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続編 62 聖王国の最悪な一夜
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魔王は氷の上位魔法で守護騎士団の魔力障壁を突破した後、聖王国の首都は最悪の状態に陥った。
「うあーーーーっ!助け…」
「キャーーーーーーーー!」
障壁を破壊した魔王は、空から無数の触手を伸ばし、避難中の人々を捕食した。
建物の中に隠れても、その触手は建物を破壊し、隠れていた人々を次々と捕らえた。逃げ場もなく、混乱に包まれた人々は、必死に外へと飛び出し、南門へ向かって走り出す。
悲鳴が響き渡る中、民を守るために駆けつけた勇敢な衛兵たちや、愛する人を守るために立ち上がった者たちもいた。
彼らは触手に対抗しようと、武器を手に取り、魔法や松明を振るって反撃を開始した。しかし、その行動によって火の手が上がり、首都はまるで夕焼けのように赤く染まった。
魔王の触手は、先ほどよりもさらに凶暴になっていた。
筋肉質な触手には、ワームの鋭い口のような口が生え、無限に再生しながら人々を捕食していく。もはや人を肉塊にして魔王のもとへ送るのではなく、触手がその場で人を引き裂き、飲み込むのだ。
悲鳴と肉が引き裂かれる音が絶え間なく響き渡り、まさに地獄の光景が広がっていた。
その時、聖王国の主戦力である聖騎士長アレックスたちが、魔王のいる南区に到着した。彼らの目に映ったのは、すでに火と血の海と化した街並みだった。空中に浮かぶ魔王は、先ほどの宣言通り、人々を殺し、食らい続けている。
聖騎士たちはすぐに民を守るために動き出したが、あの何度も切り裂いても再生し続ける厄介な触手に対して、打つ手は限られていた。触手を断ち切るたびに新たな触手が生まれ、再び人々を捕らえ、飲み込んでいく。
ここで、聖騎士長アレックスは決断し、大きな声で魔王へ向かって叫んだ。狂った教皇や帝国の英雄の心を呼び戻すことに賭けた。
「ジェフリー・サトウ!!貴様は狂ったのか!教皇である貴方様が、今、自国の民を殺しているのだぞ!!」
「…………。」
「ユウジ殿!目を覚ませ!!自分の体が、あんな風に利用されていていいのか!!!」
「…………。」
しかし魔王は何の反応もしない。
先ほどまでは使者を殺すと叫んでいたのに、今の魔王の様子は違う。
静寂が――漂っていた、今の魔王は静かすぎる。
アレックスは、もしかするとさっきの言葉が届いたのかもしれないと考え、さらに続ける。
「そこにいるのはユウジ殿なのか?!意識をしっかり持て!!目を覚ませ!!ジェフリーに勝つんだ!!!」
魔王の手足から伸びていた触手の動きを止めた。その頭がゆっくりと真逆に回転し、黒い瞳がアレックスを見据えた。
何かを話している。
しかしその声は、まるで男女数人が同時に同じ言葉を話しているかのように聞こえた。
「俺は……ジェ、ジェフリー・サトウ……いや、違う……。」
「わたしは、アリサ……ではない、カンナですわ……。」
「ボクはイーデンのはず……あなたは誰を呼んでいる?」
「オレはヴァージルだ……いいえ、あたしは……。」
その時――
魔王の口から澄んだ、美しい女性の声が響いた。
「ジェフリー・サトウ!!」
「このわたくし――アイビー・フォン・ジキタリスの前に引っ込みなさい!!!」
瞬間――
魔王の体から滲み出ていた瘴気が止まり、触手は四肢へと戻る。
太く歪んでいた腕は徐々に細くなり、胸のあたりには、柔らかな膨らみが生まれ始める。先ほどまでの肥えた体は、しなやかで美しい曲線を持つ姿へと変わっていった。
黒く濁っていた瞳は白く戻り、誰もが魅了されるほど、神秘的な美しさを宿した瞳へと変化する。
長い黄金色の髪が肩を柔らかく包み、腰まで流れる。火の光を受けてキラキラと輝くその金髪は、まるで太陽の光そのもののようだった。
無駄に豪華な白い修道服は、美しい赤いドレスへと変わり、両手には優雅な白いオペラグローブが装着される。
あの恐ろしい魔王は、まるで女神のような、エレガントな姫様へと変貌した。
未だに信じられない。
呼び戻したのは帝国の英雄ユウジではなかったのか?
一体何が起こったのだろうか。この女性は自らをアイビー・フォン・ジキタリスと名乗った。つまり、この方はあの有名な美姫、ジキタリス帝国の黄金姫!!
