【完】ＢＬゲームに転生したオレは鬼畜王子から逃げだしたい

さんじゅうご

    オレはベッドに正座した殿下に、不敬罪スレスレな高圧的な態度で話しかけた。
「つまり、歩いて帰って来た私に注意しようとしたら、馬車だったと言ったので、見られては困る相手に送ってもらった、と、そう思われたのですね？」
一語一語区切りながら話すオレに、殿下は無言で頷いた。
「そして、密室の馬車でナニかしたのだと思った？」
また頷く殿下。オレはわざと大きなため息をついた。
「密室ではなく、幌すら無い荷馬車です」
言葉を切って殿下を見る。
「荷馬車で貴族の邸に乗り付けるのは恐れ多いと言うので、離れた所で降ろしてもらいました」
やれやれといった風に頭を振って見せる。
「その馬車を御していたのは同僚の奥様です」
殿下が少ーし顔をそらした。気まずいのは分かるけど、ここでハッキリさせておかないとオレの貞操が危ない。
「つまり、殿下にはお預けさせておいて、他の男には股を開いてる、私をそういう人間だと思われているのだと、その解釈で間違いありませんか？」
殿下の肩が揺れた。答えは無い。
「客間を使わせていただきます」
「好きにしろ」
オレはとりあえず必要な私物を持って部屋を出た。