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降らねば知らずにいられたもの
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これはまだ俺が最近まで小学生だった頃の話だ。
俺の住む県は滅多に雪の降らない地域で、降ったとしても積もることは珍しい。
ある年のこと、異常気象とも呼べるほどの大雪が降った。
寒さのためか、それとも偶然か、珍しく早くに目が覚めた俺は窓の外を見て眠気が吹き飛び、テンション高く喜び勇んで早朝の町を徘徊しに玄関から飛び出した。
普段あまりこの時間に出歩くことがないため、今まで気が付かなかったが、早朝から活動を開始する人は意外と多いようだ。
人通りの多い道はすでに誰かに踏み荒らされており、誰かが歩いた後をまた別の誰かが踏みしめ、白いはずの雪には土の色が混ざっていた。新雪を踏む楽しみをそがれ少しばかり落胆してしまう。
なんとか駐車場などの開けた場所を見つけては一筆書きの要領で文字や絵を作っていく。靴底から伝わる普段とは違う感触が楽しく、気が付けば辺り一面を踏み荒らし新しい雪を求めてどんどんと先へと進んでいく。
なんとなく歩いていてわかったが、普段から地元の人間しか歩かないような道へ進むと白銀の世界が広がっていることがわかった。今なおしんしんと降り積もる雪も相まっていつもの町だというのにとても静かで神秘的な美しさを醸し出していた。
ポケットに入れていたスマホを取り出しカメラを起動する。今ならどこから切り取ってもいいものが撮れるのではないだろうか。そう思い非日常を何枚も写真に収めた。
そうだ山の神社に行けば町を一望できるかも。
一通り撮り終わり今度は少し上からの風景を見てみたくなった。そう考え、体を反転させて来た道とは逆の道を進みだす。
山。とはいっても小高い丘のような場所でそこまで高くはない。だが周囲を林で囲まれた石階段は子供心に山の中を冒険するようなわくわく感があり、地元の子供たちから山と呼ばれているだけの本当に小さなものだった。
大人たちからは危険だから絶対に近寄らないようにと口酸っぱく説教されていたが、それくらいでは子供の好奇心は抑えられない。みんなこっそり入り込んでは虫を捕ったり駆けまわったりしては大人にみつかりしこたま説教されているのを何度も見かけたことがある。
かくいう自分も小学生時代はよく大人の目を盗んでは拳骨を食らっていたな、と思い出し感慨深い。
目的の神社までは歩いて十五分程度。今朝目覚めた時から積もっていた雪の量が徐々に減っていく。このままだと神社に着くまでに止んでしまうかもしれない。少しだけ歩く速度を上げてみると慣れない雪で転びそうになった。
そうしてなんとか到着すると真っ白な背景に小さな赤い鳥居が映え、林の薄暗さも相まってなんだか拒絶されているような印象を受けた。
周辺には田んぼが広がり、その中央に突然小さな山が生えたように見えるその光景はいつ見ても不思議でたまに他県から越してきた人から由来を聞かれるが誰もそれを知るものはいない。
お世辞にも綺麗とは言えない鳥居まであと少しというところまで近づくとそこの石階段の手前はスロープ状の軽い坂になっている。
想像ではそこは真っ白な雪景色のつもりだった。だが違った。すでに先客がいた形跡がある。なぜならそこには遠巻きでもわかる一人分の足跡がくっきりとついているのだ。それは石階段を上るように上へと続いているようだ。
なんだ、自分が第一号じゃないのか。
少しがっかりはしたがそれでもいいや、同じように早起きした同じ学校のやつか、はたまた近所の子供かもしれない。
雪にはしゃぐお調子者同士合流して雪合戦に及ぶのも悪くない。そう考えると自然と口元が緩んだ。
鳥居をくぐりスロープ前まで来ると俺の足は止まった。最初はその違和感が何かがわからずしばらく考え込んだ後、何がおかしいのかに気づき滑るのも構わず元来た道を引き返した。
俺が人間の足跡だと思っていたそれは人間のものではなかった。
裸足だったんだ。
……え? それくらいなら誰かが馬鹿やってるだけだろって?
