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第9話 第2階層 ジャングル
しおりを挟む薄暗い森。
虫の鳴き声が辺り一面にこだまする。
「薄気味悪いところでゴザルな……ダンジョンの中にジャングルがあるとは。ひゃっ! こ、コオロギでゴザルっ!」
レンタロウは後ろに飛び退く。
「静かにしなさい、このヘッポコ侍! 猛獣に気づかれるわよっ!」
レナはレンタロウを睨む。
「だって……拙者、虫は苦手でゴザル……」
しょんぼりするレンタロウ。
「おい、お前の刀が光ってるのぞっ!?」
ハヤトに言われてレンタロウは日本刀に目をやる。
刀の鍔と鞘の間からうっすらと淡い光が漏れている。
レンタロウは刀を抜く。
刀が青白く光る。
光はレンタロウを包み込んだ。
「おめでとうございます! サイクロプス討伐によりレンタロウさんは新しいスキルを習得しました」
どこからともなく声が流れる。
「当然でゴザル! スキルが『イカ墨』なんておかしいでゴザルよ。拙者は強いスキルをどんどん使えるようになるでゴザルっ!!」
「レンタロウさんの新スキルは『真剣白刃取り』です。相手の攻撃を素手で受け止めれます。成功確率は3回に1回ほどです」
「び、微妙でゴザルっ! 喜んでいいのかわからない中途半端なラインでゴザルぞっ!」
「あら? 何を言ってるのかしら、レンタロウくん。物事はポジティブに考えないとダメよ。あのレンタロウくんが3回に1回も役に立つのよ? 可燃ゴミからリサイクル可能な資源ゴミへ昇格したくらいの大躍進でしょう?」
「拙者は資源ゴミではないでゴザルっ!!」
レンタロウはリンに抗議する。
「静かにしろっ! 木の上に何かいるぞっ!!」
ハヤトは前方の大きな木を睨む。
木の上でうごめく無数の影。
「キィキィ! キィキィ!」
不快な鳴き声を響かせながら無数の影がハヤトたちに迫ってくる。
「コウモリの大群だよ! 一発必中!」
ホノカは矢を放つ。
一匹のコウモリに命中し、コウモリは煙となる。
しかし、コウモリの大群の勢いは衰えない。
すぐにハヤトたちを取り囲み、体中を齧りだす。
「離れろ! こいつ!」
ハヤトはパンチやキックを繰り出してコウモリを次々と倒す。
だが、コウモリの数は全然減らない。
「ダメだ、数が多すぎる! まとめて倒さないときりがないぞ! ライフを少しずつ削られているぞ!」
ハヤトのライフが98になる。
「私がやるわ。今回の本は面白いわよ。『ロックスターの歴史』。広範囲を攻撃できるのがちょうどあるのよ」
リンは古書『ロックスターの歴史』を開く。
「具現化! 『銃と薔薇』!!」
リンのマジックポイントが70になる。
本が光り始める。
どこからともなくハードロックなギターのイントロが流れだす。
本から現れる金髪の男。
右手にマイクを握っている。
やせ細った男はボサボサな長髪をなびかせる。
白いTシャツにピチピチの黒いレザーパンツ。
80年代ハードロックスタイルだ。
男はマイクを口に近づける。
「ウェルカム・トゥー・ザ・ジャングル! シャナナナナナナナ、二ィ―! ニィー!!」
男が金切り声で叫ぶ。
辺り一面の空気が振動する。
ハヤトたちを囲んでいた無数のコウモリはボタボタと地面に落ちる。
「凄い声だったな……みんな大丈夫か!?」
ハヤトはみんなのライフを確認する。
レナ:100
ハヤト:98
ホノカ:95
ヨウスケ:90
リン:90
レンタロウ:78
「って、レンタロウ! なんでお前だけそんなにライフが減ってんだよっ!?」
「知らぬでゴザル! 拙者はきっとスピードに特化しているでゴザルよっ!」
「ハヤトくん、そっとしておいてあげましょう。資源ゴ……レンタロウくんだって傷つくこともあるかもしれないわよ」
「拙者は資源ゴミではないでゴザルよっ! 拙者を一番傷つけているのはレナ殿でゴザルぞ!」
