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52 勇者たちの悪夢
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『ここまでが紹介となります。殺害は禁止、勝敗は“負け宣言”または“戦闘不能”になった方が負けとなり、わたしが判断します。なお、ここには魔道士団の皆様と魔道具による魔力障壁が張られていますので、観客の皆様はご心配には及びません。』
『それでは……勇者パーティー対アイリスの決闘、始め!』
司会者が決闘開始の宣言をした瞬間、獣人リリアンはトップスピードで走り出した。その動きはまるで疾風のようで、闘技場内で彼女の姿を追える者はごく僅かだった。アイリスはその速さに全く気づかないまま、背後を取られてしまう。
(よくボクたち4人相手に、防具もなく生身で挑むっすね。後悔させてやるっす!)
「その足、貰った!!」
リリアンは伝承によればカオル神が自らの手で作ったという命中精度抜群の“神弓カムイ”を素早く構え、アイリスの足の裏の関節を狙って2連射した。矢はまるで光のように放たれ、観客たちの息を呑む音が響き渡る。
-------------------------------------------
リリアンが走り出したのと同時に、勇者オーウェンも双剣“烈火剣ホムラ”と“絶冷剣アラレ”を抜き放ち、魔法で身体強化を施したままアイリスに向かって一直線に走った。
(よく僕の誘いを断って、この僕を恥をかかせるとは……一瞬で終わらせて、後悔させてやる!)
「エリザベス、魔法の準備!ソフィー、左手を頼む!」
「わかったわ!炎の精霊よ、我が声を聞き、炎を槍に……」
「了解した!」
目の前にいるアイリスは反応すらできない。オーウェンは炎の剣で彼女の右腕を斬りつけ、同時にソフィーの聖槍オベリスクが彼女の左腕を狙った。
バン! バン! ガン! ドン!
「何だと!」
「なっすか?!」
「な!」
瞬時に繰り出された攻撃がすべて命中した――はずだった。だが、リリアンの放った2本の矢は足に到達する前に何かに防がれ、オーウェンの魔剣もソフィーの槍も腕に届く前に同様に阻まれた。その場の空気が一変する。勇者たちは即座に作戦を切り替えた。
「避けろ!エリザベス、撃て!」
オーウェンは左方向へ素早く飛び、指示を受けたソフィーも右方向へ飛び退く。後方にいたリリアンも迅速に攻撃範囲外に移動した。
この瞬間、エリザベスとアイリスの直線上には誰も遮る者がいない。
「……あり。我が敵を貫きなさい!――ファイヤーランス!」
エリザベスの前に、馬車ほどの長さを誇る巨大な炎の槍が現れ、アイリスに向かって発射された。
「もう一本ですわ!」
エリザベスの得意技である、同時2回発動可能な連続魔法。その名の通り、聖王国の賢者としての天才ぶりを証明する技だ。さらに彼女が手にする聖杖ユウゲンは魔法の威力を大幅に増加させる。その結果、そのファイヤーランス2本の威力は普通の魔道士のものをはるかに凌駕するレベルとなった。
ドカーン! ドッカーン!
2発の炎の槍は見事にアイリスへ命中し、闘技場全体に衝撃波を巻き起こす。その衝撃波は観客席にまで届き、煙が舞い上がり、アイリスの様子を覆い隠した。
リリアンはその猫耳を動かし、警戒をさらに強めた。そして素早くエリザベスの元に戻り、再びターゲットを狙いながら弓を引き絞った。
「ごめんなさいですわ。手加減を忘れてしまいました。」
「まだ終わってないっすよ!」
「え?」
煙が段々と消えていく中、アイリスはまるで何事もなかったかのように立ち尽くしていた。決闘開始時と同じように、右手には長い杖を握り、悠然とした様子を保っている。
うおおおおおぉぉぉぉぉーーーーーーーーーーー!!!
