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駅構内のコインロッカーで起きる怪現象
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始めの事件はおそらくここからだと思う。
K県のとある駅に設置されているコインロッカー。ここに生後まもない女児が入れられていると同駅の職員から通報があった。まだへその緒がついており、呼吸はあるがかなり危険な状態であったと後に風のうわさで聞いた。
その赤ん坊は病院で処置を受け回復したのち施設へと保護された。結局母親が誰だったのかはわかっていない。
次の事件は前回の女児ロッカー事件からしばらく後、人々の記憶から薄れはじめた時期に起きた。一定期間を過ぎても引き取りてのない物品は駅員によって回収される決まりとなっている。
……今度は男児。再び警察による検証と防犯カメラの確認などが行われたがまたしても誰がどのように入れたのかは確認がとれなかった。その後の男児がどうなったのかは噂として聞くことはなかったが、ロッカーの前に花とおもちゃが添えられていたのを見かけたのでそういうことなのだろう。
その後は一時的にロッカーの利用者が減り、地元の人間はその付近に近寄ることさえなくなった。せいぜいよそから来た者が利用するくらいだが、そこまで栄えている町ではないためそう頻繁に使われることはなかった。
その日はたまたま観光に来ていたのだろう。まだ幼さの残る女性の二人組がこのコインロッカーを利用した。
この駅の周辺には格安のホテルが立ち並び、乗り換えを目的としたアクセスが容易で、ここを拠点に観光する旅行客に人気なことでも知られていた。一度この駅で手荷物を預け、身軽になったところで近場の商業施設や観光地へと赴くということを彼女たちも行っているようだ。
問題が起こったのは彼女たちが夕方荷物を取りにきた時のこと。けたたましい悲鳴が構内に響き、突然のことにその場にいた全員の動きが止まり、視線は一点に集中する。
異変に駆け付けた駅員が見たものは、ロッカー内に入れっぱなしのキャリーケースと……。
その取っ手部分にぶら下がる人間の手首だった。
不気味な事件がこうも続くと周辺の住民の心境は複雑なもので、ロッカー付近で幽霊を見た。赤ん坊の泣き声がロッカーの中から聞こえた。あそこは呪われた土地だ。と根も葉もない噂が絶えなくなる。
手首が入れられた事件以降も爪や髪の毛といったものがみつかっており、今ではロッカーの使用を全面禁止にして対策をたてている。それでも毎回中を確認し回収作業をする職員にとってはたまったものではない。
安全性に問題はないのか、との問い合わせも多く寄せられており、そのことでも駅員を悩ませていた。
答えようがないのだ。防犯カメラで何度確認しようとも、所員を動員して監視しようとも気が付くとなんらかの『人体』の一部が混入している。
以前起こった乳児が入れられた事件もなにか関係があるのではとみなが思い始めた頃にまた事が起きることとなった。
地元の高校に通う学生が肝試しと称してコインロッカーを開け中を確認するという遊びが持ち上がった。当然周辺にはコーンが立てられ接近することを禁止する張り紙がされているのだが、彼らはそれすらも楽しみの一つとして扱い、駅員の目を眩ますチームと中を確認するチームとに分かれ作戦を実行する。
第一陣が駅員数名を誘き寄せ、第二陣がさらに騒ぎを起こし監視の目を減らすことに成功した。残り数名が物陰から飛び出しコーンを飛び越え一斉にロッカーの戸を解き放つ。
駅員がそのことに気が付く頃には大半のロッカーは開けられており、取り押さえようにも散り散りになった学生たちは改札を飛び越えどこかへと消えてしまった。
その場に残されたのはあまりの行為に呆れ溜め息をつく駅員と蹴飛ばされて飛び散ったコーン、そしてほとんどが開け放たれたコインロッカーだ。現在は使用禁止とはいえ中を確認しないわけにはいかない。