何にせよ、魔王の捕食は止まった。だが、今度は帝国の黄金姫――この姫は天才であり、その美貌でも広く知られている。しかし同時に、冷酷に人を処す一面もまた有名だった。
それに、背に広がる悪魔の翼は未だに残っている。あれは間違いなく、魔王のままだ。だが、今の黄金姫は話が通じるような気がする。だからこそ、アレックスは彼女に向かって挨拶をした。
「かの有名な黄金姫にお会いできて光栄でございます。自分はファレル聖王国聖騎士長、アレックス・エイベルでございます。もし宜しければ、この状況をご説……」
アレックスの言葉が終わる前に――
突如として、白昼のような輝きが首都を照らした。
まるで雲が道を開けるかのように、雲に丸い穴が開く。その光の中に――巨大な灰色のドラゴンの影が浮かび上がった。
ドラゴンはゆっくりと降下していく。
その翼が広がると、空気が震え――周囲の雑音がすべて消し去られたかのような、圧倒的な迫力が放たれた。
「ど、ドラゴン?!いや!神竜……様?!」
神竜は黄金姫と同じ高さで静止する。
まさか創造神の使者が、ファレル聖王国を救いに来たのか?!
とにかく今はこの瞬間こそがチャンスだ、アレックスはすぐに聖騎士たちへ命令を下す。
「住民の避難を最優先とする!!急げ!!」
----------------------------------------------------
時間がほんの少し前に遡る。
アイリスは創造神の使者の姿で、神竜の背に乗り、朝からずっと聖王国の上空で待機していた。
空は曇りがちで、私たちはさらにその雲の上にいる。当然、誰にも気づかれることはなかった。
午後、神竜様が「帝国の英雄が来た」と伝えてきた。
その後、下の遠くからかすかな戦闘音や爆発音が聞こえた。
だが、雲の上では下の様子をうかがうこともできず、何が起きているのかまったく分からない。
トイエリさんから「英雄が限界値を超える前には手を出すな」と言われていたため、今はただ待機を続けるしかなかった。
夕日が消え、夜になる。
すると――首都から響く悲鳴が、ここ上空にまで届いた。
「うん、分かっている。連絡が来る前には動かないよ。これもヒュウツジアの人たちが選んだ結果なんですよね……神竜様、これを言うのは何回目?」
首都の人々を助ける気はないのか?確かに少しは助けたい気持ちがある。
だが、実際の光景を目の当たりにしていない今は、まるでテレビで遠い国の戦争のニュースを見ているような気分だ。どこか他人事のように感じてしまう。
私は人の心を持っていないのだろうか?それともこの世界がシミュレーションであることを知ってしまったせいで、価値観が変わってしまったのか?
そんなことを考えながら、悲鳴の響く中、私は星空を見上げる。すると――神竜様が降下を始めた。
「動くのか……では、明かりを出すね。」
私は白い光を放ち、雲に丸い切れ目をつくる。
神竜様を敵と誤認されないよう、神々しい演出を加える。
首都の上空からゆっくりと降下しながら、私は現状を観察していた。
街は血の海と化し、赤く燃え盛っている。グロいゲームに慣れていたつもりだったが、実際に目の前に広がる光景は、それを超える酷さだった。落ちている内臓や腕、足、頭部の欠片などが散乱している。そのまま直視すれば吐き気を催すだろう。
前回のベネットの防戦と比べても、今回はさらに過酷な状況だと感じる。いや~あの時の前線はこれ以上にひどかったのかもしれない。幸い私はずっと後方にいるね。もしかして、トイエリさんが言っていたトラウマというのは、このことを指しているのだろうか。
神竜様は飛んてる帝国の英雄と少し距離を取り、同じ高さで静止した。
彼……いや、目の前にいるのは、背中に悪魔のような翼を広げて飛ぶ私――正真正銘、帝国の黄金姫、アイビー。
以前、トイエリさんとスクリーン越しで確認したあの寄生魔獣を支配した彼女は、変形能力を持っているらしいことをすでに知っていた。
だが――まさか彼女が元の黄金姫の姿に戻るとは思わなかった。姿がどうであれ、事前に言われた通り、こいつは私が対処する。
私は飛び、神竜様の前へと移動した。
アイビーは私を見つめる、驚いた様子はまったくない。そして、ゆっくりと口を開いた。
「やっぱり、空から見ていたのね。異界の人。」
私は無言のまま。
「どうしたの?わたくしに挨拶くらいはしませんの?水臭いですわね。」
私は沈黙を続ける。
瞬間――アイビーは重力によって、空から叩き落とされた。
ドーーーーーーーーン!!
