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101 王妃様は一級フラグ建築士に転職しました
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ニセモノの件は一応一段落し、俺はマイホームへ戻り、いつもの生活へと戻った。
認めたくはないが、王妃様の言う通り、マイホームで測ってみると俺の二つのブリンは本当に少し大きくなっていた。何だかまた下着作りの日々に戻った気がする。
この身体はまだ十代の成長期、これからもさらに大きくなるだろう。まあ、俺も男だからブリンが大きくなるのは嫌いじゃないが、毎回毎回下着を作り直すのは面倒だ。
新しいやつを作りながら、マリアンヌへの結婚祝いに何を送るかを考えてみた。
真っ先に思い浮かんだのはウエディングドレス。しかし、最近裁縫スキルがかなり上がったとはいえ、ゼロからドレスを作る経験はない。彼女の人生最大のイベントを台無しにするわけにはいかない。それに、俺が知っているウエディングドレスのデザインは地球のもの。この世界では奇妙に思われる可能性が高い。これはダメだな。
定番の家電……はこの世界にはないよね。家電どころか、魔道具もシンプルなものばかり。光を出すもの、火や水を生み出すものくらいで、それ以外は戦闘サポート系のものばかりだ。
どうやらアクセサリーしか選択肢がなさそうだ。指輪はなしとして、ペンダントや腕輪、髪留め、イヤリングあたりか。
うん、でもただ作るだけでは面白くない。試しにサポート用の魔道具として仕立てるのもいいかもしれない。この前作ったバリアくんはかなり便利だったし……もっと応用できないか? ただ、あれは俺しか使えないっぽい。次に王都へ行くときにビアンカ様に相談してみよう。
そう決めると、俺は再び集中し、自分の新しい下着作りに没頭した。
そして数日後、いつもの買い出しの日。久しぶりに学園の制服へと着替え、畑で薬草を多めに採る。それと、王妃様との約束で古い下着を数着持ち、王都へ向かった。
まずはいつも通り、冒険者ギルドの食堂で朝食をとる。食べ終わる頃には、朝のカウンターラッシュも落ち着いていた。では、薬草を売るとしよう。
「マリアンヌ、おはようございます。こちら、いつもの薬草です。今回は少し多めにしました。」
「あら、アイリスちゃん、おはよ……」
「ねね、アイリスさん!聞いて聞いてよ!」
隣の赤髪の受付嬢、ノラさんがマリアンヌの言葉を遮り、俺に話しかける。
「ギルマスがマリアンヌにプロポーズしたよ!」
「あら、ホント?」
「ノラ先輩、やめてください!アイリスちゃんも!」
「この前の夜、ギルマスはマリアンヌを連れて隣の酒場へ行って――『野郎共!! 俺はここにいるみんなに告げる! マリアンヌはもう俺の嫁だ! 彼女に手を出すなよ! 手を出したら訓練場で俺自ら本気で鍛えてやる! 結婚式の日程が決まったら伝える、以上だ!』ってさ!」
(あ~ギルマス、そのセリフ、大丈夫か……?)