駅員は中を確認しながら一つ一つ閉めていく。以前手首が入れられていた大型のロッカーはもちろん、赤ん坊が入れられていたロッカーにも特に異常はない。ほっと安心したところで一つだけ施錠されていて開かない扉があった。
ロックを示すランプは点灯しておらず、それでいて引いてもびくともしないのだ。無理に開け閉めしたために歪んでしまっているのだろうか、不審に思った駅員は同僚の手を借り力ずくで開けてみることにした。せーのと掛け声をあげ一気に腕に力を込めた。
僅かに扉が開く感触がし、それと同時に顔をしかめるほどの異臭が辺りに満ちることになる。戸を引いた駅員も同僚も今までのことで何度か嗅いだ覚えのある非常に不快な匂い。
今回は以前のものよりもさらに強烈で胃の中のものがこみ上げ、場所も憚らずその場で戻してしまった。ロッカーの隙間を伝い黒くドロリとしたものが垂れてくる。
手を触れてもいないのに開かれる扉に思わず視線を向けてしまった別の駅員は声にならない叫びをあげその場に崩れ落ち全身を小刻みに揺らしながら後退しようと必死になっていた。
そこには、ほぼ真四角といっていいほどの狭さの空間にギチギチに詰め込まれた老婆がはまり込んでこちらを見ていた。
鑑識が呼ばれ、駅員は警察とともに防犯カメラを確認する。学生たちがイタズラを行うよりも前に老婆がロッカーに近づき扉を開けて中に入る光景が映っていた。しかし、駅員が言うには誰もロッカーに近付く者はおらず、たとえそれに気が付かなかったとしても老婆は頭からロッカー内に侵入しており、中で反転してこちらを向くなどという芸当は到底できるとは思えない。
頭を悩ませる警察の眉間にさらに深い溝が刻まれる。鑑識からは老婆は死後ひと月以上が経過しており、遺体は死後にロッカーに詰められたことが確認された。
結局この事件も何も解決することがなく、駅のコインロッカーは完全に撤去され、さらに残された空間には壁が作られ、完全に外部から見えなくされたのだった。
K県のとある駅に設置されているコインロッカー。ここに生後まもない女児が入れられていると同駅の職員から通報があった。まだへその緒がついており、呼吸はあるがかなり危険な状態であったと後に風のうわさで聞いた。
その赤ん坊は病院で処置を受け回復したのち施設へと保護された。結局母親が誰だったのかはわかっていない。
次の事件は前回の女児ロッカー事件からしばらく後、人々の記憶から薄れはじめた時期に起きた。一定期間を過ぎても引き取りてのない物品は駅員によって回収される決まりとなっている。
……今度は男児。再び警察による検証と防犯カメラの確認などが行われたがまたしても誰がどのように入れたのかは確認がとれなかった。その後の男児がどうなったのかは噂として聞くことはなかったが、ロッカーの前に花とおもちゃが添えられていたのを見かけたのでそういうことなのだろう。
その後は一時的にロッカーの利用者が減り、地元の人間はその付近に近寄ることさえなくなった。せいぜいよそから来た者が利用するくらいだが、そこまで栄えている町ではないためそう頻繁に使われることはなかった。
その日はたまたま観光に来ていたのだろう。まだ幼さの残る女性の二人組がこのコインロッカーを利用した。
この駅の周辺には格安のホテルが立ち並び、乗り換えを目的としたアクセスが容易で、ここを拠点に観光する旅行客に人気なことでも知られていた。一度この駅で手荷物を預け、身軽になったところで近場の商業施設や観光地へと赴くということを彼女たちも行っているようだ。
問題が起こったのは彼女たちが夕方荷物を取りにきた時のこと。けたたましい悲鳴が構内に響き、突然のことにその場にいた全員の動きが止まり、視線は一点に集中する。
異変に駆け付けた駅員が見たものは、ロッカー内に入れっぱなしのキャリーケースと……。
