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第三十五話 大魔王
しおりを挟む「みんな、準備はいいな!? 扉を開けるぞ」
オリバは今まで獲得してきた神器を装着しながらふたりに念を押す。
ふたりとも緊張した面持ちで頷く。
オリバは魔王城の大きく重厚な扉をゆっくり開ける。
魔王城の中から漆黒の魔力が土砂崩れのように扉の外に流れだし、オリバたちを包む。
喜びも楽しみも一切ない。
純粋に悪意だけを感じさせる魔力。
触れているだけで体がひりつく。
大部分の魔力が城の外に流れ、オリバはやっと城の中を見渡せるようになった。
目の前には大広間が広がっている。
その先には、深紅のカーペットが敷かれた大きな階段が長々と続いている。
オリバは階段の最上段に目をこらす。
椅子に座り足を組み、頬杖をついている魔物が見える。
漆黒の体。
頭上の王冠だけが黄金色に光り輝いている。
城の中を漂っている漆黒の魔力のせいで、魔物の顔立ちまでは確認できない。
「お前が大魔王か!! 俺はオリバ・ラインハルト! 世界を救うためにお前を倒す!!」
オリバは宣戦布告する。
「ほほう。まさかここまで辿り着けるものがいるとはな……。褒めてつかわそう」
漆黒の魔物は立ち上がり、階段をゆっくりと降りてくる。
魔物が近づくにつれてその姿が鮮明になってくる。
魔物が大広間に降り立ち、正面からオリバたちと対峙した。
…………。
「なぁ~んだぁ、カエルか~。緊張して損したわよっ! あんた、大魔王の召使いね? 大魔王がどこにいるか白状しなさいっ!!」
ルナは杖をつきだして漆黒のカエルを威嚇する。
「……いや、ボクがその大魔王だよ。ほら、頭の上に王冠が乗ってるだろう? これがその証拠さ。まあ、ちょっとでも雰囲気だそうと思って、自分で作った王冠だから特に意味はないんだけどね! ゲロッゲロッゲロッ!!」
漆黒のカエルは頭の王冠を指さしながら笑う。
楕円形の体に細長い手足。
その姿はどこからどうみても、二足歩行しているただの黒いカエルだ。
背も低く、オリバの肩くらいしかない。
ちょうどルナと同じくらいだろうか。
とても歴代最強と謳われる大魔王には見えない。
「漆黒のカエルよ。わらわは無益な殺生は好まぬ。大魔王のもとまで案内してくれぬか?」
エレナが優しく語りかける。
「……いや~そう言われてもボクが大魔王だし……」
カエルは水かきのついた手で頭をぽりぽりかじる。
「お前が本当に大魔王なんだな? 俺はこの世界を守るために大魔王を倒さないといけない。大魔王はこの世界を滅ぼそうとしている」
オリバも念を押して確認する。
「そだよ。ボクがその大魔王だよ。ボクの名前はケロンデウス。すべての魔王を統べる真の王なのだよ!」
ケロンデウスは腰に両手をあて胸を張り、自慢げに言い放つ。
「……そうか。もうひとつ聞くが、ケロンデウス、お前は世界を滅ぼそうとしているんだな?」
オリバは確認する。
「まあね。何かを壊したり滅ぼしたりすることがボクたち魔物の性分だからね。それに、生き物の恐怖心とか絶望とか負の感情がボクたちの力の源だしね。人間だけじゃなくて、エルフも氷の民もみんな残さず滅ぼすつもりだよ」
ケロンデウスは当たり前のことのように平然と答える。
「言ったわね、このボケガエル! エルフの村の村長である私の前で! あんたは私が倒す!!」
ルナが魔法を唱え始める。
「ああ、言ったよ。でもボクはボケてないよ。ってか不死の身だし。どっからでもかかってきていーよ」
ケロンデウスは構えるわけでもなくただ突っ立ている。
「それがあんたの最期の言葉よ! 召喚魔法! 悪食ワーム!!」
ルナの掛け声とともに魔法陣から悪食ワームが現れる。
悪食ワームは頭を持ち上げ、口を大きく開く。
尻尾で地面を何度も叩き、ケロンデウスを威嚇する。