マリアンヌの方を見ると、顔を真っ赤にして両手で顔を隠している。その左手には、ちゃんと指輪がはめられていた。どうやら心配する必要はなさそうだ。
「そうですか、マリアンヌ。おめでとうございます。」
「もう、アイリスちゃんは知ってるくせに。」
「あら、バレましたか?」
「ジャックさんから話を聞きました
。」
ノラさんは驚いた様子で俺に問いかける。
「なんと! アイリスさんが裏で仕込んだのか?!」
「ただ、プロポーズしたことを先に知ってただけですよ、ノラさん。」
「もういいでしょう、ノラ先輩。仕事に戻ってください。」
「かしこまりました~~!夫人!」
「ノラ先輩!」
「仕事に戻ります~!」
茶番が終わり、俺は再びマリアンヌと話した。
「もうこの話題になったし、先に聞いておくね。マリアンヌはペンダント、腕輪、それとも髪留めが欲しい?」
「え?何のこと?」
「結婚祝いだよ。ドレスは流石に作れないけど、アクセサリーなら少し自信がある。」
「もう、送らなくてもいいですよ。勿体ないですし……。」
「私が送りたいんだ。だから教えて。」
「ありがとう……うーん、ペンダントかな。髪留めもいいけど、落としたら悲しいし。腕輪もいいけど、仕事でつけると傷がつくかもしれないし。」
「わかった、じゃあペンダントにするね。そうそう、これを副ギルマスターに鑑定してもらえますか?」
俺はこの前報酬としてもらった、種が入った袋をマリアンヌに渡した。
「これは?」
「種だよ。中に何の種が入っているのか分からないから、種類を区別して家で植えたいんだ。」
「わかりました。副ギルマスターに伝えておきます。」
「依頼だから、後で来たら料金を教えてください。」
「いいですけど、副ギルマスターは多分金を取らないと思うわ。」
「普通の依頼として伝えてください。」
「わかりました。」
「では、また後で来ます。」
「はい、ではまた。」
薬草と種袋を渡した後、俺は冒険者ギルドを離れた。マリアンヌの結婚祝いはペンダントに決まったので、学園に行き、ビアンカ様に俺以外の人も使える魔道具の作り方を教えてもらうことにしよう。ただ、それには時間がかかるだろう。だから、まず王城で王妃様に会うことにした。先に古い下着を王妃様に渡そう。
「あら、おはようございます、アイリスちゃん。どうぞ、お掛けくださいな。」
「おはようございます、王妃様。」
王妃様は赤ちゃんの王女様を抱きながらソファに座り、俺もいつもの席に腰を下ろす。
「えっと……王妃様、先日ご要望されたものを持ってきました。」
「ご要望されたもの?」
「はい、サイズが合わなくなったものです。」
「あ~あれですね。見せて、見せて。」
袋をメイドに渡した。
「そう言えば、専属メイドのアンナさんを最近見かけないですが、何かあったのですか?」
「アンナですか?彼女は妊娠しましたのよ。お腹が大きくなったので、産む前に仕事を休ませようとしましたが、断られまして……だから今は書類仕事のみをやっています。アンナに何か用が?」
「いいえ、願いが叶ってよかったですね。」
「アイリスちゃんのおかげですわよ。アンナの話では、今はもう結婚前のように旦那と普通に会話ができるようになったそうですわ。彼女が愛されて、前より綺麗になりましたし……羨ましいわ。」
「そうですか、よかったですね。」
その後、赤ちゃんを両手で抱いている王妃様の代わりに、メイドたちが袋から古い下着を取り出して王妃様に見せた。……恥ずかしい。女性ならこれは普通のことなのか?俺の場合、まるで男同士でパンツを見せ合っているような気がして、顔が熱くなる。
「まぁ~まぁまぁ~!これシンプルでかわいいわね!これも、これも!ねぇねぇ~アイリスちゃん。」
「ダメです。」
「え~、わたくしまだ何も言っていないわよ?」
「そのデザインの下着を作って欲しいんでしょう?」
「そうよ。」
「前にも話しましたが、赤ちゃんを産んだ後はしばらく胸が大きくなりますよ。その後、元に戻る。だから今作っても、サイズが大きすぎて使えなくなります。」
