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第37話 第4階層 最終話
しおりを挟む「見つけたぞ! ネズミみたいにチョロチョロ逃げおって!!」
デュラハンが暗がりから現れる。
「しまった、見つかった! ハヤト先輩、逃げよう!! うっ……ああっ!」
ホノカは立ち上がろうとして床に崩れ落ちる。
「ほう、ゾンビの毒に足をやられたか。若造は目が見えず、小娘は歩けない。万策つきたな。すぐ楽にしてやるぞ」
デュラハンはハヤトたちに近づく。
「ハヤト先輩、ボクをおんぶして!」
「おんぶ?」
ハヤトは思わず聞き返す。
「ボクがキミの目になる。ボクを信じてくれ」
ホノカの言葉に一片の迷いもない。
「ああ……俺はお前を信じてるぜ」
ハヤトはホノカをおんぶして立ち上がる。
ホノカの温もりがハヤトの背中に伝わってくる。
信頼の剣が眩しく輝き始める。
「なっ! なんだその輝きはっ! 信じられん……貴様ら、信頼の剣に何をしたっ!?」
あまりの眩しさにデュラハンがうろたえる。
「何もしてないよ。ボクたちはお互いを信頼し合ってる。ただそれだけさ」
ホノカは答える。
「ありえん! 俺は人間がどれほど利己的か知っている! 自分の利益のためなら人を騙し裏切る汚い生き物だ!! 信頼に値する価値など微塵もないだろう!?」
「キミの境遇は本当に残念だと思うよ。信じていた主人にご両親を殺されるなんて……。でもっ! キミは誰からも信頼されていなかったのかい? キミのご両親やキミの部下たち。キミのためなら自分の犠牲もいとわない。そんな人たちにキミも出会ってきたんじゃないのかい?」
「だ……黙れ! 黙れ!! 貴様らの戯言につきあうつもりはない! 戦士ならばその剣で語れ!! 目の見えない若造と歩けない小娘。貴様らに何ができる!!」
デュラハンはハヤトめがけて大剣を振り下ろす。
「今だ! 剣を上に振り抜いてっ!」
ホノカは叫ぶ。
ハヤトは剣を振り抜く。
信頼の剣と大剣が交わる。
爆風が発生する。
「なっ……なに! 俺の斬撃を受け止めただとっ!」
デュラハンは驚きの声を上げる。
ハヤトは信頼の剣で大剣を受け止めている。
「デュラハン、これが信頼の力だよ。ボクはいつだってハヤト先輩を信じてる。ハヤト先輩が自分を信じれないときだって、ボクはハヤト先輩を信じているんだ。だってボクは、ハヤト先輩の絶対的味方だから」
ホノカは手を伸ばす。
信頼の剣を握っているハヤトの手に自分の手を添える。
剣の輝きがさらに強くなる。
「なっ? 俺の大剣が……?」
信頼の剣の光がデュラハンの大剣に広がってゆく。
大剣にヒビが入る。
ヒビはどんどん広がっていく。
「いくぞ、ホノカっ!」
「うん、任せて!」
ハヤトとホノカは信頼の剣を上に振り抜く。
デュラハンの大剣が砕け、信頼の剣はデュラハンの胸を大きく切り裂く。
「ぐぁっ!! この俺が……」
両膝を床につくデュラハン。
ライフが0になる。
「見事だ……この俺が……やられるとはな……」
デュラハンは小さな声で呟く。
しかし、その声はどこか穏やかだ。
「デュラハン、キミは強かったよ。でもキミだって知ってるんじゃないかい? 世の中、悪い人間ばかりじゃないって。信頼できる人間だっているし、信頼は美しい感情なんだって」
ホノカは優しく語りかける。
「……そうかもな。貴様らに受けたこの傷が暖かい……。お前の話を聞きながら、俺の両親や部下のことを考えていたぞ。かけがえのない人たちだった……」
デュラハンは胸の傷に手を添える。
「貴様らと戦えて光栄だったぞ! あぁ……暖かい……あたたか……い……」
デュラハンは満足そうな声とともに煙となって消えた。
「首なし騎士・デュラハン……強敵だったな……」
ハヤトはデュラハンがいた場所を見つめながら呟く。
「ダンジョンクリアだよ! キミはどんな夢を叶えてもらうんだい?」
ホノカはハヤトにおぶさりながら訪ねる。
「俺か? うーん、正直、まだ決めてないんだよな……お前はどうするんだ?」
「ボクの夢は決まってるさ! キミの隣にずっといること。困ったときはいつでも助けてあげるんだ。ボクはキミの絶対的味方だから」
「お前な~、金持ちになるとか、もっと他になにかあるだろ?」
ハヤトはため息をつく。