その足跡、小型犬くらいの大きさがあったんだよ。
しかも全て左足の。
俺の住む県は滅多に雪の降らない地域で、降ったとしても積もることは珍しい。
ある年のこと、異常気象とも呼べるほどの大雪が降った。
寒さのためか、それとも偶然か、珍しく早くに目が覚めた俺は窓の外を見て眠気が吹き飛び、テンション高く喜び勇んで早朝の町を徘徊しに玄関から飛び出した。
普段あまりこの時間に出歩くことがないため、今まで気が付かなかったが、早朝から活動を開始する人は意外と多いようだ。
人通りの多い道はすでに誰かに踏み荒らされており、誰かが歩いた後をまた別の誰かが踏みしめ、白いはずの雪には土の色が混ざっていた。新雪を踏む楽しみをそがれ少しばかり落胆してしまう。
なんとか駐車場などの開けた場所を見つけては一筆書きの要領で文字や絵を作っていく。靴底から伝わる普段とは違う感触が楽しく、気が付けば辺り一面を踏み荒らし新しい雪を求めてどんどんと先へと進んでいく。
なんとなく歩いていてわかったが、普段から地元の人間しか歩かないような道へ進むと白銀の世界が広がっていることがわかった。今なおしんしんと降り積もる雪も相まっていつもの町だというのにとても静かで神秘的な美しさを醸し出していた。
ポケットに入れていたスマホを取り出しカメラを起動する。今ならどこから切り取ってもいいものが撮れるのではないだろうか。そう思い非日常を何枚も写真に収めた。
そうだ山の神社に行けば町を一望できるかも。
一通り撮り終わり今度は少し上からの風景を見てみたくなった。そう考え、体を反転させて来た道とは逆の道を進みだす。
山。とはいっても小高い丘のような場所でそこまで高くはない。だが周囲を林で囲まれた石階段は子供心に山の中を冒険するようなわくわく感があり、地元の子供たちから山と呼ばれているだけの本当に小さなものだった。
大人たちからは危険だから絶対に近寄らないようにと口酸っぱく説教されていたが、それくらいでは子供の好奇心は抑えられない。みんなこっそり入り込んでは虫を捕ったり駆けまわったりしては大人にみつかりしこたま説教されているのを何度も見かけたことがある。
かくいう自分も小学生時代はよく大人の目を盗んでは拳骨を食らっていたな、と思い出し感慨深い。
目的の神社までは歩いて十五分程度。今朝目覚めた時から積もっていた雪の量が徐々に減っていく。このままだと神社に着くまでに止んでしまうかもしれない。少しだけ歩く速度を上げてみると慣れない雪で転びそうになった。
そうしてなんとか到着すると真っ白な背景に小さな赤い鳥居が映え、林の薄暗さも相まってなんだか拒絶されているような印象を受けた。
周辺には田んぼが広がり、その中央に突然小さな山が生えたように見えるその光景はいつ見ても不思議でたまに他県から越してきた人から由来を聞かれるが誰もそれを知るものはいない。
お世辞にも綺麗とは言えない鳥居まであと少しというところまで近づくとそこの石階段の手前はスロープ状の軽い坂になっている。
想像ではそこは真っ白な雪景色のつもりだった。だが違った。すでに先客がいた形跡がある。なぜならそこには遠巻きでもわかる一人分の足跡がくっきりとついているのだ。それは石階段を上るように上へと続いているようだ。
なんだ、自分が第一号じゃないのか。
少しがっかりはしたがそれでもいいや、同じように早起きした同じ学校のやつか、はたまた近所の子供かもしれない。
雪にはしゃぐお調子者同士合流して雪合戦に及ぶのも悪くない。そう考えると自然と口元が緩んだ。
鳥居をくぐりスロープ前まで来ると俺の足は止まった。最初はその違和感が何かがわからずしばらく考え込んだ後、何がおかしいのかに気づき滑るのも構わず元来た道を引き返した。
俺が人間の足跡だと思っていたそれは人間のものではなかった。
裸足だったんだ。
……え? それくらいなら誰かが馬鹿やってるだけだろって?
その足跡、小型犬くらいの大きさがあったんだよ。
しかも全て左足の。
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