観客から歓喜の声が沸き起こった。勇者たちの攻撃はあまりに速すぎて、観客がはっきりと目にしたのは炎の槍が放たれた瞬間だけだった。彼らはこの少女の敗北を確信していたが、まさか何事もなかったように立っている彼女の姿を目の当たりにし、驚愕していた。
「何なの?わたくしのファイヤーランスが2発も直撃したはずなのに、どうして何も起きないのですか!!」
勇者オーウェンは笑みを浮かべながら、左手の烈火剣ホムラ《焔》でアイリスを指差した。
「そうこなくっちゃ!すぐに終わるなんてつまらないからな!さすが聖女、僕たちにも気づかれないように魔力障壁を張ったんだろう!でもこんな障壁で僕たちの攻撃をいつまで防げるか、試してみようじゃないか!」
彼の言葉を聞いた他の3人もすぐに動き出し、オーウェンとソフィーは再び前方へと走り込む。一方リリアンは背後に回り込むべく動きながら、アイリスの隙を探し続けていた。
「ソフィー、一点突破だ!」
「了解!」
オーウェンは烈火剣に魔力を注ぎ込む。剣身は瞬く間に炎に包まれ、それは巨大な槍へと変化し、素早い刺突でアイリスに向かって放たれた。
「聖炎衝突破!!」
ソフィーも同じく聖槍に魔力を注ぎ込み、槍が白い光を放ち、残像を残すかのような鋭い動きでアイリスに向かって突き刺した。
「シャイニングコリジョン!!」
2人の狙いはアイリスの右肩だった。力を合わせた一点突破攻撃は、もし命中すればアイリスの上半身を跡形もなく消し去るほどの威力を持っていた。その迫力ある合体技は観客を恐れさせ、金ランクの冒険者としての実力が疑いのないものであることを証明していた。
ただし、命中していればの話だが……。
バン!
その攻撃が右肩に届く直前、透明な壁が再び現れて防いだ。
「リリアン!!今だ!」
アイリスの背後にいたリリアンは魔力を込めた矢を放つ。
「流星一閃!!」
放たれた矢は風に乗り、鮮やかな緑色のオーラを纏いながらアイリスの左足を貫くべく向かっていく。
ガン!
だが、その連携攻撃もまた透明な壁によって阻まれた。オーウェンたち3人は攻撃を止めることなく、ひたすら絶え間なくアイリスを斬り続けていった。
「エリザベス!!」
そこには、炎の上位魔法を詠唱し続けるエリザベスの姿があった。
「……究極の炎よ、我が前の不浄をすべて灰にし焼き尽くせ!――離れて!!炎の上位魔法エクスプロージョン!!」
攻撃を続けていた三人はすぐに後退。アイリスの頭上には、頭ほどの大きさの火球が出現し、ゆっくりと降り始めた。周囲で魔力障壁を張っていた魔道士団の皆ですら、まさか決闘の場で広範囲魔法が使われるとは予想しておらず、観客を守るため、急いで魔力障壁を最大出力で展開した。
王様の貴賓席でも、ビアンカと魔道士団の数名が王を守るために重ねて障壁を張り、衝撃波に備えていた。
この瞬間、誰もが思った――この鉄ランクの少女がこの攻撃を受けたら、絶対に敗北する、と。
しかし、不思議なことに、その火球はアイリスに到達する前に突如として消滅したのだ。
闘技場には静寂が訪れた。
一体何が起こったのか?エリザベスが魔法の発動を途中で止めたのか?いや、それはあり得ない。発動済みの魔法を途中で止める術は存在しない。あれは明らかに発動済みの魔法だった。王国一の魔道士であるビアンカですら、この異様な光景を説明できなかった……いいや、信じたくなかった。
勇者たちも動揺していた。まさか切り札である炎の上位魔法すらも無効化されるとは。しかし、その隙を見逃すことなく、彼らは再攻撃を試みた。隙を与える余裕などない。
だが、冷静さを失った彼らの攻撃は急激に荒くなり、連携も取れなくなっていた。ただひたすら攻撃を続け、あの少女の魔力をすべて消耗させるまで斬り続ければ勝てると信じていた。
オーウェンは魔力で氷の剣を巨大な氷剣に、炎の剣を巨大な炎剣に変え、目の前に立つ何者に向かって連続攻撃を繰り出した。
現場の沈黙を破ったのは、連続攻撃を続けるオーウェンの叫び声だった。
「貴様、一体何なんだ!?なぜ僕たちの全力を、まるで何もないように防げる!?一体どんな魔道具を使っているんだ!?」
リリアンとソフィーは、それぞれ自身の最強の技を繰り出し、この何者を攻撃し続けた。
「ありえないっす!ボクたちの攻撃をこうも簡単に防ぐなんて、一体どれだけ硬いっすか?」
「ジャッジメントスピア!!……そんな!私のジャッジメントスピアですら貫けないなんて!エリザベス、土魔法で障壁の中から攻撃を仕掛けて!」
「すでにやってますの!でも何度詠唱しても魔法が発動しませんわ!」
「「「なに?!」」」
「もういい!あいつが障壁を張っている間は攻撃できない。とにかく攻撃を続けるんだ!魔力を切らせば僕たちの勝ちだ!」
この攻防はあまりに激しく、司会者ですら実況するのを忘れ、一観客として試合を見つめていた。そんな中、勇者オーウェンの叫び声で司会者は我に返り、実況を再開した。