「くぅ……それは正論すぎて何も言えないわね。」
「それに……」
「それに?」
「私、他に作りたいものがあるので、しばらくそちらに集中したいです。」
「あら、何を作りたいのかしら?」
「友人の結婚祝いのペンダントです。」
「あら……あらあら、ということは冒険者ギルドのギルマスターとその受付嬢が……」
「はい、そうです。」
「それなら仕方ありませんわ。完成したら、わたくしに見せてくだされば許します。」
「な、何か急に見せた後の展開が見えたような……。見せるのは構いませんが、絶対渡しませんよ?」
「わたくしが他人の結婚祝いを奪う人だなんて、そんなひどいこと言わないでよ、アイリスちゃん。」
俺もそう思わないが、なぜか思わずジト目で王妃様を見る。
「しないとは思うけど……王妃様の分も作ってって言いそう。」
「わかってるじゃない。楽しみですわね~! ふふっ。」
「はいはい、わかりました。時間があれば作りますよ。」
「ありがとう~アイリスちゃん~!」
「その代わりに、魔道具の本はありませんか?」
「あると思いますが……どうしたの?」
「せっかくだし、試しにそのペンダントに防御機能を加えたいなと思いまして。」
「そうね、王城の資料庫にはあると思うけれど……あなたなら、直接ビアンカに聞いた方が早いと思うわ。」
「ですよね。では、渡したいものも渡しましたし、私もビアンカ様のところへ行ってきます。」
「あ、そうそう。アイリスちゃん、ちょっと……。」
王妃様はまるで秘密を話すかのように人払いをし、王妃モードで俺と向き合った。
「一昨日、ウンディーチア王国の第二王子が復学しましたわ。」
「あ~、あの王子様ですか……。」
「ええ。戦争前、ウンディーチアの王が陛下に『もしものことがあれば彼を保護してほしい』と頼んでいました。しかし、先日帝国が宣戦布告をした後、彼は国を案じ、連絡を受ける前にすでに長期休暇を取ってウンディーチアの王都へ戻りましたわ。」
「それは知っています。」
「なるほど、ご存知でしたか。ですが、問題はこれからです。学園に戻ったあと、ここ数日間は以前にも増して、あなたの情報を探しているようです。」
「はぁ……。」
「だから、もし学園へ行くなら、絶対に裏門から入ってください。」
「なるほど、ご忠告ありがとうございます。」
「それと……」
「……?」
「辺境のセシリスとサンダース王国で、ずいぶん派手に動きましたね。」
「え? あ~ははっ、派手にやれって“上”から指示されましたから。」
「でも、この様子だとしばらくはニセモノが出ることはないでしょう。こちらでもこの件を広めておきます。」
「あ、ありがとうございます。」
「それに、おかげでサンダース王国の王から、急遽我が国への来訪を取り合わせる連絡が来ましたわ。」
「そうですか……よかった、のかな?」
「ええ、貴方様がきっかけとなった友好的な外交ですから。」
「研究員の私とは全く関係ない話ですよね……絶対に呼ばないでください。」
「はい、わかっております。日程はまだ決まっていませんが、念のため、彼らがご来訪する際は王城には来ない方が良いでしょう。他の貴族に絡まれる可能性もありますから。」
「なるほど、わかりました。」
「伝えたいことは以上です。どうぞ学園へ向かってください、アイリス様。」
「情報提供、ありがとうございました。では、お先に失礼いたします。」
「ええ、お元気で。」
王妃様から貴重な情報をもらった。しかし、まだあの王子様が……なぜだろう、フラグが立った気がする。ただ、今はマリアンヌのペンダントを作るためにビアンカ様に会わないと。学園に入る前にフードを被ろうか。
俺は言われた通り……いや、いつも通り裏門から学園に入った。しかし、門番に止められる。
「アイリスさん、少々お待ちください。」
「え?はい、何でしょう。」
「今、学園長にご連絡いたしますので、こちらでお待ちください。」
「わ、わかりました。」
