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71 危ない人
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例の人質事件以来、俺は王都をひとりで移動する時は、常に自分自身にドーム型の薄い障壁を張っている。 現に今、後ろから誰かが俺の障壁をノックしたのを感じた。
――びっくりした!
警戒しつつ振り返ると、そこには俺の正体を知っている騎士、デニスさんとドリューさんがいた。 彼らは人差し指を口の前に立てて「シー!」と示す。 俺は頷き、彼らに付いて行った。
そして、冒険者ギルドの裏門に到着。 裏門からギルドへ入り、応接室へ案内される。 そこにはビアンカ様とマリアンヌの姿があった。
「アイリスちゃん、無事でよかったわ。」
「マリアンヌと……ビアンカ様? 一体何があったんですか?」
「わたしたちは王妃様からのご連絡で、アイリスが言っていた不審な馬車を確認しに来たのです。」
――あ、マリアンヌが俺の正体を知っていることを、ビアンカ様たちは知らないんだった。 合わせないと……。
「アイリスちゃん、外の馬車はサンダース王国薬師ギルドの偉い人のものです。」
「え? 薬師ギルドなら私とは関係ないのでは?」
「ええ、あなたには関係ないのですが、 今朝からずっと暴れた後、月光草を持ってくる女の子を待っているらしいのです。」
マリアンヌのその言葉に、場の空気が重くなる。 お互い嫌な予感を感じた。
「はぁ……朝の嫌な予感が的中してしまった……。」
「副ギルマスの話によると、その薬師は薬師界でも名のある人物で、 『月光草は果実を作らない植物』だと発表した張本人なのです。 しかし最近、こちらから頻繁に月光草の納品があり、 彼は副ギルマスが月光草の実を発見したという話を確認しに来たそうです。
「朝からずっと、副ギルマスに発見場所や実物の確認、証明について質問しているらしく、 当然、副ギルマスは仕入れ先との約束があるため秘密だと話しました。」
「ところが、あの薬師は他の冒険者から 『毎週薬草を売りに来る女の子がいる』という話を聞いたそうで…… だからずっとここであなたを待っているのです。」
「なるほど……でも、私が納品した薬草は普通のものしかないですよ。」
「副ギルマスもそう説明しましたが、あの方は信じませんでした。 その後、学園長様と騎士様が来て、騎士様は外であなたが来たら、 すぐにこちらへ案内するようにとの指示を受けていたそうです。」
ここでビアンカ様は俺を応接室の端へ連れて行き、こっそり話した。
「先ほど王妃様からの命令で、あの馬車がヘンリー王子のものか確認するよう指示がありました。 しかし、今薬師ギルドの所有物だと判明したので、わたしは王城へ戻って報告しなければなりません。 アイリス様、大丈夫ですか?」
「ええ、大丈夫です。その偉い方は私を待っているし、ここで私が納品した薬草は普通のものだと示せば、 もう私に関係がないと思うはずです。王妃様にもお礼をお伝えください。」
「了解しました。念のため、騎士たちをギルド前で待機させます。 何かあれば彼らを呼んでください。わたしは王城へ戻り、報告いたします。」
「はい、お疲れ様でした。」
その後、ビアンカ様は騎士のデニスさんとドリューさんに、ギルド前で待機するよう指示を出した。 応接室に残ったのは、俺とマリアンヌだけになった。
「マリアンヌ、先に希少な薬草を渡します。その後、玄関からいつも通り薬草を納品しますね。」
「分かりました。ギルマスと副ギルマスも今カウンターのところにいるので、薬草は副ギルマスに渡してください。」
「今日は一緒にお昼はできなさそうですね。色々聞きたいことがありますが、来週にします。」
「ええ、気をつけてね。あの偉い方も一応貴族だけど、副ギルマスの話ではかなりの変人らしいですよ。」
「貴族で変人……一番厄介なタイプですね。では、こちらが希少な薬草です。お金は来週で大丈夫です。」
「はい、お預かりしました。」
こうして、俺は冒険者ギルドの裏から出て、もう一度玄関からギルドに入った。