『勇者様たちの開幕から続く怒涛の連携攻撃が、なんとすべて鉄ランクの少女アイリスの透明な魔力障壁によって防がれています!一体何が起こっているのでしょう?あの炎の上位魔法エクスプロージョンも急に消えました。これは魔法の不発なのか、それともアイリスが何らかの方法で消し去ったのか?現在、勇者たちは連続攻撃でその障壁を破壊しようとしています!』
司会者の声に反応するように、観客席から次第に応援の声が戻ってきた。
あれから、勇者たちの連続攻撃は5分近く続けられた。そのとき、ついにアイリスが口を開いた。
「鉄ランク冒険者の障壁すら破れない。だから、弱いパーティーに入る意味がないと言ったでしょう。」
「はぁ!はぁ!何だと!弱い弱いってうっさいんだよ!僕たちはこの世界で最強だ!神の末裔だ!僕たちがいないと、この世界を守ることなんて誰にもできないんだ!!だから、さっさと死ね!」
「残念ですが、君たちはただ権力と金で勇者ごっこをしているだけの道楽者です。周りに多大な迷惑をかけていることすら分からない小物です。この世界はすでに神竜様が守っています。小物は普通の人のように働きなさい。」
「そうだ!僕は自分の権力と金で勇者をやっている!君に言われる筋合いはない!だからさっさとくたばれ!!」
オーウェンは双剣で斬り続け、リリアンも神弓ではなく短剣を手に直接アイリスを斬りつけ始めた。ソフィーは同じ技で同じ場所をひたすら突き続ける。一方、エリザベスは持てる限りの魔法を全力で詠唱し続けるも、一向に発動する気配はなかった。
そのとき、アイリスが静かに口を開いた。
「もう十分でしょう。今度は私から攻撃しますね。」
その言葉を聞いた前線の三人は即座に後ろへと跳び退き、エリザベスのところまで後退した。
『おっーーーと!勇者たちは急にアイリスへの攻撃を止め、後退しました!神弓使いのリリアンは素早く賢者エリザベスに魔力ポーションを渡しています。どうやら先ほどの炎の上位魔法で、エリザベスは大幅な魔力を消耗したようです。しかし、一体なぜ急に後退したのでしょうか?』
その瞬間、アイリスはゆっくりと歩を進め始めた。
『それでは……勇者パーティー対アイリスの決闘、始め!』
司会者が決闘開始の宣言をした瞬間、獣人リリアンはトップスピードで走り出した。その動きはまるで疾風のようで、闘技場内で彼女の姿を追える者はごく僅かだった。アイリスはその速さに全く気づかないまま、背後を取られてしまう。
(よくボクたち4人相手に、防具もなく生身で挑むっすね。後悔させてやるっす!)
「その足、貰った!!」
リリアンは伝承によればカオル神が自らの手で作ったという命中精度抜群の“神弓カムイ”を素早く構え、アイリスの足の裏の関節を狙って2連射した。矢はまるで光のように放たれ、観客たちの息を呑む音が響き渡る。
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リリアンが走り出したのと同時に、勇者オーウェンも双剣“烈火剣ホムラ”と“絶冷剣アラレ”を抜き放ち、魔法で身体強化を施したままアイリスに向かって一直線に走った。
(よく僕の誘いを断って、この僕を恥をかかせるとは……一瞬で終わらせて、後悔させてやる!)
「エリザベス、魔法の準備!ソフィー、左手を頼む!」
「わかったわ!炎の精霊よ、我が声を聞き、炎を槍に……」
「了解した!」
目の前にいるアイリスは反応すらできない。オーウェンは炎の剣で彼女の右腕を斬りつけ、同時にソフィーの聖槍オベリスクが彼女の左腕を狙った。
バン! バン! ガン! ドン!
「何だと!」
「なっすか?!」
「な!」
瞬時に繰り出された攻撃がすべて命中した――はずだった。だが、リリアンの放った2本の矢は足に到達する前に何かに防がれ、オーウェンの魔剣もソフィーの槍も腕に届く前に同様に阻まれた。その場の空気が一変する。勇者たちは即座に作戦を切り替えた。
「避けろ!エリザベス、撃て!」
オーウェンは左方向へ素早く飛び、指示を受けたソフィーも右方向へ飛び退く。後方にいたリリアンも迅速に攻撃範囲外に移動した。
この瞬間、エリザベスとアイリスの直線上には誰も遮る者がいない。
「……あり。我が敵を貫きなさい!――ファイヤーランス!」
エリザベスの前に、馬車ほどの長さを誇る巨大な炎の槍が現れ、アイリスに向かって発射された。
「もう一本ですわ!」
エリザベスの得意技である、同時2回発動可能な連続魔法。その名の通り、聖王国の賢者としての天才ぶりを証明する技だ。さらに彼女が手にする聖杖ユウゲンは魔法の威力を大幅に増加させる。その結果、そのファイヤーランス2本の威力は普通の魔道士のものをはるかに凌駕するレベルとなった。
ドカーン! ドッカーン!