しかしアイビーは、この衝撃によって作られたクレーターの中で、かろうじて立ち上がる。
「また……この魔法……。」
え?まだ立てる?この10倍の重力の中で?普通の人間なら呼吸すらままならないはずだ…ああ、こいつは普通じゃないんだ…。しかも、なんとなく自分と戦っているような気がして、心臓に悪い。
私も地面に降下する。彼女がまた奇妙な動きを始める前に、ささっと終わらせてしまおう。
「飛べ…ない…なぜ…翼が動かせない…」
アイビーは、この重力のことを理解していない、ただの魔力波で押さえつけていると思っていた。しかし、こんな重力の中で、いくら魔力を翼に纏っても、重さに抗えず羽ばたくことはできない。飛べるはずがないのだ。
「畜生!」
一瞬、アイビーにかかっていた重力が消えた。彼女はすぐに距離を取ろうとしたが……
その瞬間――
アイビーの視界は横に傾いた…いや、頭が……知らないうちに体と切り離された。
「え?!」
アイビーの前にいる、自分と全く同じ顔の人物は、手すら動かしていないのに、自分の四肢と頭は知らぬ間に切り離されていた。
(やっぱり、あの夢と…同じですわ!では…)
当然、これだけではアイビーを倒せない。切り口から触手が生え、落ちた頭と四肢を捕らえ、再び完全な姿へと戻してしまった。
お、驚いた!あれ?トイエリさん!!あいつは四肢だけあの寄生魔獣じゃないのか?頭を風魔法で斬っても元に戻せる。これでどう倒したほうが良い?全身灰まで燃やす?
何事もなかったかのように、アイビーは再びアイリスに話しかけてきた。
「喋る気はないですか……もしかして、私の力が強すぎるため、この世から排除する必要……かしら。」
あれ?私は話してないよね。私の声は今のアイビーとまったく同じだから、できるだけ声を出さないようにしているのに。だから、さっきから何も言っていなかったはずだが……こころ…読まれていないよね。
アイビーは上を見上げ、神竜を警戒した。しかし神竜はアイビーにはまったく興味を示さない。その様子を見て、アイビーは少し苛立ちを覚えた。
見くびられるのは面白くない、だがこれは好都合でもある。アイリスに集中できるのだから。
予想外の展開で隙が生じたアイリスを見て、アイビーは右手に黒い魔力を集める。黒い炎を纏った魔力剣を生成し、素早くアイリスへと接近した。
二人の戦闘経験の差は――あまりに大きい。
アイリスは反応することすらできなかった。アイビーは、剣舞のように華麗な連続剣技を繰り出す。
カーーーーン!カンカンカンカンカン!!
アイリスは、透明な魔力障壁を展開し、すべての剣技を防ぐ。
だが、その余波は凄まじく、その剣圧はアイリスの背後にあった建物の炎すら吹き消した。さらに、建物は粉々に崩れ去る。
この戦いを目の当たりにした聖騎士たちは、息をするのも忘れるほど驚愕した。その強さは明らかに、聖王国元最強の勇者以上。
あれと戦えば、例えすべての聖騎士で挑んだとしても、何分持ちこたえられるか分からない。
アイビーは連続攻撃を終え、後方へ跳び下がる。
だが――
彼女の視線は、なぜかアイリスの右上の空を見つめていた。
聖騎士たちも、その視線に釣られるように、そこへ目を向ける。
そこには――人の姿が、空から落ちてきた!!危ない!!
――危なかった。
恒常の魔力障壁がなければ即死だった。何回斬られたのかも分からない。……あれ?どうしたの?みんな、上を見て……
上を見ると、そこには――
「アイリス!!助けて!!」
――ま、マリアンヌ?!どうしてここに?!
落ちてきたのはアイリスの家族、マリアンヌだった。アイリスはすぐに距離をとり、魔法で彼女を宙に浮かせる。
「助かった、アイリス。」
アイリスはそんなマリアンヌを見つめ――魔法を操作し、浮かせた彼女をアイビーへと投げつけた。
「ちぃ…」
アイビーはマリアンヌを受け止める。しかし、そのマリアンヌは肉塊へと変わり、アイビーの体へと戻っていった。
こいつ……マリアンヌを作り出して、一体何を企んでいる?
でも、甘いな!アイビー!
マリアンヌが私のことを、こんなふうに普通に「アイリス」と呼ぶはずがない。私がこの姿になった時、彼女は絶対に私の名前を呼ばない……極め付き、あんな真っ黒な瘴気に覆われたマリアンヌが、私の知るマリアンヌであるはずがない!!
それに彼女には守護霊が付いている。こんなに近くに危険があるなら、絶対に私に連絡をしてくるはずだから。
だからあれは絶対に彼女ではない!!
あの偽マリアンヌという肉塊を体へ戻したアイビーは、アイリスが再び重力魔力を使う前に、翼を展開し、高く飛ぶ。
そして無防備の神竜へと触手を伸ばした。
……やばい!!