入った瞬間、食堂のところで護衛2人に付き添われている白髪の老人を発見。 白いローブをまとったその姿――恐らく、例の薬師貴族だろう。
彼は俺を見るなり、大声で叫んだ。
「やっと来たか! 貴様は月光草を売る女か!」
「ひぃ! だ、誰ですか? 月光草なんて知りませんよ!」
「嘘を言うな! そのカバンの中に月光草があるだろう! こちらへ渡せ!」
その瞬間、爺さんが俺のカバンを強奪しようと手を伸ばした。
しかし、その手を誰かが掴んだ。
「オリヴァー殿。たとえ他国の貴族様である君であっても、我がギルド内で他の冒険者の持ち物を強奪するのは立派な犯罪行為だ。 衛兵を呼ぶぞ。」
その手を掴んだのは、ギルマスのジャックさんだった。 そして彼の背後には、カウンターから出てきた副ギルマスとマリアンヌが並んでいた。 どうやらマリアンヌは、副ギルマスへ事情を伝えていたらしい。
「ワシはただ、この女が月光草を売っていると証明したいだけだ! くむむ!!! 離せ、野蛮人め!」
ジャックさんは爺さんの手を離し、続けて副ギルマスが口を開いた。
「オリヴァー殿。今朝から何度も申し上げている通り、月光草の実を発見した冒険者は、偶然魔の森で見つけただけです。 彼女は確かに毎週薬草を売りに来ていますが、納品しているのは普通の薬草のみ。 信じられないのであれば、ここで検品しましょうか?」
「フレッドめ……よかろう、許可する。」
副ギルマスはアイリスの方を向き、優しく問いかける。
「アイリス嬢、申し訳ないが、ここで検品しても構わんか?」
「はい、構いません。こちらをどうぞ。」
俺はカバンに入れていた薬草を副ギルマスに渡し、その場で検品を行った。 当然、全部普通の薬草で、レア薬草は1~2本のみ。
「オリヴァー殿、ワシが言った通りだろう。 こちらのお嬢さんはただ普通の薬草を売るために来た。 だからここでずっと待っても意味がない。もう何度も話したが、月光草の実はすでに国王陛下に呈上した。 見たいのであれば、王城に正式な手続きで申請しなさい。」
「そんな馬鹿な! この女の体から、月光草特有の甘い匂いがする! 絶対この娘が持ってきたに違いない!早く言え! 月光草の実はどこで手に入れた!」
(ちぃ…)
ここは冒険者ギルドの食堂。 当然、周りには冒険者がたくさんいる。
この爺さんの発言を聞いた冒険者たちは、面白半分で俺の匂いを嗅ごうと近づいてきた。 ギルマスの超眼力でこれ以上近づかないように抑えられているが、 今の状況はまるでコミケのローアングルおじさんに囲まれたような気持ち悪さだ。
仕方なく、俺も反撃することにした。
「この匂いですか? これは王妃様から頂いた香水の匂いです。 そんなに欲しいのであれば、王妃様にお願いしてみてはいかがですか?」
「はぁ?! 貴様ごときの小娘が、この国の王妃に会えるわけがないだろう! さっさと月光草の実の場所を教えろ!」
「何事だ!」
わざと大きな声で『王妃様』と言うと、外で待機していた聡明なデニスさんとドリューさんが、 タイミングを計ったかのように入ってきた。
「あら、デニス様とドリュー様、ごきげんよう。」
「アイリス様、ご機嫌麗しゅうございます。 先ほど外を歩いている時、ここで騒ぎがあったと聞きましたが、何かありましたか?」
「あ~、いいえ。私はただいつも通り薬草を売りに来ただけなのですが、 こちらのお爺さまが私に“ゲッコウソウノミ”というものの見つけた場所を聞いてきたのです。 正直、自分にもよく分かりません。」
「騎士様、ワシからご説明いたします。実は……。」
副ギルマスの説明を受け、デニスさんとドリューさんは目の前の老人が北の国の貴族であり、 薬師ギルドの重鎮であることを改めて理解したようだった。
「なるほど、オリヴァー殿。 こちらのアイリス様は現在、王妃様専属の回復術士として務めています。 もし彼女に何かあれば、大きな外交問題へ発展する可能性もあります。 本当にその薬草の果実を確認したいのであれば、王城で正式な手続きを行うべきではないでしょうか?」
(……あれ? 俺、いつの間に王妃様専属の回復術士になった? まぁ、毎週王妃様に会っているし、王様が周囲に適当な言い訳をしているのだろう。 そうでなければ、平民がこんな簡単に王妃様に会えるはずがない……うんうん。)
