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第十話 神器(アルカナの村)
しおりを挟むアルカナの村に帰ると村人全員で出迎えてくれた。
北の森の氷が溶け、村は春の気候に戻っていた。
村人みんなの目が輝いている。
今朝まで死んだ魚の目だったことが信じられない。
「オリバ様、万歳!」
「この村の英雄です! 本当にありがとうございます!」
村人たちの歓声が聞こえる。
村長がオリバに歩み寄る。
「オリバ殿、本当に、ほんとうに、ありがとうございました。あなたはこの村の救世主です」
村長は泣きながら深々と頭を下げた。
村人たちも村長に続いて頭を下げる。
「俺ひとりでは負けてました。この冒険者たちのおかげです」
オリバは冒険者たちの戦い(カーフレイズ)ぶりをみんなに説明した。
「そんなことがあったのですか! カーフレイズは村を救ってくれたありがたい筋トレです! 村の伝統舞踏としてオリバ殿の武勇伝とともに先祖代々語りついでゆきますぞ!」
村長がなんか言いだした。
「いや、べつにそこまでは……」
「いえ、これは救ってもらった私たちの義務です! どうかカーフレイズさせてください! ……あぁっ! ふくらはぎがムラムラしてきました! カーフレイズせずにはいられませぬっ!!」
「ふくらはぎがムラムラ?」
オリバが聞き返す。
村長は目を輝かせながらカーフレイズし始める。
「す、すごいっ!! これがカーフレイズ!! 全知全能の神が私のふくらはぎに宿っていると感じます!」
「そんなところに宿りません! 村長、落ち着いてください」
「あぁっ! 全知全能の神・カーフ神さま! 今日からこの村の宗教はカーフ教といたします! カーフ神殿を建て、カーフ神さまをカーフレイズで崇拝いたしますぞっ!!」
おーい、村長。
戻ってこーい。
オリバは心の中で村長に呼びかける。
村長は涙を流しながらカーフレイズを続ける。
村長に続き、村人全員もカーフレイズを始めた。
こうしてアルカナの村に新興宗教『カーフ教』と伝統舞踊『カーフレイズの舞い』が生まれた。
将来、アルカナの村は村人の発達したふくらはぎから『ヒラメ足の村』と呼ばれようとはオリバは知る由もない。
「村長! さっそくですが、村の秘宝をお貸しください」
オリバは村長に言う。
「はうっ! ……も、もちろんですとも。カーフレイズの素晴らしさに心を奪われ、すっかり忘れておりました……。こちらでございます」
村長はやっと正気に戻る。宝箱をオリバに渡した。
オリバは宝箱のふたを開ける。
運動用シューズが入っていた。
「オリバ殿、これが我が村に伝わる秘宝です。神が必要だと認めたときのみ、その真価を発揮するそうです」
村長が説明する。
シューズか!
さすがボディビルダーに適した神器。
筋トレにシューズは欠かせない。
しっかり踏ん張らないと重い重量は持ち上げられない。
シューズを履くことで怪我予防にもなる。
「ありがとうございます! 大切にします。大魔王を必ず倒します!」
オリバは頭を下げた。
アルカナの村を去ったあと、オリバは神託の地図を広げた。
地図は富豪が住むことで有名な『リッチメンの町』を示していた。
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