「何を言ってるのかしら、レンタロウくん? あなたにとって資源ゴミは誉め言葉よ? だって資源ゴミはリサイクルされて人の役に立つんだから」
「拙者だって役に立つでゴザルっ! スキル『イカ墨』でパスタのバリエーションを増やせるでゴザル!!」
「お気持ちは嬉しいけど、イカ墨パスタは好きじゃはないの。歯が黒くなるでしょう」
「作るなんて言ってないでゴザルっ! リン殿は歯が黒くなる前にもうすでに腹は真っ黒でゴザルよっ!!」
「レンタロウくん、あなたって失礼なひとね。ほとんど話したことないクラスメイトに『腹黒』だなんて。私、悲しいわ。そんなことだからいつまでたっても童貞なのよ?」
「どどど、童貞とは人聞きが悪いでゴザル! 拙者は一途なだけでゴザル! こころに決めた貴婦人にのみ、身も心も捧げるでゴザルよ!」
「あなたさっき、『女子高生が乗る自転車のサドルになりたい』って大声で叫んでなかったかしら?」
「ぐぬぬ……それはそれ! これはこれでゴザル! そ、そんなことより先を急ぐでゴザルよ!」
レンタロウは誤魔化すように森の奥へ進み始める。
「ったく、しょうがねえな」
ボヤキながらハヤトはレンタロウの後を追う。
みんなも森の奥へ歩みを進める。
◇◆◇◆◇◆◇
森の中を数時間歩き続ける。
茂みをかき分け、川を横切り、山を越える。
突然、視界が開けた。
「気をつけろ! 誰かいるぞ!」
ハヤトは前方を睨む。
ライオンの獣人、トラの獣人、緑色のフードを被った女。
三人はハヤトたちを睨んでいる。
三人の背後には崖が広がり、そこに一本の吊り橋が架かっている。
「あの女の恰好……あれはドルイド、つまり祭司ね。魔法が使える可能性があるわ。みんな気をつけて」
リンは女が手にしている長い杖を睨む。
「我らは第二階層の番人! ここを通りたかったら俺たちを倒してゆくんだな!!」
ライオンの獣人が地を震わせるほどの大声で叫ぶ。
「ふ……ライオンでゴザルか。ならば戦うまでもないでゴザルよ」
レンタロウは涼しい顔でライオンの獣人に向かって歩いてゆく。
「バカ、やろめっ! あの体のデカさだぞ! 強いに決まっているだろっ!」
「案ずることなかれ、ハヤト殿。あのライオンを一撃で倒せる秘策があるでゴザル。女子たちは拙者の雄姿、しかと見届けよ☆」
女子に向かってウィンクするレンタロウ。
「シンバよ、拙者の歌を聴くがよい!」
レンタロウはライオンの獣人の前に立つなりそう叫んだ。
「俺の名はライオウだ! 勝手に変な名前を付けるな!!」
「黙れ、小僧っ!! おっと、今のは作品が違ったでゴザル。シンバよ、これで終わりだ!」
レンタロウは大きく息を吸い込んでこう叫んだ。
「なぁ~~~~~~~~~~~~つ、べんにゃ~~~~~~ばばにっ! じわわ~~~!!」
「……貴様は何をいっているのだ? 恐怖で正気を保てなくなったか」
ライオウは軽蔑の眼差しをレンタロウに向ける。
「な、なにっ! この歌が通じぬとはっ! あり得ないでゴザルっ!!」
オロオロするレンタロウ。
「あり得ないのはお前のほうだ! 早くこっちに戻ってこい!!」
「ままま、まだでゴザル、ハヤト殿! 拙者には奥の手があるでゴザルっ! これを聞くがよいっ!!」
レンタロウはダンスをしながら歌いだす。
「ハクナ・マタタ~~愛のメッセ~ジ~悩ま~ずに~生きる~ことさ~」
「いいかげんにしろっ!!」
ライオウはレンタロウの頭を叩く。
「近藤勇!!」
レンタロウは奇声を発し、ライフが78から45になる。
「こ……こやつはデ〇ズニーを知らぬでゴザルっ! まさかの展開っ! こ、怖いでゴザル~~!!」
涙目になるレンタロウ。
光の速さでハヤトたちのもとに逃げ戻る。
「戦いを始めるぞっ! 俺の名はライオウ! 百獣の王・ライオンの獣人だ」
ライオウは両拳を顔の前に持ってくる。戦闘態勢に入った。
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