2発の炎の槍は見事にアイリスへ命中し、闘技場全体に衝撃波を巻き起こす。その衝撃波は観客席にまで届き、煙が舞い上がり、アイリスの様子を覆い隠した。
リリアンはその猫耳を動かし、警戒をさらに強めた。そして素早くエリザベスの元に戻り、再びターゲットを狙いながら弓を引き絞った。
「ごめんなさいですわ。手加減を忘れてしまいました。」
「まだ終わってないっすよ!」
「え?」
煙が段々と消えていく中、アイリスはまるで何事もなかったかのように立ち尽くしていた。決闘開始時と同じように、右手には長い杖を握り、悠然とした様子を保っている。
うおおおおおぉぉぉぉぉーーーーーーーーーーー!!!
観客から歓喜の声が沸き起こった。勇者たちの攻撃はあまりに速すぎて、観客がはっきりと目にしたのは炎の槍が放たれた瞬間だけだった。彼らはこの少女の敗北を確信していたが、まさか何事もなかったように立っている彼女の姿を目の当たりにし、驚愕していた。
「何なの?わたくしのファイヤーランスが2発も直撃したはずなのに、どうして何も起きないのですか!!」
勇者オーウェンは笑みを浮かべながら、左手の烈火剣ホムラ《焔》でアイリスを指差した。
「そうこなくっちゃ!すぐに終わるなんてつまらないからな!さすが聖女、僕たちにも気づかれないように魔力障壁を張ったんだろう!でもこんな障壁で僕たちの攻撃をいつまで防げるか、試してみようじゃないか!」
彼の言葉を聞いた他の3人もすぐに動き出し、オーウェンとソフィーは再び前方へと走り込む。一方リリアンは背後に回り込むべく動きながら、アイリスの隙を探し続けていた。
「ソフィー、一点突破だ!」
「了解!」
オーウェンは烈火剣に魔力を注ぎ込む。剣身は瞬く間に炎に包まれ、それは巨大な槍へと変化し、素早い刺突でアイリスに向かって放たれた。
「聖炎衝突破!!」
ソフィーも同じく聖槍に魔力を注ぎ込み、槍が白い光を放ち、残像を残すかのような鋭い動きでアイリスに向かって突き刺した。
「シャイニングコリジョン!!」
2人の狙いはアイリスの右肩だった。力を合わせた一点突破攻撃は、もし命中すればアイリスの上半身を跡形もなく消し去るほどの威力を持っていた。その迫力ある合体技は観客を恐れさせ、金ランクの冒険者としての実力が疑いのないものであることを証明していた。
ただし、命中していればの話だが……。
バン!
その攻撃が右肩に届く直前、透明な壁が再び現れて防いだ。
「リリアン!!今だ!」
アイリスの背後にいたリリアンは魔力を込めた矢を放つ。
「流星一閃!!」
放たれた矢は風に乗り、鮮やかな緑色のオーラを纏いながらアイリスの左足を貫くべく向かっていく。
ガン!