すると、オリヴァー殿は騎士の言葉を聞いて急に俺のことをじっと見つめてきた。
「くむむ……その髪……なるほど! 貴様がその邪竜の魔女か! ということは、この娘が拾った月光草の実は嘘だ! これでワシの論文は間違っていなかったことが証明された! フレッド! 今回はワシの勝ちだ! うはははっ!」
「邪竜の魔女」――その言葉が飛び出した瞬間、ギルマスの表情が変わり、 低い声で強気に話し出した。
「ほぅ……カウレシア王国で神竜様を邪悪な存在だと呼ぶとは、大した度胸だな。 オリヴァー殿はサンダース王国の貴族様。 では、この発言はサンダース王国の公式な考え方、ということでいいのか? もしそうなら、我がギルドはこれからサンダース王国から来た冒険者への対応を改める必要がありそうだな。」
ギルマスがそう言い終えた瞬間、周囲の冒険者たちがざわめき始めた。 10数名の者が近づき、声を上げる。
「ギルマス! この爺さんが勝手に言っただけだ! 俺たちには関係ない!」
「でもなぁ、お前ら知らねぇと思うが…… あの創造神の使者様はファレル聖王国でたった一言で、 2000人の聖騎士を一瞬で跪かせたらしいぞ。もし、この爺さんやサンダース王国の冒険者たちの発言で使者様の気分を損ねて、 カウレシア王国に天罰を下されたら……俺は責任を取らねぇからな!」
「な……そんな話、聞いたことねぇぞ!」
各国でも名高い魔法と剣術を持つ聖騎士たちが一瞬で無力化される―― その光景を想像すると、現場は一瞬静まり返った。
しかし次の瞬間、冒険者たちの怒声がギルド内に響き渡った。
『ジジイ! 帰れ! 貴様のせいで俺たちサンダース王国の冒険者の待遇が悪くなる!』
『帰れよ! 使者様すら見たことのない奴は帰れ!』
『カオル教の方が悪いと使者様から教わっただろうが! このくそジジイ!』
『アイリスちゃんを悪く言うな! そんなにその実が欲しいなら魔の森で自分で探せ!』
『騎士様! この爺さんを捕まえろ!』
オリヴァー殿は明らかに怯え始めた。
「き、貴様ら! ワシは貴族だぞ! ふ、不敬罪だ! 邪竜は邪竜だ! ファレル聖王国がそう宣言したのだ! これだから邪教を信仰する国は嫌なのだ……!」
それを聞くと、オリヴァー殿の護衛二人が前に出て、彼を守るように構えた。
すると、騎士のデニスさんが一歩前へ進み、強気に言葉を発した。
「オリヴァー殿、これは聞き捨てならない発言です。 ここはカウレシア王国であり、サンダース王国ではありません。 よって、貴国の不敬罪は適用されません。」
「それに、ご存じないとは思えませんが―― ファレル聖王国はその宣言によって天罰を受け、 カオル大聖堂は神竜様の青い炎によって灰となりました。 」
「オリヴァー殿の言動はカウレシア王国にとって看過できない問題です。 貴殿は他国の貴族であるため、無理に捕えることはしませんが、 ぜひ大人しく我々と共に陛下に謁見し、ご説明いただくことをお願いいたします。」
「くむむ……! フレッド! これで勝ったと思うなよ! フン!」
「ワシは何もしていないが……。」
デニスさんは爺さんを連れて、その馬車へと戻っていった。 一方、ドリューさんは残り、現場で説明を続ける。
「オリヴァー殿のことは我々にお任せください。 ギルマスも、サンダース王国の冒険者たちにはいつも通り対応をお願いいたします。」
「わかった。俺はもともと対応を変えるつもりはねぇ。 あの爺さんはただ自分の論文が正しいと証明したいだけだろう。 月光草の実を見せれば、すぐに黙ると思うぜ。」
「了解しました。その件も含めて上へ報告します。 実物を見せれば、大人しく帰るとは思いますが…… もし彼がまた来たら、ご連絡をお願いします。」
「了解した。」
「では、アイリス様も、もし再び絡まれることがあれば、すぐに私たちにお知らせください。」
「ありがとうございます、ドリュー様。」
こうして、冒険者ギルドの騒ぎは収まり、いつもの雰囲気へと戻っていった。
「ギルマス、副ギルマス、マリアンヌ、ありがとうございました。」