あいつ……もしかして神竜に寄生して、力を奪うつもりなのか?!
アイリスもすぐに神竜の元へと飛んだ。アイビーは驚異的な速度で飛び、さらに触手もすさまじい速さで神竜へと伸びる。
神竜は避けることもできず触手がその足を掴んだ。
だが――
その触手は神竜の鱗に触れた途端、弾かれるように跳ね返った。
「き、寄生できないの?!」
私は少し遅れながらも、神竜様の元へ戻り、小さな声で問いかける。
「(神竜様!大丈夫?)」
神竜様から、ゆるやかな感情が流れ込む。
「(あんな下等生物に寄生できるほど弱くはない?それに……あの汚い触手に触れた。帰ったらお風呂?)」
……心配して損した気がする。
この瞬間――アイビーのターゲットは、再び私へと戻った。
彼女は黒い魔力剣を消し去り、代わりに両手から無数の触手を放ち、私へ襲いかかる。当然、私には障壁がある。だから心配はしない。
だがその触手は、私の障壁を隙間なく密閉してしまった。
アイリスは神竜の隣で、真ん丸の触手玉となった。
もしかして、アイビーはその障壁を破れないと知り、次の手段として密閉し、アイリスを窒息死させようとしているのか?それとも、彼女の魔力をすべて吸収しようとしているのか?
しかし、神竜はなぜか、アイリスを助ける気配を見せていないようだ。
その時、触手は次第に枯れ始めた。アイビーは焦り、叫び声を上げた。
「なぜ?!力が消え……動きなさい!!!わたくしの手に戻りなさい!!」
あの触手玉の触手すべてが枯れ始め、アイビーはその触手を放棄し、枯れた部分を引き裂こうとしたが、完全には引き裂くことができない。彼女の手足も徐々に枯れ始め、動きが鈍くなっていく。
「いや!わたくしの力!わたくしの体が!」
アイビーの体は力を失い、形が崩れ始めた。
彼女の美しい長い金髪は黒く短髪に戻り、豊かな胸は縮み、筋肉質で男らしい体つきに変わった。やがて、黄金姫から帝国の英雄ユウジの姿へと変貌を遂げた。
アイリスの障壁に触れていた触手も、翼も粉々に消え去った。彼女……彼の四肢は、枯れた木のように変わり果て、朽ち果てていた。
全く無傷のままのアイリスは、魔法を使って彼を浮かせ、ゆっくりと近づいていく。
ユウジは「なぜ力が消えた?」と問いかけたいが、喉も枯れ、すでに潰れた喉に戻ってしまい、声を出すことができない。今の彼は、数年前にアイリスにやられた時の姿に完全に戻っていた。
私はユウジに近づいた。
そうよね、彼の手足は魔物、そして魔物の力の源は瘴気だ。私は聖王国に入った後、浄化モードはオフにしていたが、流石にこの体の浄化能力が完全に消えたわけではない。私に近づけば、いつも通り瘴気は一瞬で浄化され、ユウジを一瞬で無力化できる。
浮いている彼の元の姿……「神薙雄二」の顔を見ると、少し懐かしさがこみ上げてきた。でも、私は彼を殺さなければならない。このまま生き返らせてしまえば、アイビーはまた同じことを繰り返すだろう。
そうか……トイエリさんが言っていたトラウマは、聖王国の首都のこの地獄ではなく、自分自身を自らの手で殺すことだったのか。確かに…これは、かなりキツい……。
キツイはキツイけど、でもやるんだ!
数年前、ユウジがマリアンヌを誘拐した時、「神薙雄二」はすでに死んでいた。私はアイリスとして、ヒュウツジアの中で生き続けると決めた。彼は「神薙雄二」ではなく、帝国の英雄・ユウジだ!
動け!トイエリさんからの任務を果たすんだ!
昔の神薙雄二の記憶が奔流のように蘇る中、私はいつも使っていた溶解炉の魔法をイメージした。彼を再生できないほど灰まで燃やす覚悟をした。
その時、神竜様は私の上を飛び越え、上からユウジを覆い、一口で飲み込んだ!!
「し、神竜様?!」
神竜様から強い感情が私に流れ込んできた。
「これは元々あなたの役目?もう気が済んだでしょう、早く帰ろうか?……。」
なぜだろう、先ほどの葛藤は馬鹿馬鹿しいと思った。思わず笑みがこぼれる。
「ありがとう、気が済んだ。全てが終わったよ。腹も減ったし、帰ろうぜ!」
下から人々の歓声が聞こえ、その声が次第に大きくなって私を呼んでいる。
おおおおおおおおぉぉぉぉーーーーーー!!