ケロンデウスは目を丸くして悪食ワームを見つめ立ち尽くしている。
「恐怖で動けなくなったみたいね! これが『蛇に睨まれた蛙』ってやつね。悪食ワーム、そいつを丸飲みにしてあげなさいっ!!」
ルナが言い放つ。
悪食ワームは大きく口を開けたまま、ケロンデウスに飛びかかった。
ケロンデウスは口を開ける。
ケロンデウスの口から舌が高速で飛び出し、悪食ワームの胴体に巻き付く。
舌を引っ込め、悪食ワームを口元に引き付ける。
ケロンデウスの口が大きく広がり、悪食ワームをそのまま飲み込んだ。
「……えっ!? あ、悪食ワームが消えた……」
ルナは驚きのあまり状況を把握できずにいる。
自分よりはるかに大きい悪食ワームを飲み込んだのに、ケロンデウスの体のサイズは変わっていない。
「消えたんじゃないよ。ボクが捕食したんだ。ワームは久しぶりに食べたけど、やっぱり美味しいもんじゃあないね」
ケロンデウスは肩をすくめる。
「し、信じられない……悪食ワームは鋼鉄の鱗で覆われているのよ! それに、血液に猛毒が含まれている。悪食ワームを食べるなんて聞いたことがない……」
ルナは目を大きく見開き呆然とする。
「これがボクの特殊スキルさ。まあ、世界は広いってことだよ。『井の中の蛙大海を知らず』ってやつだね。あっ、カエルなのはボクのほうかっ! ゲロッゲロッゲロッ!!」
ケロンデウスは目を細めて愉快そうに笑う。
「こやつは危険じゃ! 三人で一斉に攻撃するぞ」
エレナの表情が険しくなる。
しゃがみ込み、両手を床につける。
「S級魔法! 氷の牢獄!!」
エレナが魔法を唱える。
ケロンデウスの周りに氷の壁が発生し、ケロンデウスを取り囲んだ。
「これであやつは身動きがとれまい! 今のうちに攻撃するのじゃ!!」
エレナは魔法を発動させ続けながらふたりに向かって叫ぶ。
ケロンデウスの漆黒の体が紫色に変わる。
両手を前に出す。
「闇魔法! 腐敗破!!」
ケロンデウスの両手から紫色の液体のような魔法が放たれ、氷の牢獄にぶつかる。
紫色の液体によって氷の牢獄はみるみる溶かされていく。
「くっ……あやつは闇魔法使いか……。水魔法使いのわらわとは相性が悪いのう……」
エレナは唇を噛む。
「攻撃魔法! グリーンウルフ・ショット!!」
ルナが魔法を唱える。
魔法でできた緑色に光るオオカミがケロンデウスに飛びかかる。
ケロンデウスの体色が紫色から赤色に変わる。
「火魔法! 怒りの業火!!」
ケロンデウスは口から炎を吐く。
グリーンウルフは火に包まれ、そのまま光の粒となって消えていった。
「そんなっ! 闇魔法と火魔法をひとりで使えるなんてっ! ありえない!! ひとつの属性の魔法しか使えないハズよっ!」
ルナが動揺する。
「肩メロン・タックル!!」
オリバが突撃する。
ケロンデウスは胸を張って大きく息を吸い込む。
体が風船のように膨らみ数倍に大きさになる。
ケロンデウスの膨らんだ腹にオリバは肩をぶつける。
まるでゴムボールのようなその腹はオリバを弾き返した。
「つ、強いっ!!」
弾き飛ばされ、背中から床に叩きつけられたオリバは思わず呟く。
「オリバ! こいつ本当にヤバいわよっ! ふたつの属性の魔法が使えるなんて常識破りよっ! ボサっとしてないで早く神器を使って!!」
ルナが叫ぶ。
「わかってるっ! でも……神器の使い方が分からないんだっ! 大魔王と戦えば勝手に力を発揮すると思ってた……」
「ふざけるじゃないわよっ! 何のために私の生命力をあんたに分けたと思ってるの!!」
ルナが怒鳴る。
「さーてと、そろそろボクの攻撃ターンとさせてもらうよ」
ケロンデウスは腕をストレッチしながら、呑気に話す。
「だけどその前に……」
ケロンデウスはエレナをじぃっと眺めたあと、不敵にほほ笑む。
口を大きく開いた。
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