ギルマスはマリアンヌにコソコソと何か話し、 マリアンヌはため息を吐きながら彼の代わりに俺へと返事した。
「アイリスちゃん、ギルマスは『お礼なんていいですよ』って言っています。 あのお貴族様は、もともとなぜかずっと副ギルマスのことをライバル視していたので、 逆に巻き込まれる形になり、迷惑をかけてしまったと感じているようです。 それと、メガネありがとう。 軽くて疲れにくいおかげで、各ギルド会議で他のギルマスに怯えずに済みました……多分、ですが。」
本当に、どうしてギルマスはマリアンヌにだけ普通に話せるのか……謎だ。 俺はギルマスを真っ直ぐ見つめ、こう返事した。
「ギルマス、そのお礼はマリアンヌに言ってください。 私はただ、彼女の依頼を受けただけです。」
「あ! いや! すでに言ったぜ! 彼女にもメガネを贈りたいが、いらないって言ったんだよな。」
マリアンヌに関することだけはスムーズに話せるらしい。 隣にいるマリアンヌは少し頬を赤らめ、真面目な顔で言った。
「ジャックさん、余計なことは言わないでください。 わたし……今のメガネが気に入っているのです。」
「お二人さん、惚気話は家でしろよ。 ーーアイリス嬢、ワシの知り合いのゴタゴタに巻き込んでしまって、すまんね。」
「いいえ、大丈夫です。」
「王城がオリヴァーに実物を見せたら、もう大丈夫だと思うが、しばらくは気をつけてくれ。 こちらが薬草のお金だ。」
「分かりました、ありがとうございます。」
マリアンヌとゆっくり話したいが、こんな状況では早めに離れた方がよさそうだ。 周囲には俺の匂いを遠くから嗅ごうとしている人もいるし……。
俺は冒険者ギルドを出て、うまそうな店で昼食を取った。 その後、市場で買い物を済ませ、早めに帰宅した。
改めて実感したことがある――ネットのない世界では、情報の伝達が本当に遅い。 ファレル聖王国で起こった大事件の影響は計り知れないはずなのに、 隣国のサンダース王国では未だにこの件を知らない者がいて、 神竜様を邪竜と呼ぶ者までいる。 月光草の実の件なんて、俺はもうすっかり忘れかけていたというのに……。
だが、王妃様曰く、最近は他国の貴族たちがトイエリ教会を見学する人が増えているらしい。 ……一応、気をつけるとしよう。
――びっくりした!
警戒しつつ振り返ると、そこには俺の正体を知っている騎士、デニスさんとドリューさんがいた。 彼らは人差し指を口の前に立てて「シー!」と示す。 俺は頷き、彼らに付いて行った。
そして、冒険者ギルドの裏門に到着。 裏門からギルドへ入り、応接室へ案内される。 そこにはビアンカ様とマリアンヌの姿があった。
「アイリスちゃん、無事でよかったわ。」
「マリアンヌと……ビアンカ様? 一体何があったんですか?」
「わたしたちは王妃様からのご連絡で、アイリスが言っていた不審な馬車を確認しに来たのです。」
――あ、マリアンヌが俺の正体を知っていることを、ビアンカ様たちは知らないんだった。 合わせないと……。
「アイリスちゃん、外の馬車はサンダース王国薬師ギルドの偉い人のものです。」
「え? 薬師ギルドなら私とは関係ないのでは?」
「ええ、あなたには関係ないのですが、 今朝からずっと暴れた後、月光草を持ってくる女の子を待っているらしいのです。」
マリアンヌのその言葉に、場の空気が重くなる。 お互い嫌な予感を感じた。
「はぁ……朝の嫌な予感が的中してしまった……。」
「副ギルマスの話によると、その薬師は薬師界でも名のある人物で、 『月光草は果実を作らない植物』だと発表した張本人なのです。 しかし最近、こちらから頻繁に月光草の納品があり、 彼は副ギルマスが月光草の実を発見したという話を確認しに来たそうです。
「朝からずっと、副ギルマスに発見場所や実物の確認、証明について質問しているらしく、 当然、副ギルマスは仕入れ先との約束があるため秘密だと話しました。」
「ところが、あの薬師は他の冒険者から 『毎週薬草を売りに来る女の子がいる』という話を聞いたそうで…… だからずっとここであなたを待っているのです。」
「なるほど……でも、私が納品した薬草は普通のものしかないですよ。」
