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第35話 第4階層 ダンジョンのボス その6
しおりを挟む「これで貴様ら二人だけだ。俺をここまで追い詰めたことは誉めてやろう! だがっ! 貴様らに勝機はない。フフフ……奥の手は最後までとっておくものだぞ」
デュラハンは腰に付けた革袋から小さな瓶を取りだす。
「なんだその瓶は!?」
ハヤトはデュラハンに信頼の剣を向ける。
「これは猛毒だ。目に入ったら失明する。魔法ではないから貴様らのホーリー・シールドでも防げんぞ!」
「そんなもん、当たらなければ怖くないぜ!」
「その通りだ。だがっ! これが避けられるのかっ!?」
デュラハンは瓶を真上に投げる。
右手に闇のエネルギーを集中させ、空に向かって放つ。
「なっ! 魔法で瓶を吹き飛ばしやがった!?」
ハヤトは空を見上がる。
「フフフ……すぐに分かる」
デュラハンは愉快そうな声を出す。
ゴロゴロ……
真っ黒な雲が青空を覆う。
ザーーーッ!
黒い雨が激しく降り始める。
「いてっ! 体がひりつく! ホノカ、今すぐ目を閉じろ!!」
ハヤトは目を閉じる。
「この雨は危険だよっ! さっきの毒が含まれている!」
ホノカも目を閉じる。
全身がずぶ濡れになっている。
「フハハハハッ! さあ、どうする? 目を開ければ失明。しかし、目を閉じたままでは戦えまい。頭のない俺には関係ない話だがなっ!!」
勝ち誇るデュラハン。
「ハヤト先輩! 家の中に逃げ込もう! 家の中なら雨に当たらないよっ!」
「俺が逃がすと思うのか? まずは小娘から葬ってやろうっ!!」
デュラハンは大剣をホノカにむかって突き刺す。
「ホノカ、危ないっ!!」
ハヤトは目を開ける。
ホノカの前に飛びだす。
信頼の剣でデュラハンの大剣を防ぐ。
衝撃でハヤトとホノカは後ろに吹き飛ぶ。
家の窓をぶち破り、室内に転がり込んだ。
ハヤトのライフは60、ホノカのライフは70になる。
「ぐぁっ……目がっ!」
ハヤトは両手で目を押さえる。
「ハヤト先輩、大丈夫かいっ!? ボクを守ってくれたばっかりに……」
ホノカはうな垂れる。
「逃げても無駄だぞ! 目が見えない人間が俺から逃げられるわけないだろう!?」
デュラハンは大声で叫ぶ。
ハヤトとホノカが入った家に向かって歩き始める。
「ホノカ、俺を置いて逃げてくれ! 俺はもう目が見えないんだっ!! お前だけでも逃げろ!!」
ハヤトは苦痛で顔を歪ませる。
「そんなことボクにできるわけないじゃないか! 言っただろ? どんなときだって、ボクはキミの絶対的味方だって。こんな状態だってボクはキミを絶対的に信じてるんだ。信頼の剣は今も強く輝き続けているんだよ」
ホノカはハヤトの手を握る。
ハヤトの手にしている信頼の剣は強く光り輝く。
「でもっ! このままじゃ二人ともやられちまうっ!!」
「わかってるよ。どこかに隠れないと……んっ? ハヤト先輩、こっちだよ!」
ホノカはハヤトの手を握ったまま部屋の奥に進む。
「やっぱりあった! 地下道への入り口だよ! 隠されているけどボクにはわかるんだ。地下で小さな生き物が動く音がする。さあ、早く入ろう!」
ホノカは床のタイルを持ち上げる。
地下道の入り口が現れる。
二人は地下道へ入る。
「どこだぁ!? この俺から逃げられると思うなよっ!!」
デュラハンは家の中のタンスやベッドを真っ二つに切り裂きながらハヤトたちを探す。
「デュラハンがここを見つける前に先を急ごう! この地下道はどこかに続いているハズだよ」
ホノカは小声で話す。
ハヤトの手を握ったまま、地下道を突き進む。
◇◆◇◆◇◆◇
「ここからは下水道と繋がっているみたいだね。横に動くと水の中に落ちちゃうから気をつけてくれ」
ホノカの眼前には真っ直ぐにつづく細い一本道。
