【朗報】体型に自信のなかったこの俺が、筋トレしたらチート級の筋肉になった! ちょっと魔王倒してくる!【ラノベ】

ネコ飼いたい丸

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第二十八話 神器(エルフの村)

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 翌朝、オリバがルナの家に入ると昨日と同じ顔ぶれの三人がテーブルに座っていた。
 テーブルの上には宝箱が置いてある。

「来たわね、オリバ! ミスターコンテストでの優勝、人間の割にはまあまあだったわね」

 ルナがテーブルの真中に座り、腕を組みながら話す。

「ありがとうございます。約束通り、この村の神器をお貸しください」

「わかってるわよっ! この宝箱を開けてみなさい」

 ルナに促され、オリバは宝箱を開ける。

 そこには二本の細長い布が入っていた。
 布の幅は10センチ弱、長さは60センチほどだろう。

 オリバにとって馴染みのあるものだ。
 筋トレをするときの相棒・リストラップだ。

 この二本の布を両手首にそれぞれ巻く。
 するとあら不思議、ベンチプレスをする時に手首の怪我を防げるうえに、より重い重量を上げることができる。
 まさにベンチプレス時のマジックアイテム。

「あんたにこの神器は使えないわ。これはエルフのための神器。エルフにしか反応しないの」

 ルナはぶっきらぼうに言い放つ。

「そんな……。大魔王を倒すためにこの神器が必要なんです!」

 オリバは食い下がる。

「わかってるわよっ! 人間でもこの神器を使える方法があるっちゃ、あるのよ……」

 ルナは顔を赤らめ言い淀む。

「お願いします! その方法を教えてください!!」

「……スよ……」

 ルナは下をむき、消え入るような小さな声で呟く。

「え? すみません、ルナ様。よく聞き取れませんでした。もう一度言ってください!!」

 オリバは聞き返す。

 …………。

 ルナは耳まで赤くしながらモジモジしている。

「ルナ様! もう一度、エルフの神器を人間が使える方法を教えてください!!」

「キスよ! だ・か・ら・キス!! キスでしかエルフの生命力を人間に移せないのよ!!」

 …………。

 気まずい沈黙が流れる。

「そ、そうですか……。そのエルフのかたには本当にすみませんが、それでも俺はエルフの神器を使わなくてはいけません! どなたが生命力を分けてくれるんですか?」

 オリバが訪ねる。

 ルナの左右に座っているデュークとエルメンが一斉にルナのほうを向く。

「……わ、私よ。神器を使えるほどの生命力を移せるのは私だけなの。まさかこの私が、マッチョな人間とキスするハメになるなんてね! ほ、本当についてないわよっ!!」

 ルナは腕を組んでそっぽを向く。
 その頬は赤みを帯びている。

「なんかすみません……。筋肉嫌いのルナ様にこんなお願いしてしまい……」

 オリバは頭を下げる。

「これはエルフの生命力を移すために、しょうがなくやるんだからね! 変なふうに勘違いしないでよね! あと、1ミリでも勝手に動いたら、エルフの樹の肥料にしてやるんだから!!」

 ルナはオリバの前に立つ。
 左手をオリバの頬にそっと添えて目を閉じた。

 オリバは初めてルナの顔を近くでまじまじと見た。

 か、可愛い……。

 まるで作り物みたいに完璧な顔立ちだ。

 陶器のように白くて滑らか肌。
 長いまつげに大きな瞳。
 小さいけれどスッと伸びた鼻筋。
 そして薄い唇。

 今は目をつむり、頬を赤らめている。
 生意気な瞳と口を閉じれば、ルナは森の妖精のようだ。

 ルナの唇が近づいてくる。

 ヤバい、緊張してきた……。

 オリバは自分の心臓の鼓動が聞こえる。

 ドキドキしてることをルナに絶対に悟られたくない。
 あとで何を言われるかわかったもんじゃない。
 これはあくまで、必要だからやってるだけなのだ。

 俺の心臓!
 今はそんなに頑張らないでくれ!!