「副ギルマスもそう説明しましたが、あの方は信じませんでした。 その後、学園長様と騎士様が来て、騎士様は外であなたが来たら、 すぐにこちらへ案内するようにとの指示を受けていたそうです。」
ここでビアンカ様は俺を応接室の端へ連れて行き、こっそり話した。
「先ほど王妃様からの命令で、あの馬車がヘンリー王子のものか確認するよう指示がありました。 しかし、今薬師ギルドの所有物だと判明したので、わたしは王城へ戻って報告しなければなりません。 アイリス様、大丈夫ですか?」
「ええ、大丈夫です。その偉い方は私を待っているし、ここで私が納品した薬草は普通のものだと示せば、 もう私に関係がないと思うはずです。王妃様にもお礼をお伝えください。」
「了解しました。念のため、騎士たちをギルド前で待機させます。 何かあれば彼らを呼んでください。わたしは王城へ戻り、報告いたします。」
「はい、お疲れ様でした。」
その後、ビアンカ様は騎士のデニスさんとドリューさんに、ギルド前で待機するよう指示を出した。 応接室に残ったのは、俺とマリアンヌだけになった。
「マリアンヌ、先に希少な薬草を渡します。その後、玄関からいつも通り薬草を納品しますね。」
「分かりました。ギルマスと副ギルマスも今カウンターのところにいるので、薬草は副ギルマスに渡してください。」
「今日は一緒にお昼はできなさそうですね。色々聞きたいことがありますが、来週にします。」
「ええ、気をつけてね。あの偉い方も一応貴族だけど、副ギルマスの話ではかなりの変人らしいですよ。」
「貴族で変人……一番厄介なタイプですね。では、こちらが希少な薬草です。お金は来週で大丈夫です。」
「はい、お預かりしました。」
こうして、俺は冒険者ギルドの裏から出て、もう一度玄関からギルドに入った。
入った瞬間、食堂のところで護衛2人に付き添われている白髪の老人を発見。 白いローブをまとったその姿――恐らく、例の薬師貴族だろう。
彼は俺を見るなり、大声で叫んだ。
「やっと来たか! 貴様は月光草を売る女か!」
「ひぃ! だ、誰ですか? 月光草なんて知りませんよ!」
「嘘を言うな! そのカバンの中に月光草があるだろう! こちらへ渡せ!」
その瞬間、爺さんが俺のカバンを強奪しようと手を伸ばした。
しかし、その手を誰かが掴んだ。
「オリヴァー殿。たとえ他国の貴族様である君であっても、我がギルド内で他の冒険者の持ち物を強奪するのは立派な犯罪行為だ。 衛兵を呼ぶぞ。」
その手を掴んだのは、ギルマスのジャックさんだった。 そして彼の背後には、カウンターから出てきた副ギルマスとマリアンヌが並んでいた。 どうやらマリアンヌは、副ギルマスへ事情を伝えていたらしい。
「ワシはただ、この女が月光草を売っていると証明したいだけだ! くむむ!!! 離せ、野蛮人め!」
ジャックさんは爺さんの手を離し、続けて副ギルマスが口を開いた。
「オリヴァー殿。今朝から何度も申し上げている通り、月光草の実を発見した冒険者は、偶然魔の森で見つけただけです。 彼女は確かに毎週薬草を売りに来ていますが、納品しているのは普通の薬草のみ。 信じられないのであれば、ここで検品しましょうか?」
「フレッドめ……よかろう、許可する。」
副ギルマスはアイリスの方を向き、優しく問いかける。
「アイリス嬢、申し訳ないが、ここで検品しても構わんか?」
「はい、構いません。こちらをどうぞ。」
俺はカバンに入れていた薬草を副ギルマスに渡し、その場で検品を行った。 当然、全部普通の薬草で、レア薬草は1~2本のみ。
「オリヴァー殿、ワシが言った通りだろう。 こちらのお嬢さんはただ普通の薬草を売るために来た。 だからここでずっと待っても意味がない。もう何度も話したが、月光草の実はすでに国王陛下に呈上した。 見たいのであれば、王城に正式な手続きで申請しなさい。」
「そんな馬鹿な! この女の体から、月光草特有の甘い匂いがする! 絶対この娘が持ってきたに違いない!早く言え! 月光草の実はどこで手に入れた!」
(ちぃ…)
ここは冒険者ギルドの食堂。 当然、周りには冒険者がたくさんいる。
