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猫バンバン
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「猫バンバンて知ってる?」
下校時間を過ぎダラダラと帰宅の途につく最中、、友人のK太が唐突に話題を振った。留め具を忘れた彼のランドセルが金属同士が当たる軽い音を立てている。
「猫がエンジンルームとかに入ってないかボンネット叩いて確認するあれ?」
K太は「ご名答~!」と大げさに手振りを加えながら僕の前に回り込み、通学路の途中にある駐車場を指さす。顔を見ただけでわかる。試してみようぜ! ということらしい……。
「いた?」
「いない」
僕は控えめに、K太は大胆に大きな音を立てながらボンネットを叩くが、猫がいるどころかネズミすらいない。
「待てよ? 猫は寒いから車に入り込むんだ、てことはまだあったかいのを狙えばいるんじゃね?」
K太は手あたり次第に車に手をあてその温度を確認していく。
流石に飽きてきた、誰かに怒られる前に帰りたい。そう思い彼の方を振り返ると、見てしまった。
黒い車体の下から伸びる真っ白い手、それはその車の前に立つK太の足首を掴もうとスルスルと伸びてくる。
骨の上に申し訳程度に皮がついているだけの腕はデコボコとしており、くしゃくしゃに捻じ曲げられたアルミホイルのようにも見えた。
「ここ! この車まだあったかいぞ!」
なにも気付いていないK太のその声に僕はハッと我に返る。
あの白い腕は今すぐにでもK太の足首を掴む勢いだ。どうにかして危険を知らせようと、縮こまっている喉を必死で動かそうとするが、どうしても声が出ない。
腕がK太のズボンの裾に触れたその時。
バンッ!
大きくボンネットが叩かれた音があたりに響き、驚いた僕は小さく飛び上がり、その衝撃で声が出るようになった。
「K太! 誰か来た! 怒られる前に逃げよう」
咄嗟についた嘘だったがK太には効果的だったようだ。慌てた彼も大きく飛び上がり、急いでこちらに走り寄ってくる。僕もそれに倣い、流れるように駐車場の出入り口に走り、先ほどの車を一度だけ振り向いてみることにした。
「結局、猫いなかったな」
残念そうなK太とは裏腹に僕の気持ちは沈んでいた。
「そう落ち込むなって! また明日挑戦しようぜ?」
彼は僕が猫がいなかったことに気落ちしていると思っている。でも、それでいいのかもしれない。
お互いの家が近づき、また明日とバイバイをする。
あの駐車場から出る時、最後に振り返って見た車体の下には、鼻から上だけの人の頭部があるのを確かに見た。
その目は丸く燦々と輝いて恨みがましい目でこちらを見ていたのだ。
下校時間を過ぎダラダラと帰宅の途につく最中、、友人のK太が唐突に話題を振った。留め具を忘れた彼のランドセルが金属同士が当たる軽い音を立てている。
「猫がエンジンルームとかに入ってないかボンネット叩いて確認するあれ?」
K太は「ご名答~!」と大げさに手振りを加えながら僕の前に回り込み、通学路の途中にある駐車場を指さす。顔を見ただけでわかる。試してみようぜ! ということらしい……。
「いた?」
「いない」
僕は控えめに、K太は大胆に大きな音を立てながらボンネットを叩くが、猫がいるどころかネズミすらいない。
「待てよ? 猫は寒いから車に入り込むんだ、てことはまだあったかいのを狙えばいるんじゃね?」
K太は手あたり次第に車に手をあてその温度を確認していく。
流石に飽きてきた、誰かに怒られる前に帰りたい。そう思い彼の方を振り返ると、見てしまった。
黒い車体の下から伸びる真っ白い手、それはその車の前に立つK太の足首を掴もうとスルスルと伸びてくる。
骨の上に申し訳程度に皮がついているだけの腕はデコボコとしており、くしゃくしゃに捻じ曲げられたアルミホイルのようにも見えた。
「ここ! この車まだあったかいぞ!」
なにも気付いていないK太のその声に僕はハッと我に返る。
あの白い腕は今すぐにでもK太の足首を掴む勢いだ。どうにかして危険を知らせようと、縮こまっている喉を必死で動かそうとするが、どうしても声が出ない。
腕がK太のズボンの裾に触れたその時。
バンッ!
大きくボンネットが叩かれた音があたりに響き、驚いた僕は小さく飛び上がり、その衝撃で声が出るようになった。
「K太! 誰か来た! 怒られる前に逃げよう」
咄嗟についた嘘だったがK太には効果的だったようだ。慌てた彼も大きく飛び上がり、急いでこちらに走り寄ってくる。僕もそれに倣い、流れるように駐車場の出入り口に走り、先ほどの車を一度だけ振り向いてみることにした。
「結局、猫いなかったな」
残念そうなK太とは裏腹に僕の気持ちは沈んでいた。
「そう落ち込むなって! また明日挑戦しようぜ?」
彼は僕が猫がいなかったことに気落ちしていると思っている。でも、それでいいのかもしれない。
お互いの家が近づき、また明日とバイバイをする。
あの駐車場から出る時、最後に振り返って見た車体の下には、鼻から上だけの人の頭部があるのを確かに見た。
その目は丸く燦々と輝いて恨みがましい目でこちらを見ていたのだ。
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