Occupied レプリカント人権保護局

黒遠

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02 潜入捜査

22 Baltroy (方便)

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「バル、今日は俺とオーリーが休日勤務の当番なんだけど」
「知ってる。俺は別に出勤してない」
「君の『出勤してない』の定義って何?」

 仕方ないだろ。自宅の端末からじゃ捜査できないんだから。

 ヴェスタのだいたいの位置は掴めた。AAAがここ一年で手放した保養施設なんてそういくつもないからだ。最悪、ヴェスタを取り戻すことはできる。でも未解決では帰ってこられない。局長……正確に言うとその上のレプリカント嫌いの誰かからヴェスタは降格されるだろう。クソが。

 ReLFの場所もここ一箇所じゃない。ヴェスタがいる所はたぶん、新入りが入る養成所みたいな感じで、パスコードを言うまでの繋ぎの施設なんだろう。ReLFの幹部を押さえるか、イレプリカとやらの正体を引きずり出すかしないと全貌はわからない。

 何か手がかりがないのか。AAA社の名簿を眺める。出荷するレプリカントの情報にタッチできる職位のやつだけで、百何人。まあ、ヴェスタならやるだろうな。一人一人の調査……。土曜日にやる作業じゃない。

「……あーあ。クソ」

 一番下に書かれた名前のやつの戸籍から画像データを入れて、画像検索、その画像の精査。1人につき何分? 今日一日で終わるか? やれやれ。

 何なんだろうな。何でこんなにむきになってるんだろう。連邦捜査局の手柄になるだけなのにな。一人目。営業のぺーぺー。画像照合……。

 レプリカントに対する局内の差別に腹が立ってんのかな。

 それはある。俺が通ってきた道だ。ヴェスタが俺がやられたようなことをまた公然とやられるのが我慢できない。

 俺は最初は普通のヒューマンとして入職した。そりゃそうだ。戸籍にだって履歴書にだってハイブリッドだなんて書く欄はないから。だから普通にインターンをパスして最初のバディと組んだ。3年目の先輩だった。色々教えてもらいながら何度か現場に行った。俺がサウンドブレイカーに撃たれても傷がその場で治ってしまうのがバレた。別に隠してもいなかったんだけど。

 それで当時の局長に呼び出されて、どういうことなのか聞かれた。いわゆるハイブリッドなんだと言った。その時の局長は露骨に嫌な顔をした。なぜ面接の時に言わなかった? 豚の子じゃないか。

 俺の扱いが変わった。みんなが嫌がるような過酷な現場に回されることが多くなった。割りを食ったのが俺のバディだった先輩だ。半年でこんなのやってられないと言われた。そりゃそうだ。俺はすぐに治るからいいけど、先輩は怪我は怪我だ。俺と一緒にされたらたまらない……。実際大怪我をして、バディを降りると言われた。

 次のバディは新入職のやつだった。俺のことを知らないままにバディを組まされた。ミスすれば豚の子と言われ、結果を出しても豚の子だから当たり前と言われる。周りからの見る目がおかしいことに三ヶ月程で気がついて俺に聞いてきた。また同じ説明をした。俺がハイブリッドだから。

 でも彼は頑張った。かなり。何度も怪我したけど、自分の不注意だからと言った。俺も少し気をつけてた。彼が怪我をすると俺の方が叱責されるって理由もあった。彼は怪我しても俺に隠すようになった。俺はアホだからしばらく気が付かなかった。

 彼の体臭が強くなって、ちゃんと風呂に入ってくれとか服を変えろとかそんなことばかり言ってた。ある時、それが膿みの匂いだと気がついて、検査室に無理矢理連れて行ったら、俺が知らない怪我でボロボロだった。彼は泣きながらごめんなさい、もう無理ですと言った。

 そんなに我慢させる気は全然無かった。この後局長が今の局長に変わって、危ないところを一手に引き受けされられるというのはなくなった。そりゃ、持ち場は俺は怪我しやすいところになるけど、バディは必ずしも同じ持ち場に振られるわけじゃない。三人目がカラス。扱いがマシになったのと、彼は同期で話しやすいのもあって三年持った。

 でもカラスは裏でヴェスタのことをセクサロイドと呼んで、俺を豚扱いしていた。人外コンビ・・・・・

 うるせえんだよ。ヒューマンなのがそんなに偉いのか? もううんざりだ。絶対多数なのがそんなに嬉しいのか? 黙れ。認めろ。俺やレプリカントたちはお前らとは違う。お前らにできないことができる。お前らに分があるのは数だけだ。お前らの仲間に入れろとは思わない。お前らの仲間にはなれない。だって違うんだから。

 ただ認めろ・・・・・敬意を払え・・・・・



 それだけ。



 




 13人目で、効率が悪すぎると思った。いや、最初から思ってた。あと90人はなあ。ちょっとでもいい、絞りたい。せめて工程を減らしたい。そもそも、こいつらの中に情報を漏らしてる奴がいるとも限らないんだよな。でも確かにここから情報は漏れてるんだ。誰か何か知ってるかも知れない。

「………まあ、俺らしいっちゃ俺らしいよな」

 コールする。面倒だから上からだ。偉そうなおっさんの画像。

『はい。アンドロイド・アンド・アドバンス社CEO ゼンドルフ・アミスタルコフの秘書がお繋ぎします』
「お休みの日に恐れ入ります。レプリカント人権保護局捜査官A492090rpです。貴社の職員に情報漏洩の可能性がございまして、急ぎコールさせていただきました」

 嘘はいっこも言ってない。さて。





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