だが、その連携攻撃もまた透明な壁によって阻まれた。オーウェンたち3人は攻撃を止めることなく、ひたすら絶え間なくアイリスを斬り続けていった。
「エリザベス!!」
そこには、炎の上位魔法を詠唱し続けるエリザベスの姿があった。
「……究極の炎よ、我が前の不浄をすべて灰にし焼き尽くせ!――離れて!!炎の上位魔法エクスプロージョン!!」
攻撃を続けていた三人はすぐに後退。アイリスの頭上には、頭ほどの大きさの火球が出現し、ゆっくりと降り始めた。周囲で魔力障壁を張っていた魔道士団の皆ですら、まさか決闘の場で広範囲魔法が使われるとは予想しておらず、観客を守るため、急いで魔力障壁を最大出力で展開した。
王様の貴賓席でも、ビアンカと魔道士団の数名が王を守るために重ねて障壁を張り、衝撃波に備えていた。
この瞬間、誰もが思った――この鉄ランクの少女がこの攻撃を受けたら、絶対に敗北する、と。
しかし、不思議なことに、その火球はアイリスに到達する前に突如として消滅したのだ。
闘技場には静寂が訪れた。
一体何が起こったのか?エリザベスが魔法の発動を途中で止めたのか?いや、それはあり得ない。発動済みの魔法を途中で止める術は存在しない。あれは明らかに発動済みの魔法だった。王国一の魔道士であるビアンカですら、この異様な光景を説明できなかった……いいや、信じたくなかった。
勇者たちも動揺していた。まさか切り札である炎の上位魔法すらも無効化されるとは。しかし、その隙を見逃すことなく、彼らは再攻撃を試みた。隙を与える余裕などない。
だが、冷静さを失った彼らの攻撃は急激に荒くなり、連携も取れなくなっていた。ただひたすら攻撃を続け、あの少女の魔力をすべて消耗させるまで斬り続ければ勝てると信じていた。
オーウェンは魔力で氷の剣を巨大な氷剣に、炎の剣を巨大な炎剣に変え、目の前に立つ何者に向かって連続攻撃を繰り出した。
現場の沈黙を破ったのは、連続攻撃を続けるオーウェンの叫び声だった。
「貴様、一体何なんだ!?なぜ僕たちの全力を、まるで何もないように防げる!?一体どんな魔道具を使っているんだ!?」
リリアンとソフィーは、それぞれ自身の最強の技を繰り出し、この何者を攻撃し続けた。
「ありえないっす!ボクたちの攻撃をこうも簡単に防ぐなんて、一体どれだけ硬いっすか?」
「ジャッジメントスピア!!……そんな!私のジャッジメントスピアですら貫けないなんて!エリザベス、土魔法で障壁の中から攻撃を仕掛けて!」
「すでにやってますの!でも何度詠唱しても魔法が発動しませんわ!」
「「「なに?!」」」
「もういい!あいつが障壁を張っている間は攻撃できない。とにかく攻撃を続けるんだ!魔力を切らせば僕たちの勝ちだ!」
この攻防はあまりに激しく、司会者ですら実況するのを忘れ、一観客として試合を見つめていた。そんな中、勇者オーウェンの叫び声で司会者は我に返り、実況を再開した。
『勇者様たちの開幕から続く怒涛の連携攻撃が、なんとすべて鉄ランクの少女アイリスの透明な魔力障壁によって防がれています!一体何が起こっているのでしょう?あの炎の上位魔法エクスプロージョンも急に消えました。これは魔法の不発なのか、それともアイリスが何らかの方法で消し去ったのか?現在、勇者たちは連続攻撃でその障壁を破壊しようとしています!』
司会者の声に反応するように、観客席から次第に応援の声が戻ってきた。
あれから、勇者たちの連続攻撃は5分近く続けられた。そのとき、ついにアイリスが口を開いた。
「鉄ランク冒険者の障壁すら破れない。だから、弱いパーティーに入る意味がないと言ったでしょう。」
「はぁ!はぁ!何だと!弱い弱いってうっさいんだよ!僕たちはこの世界で最強だ!神の末裔だ!僕たちがいないと、この世界を守ることなんて誰にもできないんだ!!だから、さっさと死ね!」
「残念ですが、君たちはただ権力と金で勇者ごっこをしているだけの道楽者です。周りに多大な迷惑をかけていることすら分からない小物です。この世界はすでに神竜様が守っています。小物は普通の人のように働きなさい。」
「そうだ!僕は自分の権力と金で勇者をやっている!君に言われる筋合いはない!だからさっさとくたばれ!!」
オーウェンは双剣で斬り続け、リリアンも神弓ではなく短剣を手に直接アイリスを斬りつけ始めた。ソフィーは同じ技で同じ場所をひたすら突き続ける。一方、エリザベスは持てる限りの魔法を全力で詠唱し続けるも、一向に発動する気配はなかった。
そのとき、アイリスが静かに口を開いた。
「もう十分でしょう。今度は私から攻撃しますね。」
その言葉を聞いた前線の三人は即座に後ろへと跳び退き、エリザベスのところまで後退した。
『おっーーーと!勇者たちは急にアイリスへの攻撃を止め、後退しました!神弓使いのリリアンは素早く賢者エリザベスに魔力ポーションを渡しています。どうやら先ほどの炎の上位魔法で、エリザベスは大幅な魔力を消耗したようです。しかし、一体なぜ急に後退したのでしょうか?』
その瞬間、アイリスはゆっくりと歩を進め始めた。
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---------
もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります!
#ヒラ俺
この度ついに完結しました。
1年以上書き続けた作品です。
途中迷走してました……。
今までありがとうございました!
---
追記:2025/09/20
再編、あるいは続編を書くか迷ってます。
もし気になる方は、
コメント頂けるとするかもしれないです。
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