 オリバは切に願う。

 しかし、向こう側の筋肉を獲得したオリバでさえも不随意筋ふずいいきんである心筋はコントロールできない。
 オリバの意志に反してオリバの心臓はよりいっそう頑張りだす。

 ルナの唇がそっと触れる。

 滑らかで、柔らかくて、ちょっとヒンヤリしていた。

 オリバも目を閉じ唇に意識を集中させる。

 ルナの体が緑色の光に包まれる。
 その光はルナの唇を通してオリバのほうにも広がってくる。

 光はオリバの顔を包み、次第に首、胴体、脚と広がってゆく。

 すぐにオリバの全身が光で包まれた。

 オリバは全身に新しい力が宿ったことを実感する。
 何か大きな存在に守られているような感覚だ。

 …………。

 ルナはキスをやめない。

 …………。

「……ルナ様? エルフの生命力はもう完全に移行されていると思われますが……」

 戸惑い気味にエルメンが訪ねる。

「わっ、わかってるわよ! こいつの図体がでかいから、思ったより時間がかかったのよっ!」

 ルナは驚いたように目を開け、とっさに後ろに飛び跳ねた。

「オリバ! これであんたは神器を使えるわ! 私たちエルフの運命をあんたに託したんだから、絶対に大魔王に勝ってよねっ!」

 ルナは腕を組み、そっぽを向いて言い放つ。

「る……りゅな様、ありがとうございましゅ! 必ず大魔王を倒しましゅ!!」

 オリバは胸の鼓動を悟られないように平静を装うがダメだった。

 横から拍手が聞こえてくる。

 オリバが振り返るとデュークが涙を流しながら拍手している。

 白い瞳からとめどなく涙が流れ、長く白い髭を濡らしている。
 デュークの髭は水にぬれたモップみたいになっている。

「オリバ殿、ありがとう。本当にありがとう……」

 デュークはオリバの手を握り、何度もお礼のことばを繰り返す。

「ワシは目が見えない。だが、そのおかげで人の心を感じることができるのじゃ。今、ルナの心は暖かい。これは幸せの暖かさじゃ……。十年前、ルナの両親がこの世を去ってから、ルナの心に一度も沸き起こらなかった感情じゃ。それが今、この子の心に芽生えておる。ワシはもう、思い残すことは何もない……。オリバ殿、どうかルナを幸せにしてやってくだされ」

 デュークは深く頭を下げる。

「じいや、変なことを言わないで! そしてサラッと縁起でもないことも言わないで! そ、それでオリバ、次はどこに行くの? また神器を求めて次の村に行くの?」

 ルナが顔を真っ赤にしながら慌てて話題を変える。

「俺には分かりません。次に行くべき場所はこの神託の地図が教えてくれます」

 オリバは神託の地図を広げる。

 ……様子がおかしい。

 いつもなら次に行く場所が赤く光る。
 しかし今回は地図全体が赤く光っている。

 そして地図の中央に黒い文字が浮かび上がってくる。

 『魔王城』

 そう書かれている。

「わかったわ! これはアレね! ついに大魔王と戦う時が来たのよ! でも、この神託の地図でさえも、魔王城の場所は特定できなかったみたいね」

 ルナが神託の地図を覗き見る。

「この時が来たか……。しかし、神器である神託の地図でさえ、魔王城を探せなかった……。どうやって魔王城の場所を見つけるのか見当もつかない……」

「へ、へーん! 実は私、心当たりがあるのよね! これが人間と森の守護者たるエルフの情報量の違いね!!」

 ルナは得意そうに人差し指を立てる。

「本当ですか!? その場所を教えてください!」

「フフフ……。昨日、エルフのお祭りに招待していた妖精から聞いたのよ。ここからさらに北に位置する『最果ての地』で嫌な魔力を感じたって。最果ての地は草すら育たない不毛の大地が広がっている荒野よ。そんな場所に魔力があること自体、不自然だわ」

「ありがとうございます! その場所をもっと詳しく教えてください!」

「あんたひとりじゃ辿りつけないわよ? その地図にものってないじゃない。荒れた大地が広がってるだけで目印なんて存在しないわ。それに人間のあんたは妖精と会話できないでしょ?」

 ルナが呆れた顔をする。

「そんな……。ルナ様、何か方法はありませんか!?」

「しょうがないわね! 特別にこの私があんたと一緒にその場所まで行ってあげるわよっ。ほんとうに、ほんとうに、しょうがなくだけどね! あんたと一緒にいたいからとかは絶対にないんだからねっ!! 明日の朝、出発よ。 村の入り口に来なさい!!」

 オリバの返事も聞かず、ルナは顔を赤らめたまま部屋を出て行った。


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