「いいや。キミの隣にずっといること。それがボクの夢さ。キミと同じ大学にいきたいよ。そして……そのあとの人生もいっしょに歩みたいんだ。おじいちゃんとおばあちゃんになって、キミがヨボヨボになっても、キミはボクのヒーローさ。キミの目が見えなくなったなら、ボクがキミの目になる。ボクはキミの絶対的味方でいたいんだよ」
ホノカはハヤトの背中に顔を埋める。
その頬は紅潮している。
「えっ? それってどういういみ――」
ハヤトが聞き返そうとしたとき。
「おめでと!! お兄ちゃん、お姉ちゃん☆ ダンジョンクリアだよ! ほんとうにお疲れさま☆」
どこからともなくマロンの声が地下道に響く。
一瞬にして風景が変わる。
ハヤトたちは赤いカーペットを敷いた王室に立っている。
パーティ全員が無傷で復活している。
「お兄ちゃん、お姉ちゃん、久しぶり! このダンジョンをこんなにすぐ攻略できるなんて! マロン、夢にも思わなかったな☆」
王座に座っているマロンはニッコリする。
「なにっ! ハヤト殿! あのデュラハンを倒したでゴザルか!? さすがでゴザル!! これで拙者の願いも叶うでゴザルよー!!」
ガッツポーズするレンタロウ。
「地球の法則に反するのはダメだよ☆ 自転車のサドルになりたいとかほざいたら、マロンはレンタロウお兄ちゃんの脳天を叩き割っちゃうなぁ♪」
「フッ……安心するでゴザルよ。ダンジョンで数多の敵と戦い、拙者も成長したでゴザルよ。そんなバカげた願いはしないでゴザル!」
「じゃあ、どんな願いなの?」
マロンは首をかしげる。
「ゆいな殿の消しゴムになりたいでゴザル!!」
「ちったぁ成長せんかいっ! このクソ侍がぁああー!!」
マロンは王座から飛び跳ねてレンタロウの胸にドロップキックを叩き込む。
「光源氏!!」
レンタロウは泡を吹いて床に倒れる。
ライフが70になる。
「ヨッシャー! 景気づけに一発いくぞぉ!! 声援ヨ・ロ・シ・ク!!」
マロンは倒れているレンタロウを立たせる。
後ろからレンタロウを抱きしめる。
マロンの両手はレンタロウの腹にしっかり巻き付いている。
「「「「「「イチ! ニイ! サン! ウチュー!!!」」」」」」
みんなでハモる。
マロンは腰を後方に反らせ、レンタロウを反り投げる。
レンタロウは綺麗な弧を描いて頭から床に激突する。
「紫式部!!」
レンタロウは奇声を発する。
ライフが30になる。
「フッ~~、スッキリした☆ 改めておめでとう、お兄ちゃん、お姉ちゃん♪ 地球の法則に反しない願いなら一つ叶えてあげるよ☆」
マロンはウィンクする。
「う~ん、何にしよう……迷うな~」
ヨウスケは頭をポリポリかく。
「で・も!! ここでスペシャルコースの登場だよ☆」
マロンはいたずらっぽく笑う。
「お兄ちゃん、お姉ちゃんがとっても面白いから、宇宙人たちはもっとみんなを見ていたいんだって♪ だから、もし次のダンジョンをクリアできたら、願いを二つ叶えてあげる☆ 今ここで願いを一つ叶えるか、次のダンジョンを攻略して二つの願いを叶えるか。選んでいいよ☆」
「願いが二つ!? でもダンジョンをクリアできなかったら願いは一つも叶わない……」
ハヤトは呟く。
「ボクたちが力を合わせれば、どんなダンジョンでもクリアできるさ! それに……ボクはキミともっと一緒にいたいんだ。このダンジョンでキミの良いところをいっぱい見た。キミともっと一緒にいて、もっとキミの力になりたい。ボクはキミの絶対的味方だからね!」
ホノカはハヤトの手を握る。
「わ、わたしも構わないわよ! どんな強敵でも私が盾になって受け止めてみせるわっ! ハァハァ」
レナは目を輝かす。
「私も別にいいわよ。ひとつより、ふたつ願いが叶うほうが良いに決まってるもの」
リンも頷く。
「拙者も同意! 自転車のサドルと消しゴム! 両方なれるでゴザル!!」
レンタロウは鼻息を荒くする。
「ぼ、ボクもそれでいいよ。今すぐ叶えたい願いもないしね」
ヨウスケはニッコリ笑う。
「そうか……俺も今はみんなともっと冒険したい。じゃあ、決まりだな!!」
ハヤトはみんなの顔をみる。
みんなは頷く。
「じゃあ、みんなで言うぞ! せーのっ!!」
ハヤトは掛け声をかける。
「「「「「「次のダンジョンに進みたいっ!!」」」」」」
ハヤトたちの新しいダンジョン攻略が幕を開けたのであった。
―――― おしまい ――――
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