『使者様ーーーーー!!』
下に見ると、聖騎士の隊長らしき人物が私に話しかけている。
『使者様!ここから離れてください!!!』
「え?」
その瞬間、首都一番高い時計塔から眩しい金色の光が私を襲った。
「うあーーーーっ!助け…」
「キャーーーーーーーー!」
障壁を破壊した魔王は、空から無数の触手を伸ばし、避難中の人々を捕食した。
建物の中に隠れても、その触手は建物を破壊し、隠れていた人々を次々と捕らえた。逃げ場もなく、混乱に包まれた人々は、必死に外へと飛び出し、南門へ向かって走り出す。
悲鳴が響き渡る中、民を守るために駆けつけた勇敢な衛兵たちや、愛する人を守るために立ち上がった者たちもいた。
彼らは触手に対抗しようと、武器を手に取り、魔法や松明を振るって反撃を開始した。しかし、その行動によって火の手が上がり、首都はまるで夕焼けのように赤く染まった。
魔王の触手は、先ほどよりもさらに凶暴になっていた。
筋肉質な触手には、ワームの鋭い口のような口が生え、無限に再生しながら人々を捕食していく。もはや人を肉塊にして魔王のもとへ送るのではなく、触手がその場で人を引き裂き、飲み込むのだ。
悲鳴と肉が引き裂かれる音が絶え間なく響き渡り、まさに地獄の光景が広がっていた。
その時、聖王国の主戦力である聖騎士長アレックスたちが、魔王のいる南区に到着した。彼らの目に映ったのは、すでに火と血の海と化した街並みだった。空中に浮かぶ魔王は、先ほどの宣言通り、人々を殺し、食らい続けている。
聖騎士たちはすぐに民を守るために動き出したが、あの何度も切り裂いても再生し続ける厄介な触手に対して、打つ手は限られていた。触手を断ち切るたびに新たな触手が生まれ、再び人々を捕らえ、飲み込んでいく。
ここで、聖騎士長アレックスは決断し、大きな声で魔王へ向かって叫んだ。狂った教皇や帝国の英雄の心を呼び戻すことに賭けた。
「ジェフリー・サトウ!!貴様は狂ったのか!教皇である貴方様が、今、自国の民を殺しているのだぞ!!」
「…………。」
「ユウジ殿!目を覚ませ!!自分の体が、あんな風に利用されていていいのか!!!」
「…………。」
しかし魔王は何の反応もしない。
先ほどまでは使者を殺すと叫んでいたのに、今の魔王の様子は違う。
静寂が――漂っていた、今の魔王は静かすぎる。
アレックスは、もしかするとさっきの言葉が届いたのかもしれないと考え、さらに続ける。
「そこにいるのはユウジ殿なのか?!意識をしっかり持て!!目を覚ませ!!ジェフリーに勝つんだ!!!」
魔王の手足から伸びていた触手の動きを止めた。その頭がゆっくりと真逆に回転し、黒い瞳がアレックスを見据えた。
何かを話している。
しかしその声は、まるで男女数人が同時に同じ言葉を話しているかのように聞こえた。
「俺は……ジェ、ジェフリー・サトウ……いや、違う……。」
「わたしは、アリサ……ではない、カンナですわ……。」
「ボクはイーデンのはず……あなたは誰を呼んでいる?」
「オレはヴァージルだ……いいえ、あたしは……。」
その時――
魔王の口から澄んだ、美しい女性の声が響いた。
「ジェフリー・サトウ!!」
「このわたくし――アイビー・フォン・ジキタリスの前に引っ込みなさい!!!」
瞬間――
魔王の体から滲み出ていた瘴気が止まり、触手は四肢へと戻る。
太く歪んでいた腕は徐々に細くなり、胸のあたりには、柔らかな膨らみが生まれ始める。先ほどまでの肥えた体は、しなやかで美しい曲線を持つ姿へと変わっていった。
黒く濁っていた瞳は白く戻り、誰もが魅了されるほど、神秘的な美しさを宿した瞳へと変化する。
長い黄金色の髪が肩を柔らかく包み、腰まで流れる。火の光を受けてキラキラと輝くその金髪は、まるで太陽の光そのもののようだった。
無駄に豪華な白い修道服は、美しい赤いドレスへと変わり、両手には優雅な白いオペラグローブが装着される。
あの恐ろしい魔王は、まるで女神のような、エレガントな姫様へと変貌した。
未だに信じられない。
呼び戻したのは帝国の英雄ユウジではなかったのか?
一体何が起こったのだろうか。この女性は自らをアイビー・フォン・ジキタリスと名乗った。つまり、この方はあの有名な美姫、ジキタリス帝国の黄金姫!!