この爺さんの発言を聞いた冒険者たちは、面白半分で俺の匂いを嗅ごうと近づいてきた。 ギルマスの超眼力でこれ以上近づかないように抑えられているが、 今の状況はまるでコミケのローアングルおじさんに囲まれたような気持ち悪さだ。
仕方なく、俺も反撃することにした。
「この匂いですか? これは王妃様から頂いた香水の匂いです。 そんなに欲しいのであれば、王妃様にお願いしてみてはいかがですか?」
「はぁ?! 貴様ごときの小娘が、この国の王妃に会えるわけがないだろう! さっさと月光草の実の場所を教えろ!」
「何事だ!」
わざと大きな声で『王妃様』と言うと、外で待機していた聡明なデニスさんとドリューさんが、 タイミングを計ったかのように入ってきた。
「あら、デニス様とドリュー様、ごきげんよう。」
「アイリス様、ご機嫌麗しゅうございます。 先ほど外を歩いている時、ここで騒ぎがあったと聞きましたが、何かありましたか?」
「あ~、いいえ。私はただいつも通り薬草を売りに来ただけなのですが、 こちらのお爺さまが私に“ゲッコウソウノミ”というものの見つけた場所を聞いてきたのです。 正直、自分にもよく分かりません。」
「騎士様、ワシからご説明いたします。実は……。」
副ギルマスの説明を受け、デニスさんとドリューさんは目の前の老人が北の国の貴族であり、 薬師ギルドの重鎮であることを改めて理解したようだった。
「なるほど、オリヴァー殿。 こちらのアイリス様は現在、王妃様専属の回復術士として務めています。 もし彼女に何かあれば、大きな外交問題へ発展する可能性もあります。 本当にその薬草の果実を確認したいのであれば、王城で正式な手続きを行うべきではないでしょうか?」
(……あれ? 俺、いつの間に王妃様専属の回復術士になった? まぁ、毎週王妃様に会っているし、王様が周囲に適当な言い訳をしているのだろう。 そうでなければ、平民がこんな簡単に王妃様に会えるはずがない……うんうん。)
すると、オリヴァー殿は騎士の言葉を聞いて急に俺のことをじっと見つめてきた。
「くむむ……その髪……なるほど! 貴様がその邪竜の魔女か! ということは、この娘が拾った月光草の実は嘘だ! これでワシの論文は間違っていなかったことが証明された! フレッド! 今回はワシの勝ちだ! うはははっ!」
「邪竜の魔女」――その言葉が飛び出した瞬間、ギルマスの表情が変わり、 低い声で強気に話し出した。
「ほぅ……カウレシア王国で神竜様を邪悪な存在だと呼ぶとは、大した度胸だな。 オリヴァー殿はサンダース王国の貴族様。 では、この発言はサンダース王国の公式な考え方、ということでいいのか? もしそうなら、我がギルドはこれからサンダース王国から来た冒険者への対応を改める必要がありそうだな。」
ギルマスがそう言い終えた瞬間、周囲の冒険者たちがざわめき始めた。 10数名の者が近づき、声を上げる。
「ギルマス! この爺さんが勝手に言っただけだ! 俺たちには関係ない!」
「でもなぁ、お前ら知らねぇと思うが…… あの創造神の使者様はファレル聖王国でたった一言で、 2000人の聖騎士を一瞬で跪かせたらしいぞ。もし、この爺さんやサンダース王国の冒険者たちの発言で使者様の気分を損ねて、 カウレシア王国に天罰を下されたら……俺は責任を取らねぇからな!」
「な……そんな話、聞いたことねぇぞ!」
各国でも名高い魔法と剣術を持つ聖騎士たちが一瞬で無力化される―― その光景を想像すると、現場は一瞬静まり返った。
しかし次の瞬間、冒険者たちの怒声がギルド内に響き渡った。
『ジジイ! 帰れ! 貴様のせいで俺たちサンダース王国の冒険者の待遇が悪くなる!』
『帰れよ! 使者様すら見たことのない奴は帰れ!』
『カオル教の方が悪いと使者様から教わっただろうが! このくそジジイ!』
『アイリスちゃんを悪く言うな! そんなにその実が欲しいなら魔の森で自分で探せ!』
『騎士様! この爺さんを捕まえろ!』
オリヴァー殿は明らかに怯え始めた。
「き、貴様ら! ワシは貴族だぞ! ふ、不敬罪だ! 邪竜は邪竜だ! ファレル聖王国がそう宣言したのだ! これだから邪教を信仰する国は嫌なのだ……!」
それを聞くと、オリヴァー殿の護衛二人が前に出て、彼を守るように構えた。