別の門番が校舎の中へと走っていった。俺は門番の休憩室で待つことになる。恐らく、ビアンカ様がここに来るのだろう。待つこと約10分、予想通りビアンカ様が連絡を取りに行った門番とともにやって来た。
「お待たせしました、アイリス。」
「いいえ、ごきげんよう、ビアンカ様。」
人前では俺はただの研究員で、ビアンカ様は俺の上司という設定だ。
「あなたに見せたいものがあります。学園長室へ参りましょうか。」
「は、はい。かしこまりました。」
わざわざビアンカ様が迎えに来るということは、何かあるに違いない。……嫌な予感がする。
学園長室へ向かう途中、俺たちは沈黙を保っていた。そして、裏門から校舎に入った瞬間、その理由がすぐに分かった。
校舎の裏門の扉を開けると、灰髪のイケメンと、多分側近らしい少年が俺たちに挨拶する。
「聖女様!ご無事で何よりです!そして、お帰りなさいませ。」
あ~、こいつ……先ほど王妃様が話していたウンディーチア王国の第二王子か。名前、何だっけ? ビアンカ様は俺の前に立ち、王子と話し始めた。
「ヘンリー王子殿下、今は確か授業中のはずですが、どうしてここにいるのですか?早めに教室へお戻りください。」
「申し訳ありません、学園長。実は父上より、我が国から貴国へ帰還した聖女様を確認し、無事ならば報告するよう命じられております。」
「なるほど、失礼いたしました。では、研究員のアイリスは今日無事に帰還しましたので、どうぞ教室へお戻りください。」
「……」
「……」
あれ? ビアンカ様も王子様も笑っているのに、間に火花が散っているような錯覚が……。
「では、聖女様。もしよろしければ、このあと昼食をご一緒できませんか?」
「え?嬉しいお誘いですが、私は先約がありますので……。」
「そうですか。では、夕食はいかがでしょう?」
「門限があるので、午後には家へ戻らなければなりません。申し訳ありません。」
「なるほど、ではお家に……」
「殿下。我が国の研究員であるアイリスはただの平民でございます。身分の差もありますし、このまましつこく……コホン、失礼しました。このまま王族の方から無理に食事へ誘われると、他の貴族やご令嬢たちがどう捉えるか分かりません。ですので、この辺でお控え願います。」
「安心してください、学園長殿。僕はただ聖女様へお礼を申し上げたいだけです。何なら、先に他のご令嬢へ説明することも構いませんよ。」
「殿下。そうなれば逆効果かと存じます。それに、彼女は学園の機密や研究資料を知る身です。それとも、別の理由で我が国の研究員へ接触されるおつもりでしょうか?」
ビアンカ様がこう話すと、王子の側近が口を挟んだ。
「学園長様、これはどういう意味でしょうか?殿下はそんな方ではありません。」
「ここはわたしが管理する学園であると同時に、わたし自身もこの国の魔道士団長です。わたしは学園内の研究や機密情報、そしてこの国の安全を守る義務があります。ここに留学する身であるあなた方へ、細やかな忠告を申し上げているのです。」
「「……」」
側近は仕方なく黙った。
「では、研究員アイリスが無事に戻ったことを確認しましたので、子供である生徒たちは早く教室へ戻るように。もし再びわたしへの連絡なしに研究員へ接触するようなことがあれば……今度はわたしではなく、陛下からお呼びがかかるでしょう。貴国とは長年の友好関係を築いてきました。この関係をできる限り長く保ちたいと考えています。どうか賢明な判断を、殿下。」
王子殿下はしばし黙したあと、再びビアンカ様へ話しかけた。
「学園長殿のご忠告、感謝いたします。聖女様が安全に戻られたことを確認しましたので、僕は教室へ戻ります。では、聖女様、学園長、失礼いたします。」
そして彼は背を向け、カッコつけた捨て台詞を残した。
「聖女様、また外でお会いしましょう。」
「はあぁぁーーーー?!」
俺の心の叫びが思わず口に出た。仕方ないじゃないか、何なんだあいつ?いや、王族で王子様なのは分かってるけど、しつこくない?バカなの?こっちは何回断ったと思ってる?バカなの?大事だから三回言うぞ、バカなの?!
この場の全員が俺の心の叫び声に驚いて、こちらを見ている。俺も暇じゃないんだよ、おのれ勝ち組のイケメンめ。フラグを完全に折ってやろう。
認めたくはないが、王妃様の言う通り、マイホームで測ってみると俺の二つのブリンは本当に少し大きくなっていた。何だかまた下着作りの日々に戻った気がする。
この身体はまだ十代の成長期、これからもさらに大きくなるだろう。まあ、俺も男だからブリンが大きくなるのは嫌いじゃないが、毎回毎回下着を作り直すのは面倒だ。
新しいやつを作りながら、マリアンヌへの結婚祝いに何を送るかを考えてみた。
真っ先に思い浮かんだのはウエディングドレス。しかし、最近裁縫スキルがかなり上がったとはいえ、ゼロからドレスを作る経験はない。彼女の人生最大のイベントを台無しにするわけにはいかない。それに、俺が知っているウエディングドレスのデザインは地球のもの。この世界では奇妙に思われる可能性が高い。これはダメだな。
定番の家電……はこの世界にはないよね。家電どころか、魔道具もシンプルなものばかり。光を出すもの、火や水を生み出すものくらいで、それ以外は戦闘サポート系のものばかりだ。
どうやらアクセサリーしか選択肢がなさそうだ。指輪はなしとして、ペンダントや腕輪、髪留め、イヤリングあたりか。
うん、でもただ作るだけでは面白くない。試しにサポート用の魔道具として仕立てるのもいいかもしれない。この前作ったバリアくんはかなり便利だったし……もっと応用できないか? ただ、あれは俺しか使えないっぽい。次に王都へ行くときにビアンカ様に相談してみよう。
そう決めると、俺は再び集中し、自分の新しい下着作りに没頭した。
そして数日後、いつもの買い出しの日。久しぶりに学園の制服へと着替え、畑で薬草を多めに採る。それと、王妃様との約束で古い下着を数着持ち、王都へ向かった。
まずはいつも通り、冒険者ギルドの食堂で朝食をとる。食べ終わる頃には、朝のカウンターラッシュも落ち着いていた。では、薬草を売るとしよう。
「マリアンヌ、おはようございます。こちら、いつもの薬草です。今回は少し多めにしました。」
「あら、アイリスちゃん、おはよ……」
「ねね、アイリスさん!聞いて聞いてよ!」
隣の赤髪の受付嬢、ノラさんがマリアンヌの言葉を遮り、俺に話しかける。
「ギルマスがマリアンヌにプロポーズしたよ!」
「あら、ホント?」
「ノラ先輩、やめてください!アイリスちゃんも!」
「この前の夜、ギルマスはマリアンヌを連れて隣の酒場へ行って――『野郎共!! 俺はここにいるみんなに告げる! マリアンヌはもう俺の嫁だ! 彼女に手を出すなよ! 手を出したら訓練場で俺自ら本気で鍛えてやる! 結婚式の日程が決まったら伝える、以上だ!』ってさ!」
(あ~ギルマス、そのセリフ、大丈夫か……?)
マリアンヌの方を見ると、顔を真っ赤にして両手で顔を隠している。その左手には、ちゃんと指輪がはめられていた。どうやら心配する必要はなさそうだ。
「そうですか、マリアンヌ。おめでとうございます。」
「もう、アイリスちゃんは知ってるくせに。」
「あら、バレましたか?」
「ジャックさんから話を聞きました
。」
ノラさんは驚いた様子で俺に問いかける。
「なんと! アイリスさんが裏で仕込んだのか?!」
「ただ、プロポーズしたことを先に知ってただけですよ、ノラさん。」
「もういいでしょう、ノラ先輩。仕事に戻ってください。」
「かしこまりました~~!夫人!」
「ノラ先輩!」
「仕事に戻ります~!」
茶番が終わり、俺は再びマリアンヌと話した。
「もうこの話題になったし、先に聞いておくね。マリアンヌはペンダント、腕輪、それとも髪留めが欲しい?」
「え?何のこと?」
「結婚祝いだよ。ドレスは流石に作れないけど、アクセサリーなら少し自信がある。」
「もう、送らなくてもいいですよ。勿体ないですし……。」
「私が送りたいんだ。だから教えて。」
「ありがとう……うーん、ペンダントかな。髪留めもいいけど、落としたら悲しいし。腕輪もいいけど、仕事でつけると傷がつくかもしれないし。」
「わかった、じゃあペンダントにするね。そうそう、これを副ギルマスターに鑑定してもらえますか?」
俺はこの前報酬としてもらった、種が入った袋をマリアンヌに渡した。
「これは?」
「種だよ。中に何の種が入っているのか分からないから、種類を区別して家で植えたいんだ。」
「わかりました。副ギルマスターに伝えておきます。」
「依頼だから、後で来たら料金を教えてください。」
「いいですけど、副ギルマスターは多分金を取らないと思うわ。」
「普通の依頼として伝えてください。」
「わかりました。」
「では、また後で来ます。」
「はい、ではまた。」
薬草と種袋を渡した後、俺は冒険者ギルドを離れた。マリアンヌの結婚祝いはペンダントに決まったので、学園に行き、ビアンカ様に俺以外の人も使える魔道具の作り方を教えてもらうことにしよう。ただ、それには時間がかかるだろう。だから、まず王城で王妃様に会うことにした。先に古い下着を王妃様に渡そう。
「あら、おはようございます、アイリスちゃん。どうぞ、お掛けくださいな。」
「おはようございます、王妃様。」
王妃様は赤ちゃんの王女様を抱きながらソファに座り、俺もいつもの席に腰を下ろす。
「えっと……王妃様、先日ご要望されたものを持ってきました。」
「ご要望されたもの?」
「はい、サイズが合わなくなったものです。」
「あ~あれですね。見せて、見せて。」
袋をメイドに渡した。
「そう言えば、専属メイドのアンナさんを最近見かけないですが、何かあったのですか?」
「アンナですか?彼女は妊娠しましたのよ。お腹が大きくなったので、産む前に仕事を休ませようとしましたが、断られまして……だから今は書類仕事のみをやっています。アンナに何か用が?」
「いいえ、願いが叶ってよかったですね。」
「アイリスちゃんのおかげですわよ。アンナの話では、今はもう結婚前のように旦那と普通に会話ができるようになったそうですわ。彼女が愛されて、前より綺麗になりましたし……羨ましいわ。」
「そうですか、よかったですね。」
その後、赤ちゃんを両手で抱いている王妃様の代わりに、メイドたちが袋から古い下着を取り出して王妃様に見せた。……恥ずかしい。女性ならこれは普通のことなのか?俺の場合、まるで男同士でパンツを見せ合っているような気がして、顔が熱くなる。
「まぁ~まぁまぁ~!これシンプルでかわいいわね!これも、これも!ねぇねぇ~アイリスちゃん。」
「ダメです。」
「え~、わたくしまだ何も言っていないわよ?」
「そのデザインの下着を作って欲しいんでしょう?」
「そうよ。」
「前にも話しましたが、赤ちゃんを産んだ後はしばらく胸が大きくなりますよ。その後、元に戻る。だから今作っても、サイズが大きすぎて使えなくなります。」
「くぅ……それは正論すぎて何も言えないわね。」
「それに……」
「それに?」
「私、他に作りたいものがあるので、しばらくそちらに集中したいです。」
「あら、何を作りたいのかしら?」
「友人の結婚祝いのペンダントです。」
「あら……あらあら、ということは冒険者ギルドのギルマスターとその受付嬢が……」
「はい、そうです。」
「それなら仕方ありませんわ。完成したら、わたくしに見せてくだされば許します。」
「な、何か急に見せた後の展開が見えたような……。見せるのは構いませんが、絶対渡しませんよ?」
「わたくしが他人の結婚祝いを奪う人だなんて、そんなひどいこと言わないでよ、アイリスちゃん。」
俺もそう思わないが、なぜか思わずジト目で王妃様を見る。
「しないとは思うけど……王妃様の分も作ってって言いそう。」
「わかってるじゃない。楽しみですわね~! ふふっ。」
「はいはい、わかりました。時間があれば作りますよ。」
「ありがとう~アイリスちゃん~!」
「その代わりに、魔道具の本はありませんか?」
「あると思いますが……どうしたの?」
「せっかくだし、試しにそのペンダントに防御機能を加えたいなと思いまして。」
「そうね、王城の資料庫にはあると思うけれど……あなたなら、直接ビアンカに聞いた方が早いと思うわ。」
「ですよね。では、渡したいものも渡しましたし、私もビアンカ様のところへ行ってきます。」
「あ、そうそう。アイリスちゃん、ちょっと……。」
王妃様はまるで秘密を話すかのように人払いをし、王妃モードで俺と向き合った。
「一昨日、ウンディーチア王国の第二王子が復学しましたわ。」
「あ~、あの王子様ですか……。」
「ええ。戦争前、ウンディーチアの王が陛下に『もしものことがあれば彼を保護してほしい』と頼んでいました。しかし、先日帝国が宣戦布告をした後、彼は国を案じ、連絡を受ける前にすでに長期休暇を取ってウンディーチアの王都へ戻りましたわ。」
「それは知っています。」
「なるほど、ご存知でしたか。ですが、問題はこれからです。学園に戻ったあと、ここ数日間は以前にも増して、あなたの情報を探しているようです。」
「はぁ……。」
「だから、もし学園へ行くなら、絶対に裏門から入ってください。」
「なるほど、ご忠告ありがとうございます。」
「それと……」
「……?」
「辺境のセシリスとサンダース王国で、ずいぶん派手に動きましたね。」
「え? あ~ははっ、派手にやれって“上”から指示されましたから。」
「でも、この様子だとしばらくはニセモノが出ることはないでしょう。こちらでもこの件を広めておきます。」
「あ、ありがとうございます。」
「それに、おかげでサンダース王国の王から、急遽我が国への来訪を取り合わせる連絡が来ましたわ。」
「そうですか……よかった、のかな?」
「ええ、貴方様がきっかけとなった友好的な外交ですから。」
「研究員の私とは全く関係ない話ですよね……絶対に呼ばないでください。」
「はい、わかっております。日程はまだ決まっていませんが、念のため、彼らがご来訪する際は王城には来ない方が良いでしょう。他の貴族に絡まれる可能性もありますから。」
「なるほど、わかりました。」
「伝えたいことは以上です。どうぞ学園へ向かってください、アイリス様。」
「情報提供、ありがとうございました。では、お先に失礼いたします。」
「ええ、お元気で。」
王妃様から貴重な情報をもらった。しかし、まだあの王子様が……なぜだろう、フラグが立った気がする。ただ、今はマリアンヌのペンダントを作るためにビアンカ様に会わないと。学園に入る前にフードを被ろうか。
俺は言われた通り……いや、いつも通り裏門から学園に入った。しかし、門番に止められる。
「アイリスさん、少々お待ちください。」
「え?はい、何でしょう。」
「今、学園長にご連絡いたしますので、こちらでお待ちください。」
「わ、わかりました。」
別の門番が校舎の中へと走っていった。俺は門番の休憩室で待つことになる。恐らく、ビアンカ様がここに来るのだろう。待つこと約10分、予想通りビアンカ様が連絡を取りに行った門番とともにやって来た。
「お待たせしました、アイリス。」
「いいえ、ごきげんよう、ビアンカ様。」
人前では俺はただの研究員で、ビアンカ様は俺の上司という設定だ。
「あなたに見せたいものがあります。学園長室へ参りましょうか。」
「は、はい。かしこまりました。」
わざわざビアンカ様が迎えに来るということは、何かあるに違いない。……嫌な予感がする。
学園長室へ向かう途中、俺たちは沈黙を保っていた。そして、裏門から校舎に入った瞬間、その理由がすぐに分かった。
校舎の裏門の扉を開けると、灰髪のイケメンと、多分側近らしい少年が俺たちに挨拶する。
「聖女様!ご無事で何よりです!そして、お帰りなさいませ。」
あ~、こいつ……先ほど王妃様が話していたウンディーチア王国の第二王子か。名前、何だっけ? ビアンカ様は俺の前に立ち、王子と話し始めた。
「ヘンリー王子殿下、今は確か授業中のはずですが、どうしてここにいるのですか?早めに教室へお戻りください。」
「申し訳ありません、学園長。実は父上より、我が国から貴国へ帰還した聖女様を確認し、無事ならば報告するよう命じられております。」
「なるほど、失礼いたしました。では、研究員のアイリスは今日無事に帰還しましたので、どうぞ教室へお戻りください。」
「……」
「……」
あれ? ビアンカ様も王子様も笑っているのに、間に火花が散っているような錯覚が……。