何にせよ、魔王の捕食は止まった。だが、今度は帝国の黄金姫――この姫は天才であり、その美貌でも広く知られている。しかし同時に、冷酷に人を処す一面もまた有名だった。
それに、背に広がる悪魔の翼は未だに残っている。あれは間違いなく、魔王のままだ。だが、今の黄金姫は話が通じるような気がする。だからこそ、アレックスは彼女に向かって挨拶をした。
「かの有名な黄金姫にお会いできて光栄でございます。自分はファレル聖王国聖騎士長、アレックス・エイベルでございます。もし宜しければ、この状況をご説……」
アレックスの言葉が終わる前に――
突如として、白昼のような輝きが首都を照らした。
まるで雲が道を開けるかのように、雲に丸い穴が開く。その光の中に――巨大な灰色のドラゴンの影が浮かび上がった。
ドラゴンはゆっくりと降下していく。
その翼が広がると、空気が震え――周囲の雑音がすべて消し去られたかのような、圧倒的な迫力が放たれた。
「ど、ドラゴン?!いや!神竜……様?!」
神竜は黄金姫と同じ高さで静止する。
まさか創造神の使者が、ファレル聖王国を救いに来たのか?!
とにかく今はこの瞬間こそがチャンスだ、アレックスはすぐに聖騎士たちへ命令を下す。
「住民の避難を最優先とする!!急げ!!」
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時間がほんの少し前に遡る。
アイリスは創造神の使者の姿で、神竜の背に乗り、朝からずっと聖王国の上空で待機していた。
空は曇りがちで、私たちはさらにその雲の上にいる。当然、誰にも気づかれることはなかった。
午後、神竜様が「帝国の英雄が来た」と伝えてきた。
その後、下の遠くからかすかな戦闘音や爆発音が聞こえた。
だが、雲の上では下の様子をうかがうこともできず、何が起きているのかまったく分からない。
トイエリさんから「英雄が限界値を超える前には手を出すな」と言われていたため、今はただ待機を続けるしかなかった。
夕日が消え、夜になる。
すると――首都から響く悲鳴が、ここ上空にまで届いた。
「うん、分かっている。連絡が来る前には動かないよ。これもヒュウツジアの人たちが選んだ結果なんですよね……神竜様、これを言うのは何回目?」
首都の人々を助ける気はないのか?確かに少しは助けたい気持ちがある。
だが、実際の光景を目の当たりにしていない今は、まるでテレビで遠い国の戦争のニュースを見ているような気分だ。どこか他人事のように感じてしまう。
私は人の心を持っていないのだろうか?それともこの世界がシミュレーションであることを知ってしまったせいで、価値観が変わってしまったのか?
そんなことを考えながら、悲鳴の響く中、私は星空を見上げる。すると――神竜様が降下を始めた。
「動くのか……では、明かりを出すね。」
私は白い光を放ち、雲に丸い切れ目をつくる。
神竜様を敵と誤認されないよう、神々しい演出を加える。
首都の上空からゆっくりと降下しながら、私は現状を観察していた。
街は血の海と化し、赤く燃え盛っている。グロいゲームに慣れていたつもりだったが、実際に目の前に広がる光景は、それを超える酷さだった。落ちている内臓や腕、足、頭部の欠片などが散乱している。そのまま直視すれば吐き気を催すだろう。
前回のベネットの防戦と比べても、今回はさらに過酷な状況だと感じる。いや~あの時の前線はこれ以上にひどかったのかもしれない。幸い私はずっと後方にいるね。もしかして、トイエリさんが言っていたトラウマというのは、このことを指しているのだろうか。
神竜様は飛んてる帝国の英雄と少し距離を取り、同じ高さで静止した。
彼……いや、目の前にいるのは、背中に悪魔のような翼を広げて飛ぶ私――正真正銘、帝国の黄金姫、アイビー。
以前、トイエリさんとスクリーン越しで確認したあの寄生魔獣を支配した彼女は、変形能力を持っているらしいことをすでに知っていた。
だが――まさか彼女が元の黄金姫の姿に戻るとは思わなかった。姿がどうであれ、事前に言われた通り、こいつは私が対処する。
私は飛び、神竜様の前へと移動した。
アイビーは私を見つめる、驚いた様子はまったくない。そして、ゆっくりと口を開いた。
「やっぱり、空から見ていたのね。異界の人。」
私は無言のまま。
「どうしたの?わたくしに挨拶くらいはしませんの?水臭いですわね。」
私は沈黙を続ける。
瞬間――アイビーは重力によって、空から叩き落とされた。
ドーーーーーーーーン!!
しかしアイビーは、この衝撃によって作られたクレーターの中で、かろうじて立ち上がる。
「また……この魔法……。」
え?まだ立てる?この10倍の重力の中で?普通の人間なら呼吸すらままならないはずだ…ああ、こいつは普通じゃないんだ…。しかも、なんとなく自分と戦っているような気がして、心臓に悪い。
私も地面に降下する。彼女がまた奇妙な動きを始める前に、ささっと終わらせてしまおう。
「飛べ…ない…なぜ…翼が動かせない…」
アイビーは、この重力のことを理解していない、ただの魔力波で押さえつけていると思っていた。しかし、こんな重力の中で、いくら魔力を翼に纏っても、重さに抗えず羽ばたくことはできない。飛べるはずがないのだ。
「畜生!」
一瞬、アイビーにかかっていた重力が消えた。彼女はすぐに距離を取ろうとしたが……
その瞬間――
アイビーの視界は横に傾いた…いや、頭が……知らないうちに体と切り離された。
「え?!」
アイビーの前にいる、自分と全く同じ顔の人物は、手すら動かしていないのに、自分の四肢と頭は知らぬ間に切り離されていた。
(やっぱり、あの夢と…同じですわ!では…)
当然、これだけではアイビーを倒せない。切り口から触手が生え、落ちた頭と四肢を捕らえ、再び完全な姿へと戻してしまった。
お、驚いた!あれ?トイエリさん!!あいつは四肢だけあの寄生魔獣じゃないのか?頭を風魔法で斬っても元に戻せる。これでどう倒したほうが良い?全身灰まで燃やす?
何事もなかったかのように、アイビーは再びアイリスに話しかけてきた。
「喋る気はないですか……もしかして、私の力が強すぎるため、この世から排除する必要……かしら。」
あれ?私は話してないよね。私の声は今のアイビーとまったく同じだから、できるだけ声を出さないようにしているのに。だから、さっきから何も言っていなかったはずだが……こころ…読まれていないよね。
アイビーは上を見上げ、神竜を警戒した。しかし神竜はアイビーにはまったく興味を示さない。その様子を見て、アイビーは少し苛立ちを覚えた。
見くびられるのは面白くない、だがこれは好都合でもある。アイリスに集中できるのだから。
予想外の展開で隙が生じたアイリスを見て、アイビーは右手に黒い魔力を集める。黒い炎を纏った魔力剣を生成し、素早くアイリスへと接近した。
二人の戦闘経験の差は――あまりに大きい。
アイリスは反応することすらできなかった。アイビーは、剣舞のように華麗な連続剣技を繰り出す。
カーーーーン!カンカンカンカンカン!!
アイリスは、透明な魔力障壁を展開し、すべての剣技を防ぐ。
だが、その余波は凄まじく、その剣圧はアイリスの背後にあった建物の炎すら吹き消した。さらに、建物は粉々に崩れ去る。
この戦いを目の当たりにした聖騎士たちは、息をするのも忘れるほど驚愕した。その強さは明らかに、聖王国元最強の勇者以上。
あれと戦えば、例えすべての聖騎士で挑んだとしても、何分持ちこたえられるか分からない。
アイビーは連続攻撃を終え、後方へ跳び下がる。
だが――
彼女の視線は、なぜかアイリスの右上の空を見つめていた。
聖騎士たちも、その視線に釣られるように、そこへ目を向ける。
そこには――人の姿が、空から落ちてきた!!危ない!!
――危なかった。
恒常の魔力障壁がなければ即死だった。何回斬られたのかも分からない。……あれ?どうしたの?みんな、上を見て……
上を見ると、そこには――
「アイリス!!助けて!!」
――ま、マリアンヌ?!どうしてここに?!
落ちてきたのはアイリスの家族、マリアンヌだった。アイリスはすぐに距離をとり、魔法で彼女を宙に浮かせる。
「助かった、アイリス。」
アイリスはそんなマリアンヌを見つめ――魔法を操作し、浮かせた彼女をアイビーへと投げつけた。
「ちぃ…」
アイビーはマリアンヌを受け止める。しかし、そのマリアンヌは肉塊へと変わり、アイビーの体へと戻っていった。
こいつ……マリアンヌを作り出して、一体何を企んでいる?
でも、甘いな!アイビー!
マリアンヌが私のことを、こんなふうに普通に「アイリス」と呼ぶはずがない。私がこの姿になった時、彼女は絶対に私の名前を呼ばない……極め付き、あんな真っ黒な瘴気に覆われたマリアンヌが、私の知るマリアンヌであるはずがない!!
それに彼女には守護霊が付いている。こんなに近くに危険があるなら、絶対に私に連絡をしてくるはずだから。
だからあれは絶対に彼女ではない!!
あの偽マリアンヌという肉塊を体へ戻したアイビーは、アイリスが再び重力魔力を使う前に、翼を展開し、高く飛ぶ。
そして無防備の神竜へと触手を伸ばした。
……やばい!!
あいつ……もしかして神竜に寄生して、力を奪うつもりなのか?!
アイリスもすぐに神竜の元へと飛んだ。アイビーは驚異的な速度で飛び、さらに触手もすさまじい速さで神竜へと伸びる。
神竜は避けることもできず触手がその足を掴んだ。
だが――
その触手は神竜の鱗に触れた途端、弾かれるように跳ね返った。
「き、寄生できないの?!」
私は少し遅れながらも、神竜様の元へ戻り、小さな声で問いかける。
「(神竜様!大丈夫?)」
神竜様から、ゆるやかな感情が流れ込む。
「(あんな下等生物に寄生できるほど弱くはない?それに……あの汚い触手に触れた。帰ったらお風呂?)」
……心配して損した気がする。
この瞬間――アイビーのターゲットは、再び私へと戻った。
彼女は黒い魔力剣を消し去り、代わりに両手から無数の触手を放ち、私へ襲いかかる。当然、私には障壁がある。だから心配はしない。
だがその触手は、私の障壁を隙間なく密閉してしまった。
アイリスは神竜の隣で、真ん丸の触手玉となった。
もしかして、アイビーはその障壁を破れないと知り、次の手段として密閉し、アイリスを窒息死させようとしているのか?それとも、彼女の魔力をすべて吸収しようとしているのか?
しかし、神竜はなぜか、アイリスを助ける気配を見せていないようだ。
その時、触手は次第に枯れ始めた。アイビーは焦り、叫び声を上げた。
「なぜ?!力が消え……動きなさい!!!わたくしの手に戻りなさい!!」
あの触手玉の触手すべてが枯れ始め、アイビーはその触手を放棄し、枯れた部分を引き裂こうとしたが、完全には引き裂くことができない。彼女の手足も徐々に枯れ始め、動きが鈍くなっていく。
「いや!わたくしの力!わたくしの体が!」
アイビーの体は力を失い、形が崩れ始めた。
彼女の美しい長い金髪は黒く短髪に戻り、豊かな胸は縮み、筋肉質で男らしい体つきに変わった。やがて、黄金姫から帝国の英雄ユウジの姿へと変貌を遂げた。
アイリスの障壁に触れていた触手も、翼も粉々に消え去った。彼女……彼の四肢は、枯れた木のように変わり果て、朽ち果てていた。
全く無傷のままのアイリスは、魔法を使って彼を浮かせ、ゆっくりと近づいていく。
ユウジは「なぜ力が消えた?」と問いかけたいが、喉も枯れ、すでに潰れた喉に戻ってしまい、声を出すことができない。今の彼は、数年前にアイリスにやられた時の姿に完全に戻っていた。
私はユウジに近づいた。
そうよね、彼の手足は魔物、そして魔物の力の源は瘴気だ。私は聖王国に入った後、浄化モードはオフにしていたが、流石にこの体の浄化能力が完全に消えたわけではない。私に近づけば、いつも通り瘴気は一瞬で浄化され、ユウジを一瞬で無力化できる。
浮いている彼の元の姿……「神薙雄二」の顔を見ると、少し懐かしさがこみ上げてきた。でも、私は彼を殺さなければならない。このまま生き返らせてしまえば、アイビーはまた同じことを繰り返すだろう。
そうか……トイエリさんが言っていたトラウマは、聖王国の首都のこの地獄ではなく、自分自身を自らの手で殺すことだったのか。確かに…これは、かなりキツい……。
キツイはキツイけど、でもやるんだ!
数年前、ユウジがマリアンヌを誘拐した時、「神薙雄二」はすでに死んでいた。私はアイリスとして、ヒュウツジアの中で生き続けると決めた。彼は「神薙雄二」ではなく、帝国の英雄・ユウジだ!
動け!トイエリさんからの任務を果たすんだ!
昔の神薙雄二の記憶が奔流のように蘇る中、私はいつも使っていた溶解炉の魔法をイメージした。彼を再生できないほど灰まで燃やす覚悟をした。
その時、神竜様は私の上を飛び越え、上からユウジを覆い、一口で飲み込んだ!!
「し、神竜様?!」
神竜様から強い感情が私に流れ込んできた。
「これは元々あなたの役目?もう気が済んだでしょう、早く帰ろうか?……。」
なぜだろう、先ほどの葛藤は馬鹿馬鹿しいと思った。思わず笑みがこぼれる。
「ありがとう、気が済んだ。全てが終わったよ。腹も減ったし、帰ろうぜ!」
下から人々の歓声が聞こえ、その声が次第に大きくなって私を呼んでいる。
おおおおおおおおぉぉぉぉーーーーーー!!
『使者様ーーーーー!!』
下に見ると、聖騎士の隊長らしき人物が私に話しかけている。
『使者様!ここから離れてください!!!』
「え?」
その瞬間、首都一番高い時計塔から眩しい金色の光が私を襲った。
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