道の両側は真っ黒でドロドロした下水が流れている。
二人は一本道を進む。
ジャリッ
「ん? 今、何か踏んだみたいだ。ホノカ、なんだかわかるか?」
ハヤトは踏んだ物体から足を離す。
踏んだときの嫌な感触が足の裏にまだ残っている。
「えっ……ネズミの死骸? しかも新しい! ちょっと前まで生きてた。気をつけて! 下水の中に何かいるよっ!」
ホノカは下水に向かって弓を構える。
下水からプクプクと泡が浮かんでくる。
「あがぁー!!」
ゾンビが下水から飛び出す。
「一発必中!」
ホノカはゾンビの頭を射る。
ゾンビはのけ反り、そのまま下水の底へ沈んでいく。
「えっ? 何体いるんだっ!!」
ホノカはあたりを見まわす。
下水の至る所から泡がプクプク浮かんでくる。
「あがぁー!!」
ゾンビがハヤトの後ろから飛び出す。
「ハヤト先輩、危ない! 一発必中!」
ホノカはゾンビを射る。
「いたっ! しまった……」
別のゾンビが水中から顔を出して、ホノカの左足を噛む。
ホノカのライフが60になる。
「えい!」
ホノカは矢を右手で握り締めて、そのままゾンビの頭に突き刺して倒す。
「ハヤト先輩、気をつけて! まだ水中にゾンビがいるよ!」
ホノカが叫ぶと同時に、4体のゾンビが下水から現れる。
2体のゾンビがハヤトに襲い掛かる。
「うりゃぁあ!」
ハヤトは信頼の剣を振り回す。
しかし、目の見えないハヤトの剣はゾンビに当たらない。
ホノカは自分を襲ってきた一体のゾンビを射止める。
弓を引いて目の前にいるもう一体のゾンビに狙いを定めたとき――
「おわっ! しまった……」
ハヤトの声が地下道に響く。
ホノカはハヤトのほうを振り向く。
ハヤトは運よく信頼の剣をゾンビにあてて一体を倒した。
しかし、バランスを崩して床に転んでいる。
もう一体のゾンビが今まさにハヤトの足に噛みつこうとしている。
「ハヤト先輩に触れるなっ! 一発必中!!」
ホノカは目の前にいるゾンビではなく、ハヤトに噛みつこうとしているゾンビに向かって矢を射る。
「グゲッ!」
矢はゾンビの頭に命中し、ゾンビは煙となって消える。
「痛いっ! こいつ!」
ホノカは目の前のゾンビに右足を噛まれる。
矢を握り締め、ゾンビの背中に直接突き刺す。
ゾンビは煙となって消える。
「ハァハァ……もう敵はいないみたいだよ。ハヤト先輩、怪我はないかい?」
ホノカは耳を澄まして敵の気配がないことを確認する。
「俺は大丈夫だ。お前こそ大丈夫なのか? 俺を守るために……自分を犠牲にしてるんじゃないのか!?」
「そ、そんなことないよ。ボクの計算がちょっと狂って攻撃を貰っちゃっただけだよ、アハハ~」
明るく振る舞うホノカ。
しかし、ゾンビに噛まれた傷が紫色に変色している。
「それより先を急ごう。デュラハンにここが見つかるのも時間の問題だよ! ……あれっ?」
ホノカは震えながらも立ち上がるが、脚に力が入らずにハヤトの胸に倒れ込む。
「大丈夫か、ホノカ!?」
ハヤトはホノカを抱きしめる。
「大丈夫さっ! って言いたいところだけど……ボクはもう歩くことができない。ゾンビの攻撃に毒が含まれてたんだ……」
ホノカは悔しそうに両手を握り締める。
「そうか……悪かったな……。俺のせいでゾンビに噛まれちまって……」
「ううん、いいんだよ。あれはボクがしたくてしたことさ! 気にしないでくれ。でも……キミは目が見ない。ボクは歩けない。頑張ったけど、そろそろ限界だね」
「ああ……ちょっと疲れたな……少しだけ休もう」
ハヤトはホノカを抱きしめたまま床に座る。
「でも……最期の瞬間もキミとこうして一緒でボクはうれしいよ。だってボクはキミの絶対的味方だもん」
ホノカはハヤトの胸に頭を埋めた。
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