その取っ手部分にぶら下がる人間の手首だった。
不気味な事件がこうも続くと周辺の住民の心境は複雑なもので、ロッカー付近で幽霊を見た。赤ん坊の泣き声がロッカーの中から聞こえた。あそこは呪われた土地だ。と根も葉もない噂が絶えなくなる。
手首が入れられた事件以降も爪や髪の毛といったものがみつかっており、今ではロッカーの使用を全面禁止にして対策をたてている。それでも毎回中を確認し回収作業をする職員にとってはたまったものではない。
安全性に問題はないのか、との問い合わせも多く寄せられており、そのことでも駅員を悩ませていた。
答えようがないのだ。防犯カメラで何度確認しようとも、所員を動員して監視しようとも気が付くとなんらかの『人体』の一部が混入している。
以前起こった乳児が入れられた事件もなにか関係があるのではとみなが思い始めた頃にまた事が起きることとなった。
地元の高校に通う学生が肝試しと称してコインロッカーを開け中を確認するという遊びが持ち上がった。当然周辺にはコーンが立てられ接近することを禁止する張り紙がされているのだが、彼らはそれすらも楽しみの一つとして扱い、駅員の目を眩ますチームと中を確認するチームとに分かれ作戦を実行する。
第一陣が駅員数名を誘き寄せ、第二陣がさらに騒ぎを起こし監視の目を減らすことに成功した。残り数名が物陰から飛び出しコーンを飛び越え一斉にロッカーの戸を解き放つ。
駅員がそのことに気が付く頃には大半のロッカーは開けられており、取り押さえようにも散り散りになった学生たちは改札を飛び越えどこかへと消えてしまった。
その場に残されたのはあまりの行為に呆れ溜め息をつく駅員と蹴飛ばされて飛び散ったコーン、そしてほとんどが開け放たれたコインロッカーだ。現在は使用禁止とはいえ中を確認しないわけにはいかない。
駅員は中を確認しながら一つ一つ閉めていく。以前手首が入れられていた大型のロッカーはもちろん、赤ん坊が入れられていたロッカーにも特に異常はない。ほっと安心したところで一つだけ施錠されていて開かない扉があった。
ロックを示すランプは点灯しておらず、それでいて引いてもびくともしないのだ。無理に開け閉めしたために歪んでしまっているのだろうか、不審に思った駅員は同僚の手を借り力ずくで開けてみることにした。せーのと掛け声をあげ一気に腕に力を込めた。
僅かに扉が開く感触がし、それと同時に顔をしかめるほどの異臭が辺りに満ちることになる。戸を引いた駅員も同僚も今までのことで何度か嗅いだ覚えのある非常に不快な匂い。
今回は以前のものよりもさらに強烈で胃の中のものがこみ上げ、場所も憚らずその場で戻してしまった。ロッカーの隙間を伝い黒くドロリとしたものが垂れてくる。
手を触れてもいないのに開かれる扉に思わず視線を向けてしまった別の駅員は声にならない叫びをあげその場に崩れ落ち全身を小刻みに揺らしながら後退しようと必死になっていた。
そこには、ほぼ真四角といっていいほどの狭さの空間にギチギチに詰め込まれた老婆がはまり込んでこちらを見ていた。
鑑識が呼ばれ、駅員は警察とともに防犯カメラを確認する。学生たちがイタズラを行うよりも前に老婆がロッカーに近づき扉を開けて中に入る光景が映っていた。しかし、駅員が言うには誰もロッカーに近付く者はおらず、たとえそれに気が付かなかったとしても老婆は頭からロッカー内に侵入しており、中で反転してこちらを向くなどという芸当は到底できるとは思えない。
頭を悩ませる警察の眉間にさらに深い溝が刻まれる。鑑識からは老婆は死後ひと月以上が経過しており、遺体は死後にロッカーに詰められたことが確認された。
結局この事件も何も解決することがなく、駅のコインロッカーは完全に撤去され、さらに残された空間には壁が作られ、完全に外部から見えなくされたのだった。
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