間突然山の中に放り出された。
しかも体をピクリとも動かせない様な瀕死の状態でだ。
流石に諦めかけていたのだけど、そんな俺を白い狼が救ってくれた。
その狼は天狼という神獣で、今俺がいるのは今までいた世界とは異なる世界だという。
右も左も分からないどころか、右も左も向けなかった俺は天狼さんに魔法で癒され、ついでに色々な知識を教えてもらう。
この世界の事、生き延び方、戦う術、そして魔法。
数年後、俺は天狼さんの庇護下から離れ新しい世界へと飛び出した。
元の世界に戻ることは無理かもしれない……でも両親に連絡くらいはしておきたい。
根拠は特にないけど、魔法がある世界なんだし……連絡くらいは出来るよね?
そんな些細な目標と、天狼さん以外の神獣様へとお使いを頼まれた俺はこの世界を東奔西走することになる。
色々な仲間に出会い、ダンジョンや遺跡を探索したり、何故か謎の組織の陰謀を防いだり……。
……これは、現代では失われた強大な魔法を使い、小さな目標とお使いの為に大陸をまたにかける小市民の冒険譚!
ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる