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50 伝説の勇者たち
ネタ合わせの準備は整った、俺は今客室で渡された魔力回復薬を飲んでる。水玉は大きくなって、痛いは痛いが、このあと魔力沢山使うから魔力をできる限り多めに貯めて欲しい、後は勇者たちが来るのを待つだけ。
正直俺が勇者たちを魔の森に連れていって、そのまま片付ければいいと思うのですが。でもこれではまた次の勇者が出るだけ、やっぱり彼ら自ら勇者を辞める方がメリットが多い。って今回は彼らの冷静さを削るのは要だ。
メイドさんからの連絡で勇者たちは謁見の間に来たようで、俺も呼ばれる前に謁見の間の前で待機する事になった。
-------------------------------------------
同時刻、謁見の間では王、宰相、騎士団長、魔道士団長、そして他の上位貴族たちが揃っていた。
「陛下、勇者様たちが到着致しました。」
「入れ。」
謁見の間の扉が開き、白銀の鎧を身にまとい、腰には2本の魔剣を装着した青い髪の美青年が、自信満々でレッドカーペットの上を歩いてきた。続いて彼の後ろには、各自の武器を持った三人の美女が続いていた。
その様子を見て、騎士団長と魔道士団長はすぐに武器を構え、王を庇う態勢を取った。
騎士団長ウォルトは剣を抜き、低いトーンで勇者に話しかけた。
「勇者殿、武器を外で預かっていただかないと困ります。」
「え?僕は勇者ですよ。それに聖女を迎えたらすぐに出るんだから、別にいいじゃないか。」
その説明を聞いた宰相は、強い態度で返した。
「勇者殿、貴国では問題にならないかもしれませんが、カウレシア王国ではお客様が武器を持って謁見することは許されていません。先日と同様に、武器を外で預かってください。」
「面倒くさいなあ。あの娘を迎えたらすぐに出るのに。」
4人は渋々武器を謁見の間の前のメイドたちに預けた。
「これでいいだろう。僕たちの新メンバーの癒やしの聖女はもう帰ったね?」
「言葉遣いを気を付けろ!」
「宰相、もう良い。時間の無駄だ。」
国王セオドリクは、これ以上この有名な無礼者たちに礼儀を説くのは無意味だと判断し、すぐに本題に入った。
「勇者様たちが話している聖女ではありませんが、確かに我が国には虹色の髪を持つ研究員がいます。彼女は今朝王都に戻ったので、聖女かどうかは貴殿たちが確かめてください。」
「おおぉ!ようやく勇者パーティー最後のメンバーが来た!」
王は仕方なくアイリスを呼ぶように命じた。
「彼女をここに呼んでくれ。」
「かしこまりました。」
謁見の間の扉が再び開き、学園のケープを着た、制服姿の銀髪の少女が入ってきた。謁見の間の中は一瞬静まり返り、しばらくすると両側の貴族たちが小声で話し始めた。
『この娘は噂されていた虹髪の娘か……。』
『髪の色が本当に虹色だ。』
『なんという美貌だ……。』
『学園で隠されていた研究員が……。』
勇者たちは声も出さず、ただ彼女を見つめていた。少女は王様の前に跪き、頭を下げてセオドリク王に挨拶した。
「カウレシア王国魔法貴族学園研究員のアイリスです。」
「おもてをあげよ。」
「ありがとうございます。」
その直後、勇者は王と少女の間に割り込み、跪いている少女の顔を上から下まで細かく見始めた。さらに、跪いているアイリスのスカートの隙間をガン見していたため、アイリスは足を動かして中が見えないようにした。
「うんうん……やっぱり、あなたは僕たちが探している癒やしの聖女だ!ようこそ僕のパーティーへ!」
-------------------------------------------
って、これが、俺が今謁見の間で勇者の前に跪いている理由だ。王様の言う通り、本当に自己中心的な人たちだ。まるでこの世界が自分たちのために存在しているかのような態度だ。
その勇者は王様に背を向け、俺に向かって自己紹介を始めた。
「僕はカオル神の末裔でファレル聖王国の勇者、魔剣士オーウェン・サトウです。これからもよろしく!こっちの赤い髪のは僕の嫁、聖王国の賢者エリザベス。」
「エリザベス・サトウですわ。よろしくお願いしますわ。」
勇者は銀白の防具を身にまとったイケメン少年で、双剣魔剣士という中二病全開の設定。そして赤い髪の魔法使いっぽい美人は、まさかの嫁……。
「こっちの猫獣人は僕の嫁、神弓使いのリリアン。」
「リリアン・サトウです。よろしくっす。」
王国では珍しい獣人。ネコミミで何か定番っぽい感じ。そして、またしてもまさかの嫁……。
「最後はこちら金髪のは僕の嫁、聖槍使いのソフィー。」
「ソフィー・サトウですわ。以後お見知りおきを。」
肩までの金髪に真白な鎧を装備した、見た目はこのパーティー内で一番真面目そうな人。そして、そしてまたしてもまさかの嫁……。
「今日からアイリスちゃんも僕ら勇者のパーティーの仲間だ。気楽でいいよ。さ!立って!」
勇者は俺に手を差し伸べた。
(全員お前の嫁じゃねぇか!佐藤さん!!嫁がいるのに俺の純潔を聞くのか?普通……あ、忘れてた。こいつら普通じゃなかった。とりあえず全世界の佐藤さんに謝れ!あ……この世界の佐藤さんはこいつらだけか。はぁ……いけない、冷静に冷静に。)
他の三人の装備と服には何かデジャブを感じる。この見慣れた感じ……この世界のものではないような……いや、彼女たちの装備のデザインはあの人気オンラインゲームの装備ではないか?!
腰まで長い赤い髪とナイスバディなエリザベスは、あのゲームの上位魔法使いのコラボ装備、通称“大人のマジカル装備”にそっくりだ。獣人猫耳のリリアンはお腹を出していて、あのゲーム内の上位エルフ専用アーチャー装備に酷似している。最後の金髪のソフィーが着ている純白の鎧は、大きな胸のラインに合わせて作られたもので、これもゲーム内のデザインだ。当然のように全員ミニスカート。この装備で大丈夫なのか?
そのオンラインゲームは俺が一年しかやっていなかったので、男性の装備は全く覚えていない。勇者くんの装備もゲーム内のパクリだろう……絶対に制服と同じくカオルの趣味だ。……全員ミニスカート、あのカオルは足フェチだ、絶対間違いない。
勇者くんが王様を無視して俺に「立て」と言ってきたが、立つわけがないだろう。君は王様でもないし。彼を無視したまま、王様の言葉を待つ。
「アイリス、そなたは彼らが言った癒やしの聖女か?」
「滅相もございません。自分はただ一介の研究員でございます。」
「勇者殿、彼女はそなたたちが探している人ではないようですので、お引き取りください。」
「そんな!間違いない!その虹色の髪がその証拠だ!彼女は僕たちが探していた聖女だ!」
「はぁ……ではアイリス、そなたは勇者たちのパーティーに入る気があるのか?」
俺は4バカの方を見ながら、少し考えるふりをして王様に返事をした。
「申し訳ありません。弱い人しかないなパーティーに入る意味がありません。それに、自分は勇者ごっこには全く興味がございません。」
『無礼だ、勇者相手に……』
『この平民風情が……』
「静まれ。平民が貴族の礼儀を知らないのは当然のことだ。アイリスよ、好きなように話して良い。」
「失礼しました、陛下と……勇者様。」
周りの貴族たちはざわめき始めたが、王様は彼らを抑えた。そして、4バカは顔を真っ赤にして俺を睨んでいる。
「弱いだと!僕たちは冒険者金ランクの勇者だぞ!僕たちは神から魔王討伐の使命を受けたんだ!回復しか能のない貴様の方がよっぽど弱いだろ!」
「そうですわ。あなたのちっぽけな魔力だけで、よく強気でわたくしたちを挑発できますわね!」
あ~確かこのケープは魔力を遮断できる仕様だったな。赤い髪の賢者エリザベスさんと勇者殿……まんまと挑発に乗っている。
「へぇ~オーウェン兄さん、僕はこいつをパーティーに入れたくないっすよ。」
「私もリリアンの意見に賛成です。彼女は私たちの崇高な使命をごっこ遊びと笑いました。我々がすでに何体もの魔王を討伐してきたことを知らない癖に、この下民。我々のパーティーに入る権利を与えるだけでも感謝するべきなのに。この下民め!」
うん、流石4バカ。一言“弱い”と言っただけで簡単に怒らせられた。これほど予想外の反応をするとは。特に槍使いのソフィーは見た目的に一番の常識人だと思ったが、貴族主義者だったとは意外だ。念のためもう一言追加しておこう。
「自分はただ正しいことを話しただけです。勇者ごっこ……失礼、勇者パーティーでは平民の自分には荷が重いです。」
「アイリス、ハッキリ言い過ぎだ。」
「申し訳ございません、陛下。」
王様のその指摘から、俺が言った“ごっこ遊び”が間違っていないことを示している。周りの貴族たちの何人かが、くすくすと隠れて笑い始めた。ここで、宰相が俺たちの計画の次の一手を進めた。一応、王国側が表向きには勇者の味方であるかのように見せるためだ。
「勇者殿、彼女は平民なので礼儀を知らないのです。心の広い勇者様たち、どうか彼女をお許しください。アイリスもすぐに謝りなさい!」
「モウシワケゴザイマセンデシタ、ユウシャサマタチ。」
「フン!まさか噂の癒やしの聖女が、こんな礼儀も知らない平民だったとは。しかし、まあ~僕の心が広いから、その顔を免じて勇者パーティーに入れても良いぞ。」
「はぁ、オーウェン様……。」
「兄さん?!」
「旦那様……まさか!」
(うわーーーその髪をかきあげる動きは何だ?こいつ、まさかナルシストなのか?)
「まあ~こんな気高い女には躾けが必要だ。お前らも最初もそうだっただろ。」
「「「……!」」」
いや、こんな空気の中で嫁たちに向けてキラッとするな!そこ!照れるな!
「とりあえず聖女ちゃん、今夜僕の部屋に来い!僕の技でしっかりと躾けてやる。こうすれば、この娘も自分の感情に素直になるはずだ……。今夜は寝かさないよ、聖女ちゃん。」
鳥~肌~が~立っ~た~!! 勇者はそう言いながら、未だに跪いている俺の顎をクイッと持ち上げた。全身に寒気が走る。
殴りたい……その笑顔。
「自分は王国魔法学園の研究員ですので、いやですが、もし陛下や学園長がそう命令するのであれば、従います。」
「聞いたか!陛下、早くこの娘に命令しろ!」
周りはざわざわと騒ぎ始め、もう誰も勇者の礼儀についてツッコむ気力を失っているようだ。この様子を見る限り、この4バカはどこの国でもこんな態度なのだろう。救いようがない。ここで王様はビアンカ様の方を見た。
「魔道士団長、彼女は勧誘を断ったのだが、それでも勇者殿は彼女を仲間にすることを諦めない。彼女はあなたの部下だが、どうする?」
「はっ!彼女は学園の大事な研究員ですので、できれば失いたくありません。しかし、両者とも引かないのであれば、決闘で決めるしかないでしょう。ただし、アイリスの冒険者ランクは最低の鉄でございます。」
俺が鉄ランクだと聞いた瞬間、勇者はすぐにこの話に乗ってきた。
「いいだろう!この娘は僕たちを弱いと言った。だから僕のパーティーに入りたくないんだろう?では、僕たちの力を思いっきり見せてやる!」
「いいですわ、勇者様。わたくしたちも賛成いたしますわ。」
4バカは一斉に頷いた……よし、あともう一息だ。
「失礼ですが、勝手に自分をメンバーにするのは勇者様です。なぜ自分がこんな弱い勇者ごっこのパーティーに入らなければならないのですか?自分に何のメリットがありますか?」
「鉄ランクのクズ!自分の立場がまだ分からないのか!貴様がそんなに強いのなら、この決闘を受けろ!もし僕たちが勝ったら、貴様は一生僕たちの奴隷だ。そしてご褒美として、この決闘を見ている観客の前で、この僕が貴様を気絶するまで躾けてやる!」
『何だと、鉄ランクが金ランクに勝てるわけがないだろう。』
『なぜそんなにこの娘に拘るんだ?』
『顔だ、顔。勇者は有名なむっつりスケベだから。』
『すでに嫁が3人もいるのに?』
『聖王国はカオル神の末裔を多く残したいのだろうな。』
『少女に何て酷い罰だ。貴族のプライドもないのか?』
『聖王国では貴族制度がないからな。』
ざわ……ざわ……周りの貴族たちは小声でざわめいていた。この勇者は、もはや下心を全く隠していない。メンバーに加えるとか、そんなことは完全に二の次で、返答すら下半身でしている様子だ。そこの嫁3人よ、旦那がこんな感じでいいのか?
「勇者様!良いっす!ボクたちが勝って、こいつを奴隷にしてやるっす!」
「そうよね、聖騎士が下民に侮辱されたままではいけません。この人にはお仕置きが必要ですわ。」
ダメだ、こいつら。身体は今の俺より大人なのに、脳は子供だ。典型的に甘やかされ過ぎた子供だろう。周りにはイエスマンしかいないようで、“弱い”と言われただけでこんなにも激怒するとは、沸点が低すぎる。ここで王様からの目線が来た。よし、こっちも計画通りに進めるとしよう。
「分かりました。その決闘、お受けします。ただし、もし自分が勝ったら、あなたたち4人の勇者生活は終わりです。そして、将来の子孫を含めて、二度と勇者、救世主、英雄と称して他国に迷惑をかけることを禁止します。」
「な、何だと!」
「自分は自分の人生と純潔を賭けているのです。まさか勇者様たちは、何も賭けないというわけではありませんよね?」
赤い髪の賢者エリザベスがすぐに応じた。
「わたくしたちは4人よ。鉄ランクの癖に、わたくしたち金ランク4人に勝てると思っているの?」
「エリザベスの言う通り、ただ顔と回復しか能がない下民が、聖騎士の私に敵うとでも思っているのですか。カオル神の代わりに、そなたをお仕置きして差し上げます。」
止めてくれ、槍の聖騎士……あなたはこのパーティーで見た目では一番の常識人だと思っていたのに。
「ボクたちは手足を一本二本を折らないと止めないっすよ。負けたら、自慢の回復魔法で自分を回復すればいいっすね。」
ネコミミのリリアンも、恐らく勇者並みのバカだった……。
「もうやめろ、3人とも。やるなら、僕が躾けした後だ。」
ダメだこいつら、早くなんとかしないと。
『あの娘、狂っているのか?こんな決闘を受けるなんて。』
『受けるか、受けないかで勇者に犯されるだろう。決闘で死ぬ方がマシだ。』
『陛下、それでいいのですか?』
『いや、聖王国にクレームを入れるべきでは?』
『あの聖王国相手では無駄だ。諦めるしかない。』
かかったな。これで、あとは俺のお仕置きタイムだ。ここまで上手くいき過ぎていて、少し怖いくらいだ。
王様は予定通り、事前に考えたセリフを口にした。
「あ~アイリス研究員、本当にその決闘を受けるつもりか?」
「はい。この流れでは、受けるか、受けないかしかありません。自分の純潔が確実にこのケモノに奪われるならば、この決闘に賭けます。」
「貴様!言ったな!覚えてろ!あとで倍返ししてやる!」
演技ではないなため息を吐いた王様は話を続けた。
「はぁ……では決闘の場所は……?」
「この王都にある闘技場だ!1時間後にそこで決闘を行う!民に決闘のことを伝え、観客を集めろ!僕たちは先に闘技場に行く。聖女ちゃん、逃げるんじゃないぞ。」
勇者は王様に命令したあと、4バカはそのまま謁見の間を去った。貴族たちは王様に何か聞きたそうな様子だったが、王様はそのまま彼らを解散させるよう命じた。
「皆が言いたいことは分かる。全てはこの決闘の後で聞こう。宰相、民を闘技場に集め、できれば他国に関わる有力商会の会頭にも集めてくれ。他の貴族たちも可能な限り、この決闘を見届けてくれ。以上だ。ビアンカとアイリスは来てくれ。」
「「かしこまりました。」」
俺とビアンカ様は国王セオドリクの後に続き、そのまま謁見の間の隣にある執務室に向かった。
正直俺が勇者たちを魔の森に連れていって、そのまま片付ければいいと思うのですが。でもこれではまた次の勇者が出るだけ、やっぱり彼ら自ら勇者を辞める方がメリットが多い。って今回は彼らの冷静さを削るのは要だ。
メイドさんからの連絡で勇者たちは謁見の間に来たようで、俺も呼ばれる前に謁見の間の前で待機する事になった。
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同時刻、謁見の間では王、宰相、騎士団長、魔道士団長、そして他の上位貴族たちが揃っていた。
「陛下、勇者様たちが到着致しました。」
「入れ。」
謁見の間の扉が開き、白銀の鎧を身にまとい、腰には2本の魔剣を装着した青い髪の美青年が、自信満々でレッドカーペットの上を歩いてきた。続いて彼の後ろには、各自の武器を持った三人の美女が続いていた。
その様子を見て、騎士団長と魔道士団長はすぐに武器を構え、王を庇う態勢を取った。
騎士団長ウォルトは剣を抜き、低いトーンで勇者に話しかけた。
「勇者殿、武器を外で預かっていただかないと困ります。」
「え?僕は勇者ですよ。それに聖女を迎えたらすぐに出るんだから、別にいいじゃないか。」
その説明を聞いた宰相は、強い態度で返した。
「勇者殿、貴国では問題にならないかもしれませんが、カウレシア王国ではお客様が武器を持って謁見することは許されていません。先日と同様に、武器を外で預かってください。」
「面倒くさいなあ。あの娘を迎えたらすぐに出るのに。」
4人は渋々武器を謁見の間の前のメイドたちに預けた。
「これでいいだろう。僕たちの新メンバーの癒やしの聖女はもう帰ったね?」
「言葉遣いを気を付けろ!」
「宰相、もう良い。時間の無駄だ。」
国王セオドリクは、これ以上この有名な無礼者たちに礼儀を説くのは無意味だと判断し、すぐに本題に入った。
「勇者様たちが話している聖女ではありませんが、確かに我が国には虹色の髪を持つ研究員がいます。彼女は今朝王都に戻ったので、聖女かどうかは貴殿たちが確かめてください。」
「おおぉ!ようやく勇者パーティー最後のメンバーが来た!」
王は仕方なくアイリスを呼ぶように命じた。
「彼女をここに呼んでくれ。」
「かしこまりました。」
謁見の間の扉が再び開き、学園のケープを着た、制服姿の銀髪の少女が入ってきた。謁見の間の中は一瞬静まり返り、しばらくすると両側の貴族たちが小声で話し始めた。
『この娘は噂されていた虹髪の娘か……。』
『髪の色が本当に虹色だ。』
『なんという美貌だ……。』
『学園で隠されていた研究員が……。』
勇者たちは声も出さず、ただ彼女を見つめていた。少女は王様の前に跪き、頭を下げてセオドリク王に挨拶した。
「カウレシア王国魔法貴族学園研究員のアイリスです。」
「おもてをあげよ。」
「ありがとうございます。」
その直後、勇者は王と少女の間に割り込み、跪いている少女の顔を上から下まで細かく見始めた。さらに、跪いているアイリスのスカートの隙間をガン見していたため、アイリスは足を動かして中が見えないようにした。
「うんうん……やっぱり、あなたは僕たちが探している癒やしの聖女だ!ようこそ僕のパーティーへ!」
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って、これが、俺が今謁見の間で勇者の前に跪いている理由だ。王様の言う通り、本当に自己中心的な人たちだ。まるでこの世界が自分たちのために存在しているかのような態度だ。
その勇者は王様に背を向け、俺に向かって自己紹介を始めた。
「僕はカオル神の末裔でファレル聖王国の勇者、魔剣士オーウェン・サトウです。これからもよろしく!こっちの赤い髪のは僕の嫁、聖王国の賢者エリザベス。」
「エリザベス・サトウですわ。よろしくお願いしますわ。」
勇者は銀白の防具を身にまとったイケメン少年で、双剣魔剣士という中二病全開の設定。そして赤い髪の魔法使いっぽい美人は、まさかの嫁……。
「こっちの猫獣人は僕の嫁、神弓使いのリリアン。」
「リリアン・サトウです。よろしくっす。」
王国では珍しい獣人。ネコミミで何か定番っぽい感じ。そして、またしてもまさかの嫁……。
「最後はこちら金髪のは僕の嫁、聖槍使いのソフィー。」
「ソフィー・サトウですわ。以後お見知りおきを。」
肩までの金髪に真白な鎧を装備した、見た目はこのパーティー内で一番真面目そうな人。そして、そしてまたしてもまさかの嫁……。
「今日からアイリスちゃんも僕ら勇者のパーティーの仲間だ。気楽でいいよ。さ!立って!」
勇者は俺に手を差し伸べた。
(全員お前の嫁じゃねぇか!佐藤さん!!嫁がいるのに俺の純潔を聞くのか?普通……あ、忘れてた。こいつら普通じゃなかった。とりあえず全世界の佐藤さんに謝れ!あ……この世界の佐藤さんはこいつらだけか。はぁ……いけない、冷静に冷静に。)
他の三人の装備と服には何かデジャブを感じる。この見慣れた感じ……この世界のものではないような……いや、彼女たちの装備のデザインはあの人気オンラインゲームの装備ではないか?!
腰まで長い赤い髪とナイスバディなエリザベスは、あのゲームの上位魔法使いのコラボ装備、通称“大人のマジカル装備”にそっくりだ。獣人猫耳のリリアンはお腹を出していて、あのゲーム内の上位エルフ専用アーチャー装備に酷似している。最後の金髪のソフィーが着ている純白の鎧は、大きな胸のラインに合わせて作られたもので、これもゲーム内のデザインだ。当然のように全員ミニスカート。この装備で大丈夫なのか?
そのオンラインゲームは俺が一年しかやっていなかったので、男性の装備は全く覚えていない。勇者くんの装備もゲーム内のパクリだろう……絶対に制服と同じくカオルの趣味だ。……全員ミニスカート、あのカオルは足フェチだ、絶対間違いない。
勇者くんが王様を無視して俺に「立て」と言ってきたが、立つわけがないだろう。君は王様でもないし。彼を無視したまま、王様の言葉を待つ。
「アイリス、そなたは彼らが言った癒やしの聖女か?」
「滅相もございません。自分はただ一介の研究員でございます。」
「勇者殿、彼女はそなたたちが探している人ではないようですので、お引き取りください。」
「そんな!間違いない!その虹色の髪がその証拠だ!彼女は僕たちが探していた聖女だ!」
「はぁ……ではアイリス、そなたは勇者たちのパーティーに入る気があるのか?」
俺は4バカの方を見ながら、少し考えるふりをして王様に返事をした。
「申し訳ありません。弱い人しかないなパーティーに入る意味がありません。それに、自分は勇者ごっこには全く興味がございません。」
『無礼だ、勇者相手に……』
『この平民風情が……』
「静まれ。平民が貴族の礼儀を知らないのは当然のことだ。アイリスよ、好きなように話して良い。」
「失礼しました、陛下と……勇者様。」
周りの貴族たちはざわめき始めたが、王様は彼らを抑えた。そして、4バカは顔を真っ赤にして俺を睨んでいる。
「弱いだと!僕たちは冒険者金ランクの勇者だぞ!僕たちは神から魔王討伐の使命を受けたんだ!回復しか能のない貴様の方がよっぽど弱いだろ!」
「そうですわ。あなたのちっぽけな魔力だけで、よく強気でわたくしたちを挑発できますわね!」
あ~確かこのケープは魔力を遮断できる仕様だったな。赤い髪の賢者エリザベスさんと勇者殿……まんまと挑発に乗っている。
「へぇ~オーウェン兄さん、僕はこいつをパーティーに入れたくないっすよ。」
「私もリリアンの意見に賛成です。彼女は私たちの崇高な使命をごっこ遊びと笑いました。我々がすでに何体もの魔王を討伐してきたことを知らない癖に、この下民。我々のパーティーに入る権利を与えるだけでも感謝するべきなのに。この下民め!」
うん、流石4バカ。一言“弱い”と言っただけで簡単に怒らせられた。これほど予想外の反応をするとは。特に槍使いのソフィーは見た目的に一番の常識人だと思ったが、貴族主義者だったとは意外だ。念のためもう一言追加しておこう。
「自分はただ正しいことを話しただけです。勇者ごっこ……失礼、勇者パーティーでは平民の自分には荷が重いです。」
「アイリス、ハッキリ言い過ぎだ。」
「申し訳ございません、陛下。」
王様のその指摘から、俺が言った“ごっこ遊び”が間違っていないことを示している。周りの貴族たちの何人かが、くすくすと隠れて笑い始めた。ここで、宰相が俺たちの計画の次の一手を進めた。一応、王国側が表向きには勇者の味方であるかのように見せるためだ。
「勇者殿、彼女は平民なので礼儀を知らないのです。心の広い勇者様たち、どうか彼女をお許しください。アイリスもすぐに謝りなさい!」
「モウシワケゴザイマセンデシタ、ユウシャサマタチ。」
「フン!まさか噂の癒やしの聖女が、こんな礼儀も知らない平民だったとは。しかし、まあ~僕の心が広いから、その顔を免じて勇者パーティーに入れても良いぞ。」
「はぁ、オーウェン様……。」
「兄さん?!」
「旦那様……まさか!」
(うわーーーその髪をかきあげる動きは何だ?こいつ、まさかナルシストなのか?)
「まあ~こんな気高い女には躾けが必要だ。お前らも最初もそうだっただろ。」
「「「……!」」」
いや、こんな空気の中で嫁たちに向けてキラッとするな!そこ!照れるな!
「とりあえず聖女ちゃん、今夜僕の部屋に来い!僕の技でしっかりと躾けてやる。こうすれば、この娘も自分の感情に素直になるはずだ……。今夜は寝かさないよ、聖女ちゃん。」
鳥~肌~が~立っ~た~!! 勇者はそう言いながら、未だに跪いている俺の顎をクイッと持ち上げた。全身に寒気が走る。
殴りたい……その笑顔。
「自分は王国魔法学園の研究員ですので、いやですが、もし陛下や学園長がそう命令するのであれば、従います。」
「聞いたか!陛下、早くこの娘に命令しろ!」
周りはざわざわと騒ぎ始め、もう誰も勇者の礼儀についてツッコむ気力を失っているようだ。この様子を見る限り、この4バカはどこの国でもこんな態度なのだろう。救いようがない。ここで王様はビアンカ様の方を見た。
「魔道士団長、彼女は勧誘を断ったのだが、それでも勇者殿は彼女を仲間にすることを諦めない。彼女はあなたの部下だが、どうする?」
「はっ!彼女は学園の大事な研究員ですので、できれば失いたくありません。しかし、両者とも引かないのであれば、決闘で決めるしかないでしょう。ただし、アイリスの冒険者ランクは最低の鉄でございます。」
俺が鉄ランクだと聞いた瞬間、勇者はすぐにこの話に乗ってきた。
「いいだろう!この娘は僕たちを弱いと言った。だから僕のパーティーに入りたくないんだろう?では、僕たちの力を思いっきり見せてやる!」
「いいですわ、勇者様。わたくしたちも賛成いたしますわ。」
4バカは一斉に頷いた……よし、あともう一息だ。
「失礼ですが、勝手に自分をメンバーにするのは勇者様です。なぜ自分がこんな弱い勇者ごっこのパーティーに入らなければならないのですか?自分に何のメリットがありますか?」
「鉄ランクのクズ!自分の立場がまだ分からないのか!貴様がそんなに強いのなら、この決闘を受けろ!もし僕たちが勝ったら、貴様は一生僕たちの奴隷だ。そしてご褒美として、この決闘を見ている観客の前で、この僕が貴様を気絶するまで躾けてやる!」
『何だと、鉄ランクが金ランクに勝てるわけがないだろう。』
『なぜそんなにこの娘に拘るんだ?』
『顔だ、顔。勇者は有名なむっつりスケベだから。』
『すでに嫁が3人もいるのに?』
『聖王国はカオル神の末裔を多く残したいのだろうな。』
『少女に何て酷い罰だ。貴族のプライドもないのか?』
『聖王国では貴族制度がないからな。』
ざわ……ざわ……周りの貴族たちは小声でざわめいていた。この勇者は、もはや下心を全く隠していない。メンバーに加えるとか、そんなことは完全に二の次で、返答すら下半身でしている様子だ。そこの嫁3人よ、旦那がこんな感じでいいのか?