すると、騎士のデニスさんが一歩前へ進み、強気に言葉を発した。
「オリヴァー殿、これは聞き捨てならない発言です。 ここはカウレシア王国であり、サンダース王国ではありません。 よって、貴国の不敬罪は適用されません。」
「それに、ご存じないとは思えませんが―― ファレル聖王国はその宣言によって天罰を受け、 カオル大聖堂は神竜様の青い炎によって灰となりました。 」
「オリヴァー殿の言動はカウレシア王国にとって看過できない問題です。 貴殿は他国の貴族であるため、無理に捕えることはしませんが、 ぜひ大人しく我々と共に陛下に謁見し、ご説明いただくことをお願いいたします。」
「くむむ……! フレッド! これで勝ったと思うなよ! フン!」
「ワシは何もしていないが……。」
デニスさんは爺さんを連れて、その馬車へと戻っていった。 一方、ドリューさんは残り、現場で説明を続ける。
「オリヴァー殿のことは我々にお任せください。 ギルマスも、サンダース王国の冒険者たちにはいつも通り対応をお願いいたします。」
「わかった。俺はもともと対応を変えるつもりはねぇ。 あの爺さんはただ自分の論文が正しいと証明したいだけだろう。 月光草の実を見せれば、すぐに黙ると思うぜ。」
「了解しました。その件も含めて上へ報告します。 実物を見せれば、大人しく帰るとは思いますが…… もし彼がまた来たら、ご連絡をお願いします。」
「了解した。」
「では、アイリス様も、もし再び絡まれることがあれば、すぐに私たちにお知らせください。」
「ありがとうございます、ドリュー様。」
こうして、冒険者ギルドの騒ぎは収まり、いつもの雰囲気へと戻っていった。
「ギルマス、副ギルマス、マリアンヌ、ありがとうございました。」
ギルマスはマリアンヌにコソコソと何か話し、 マリアンヌはため息を吐きながら彼の代わりに俺へと返事した。
「アイリスちゃん、ギルマスは『お礼なんていいですよ』って言っています。 あのお貴族様は、もともとなぜかずっと副ギルマスのことをライバル視していたので、 逆に巻き込まれる形になり、迷惑をかけてしまったと感じているようです。 それと、メガネありがとう。 軽くて疲れにくいおかげで、各ギルド会議で他のギルマスに怯えずに済みました……多分、ですが。」
本当に、どうしてギルマスはマリアンヌにだけ普通に話せるのか……謎だ。 俺はギルマスを真っ直ぐ見つめ、こう返事した。
「ギルマス、そのお礼はマリアンヌに言ってください。 私はただ、彼女の依頼を受けただけです。」
「あ! いや! すでに言ったぜ! 彼女にもメガネを贈りたいが、いらないって言ったんだよな。」
マリアンヌに関することだけはスムーズに話せるらしい。 隣にいるマリアンヌは少し頬を赤らめ、真面目な顔で言った。
「ジャックさん、余計なことは言わないでください。 わたし……今のメガネが気に入っているのです。」
「お二人さん、惚気話は家でしろよ。 ーーアイリス嬢、ワシの知り合いのゴタゴタに巻き込んでしまって、すまんね。」
「いいえ、大丈夫です。」
「王城がオリヴァーに実物を見せたら、もう大丈夫だと思うが、しばらくは気をつけてくれ。 こちらが薬草のお金だ。」
「分かりました、ありがとうございます。」
マリアンヌとゆっくり話したいが、こんな状況では早めに離れた方がよさそうだ。 周囲には俺の匂いを遠くから嗅ごうとしている人もいるし……。
俺は冒険者ギルドを出て、うまそうな店で昼食を取った。 その後、市場で買い物を済ませ、早めに帰宅した。
改めて実感したことがある――ネットのない世界では、情報の伝達が本当に遅い。 ファレル聖王国で起こった大事件の影響は計り知れないはずなのに、 隣国のサンダース王国では未だにこの件を知らない者がいて、 神竜様を邪竜と呼ぶ者までいる。 月光草の実の件なんて、俺はもうすっかり忘れかけていたというのに……。
だが、王妃様曰く、最近は他国の貴族たちがトイエリ教会を見学する人が増えているらしい。 ……一応、気をつけるとしよう。
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