「では、聖女様。もしよろしければ、このあと昼食をご一緒できませんか?」
「え?嬉しいお誘いですが、私は先約がありますので……。」
「そうですか。では、夕食はいかがでしょう?」
「門限があるので、午後には家へ戻らなければなりません。申し訳ありません。」
「なるほど、ではお家に……」
「殿下。我が国の研究員であるアイリスはただの平民でございます。身分の差もありますし、このまましつこく……コホン、失礼しました。このまま王族の方から無理に食事へ誘われると、他の貴族やご令嬢たちがどう捉えるか分かりません。ですので、この辺でお控え願います。」
「安心してください、学園長殿。僕はただ聖女様へお礼を申し上げたいだけです。何なら、先に他のご令嬢へ説明することも構いませんよ。」
「殿下。そうなれば逆効果かと存じます。それに、彼女は学園の機密や研究資料を知る身です。それとも、別の理由で我が国の研究員へ接触されるおつもりでしょうか?」
ビアンカ様がこう話すと、王子の側近が口を挟んだ。
「学園長様、これはどういう意味でしょうか?殿下はそんな方ではありません。」
「ここはわたしが管理する学園であると同時に、わたし自身もこの国の魔道士団長です。わたしは学園内の研究や機密情報、そしてこの国の安全を守る義務があります。ここに留学する身であるあなた方へ、細やかな忠告を申し上げているのです。」
「「……」」
側近は仕方なく黙った。
「では、研究員アイリスが無事に戻ったことを確認しましたので、子供である生徒たちは早く教室へ戻るように。もし再びわたしへの連絡なしに研究員へ接触するようなことがあれば……今度はわたしではなく、陛下からお呼びがかかるでしょう。貴国とは長年の友好関係を築いてきました。この関係をできる限り長く保ちたいと考えています。どうか賢明な判断を、殿下。」
王子殿下はしばし黙したあと、再びビアンカ様へ話しかけた。
「学園長殿のご忠告、感謝いたします。聖女様が安全に戻られたことを確認しましたので、僕は教室へ戻ります。では、聖女様、学園長、失礼いたします。」
そして彼は背を向け、カッコつけた捨て台詞を残した。
「聖女様、また外でお会いしましょう。」
「はあぁぁーーーー?!」
俺の心の叫びが思わず口に出た。仕方ないじゃないか、何なんだあいつ?いや、王族で王子様なのは分かってるけど、しつこくない?バカなの?こっちは何回断ったと思ってる?バカなの?大事だから三回言うぞ、バカなの?!
この場の全員が俺の心の叫び声に驚いて、こちらを見ている。俺も暇じゃないんだよ、おのれ勝ち組のイケメンめ。フラグを完全に折ってやろう。
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バイト帰りに何かに引っ張られた俺は、次の瞬間突然山の中に放り出された。
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『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?
釈 余白(しやく)
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毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。
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連載時、HOT 1位ありがとうございました!
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レベルアップに魅せられすぎた男の異世界探求記(旧題カンスト厨の異世界探検記)
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異世界に放り込まれた俺は、昔ハマったゲームのように異世界をコンプリートすることにした。
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