「勇者様!良いっす!ボクたちが勝って、こいつを奴隷にしてやるっす!」
「そうよね、聖騎士が下民に侮辱されたままではいけません。この人にはお仕置きが必要ですわ。」
ダメだ、こいつら。身体は今の俺より大人なのに、脳は子供だ。典型的に甘やかされ過ぎた子供だろう。周りにはイエスマンしかいないようで、“弱い”と言われただけでこんなにも激怒するとは、沸点が低すぎる。ここで王様からの目線が来た。よし、こっちも計画通りに進めるとしよう。
「分かりました。その決闘、お受けします。ただし、もし自分が勝ったら、あなたたち4人の勇者生活は終わりです。そして、将来の子孫を含めて、二度と勇者、救世主、英雄と称して他国に迷惑をかけることを禁止します。」
「な、何だと!」
「自分は自分の人生と純潔を賭けているのです。まさか勇者様たちは、何も賭けないというわけではありませんよね?」
赤い髪の賢者エリザベスがすぐに応じた。
「わたくしたちは4人よ。鉄ランクの癖に、わたくしたち金ランク4人に勝てると思っているの?」
「エリザベスの言う通り、ただ顔と回復しか能がない下民が、聖騎士の私に敵うとでも思っているのですか。カオル神の代わりに、そなたをお仕置きして差し上げます。」
止めてくれ、槍の聖騎士……あなたはこのパーティーで見た目では一番の常識人だと思っていたのに。
「ボクたちは手足を一本二本を折らないと止めないっすよ。負けたら、自慢の回復魔法で自分を回復すればいいっすね。」
ネコミミのリリアンも、恐らく勇者並みのバカだった……。
「もうやめろ、3人とも。やるなら、僕が躾けした後だ。」
ダメだこいつら、早くなんとかしないと。
『あの娘、狂っているのか?こんな決闘を受けるなんて。』
『受けるか、受けないかで勇者に犯されるだろう。決闘で死ぬ方がマシだ。』
『陛下、それでいいのですか?』
『いや、聖王国にクレームを入れるべきでは?』
『あの聖王国相手では無駄だ。諦めるしかない。』
かかったな。これで、あとは俺のお仕置きタイムだ。ここまで上手くいき過ぎていて、少し怖いくらいだ。
王様は予定通り、事前に考えたセリフを口にした。
「あ~アイリス研究員、本当にその決闘を受けるつもりか?」
「はい。この流れでは、受けるか、受けないかしかありません。自分の純潔が確実にこのケモノに奪われるならば、この決闘に賭けます。」
「貴様!言ったな!覚えてろ!あとで倍返ししてやる!」
演技ではないなため息を吐いた王様は話を続けた。
「はぁ……では決闘の場所は……?」
「この王都にある闘技場だ!1時間後にそこで決闘を行う!民に決闘のことを伝え、観客を集めろ!僕たちは先に闘技場に行く。聖女ちゃん、逃げるんじゃないぞ。」
勇者は王様に命令したあと、4バカはそのまま謁見の間を去った。貴族たちは王様に何か聞きたそうな様子だったが、王様はそのまま彼らを解散させるよう命じた。
「皆が言いたいことは分かる。全てはこの決闘の後で聞こう。宰相、民を闘技場に集め、できれば他国に関わる有力商会の会頭にも集めてくれ。他の貴族たちも可能な限り、この決闘を見届けてくれ。以上だ。ビアンカとアイリスは来てくれ。」
「「かしこまりました。」」
俺とビアンカ様は国王セオドリクの後に続き、そのまま謁見の間の隣にある執務室に向かった。
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彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。
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#ヒラ俺
この度ついに完結しました。
1年以上書き続けた作品です。
途中迷走してました……。
今までありがとうございました!
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追記:2025/09/20
再編、あるいは続編を書くか迷ってます。
もし気になる方は、
コメント頂けるとするかもしれないです。
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